休車損害を請求できるのは緑ナンバーだけなのか

休車損害の対象車は緑ナンバーだけ?

ネットを見ていたら、休車損害を請求できるのは「緑ナンバーに限る」とか、「原則緑ナンバーだ」みたいな情報ばかり。 「図解とQ&Aで納得 損害賠償・慰謝料をめぐる法律とトラブル解決法165」という本でも、

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などとなっていて、これも緑ナンバーに限定している。しかし、そんなことはぜんぜんないはずだ。

白ナンバーで休車損がよく請求されるクルマ

本来、運輸局の許可をとって緑ナンバーでなければいけないにもかかわらず白ナンバーだった。つまり白タクとか白トラとかの無許可運送業者についてはたしかに問題ありだけれど、緑ナンバーをそもそも必要とせず白ナンバーでいいクルマだっていっぱいある。

たとえばこれとか。
 
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これとか。
 
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これとか。
 
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最初の画像がミキサー車。次が保冷車。最後がポンプ車。いずれも現に白ナンバーがついているが、無許可営業というわけではない。いずれも緑ナンバーではないけれど、休車損害の請求は可能である。以上は特殊車両だったが、ごくふつうにみられるレンタカーも白ナンバーである。レンタカーの休車損害請求なんて、認定までのハードルは高いものの請求自体はふつうにあるだろう。このように、白ナンバーでも休車損の請求は可能である。どうして「緑ナンバーに限る」などという誤解が生じるのだろうか。

ナンバープレートの種類

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ふつう、ナンバーの色はこの4種類。もうひとつ外交官用の色違いのナンバーもあるらしいのだが、あまり一般的でないので割愛する。

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この画像は日本トラック協会から引っ張ってきたのだが、説明文のところに注意してほしい。「緑ナンバーはお客様の荷物を有償で運ぶ「営業用トラック」、白ナンバーは自社の荷物を自社の車で運ぶ「自家用トラック」」とある。大きな工事現場に行ってみると、緑ナンバーのトラックと白ナンバーのトラックが混在している。その白ナンバーのトラックのすべてが無許可業者のトラックだとは限らない。たいていは、自社の荷物を運んでいる自家用トラックである。

また、ミキサー車やポンプ車は、荷物や客を運ぶわけではないから、緑ナンバーである必要がなく、白ナンバーでいいのだ。

白ナンバーも休車損害を請求できる

ぼくはこれまでミキサー車の休車損害もやったことがあるし、ポンプ車のもやったことがある。ミキサー車やポンプ車は荷物や客を運ばないけれど、運行することで会社の収益をあげているわけだから、「営業用車両」にあたるだろう。それが事故でぶっこわれて使えなくなれば、その間、休車損害を請求できる。自社の荷物を自分で運んだ白ナンバーのトラックについても請求できるはずである。

ここでいまいちど休車損害の定義を確認しておきたい。休車損害とは、「営業車の場合、使用不能となった期間、稼働していれば得られたであろう利益を喪失したことによる損害」のことである。「営業車」には、白ナンバーのレンタカーやポンプ車やミキサー車も当然に含まれる。緑ナンバーのものだけに限らないのだ。

では、これなんかはどうだろう。

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運賃をとっていないから白ナンバーなのだけれど、利益を上げるのが直接の目的でないから休車損は請求できないとなるのだろうか。ぼくにはよくわからない。

通学用のバスについて

道路運送法
第 78 条 自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう。)は、次に掲げる場合を除
き、有償で運送の用に供してはならない。
一 (略)
二 市町村(特別区を含む。)、特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、次条の規定により一の市町村の区域内の住民の運送その他の国土交通省令で定める旅客の運送(「自家用自動車有償旅客運送」という。)を行うとき。

 

ここまでのまとめ

本来緑ナンバーであるべきなのに、白ナンバーだったいわゆる白タクや白トラは、休車損請求の際、不利益な扱いを受ける可能性が高い。しかし、そのことから緑ナンバーだけが休車損害の対象になると結論付けてしまうのは間違いである。

無許可運送事業者が交通事故にあったとき

(質問)

無許可運送事業者が交通事故にあった場合、どんな不利益がありますか。
 

(回答)

自動車運送事業を行う場合、国土交通大臣の許可が必要である。許可制になっている趣旨は、道路運送事業運営の適正化や合理化等による利用者の利益保護や利便性の増進、輸送の安全性確保などにある。したがって、許可自体は公益が目的であり、営利行為を規制対象にしていない。したがって、無許可だからといって、無許可事業者と利用者との間の運送契約までもが無効になるわけではない。

問題は、交通事故というような第三者がかかわった場合の関係である。クルマの修理代等は問題なく請求できるが、休車損害についてはそうは簡単にいかない。すなわち、無許可運送事業者が交通事故にあった場合に、クルマの買替期間中や修理期間中はクルマが使えなくなるため、減収をこうむることがある。その減収分を損害賠償として請求できるかどうかだ。

この点について、裁判所は、法律で認めていない方法によってあげた収益を加害者に支払うよう命ずることは、間接的にせよ、違法行為に法が加担することになるため、そのような違法行為に法的保護を与えることには非常に消極的である。たとえば泥棒が交通事故で怪我をして泥棒稼業を休んだからといってその減収分を認めるような法的な保護を与えるわけにいかないのと同じである。

たとえばソープランドとか

ソープランド嬢の休業損害請求に関して、公序良俗に反する行為による対価であることを理由に、ソープランド嬢としての高額の休業損害を否定した例がある。

 
しかし、同じ違法と一口にいっても、泥棒と無許可営業とではその違法性の程度はまったく違うし、無許可営業を行った経緯について具体的に考えてみると、無許可営業が常態化していた場合と、営業車が事故により使用不能になり、緊急避難的に無許可営業車を使用せざるえなかった場合とではやはり違ってくると思う。

無許可営業に関する判例

無許可営業が常態化していた場合に、その減収分の損害賠償を一切否定する判例もないわけではないが、債務不履行による損害賠償事案につき、「無免許事業が道路運送法に違反しても、その事業過程における各運送契約が、私法上当然無効となる筋合いのものではなく、・・・得べかりし利益の喪失は、民法416条により賠償を受け得る通常生ずべき損害に該る」(昭和39年10月29日最高裁)としている。

得べかりし利益とは

逸失利益とも呼ばれ、本来得られるべきであるにも拘らず、不法行為や債務不履行などで得られなかった利益のことをいう。なお、休車損害は、交通事故により損傷を受けたクルマを修理し,又は全損のため, 買い替えるのに相当な期間,当該自動車を使用できなかったため, 被った得べかりし利益のことをいう。

 
しかし、上記最高裁の判旨を考慮しつつも、交通事故の不法行為事案につき、一般的な傾向として、交通事故により無許可営業が発覚した場合、罰則や行政処分による制裁があるため、免許業者と比較して営業継続が困難になることがあるし、取引の相手方としても取引の継続を止める傾向があることからくる収益の不確実性などから、将来の収益についても不安定の要素を含んでいるという理由で、「算出された損害額の60%程度」(津地裁昭和50年7月14日判決)で休車損害を認定している例がある。
 

ネット検索でみつかった判例

大阪地裁昭和59年3月15日判決。
無免許事業者が締結する運送契約が私法上有効であることを考慮してもなお、被告が無免許事業者であることを知ることのできない交通事故加害車に対し、自己の不法な行為をもとに事業所得の損失を求める請求としては、これを認めることができない」。ただし、営業している個人の自己の労働の対価に対する賠償は認めており,男子平均賃金を用いて賠償額を算定している。

無許可運送の場合の立証の困難さと裁判所の厳格な運用

休車損害があったことや、どれくらいあったかについての立証責任は、被害者である休車損害を請求する側にある。ところが無許可運送事業者の場合、貨物運送事業報告規則に基づく各種報告をしていないし、所得申告もしていない場合が多い。そのため、休車損害を立証しようとしても肝心の立証するための書証が存在しないということが非常に多い。したがって、相手保険会社に休車損害を請求しても認められることは通常ないだろう。また、裁判所に訴えても、同様の理由で、立証できなければ休車損害を否認されると考えておいたほうがいいと思う。つまり、休車損害が生じたことき、請求してもその立証が不可能なため、事実上は、休車損請求には困難が伴う。

判例タイムズナンバー38の過失割合本(P14)でも、「被害者が所得を申告せず、あるいは過少に申告していたとして申告外の所得を主張する例が相当数あるが、申告外の所得については厳格な立証が求められる」としている。さらに「その証拠の信用性が乏しい場合が多いためか、東京地裁交通部においては申告外所得を休業損害の基礎となる所得としてそのまま認定した判決例はない」としていた。これは休業損害の場合だが、休車損害の場合も客観的な資料が乏しい場合は同様のことがいえるため、通常よりもかなり厳格な立証責任を負わされるとみるべきである。

一般貨物自動車運送事業とは

一般貨物自動車運送事業とは

他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。)を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものをいう。
【貨物自動車運送事業法第2条第1項】
 つまり、トラックを使用して他人から運送の依頼を受け、荷物を運送し、運賃を受ける場合のことを指し、一般貨物自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣または地方運輸局長の許可がいる。

 

特定貨物自動車運送事業とは

特定の荷主の需要に応じ、有償で貨物を自動車により運送する企業や個人のことである。この事業を経営するには国土交通大臣の許可を受ける必要がある。特定の荷主が対象となるため、メーカー、商社の物流システム化の推進対策として、輸送ならびに配送を担当する系列(子)会社による事業化が多くみられる。原則として1荷主1事業者であり、荷主の自家輸送の代行ともいえる事業である。

 

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コメント

    • lucky
    • 2016年 5月 30日

    私の経験した白ナンバー車は、コンクリートミキサー車、灯油のタンクローリー車、骨材や土砂を運搬するダンプ

    灯油のタンクローリーは、事故前3か月での比較ができず、事故前年、前々年で損害額を算定しました。

    いま、原油安が続いているので、車を使う経営者は、去年の経費数値を算定に使用すると

    ものすごく抵抗されますよ・・・。

      • ホームズ事務所
      • 2016年 5月 31日

      luckyさん、貴重な援護射撃のコメントありがとうございます。休車損はあまりやったことがないと言われていたように思いましたが、これだけやられているなら、十分プロ並みですよ。プロ並みというとなんですが、ほかがレベル低すぎるだけですが。

      休車損をネットで検索すると、休車損は緑ナンバーに限るみたいな記事ばかり。白ナンバーの休車損なんてふつうにあるのに。いいかげんにしろと言いたくなるくらいひどいものです。ちょっとやったことがあればわかりそうなものだと思う。机上の空論ばかりで頭に来てこの記事を書いたしだいでした。弁護士で休車損ができる人はほとんどいないのではないかと思えてくるくらいです。

      燃料代についてもluckyさんの言われるとおりです。ぼくも、運送会社の経営者からさんざん言われたことがありました。

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知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ

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その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にする。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。よろしくです。

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