自賠責骨抜き化後のディストピアとしての未来

自転車事故の任意保険対応化と、自賠責保険制度の完全任意保険化

「ハンドブック・交通事故診療」という本について、

以前、医者による偏見本だと酷評したけれど、医者の利害関係にかかわるところは眉唾なところもあって注意しないといけない本だが、最新版だけあって新しい情報が盛り込まれているし、個々の情報はまとまりもいいので、いま、最初から最後まで読んでいるところである。

自転車事故の任意保険対応の現状

その「はしがき」のところに、おや、と思った記載がふたつあった。

最近は自転車同士の事故や自転車と歩行者の事故も多発しています。過失相殺の問題があまり問われない自賠責保険同様の被害者救済のための強制保険の導入が安い保険料でいずれ検討されるものと考えます。通学の学生さん達は、団体保険として任意保険が保険会社から提供されていますが、自転車のマナー違反が継続して被害者が増加すれば、強制保険が提案されることも考えておく必要があります。

まったくの正論である。ぼくも何度かこのことについて書いたことがあるのだが、マスコミ等は自転車の強制保険化を話題にするし、現に、兵庫県では強制保険化のための条例が話題になったことがあるが、そこでは任意保険の強制保険化ということだった。本来なら、自賠責保険の拡張というか適用ができるようにすべきだという方向の議論になっても決しておかしくないのに、その方向に向おうとしない。国は一切知らん顔をし、その負担を個々の国民に押し付ける。いわゆる自己責任の拡大で対応しようとしているのだ。このような「最初に結論ありき」になっていたから、それはおかしいので記事を何本か書いたことがある。だから、こういうまっとうな主張が聞けて、おや、と思ったわけである。

自賠責保険制度の完全任意保険化

つづけて、

最後に、現在TPP交渉の中で、金融関係の問題として自賠責保険制度の完全任意保険化が懸念されています。内容は、米国の国会議員のみが知り得て、日本の国会議員は官邸の関係者以外は知り得ないことになっています。不平等条約を永年かけて改正してきた明治の政治家と比べて、最近の国会議員の不甲斐なさは、驚きとともに誠に残念でなりません。日本民族の誇りを胸に、しっかりとした民主主義の実現のためにも、政治家として重大な責務を果たしていただきたいと存じます。

「自賠責保険制度の完全任意保険化」。医療費の基準は政府が決めるのではなく、そこに市場原理を導入しようということ、国民の健康や生命さえも企業の金儲けの手段にしようということだ。だから、きわめて当然の危機感の表明なのである。しかし、ネットで検索しても同様の危機感を表明している情報がまったくみつからない。先にあげた問題にしても、この問題にしても、だれもとりあげようともしない。いったいどうなっているのだろう。

自賠責保険制度の完全任意保険化への道

「自賠責保険制度の完全任意保険化」ということで二つの道が考えられる。ひとつは、自賠責保険を廃止して任意保険ですべてまかなう。もうひとつが自賠責の骨抜き化である。

自賠責をなくすというと、ふだんは羊のようにおとなしい国民でも反発が予想されるので、オバマケアのように、自賠責は残すもののその補償額をもっと小さなものにする。今でさえ、補償額が小さいのに、いきなり減らすのではなくて、逓減させる。極論だが、事故で病院へ行っても赤チンを塗るていどの補償はあるが、それ以上のことは任意保険に加入していないとどうにもならなくする。あるいは、補償額は仮に今のままでも、薬代や治療代がもっともっと高額にして、自賠責の補償額ではぜんぜん足りなくさせる。結局は、任意保険の加入を強いられることになるのだが、薬代や施術代が高額化すれば保険料も高額化する。事態はそんなふうに進むのかもしれない。

アメリカの現状

TPPと医療費や、オバマケアについての詳しい情報を提供しているサイトがある。現代日本の病理を斬る診療内科医・珠下なぎ先生のサイト

オバマケアについては、オバマが黒人初の大統領として期待され大統領に就任するときの、いわゆる目玉商品のひとつだった。これで、すべてのアメリカ国民は皆保険化されその恩恵に浴することができる。医療にかかれないという問題が解消されることが期待されていた。しかし、他方、オバマの就任前から、オバマのパトロンが薬品会社を含めた大企業や富裕層だったことから、期待どおりにいかないのではないかと危ぶまれていた。

アメリカの医療費がどれくらい高いのか。医療費が高いと言われるニューヨークのマンハッタンの例。

治療内容 医療費
急性虫垂炎(盲腸)手術後に腹膜炎を併発(入院8日) 7万ドル
(約791万円)
腕を骨折して手術(1日入院) 1.5万ドル
(約180万円)
貧血で治療(2日入院) 2万ドル
(約226万円)

※レート:1ドル=113円で計算
(参照元:外務省

ディストピアとしての未来

アメリカの医療費がどれほどバカ高いか実感できたでしょうか。日本には高額医療費制度(医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度)という医療費軽減制度もあるから、それもなくしたら、その格差がさらにすごいことになる。自己責任とはそういうことだ。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


事務所所在地・連絡先

ホームズ調査事務所:
石川県加賀市
電話番号:090-1314-0234

電話・メールをされる前に、「お問い合わせ」欄を読んでくださいね。

当事務所の立場

突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ

hitininnno
その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にする。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。よろしくです。

【当サイトご利用上の注意】

当サイト内の情報を利用したことにより何らかの損害が発生しても、一切責任を負いません。自己責任でお願いいたします。また、記事を書いた後に、法律が変わったりするなど、現状を反映していないことがあります。その後の改正等についてはフォローしていくつもりですが、ご注意ください。

著作権にかかわることですが、当サイトの記事をコピーされる方が後を絶たない。公開した記事なので、コピーしていただくのはまったくかまわない。ただし、判例文のコピーによる引用は別にして、それ以外の文章の引用については、引用元を示したうえで、どこからどこまで引用したかも明示してください。

おすすめ記事

アーカイブ

カテゴリー

ページ上部へ戻る