軽微事故で自賠責から治療費の支払いを拒否された事案

軽微事故を理由に自賠責が支払いを拒否していた

最近、軽微事故を理由にむち打ち症に関する治療費の支払いを自賠責から拒否されて困っているという相談があった。それも1件ではない。今回取り上げるケースは、被追突による軽微事故(後部バンパー損傷、損害額8万円。なお、加害車の損害額は不明)事案で、自賠責から支払いの一切を拒否されていた。メモでもしておかないとすぐに忘れてしまうため記録しておきたい。以下がその実例だが、プライバシーの関係もあるため、個人を特定されないよう枝葉末節部分はかなり作話している。

被害者は甲ご夫婦。いずれもむち打ち症だが、ご夫婦の通院日が事故日から始まって、A病院→整骨院→B病院の3つの機関を合計すると合計100日になる。ここでは、妻が100日で、夫が98日としておこう。治療の途中中断なし。通院交通費については、夫・妻それぞれの車が使用されたとして、2台分の請求をされていた。

この事案に対して、自賠責は以下の理由で、「自賠責の認定対象外」とした。

自賠責保険は、被保険者(加害者)の賠償責任を填補することを目的とする賠償責任保険です。したがって、自賠責保険の認定対象となるためには、損害として請求された内容(治療)と事故との間に、社会通念上相当といえる因果関係が存在することが必要であり、この点は請求者側が立証責任を負っています。具体的には、傷害の存在や、その傷害・治療が事故を原因とする一連のものであること等について、医学的所見や事故発生状況に関する資料等によって、客観的に証明されることが必要です。

この点、本件事故は、信号待ち中の被追突事故であり、調査結果によれば、双方車両の損傷は直ちに判然としない程度の軽微なものであり、このような事故態様や物的損害からは、本件事故によって、甲様の身体に医療機関での治療を要する程度の外力が加わったとは直ちに認められません。

また、上記事情に加え、A病院の診断書および医療照会回答書上、明らかな症状が認められなかったこと等も勘案すれば、本件事故によって甲様が受傷したものとは捉えられません。したがって、上記結論のとおり判断します。

軽微な事故とむち打ち症との因果関係

軽微事故とむち打ち症との因果関係については過去に記事にしたことがある。→「軽微な追突事故と頚椎捻挫との因果関係」。そこでは、事故解析共同研究会が行った実験結果を引用し、結論としてこう書いた。時速15キロ以下の低速度で追突した場合、むち打ちにならないといういわゆる閾値論(注)は、一蹴されるべきだとし、日本賠償科学会も、「少なくとも現在の工学的問題状況としては、低速度追突事案ではむち打ち症が発症しないという一般的法則性は否定されているといってよい」を追加的に引用した。誤解されている方がいるのでここで注意しておきたい。「閾値論」を理由に一律に事故との因果関係を否定することは許されないが、個別に検討したうえでなら許されることである。
 

(注)

追突によって3gの加速度が発生しなければどのような着座状態でも「むち打ち症」は生じない(小嶋亨等「賠償医学的鑑定から見た交通事故と傷害との因果関係」・「賠償医学7号」P11)とか、シヴァリーらの実験結果をもとに、時速16キロ未満での追突では受傷しないとする見解(松野正徳)とかの論。

自賠責調査事務所の非認定文を読み解いてみる

閾値論が否定されているため、軽微な事故だったという理由だけで「非認定」とするのはむずかしい。たとえば、破損部がサイドミラーとかのような場合に限られるように思われる。そのことを念頭に、自賠責調査事務所の非認定文を読み解いてみたい。

すなわち、本件については損害額8万円であったが、「双方車両の損傷は直ちに判然としない程度の軽微なものであ」ったことだけを理由にして支払いを拒否しているのではない。初院であるA病院の「診断書や主治医の医療照会回答書上、明らかな症状が認められなかったこと等も勘案」して支払いを拒否している。ここで問題になっている「軽微事故」とは何か。「明らかな症状」とはどの程度の症状を指すのかである。

自賠責保険会社担当者に聞いてみた

ネットを検索するとこういう情報があった。

>お支払い不能の通知という書類が届き、結果として支払ってもらえないこともあります。このような場合には、連絡先の損害保険会社に、まずは相談してみることがたいせつです。

ぼくの経験から言わせてもらうと、連絡先である自賠責保険会社の担当者に相談してみても、異議申し立てなどの手続については説明してもらえるものの、どうして「支払い不能」になったのか、その理由を知らないことがほとんどである。担当者は、「支払い可能か否か」だけに関心があって、その理由までは関心がない。多くの案件を抱えている担当者〈入社5年以内の女性が多い。今回も女性だった)にとって、担当している案件を処理するだけで手いっぱいのため、そんな暇がないのだ。現に、自賠責調査事務所にそのことを確認する自賠責保険会社の担当者はほとんどいないと、当の調査事務所担当者が言っていた。ま、それでも100にひとつはいいすぎにしても、20や30にひとつくらいの可能性ならあるかもしれないと、ぼくもためしに聞いてみた。しかし、やっぱりだめだった。「支払い不能通知」の内容をおうむ返しにするだけで、まったくの無駄・くたびれ損だった。
 
以下については調べがまだ不十分であるため〈以下、工事中〉です。

このところ多忙なため、調べている時間がなく、尻切れトンボの記事になってしまった。いずれ加筆するつもりです。なんか、こんな記事が多い。過去記事の中にも加筆したいものがいっぱいあるのですが、ほったらかしのまま。なかなかその時間がなくて、すみません。

それなら完成するまで公開しないというやり方もあるし、ふつうそうなのですが、当サイトの記事はすべて改定を予定しているため、完成品というものがそもそも存在しません。とにかく公開してしまえ。その後加筆して、検索順位をあげるほうがいいというアドバイスがあり、それに従いました。

改定するのを待っていられないという方がもしおられるなら、メールなり電話なりで質問されるか改定を促していただけるとありがたいです。

「軽微事故」とは

「明らかな症状」とは

軽微事故における自賠責の認定基準

当該事案の特殊性について

軽微事故に対する判例

 

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突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ

hitininnno
その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にする。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。よろしくです。

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