損保や事故当事者間での示談交渉時トラブルに関する判例

損保の対応や事故当事者間でのトラブルが原因の請求

評価損に関する判例を調べていたら、評価損そのものではないけれど、それに付帯して示談交渉にまつわる慰謝料請求をしているケースがあった。ほかにも、代車使用期間が延びた理由が、任意保険会社側にあったことから、慰謝料として構成するのではなくて、代車使用期間の伸延部分についても損害賠償の対象に評価した判例もあったような気がするが、いつの、どの判例だったのかまでは忘れてしまった(みつけしだい当記事に追記したい)。

このように、判例を読んでいて、損保の対応や事故当事者間でのトラブルが原因で、この種の請求がされていることがときどきある。そういうのをみつけても、これまではそのままにしていたが、今後は見つけ次第、こちらに集めてみたいと思った。

裁判例

札幌地裁 平成9年7月16日判決
まず、原告車の価値下落に関する慰謝料の主張については、右2のとおり評価損
の主張自体に理由がないから、採用することができない。

次に、被告の対応に関する慰謝料について検討する。原告は、要するに、被告が示談交渉を保険会社任せにして、直接応対せず、全面的な過失を認めないことが不法行為に当たるというのである。しかし、交通事故の示談交渉を保険会社に委任して、被害者との直接の交渉を拒否すること、また、交渉の過程において過失相殺を主張すること、いずれもそれ自体が不法行為に当たらないことは明らかであり、他に、被告の対応につき違法と評価すべき点は見当たらない。

 
右直事故の加害者が交渉を保険会社に一任し、直接交渉に応じなかった。さらに、全面的に過失を認めないのは不法行為にあたるとして被害者が慰謝料を請求した事案である。裁判所は、示談交渉を保険会社に任せ、被害者との交渉を拒絶することも、交渉で過失相殺を主張することも不法行為にあたらないとして、被害者からの慰謝料請求を認めなかった。

事故被害者は、保険会社や代理人ではなくて、直接加害者と交渉できるかどうかを問題にした記事を書いたことがある。そこでは、損保や弁護士を相手にするかしないかは事故被害者が決めればいいことであって、嫌だったら、加害者と直接交渉しても当然いいのだと書いた。こちら。ただし、嫌がる加害者を交渉のテーブルにつかせることまでは強制できないとも書いた。そのこととの関連で重要な判例である。それと、物損には慰謝料が認められないというのが基本なのだが(注:例外あり)、そのことも確認できる判決であった。
 

東京地裁 平成9年7月28日判決
追突された被害者が修理見積書に基づき賠償請求したところ、加害者が恐喝、詐欺行為として告訴した事案で、調査、話し合いをすることなく告訴に及んだ点に「過失が認められる」とし、警察が告訴を不受理としたが、調査を受けるなど苦痛を受けた慰謝料10万円が認められた事例。

 
根拠もないのに、逮捕させるぞと、警察に告発をほのめかす輩はどこにでもいる。この事案は、加害者が被害者に対して本当に告発してしまった事案である。そのことによる被害者の精神的苦痛に対して、70万円の慰謝料を請求し、10万円を裁判所は認めた。
 

名古屋地裁 平成9年7月9日判決
被告と2人1組で仕事する広告看板業の原告は、後輩の被告の車で仕事先に向う途中の未明の高速道路で、被告の居眠り運転の事故によって66日休業・通院の腰椎捻挫等を負って249万5、824円を求めて訴えを提起した。裁判所は、90万円請求する慰謝料につき、治療期間に比べ実通院日数が11日であること、原告と被告は2人1組で仕事する仲であり、後輩の被告の車で仕事場に向うことが多く、被告の寝不足、シートベルトが壊われていることを知っていたこと、「保険を使わせず嫌がらせの電話を架けるなどした」ことから、(90万円の慰謝料請求のうちの)10万円の慰謝料を認めた。

税金申告をしていない原告の収入認定で57日分の休業損害など総額122万円余の損害を認定したが、被告への「配慮を怠り漫然と助手席で居眠りしていた」原告の過失で5割の好意同乗減額を適用した。過失相殺後に損害の填補を控除し6万4、675円を認容したが、原告の態度等「訴訟を提起する必要があったとは認められない」と弁護士費用を否認した。

 
ほかにも、当記事とは趣旨がやや異なるが、轢き逃げや故意による事故招致のばあいに慰謝料請求を認めた判例があったように記憶する。みつけしだい、追記したい。

物損被害に対する慰謝料

物損被害については、基本的には慰謝料は認められない。ただし、例外がある。我妻栄「民法案内」では、親の形見のような相当に愛着のある物については慰謝料を容認していた。ほかには、自宅だとかペットだとか墓石だとか、精神的打撃が大きいことを条件に、例外的に認めている。
 

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当事務所の立場

突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ

hitininnno
その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にする。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。よろしくです。

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