路上落下物など障害物が起因する事故の判例と過失割合

地元で発生した1年前の路上落下物の死亡事故

石川県の北陸自動車道で普通乗用車など3台が絡む事故があり、生後2カ月の赤ちゃんが死亡しました。

28日午後1時15分ごろ、能美市の北陸自動車道下り線で、落下物をよけようと急ブレーキを踏んだ普通乗用車に後続のトラックが追突しました。普通乗用車はそのはずみで走行車線にはじかれ、さらに後続の軽乗用車に衝突されました。この事故で、普通乗用車に乗っていた石川県小松市の会社員・Aさん(21)の長男で生後2カ月のBちゃんが頭を強く打ち、死亡しました。Aさんと妻も軽傷を負いました。死亡したBちゃんはチャイルドシートを着用していたということです。

引用元:テレ朝 NEWS – 北陸道で車3台絡む事故 生後2カ月の男児死亡(実名だったが、仮名にした)

上記は事故直後のテレビの報道内容だが、つい最近、路上の落下物を落としたトラックの運転者の不起訴が決まったと地元紙で報じられていた。もう1年も前に起こった、地元の事故である。Aさん家族になんと声をかけていいのか、想像するだけでたまらなくなる。

路上落下物の典型事故

高速道路上の落下物の過失割合については、判例タイムズの「過失相殺率の認定基準」(以下、判タ本)に典型事故として載っていたはずだ。どこかのサイトが取り上げているに違いないが、基本のことなのでここでも上記本に触れておきたい。

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基本割合A(後続車)40:B(先行車)60
修正要素
視認不良
-10
追越車線-10
Aが自動二輪-10
Bの著しい過失・重過失-10~20
Aの速度違反+10~20
Aの著しい過失・重過失+10~20
ここでは、主として、高速道路の本線車道を走行していた自動車が同車線上に落下していた物によって事故に至った場合を想定している。

 

ここでは、落下物について、比較的近距離になってはじめてその危険性を認識できるものであって、接触によりハンドルやブレーキ操作に影響を与え得るもの(物理的に一定の大きさのあるものや滑りやすいもの等)であること、後続車について軽度の前方不注視があることを前提としている。

(以上、P488)

「高速道路本線上の事故であること」「落下物について、比較的近距離になってはじめてその危険性を認識できるもの」であることが判タ本の適用の前提になっていることに注意したい。すなわち、一般路上で発生した事故や、たとえば落下物が放置されたままになっていて、視認可能な場合はそのまま適用できないということになる。後者の場合だと道路管理者の責任問題にもなりうる。いずれにしろ、個別に判例を調べる必要があるだろう。

路上落下物・障害物に関する判例

①大阪地裁 昭和45年11月5日判決
工事用に使用した電線を路面にはわせたまま放置しておいたため、自動車がそれをひっかけて走り、歩行者の足をすくって傷害を負わせた事故につき、工事請負人に土地の工作物の瑕疵に基づく民法717条の責任を認め、あわせて工事注文者にも民法716条但し書きの責任を認めた事例。

 

②富山地裁 昭和46年3月10日判決
水道管の修理のため道路に穴(縦横0.6m、深さ0.8m)を掘り、標識またはバリケードを立てないで、その中で作業していた者を自動車が気づかずに通過して死亡させた昼間の事故につき、自動車の運転者に過失がないとした事案。

 

③和歌山地裁 昭和47年7月26日判決
交通の激しい国道において、対向車を避けるために、ハンドルを左に切り路肩部分にを進行しようとしたところ、自動車の屋根が道路に突き出ていた松の木の幹に衝突したため起きた事故。国道の管理上の瑕疵があるとして、国に損害賠償責任を認め、松の木の所有者兼占有者である町にも工作物責任を認めた事例。高さ制限内にある車両が通行するかぎり道路の上空の安全は十分確保されており、もし一時的に安全性に欠けるところがあるとすれば適切な表示がされるものと信ずべき状況にあったとして、自動車運転者を無過失とした事例。

 

④和歌山地裁 昭和48年4月12日判決
自動二輪車に乗車し、県道を通行中、上り勾配の左折カーブを曲がろうとしたところ、山肌の壁面より落下し散乱していた石塊に乗り上げ、ハンドル操作の自由を失い、川へ転落した事故。山肌へのコンクリート吹きつけ工事やガードレールの設置を怠った県に、道路管理上の瑕疵による責任を認めた事例。当該事故につき、落石に気づくのが遅れた上、ハンドル操作の自由も失った後もこれを立て直すのに手間取り、かつ前方注視に欠けるところがあったため道路外に逸脱した被害者に80%の過失相殺を認めた事例。

 

⑤名古屋地裁 昭和52年2月23日判決
ビールかすを路上に散乱させたため、原付がスリップし、運転者が死亡した事故。ビールかすを回収せず放置して立ち去ったダンプカーの運転者に、同所通行の車両に対し適宜適切な安全措置をとる注意義務を怠ったとして、その過失を認めた。ただし、車道幅員37m、原付の進行路の幅員だけでも17mもある道路(車道通行帯はない)で、左側の安全通行できる余地6mの間隔がありながら、路上に散乱したビールかすに自車を乗り入れスリップ転倒し、死亡した被害者に、左側通行ならびに前方注意の義務を怠ったとして30%の過失相殺を認めた事例。なお、道路瑕疵については否定。

 

⑥広島地裁 昭和55年12月26日判決
道路に張り出している庭木にレッカー車がブームをひっかけて枝を破損した事故につき、庭木が道路上に伸び出しているときはこれを障害物と同視することができ、障害物が存在するときは右側に寄って通行することが道交法上も適法であり、本件も右側に寄って通行していれば庭木との接触を回避でき、運転者は庭木との接触を回避する注意義務があったところ、それを怠ったとして、民法709条の責任を負うとした事例。

 

⑦仙台高裁 昭和60年4月24日判決
大型貨物自動車の運転者が荷台を上げたままの状態で発進、進行したため、電話線に荷台を接触させ電柱を折損し、電柱が路上に向け傾かせた事故の1時間後、同所を自動二輪車に乗って走行してきた被害者が電柱に衝突して死亡した。交通に支障が生じているとの通報を受けた電報電話局職員が現場の最寄りの警察署に対して、通報の内容を告げて、現場付近の交通整理等の事故防止のための配備を要請すれば、自動二輪車の電柱衝突事故は防止できた可能性が高いのに、警察に対してその要請をしなかったのであるから、電柱の保存に瑕疵があるとして、民法717条の工作物責任を認めた事例。工作物責任とトラックの不法行為上の責任を共同不法行為として、両者の関係で、単車側の過失を20%とした。

 

⑧東京地裁 平成3年2月15日判決
高速道路上でA運転の大型トラックのタイヤがバーストし、タイヤ上皮のトレッド部分が離脱して追越車線上に落下したまま放置されていたところ、自動二輪車が前方約34.8m手前で破損タイヤに気づいたが回避できず破損タイヤに接触し転倒した事故。Aが破損タイヤを放置したことと事故との間に相当因果関係を認めた。しかし、被害者にもタイヤの存在に気づくのが遅れ、制限速度時速80キロを10~20キロオーバーしていたことから20%の過失を認定した。

 

静岡地裁 平成4年8月4日判決
高速道路の追越車線上に先行車が落としたルーフキャリーとグラスファイバー製ボートを回避しきれず、これに衝突して追越車線上に横向きに停止したA車に後続のB車が衝突した事故。B車運転者にも路上の散乱物に気をとられ、前方不注視のまま十分な減速をせず、時速90~95キロの高速で進行した過失があり、A車運転者の過失は50%を超えることはないとし、先行車とB車の過失割合を70対30とした。

 

⑨岡山地裁 平成4年12月16日判決
夜間、高速道路上で、大型貨物車から鉄製コンテナーが落下し、走行車線から追越車線に転がり、被害車がこれと衝突した事故。被害車には速度違反と前方不注視の過誤があるが、追越車線を走行中であったことを考慮し、10%の過失相殺を認めた事例。

 

東京地裁 平成5年4月22日判決
加害車両の前方左側を通行していた被害車(自転車)が、工事用バリケードに接触して加害車の進路前方に倒れこんで加害車に接触した事故。加害車運転者には前方不注視のほか、加害車を左側に寄せすぎ、適宜減速停止の措置をとらなかった過失があるが、被害者にも、車道側に進入するに際し、後方の確認が十分でなく、加害車前方に倒れこんだ過失があるとして、40%の過失相殺を認めた事例。

 

⑩大阪地裁 平成11年7月14日判決
高速道路において、被告車Aから荷物が落下したため、停止した後続の被告車Bに原告車Cが追突した事故。AとCの過失割合を4対6とした事例。

 

名古屋地裁 平成12年1月19日判決
信号のない見通しの悪いT字路交差点において、夜間、通行無許可でさらに誘導措置をとることもなく脇道から国道に左折進入しようと大型特殊自動車のブーム先端部分が1.06mはみ出して停止中に、右方から直進の大型貨物自動車が衝突した事故。大型貨物自動車運転者に過失を認めなかった事例。

 

⑪福岡高裁 平成14年7月18日判決
福岡高裁 平成14年7月18日判決
夜間、3台の車両が走行中、先頭の大型トラックが積み荷の荷崩れを起こし、積み荷を落下。それに気づいた後続の乗用車が急停止、3台目の大型貨物車が乗用車に追突した事故で、追突した大型貨物車に70%、積み荷を落下させた大型トラックに30%の過失を認定した事案。

(判例については順次更新予定)
 

道路管理者に対する責任追及

「寄与度と非典型過失相殺―判例分析」の中の、「道路の瑕疵による交通事故と過失相殺」論文より、


以下、工事中
 

本件地元事故に対する雑感

 

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当事務所の立場

突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ

hitininnno
その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にする。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。よろしくです。

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