停止待機中だと主張した場合の判例と過失割合

停止待機中の車にぶつかったとき

前回の相談者の話のつづきなのだけれど、この件にかぎらず、停止待機中の車に相手車がぶつかってきたということで、停止車側が自分のほうは過失ゼロ主張するのに対し、相手側は停止中でなかった、動いていたと主張したり、仮に停止中だったとしてもいわゆる直前停止だった、あるいは完璧な停止中だったといえども回避余地があったはずだなどと主張して紛争になることがすごく多い。

停止中だったからと言って必ず過失ゼロになるわけではない

動いていたか停止していたか。停止していたとし、3秒だとか中には10秒内だったからそれは「直前停止」にあたるとして、停止であることを認めない見解もある。いったい、衝突前に何秒の停止だったら、それは停止とはいえなくなるのか。そもそも、3秒とか10秒とかで一刀両断に決められるものなのか。完璧に停止した車両への衝突事故についても、停止位置がまずかったり、回避余地があったとしてゼロ主張を認めないケースもある。

調査員を悩ませる事故のひとつである

ぼくもこの種の事故調査をたくさんやって、これらのことで頭を悩ませた。当記事では、このような場合、判例はどう判断しているのか。いろんなケースがあるだろうけれど、解決に資すると思われた判例をいくつかご紹介してみることで、現に紛争中の事故の解決に少しでも役立てられたらと考え、記事にした。

判例紹介

岡山地裁倉敷支部 昭和46年6月10日判決
方向転換のため途中停車中の後続車に衝突した事故につき、後続車も停車中とはいえ、前方車両の動静に注視すべき注意義務を怠ったとして、10%の過失相殺を認めた。フェリー乗り場で自動車が順々に列を作って停車している場所にて、後方の確認不十分なまま方向転換させようとして警告音を鳴らしバックランプを点滅させながら左右のバックミラーで確認した上で運転席窓から顔を出してバックした被告大型トラックに対して、死角にはいっていた5メートル後方の原告車にぶつかったもの。

 
【感想】被告の後方確認不足が事故原因の大半だけれど、原告も5メートルもあったのだから、クラクションを鳴らすなりの行動がとれったってことなのかなあ。回避余地がまったくなかったとは言えないということで、停車中といえども原告のゼロ主張を認めなかった。
 

津地裁四日市支部 昭和49年9月18日判決
片側2車線の中央分離帯に乗り上げた貨物自動車を救出するため、第2車線に停車していた貨物自動車に被害車が追突した事故。救出作業中だったとはいえ、後続車に対する注意と誘導措置についてまったく過失がなかったとはいえない(誘導位置不適切)として、酩酊状態の被害車運転者に90%の過失相殺、運転者とともに飲酒していた同乗者についても、30%の過失相殺を認めた事例。

 

千葉地裁 昭和53年10月23日判決
センターラインのない道路の中央付近に停車していたブロドーザーに原告車が衝突した事故。前方注視義務を著しく欠いていた原告に90%の過失相殺を認めた事例。

認定事実によれば、本件事故当時は夜間で小雨が降っていたとはいえ、事故現場は見通しのきく平坦・直線区間であることから判断して、原告において通常の注意義務をもって前方を注視してさえいれば、相当の距離をおいた手前から被告車の存在に気づくはずであった。しかし、路上にいた訴外Aの停止を求める合図にも気づかず、衝突寸前まで気づくことがなかった。

 

東京地裁 昭和55年7月25日判決
路外から車道に右折しようとしたA車に右方からの直進してきたB車が衝突した事例。Aは、右折進入する際に、B車を認めながら通過するのを待ちきれず右折を開始したが、ぶつかると判断して、途中で相手車線上で停止したものの衝突した。不適切な車道進入をしたAに、30%の過失相殺を認めた。

 
エェ、30%?? 判決文が長くて、こっちの根気もなくなった。あとまわしにして・・・
 

京都地裁 昭和56年7月27日判決
西側道路外のガレージから道路に進入、反対車線に進入すべく中央線付近に至った加害車(普通貨物車)に、北進中の被害車(自動二輪)が衝突した事故。制限速度を20キロ超過し、前方不注視等の過失があった被害者に60%の過失相殺を認めた事例。

 

仙台高裁 昭和56年10月12日判決
夜間、暗いT字路交差点において右折のため一時停止中のトラクターと対向直進の自動二輪車とが衝突した事故。トラクターを中央線から約1m35cmほど対向車線【幅員約3m)内にはみ出して一時停止させていた運転者は無過失とはいえないとして、自賠法3条による免責を認めなかったが、制限速度を約5キロ超過した速度で中央線寄りを走行し、加害車の発見が遅れたため避譲措置など回避措置をとらなかった被害者に50%の過失相殺を認めた事例。

 

大阪地裁 昭和58年10月28日判決
左方に駐停車中の車両との衝突を避けるため、中央分離線を約30センチ対向車線上へはみ出して進行し、信号待ちのため、交差点手前で先行車につづいて右後部を中央分離線よりやや対向車線上へはみ出し、左斜めとなった状態で停止したA車の右後部に、交差点を左折して左方に駐停車中の車両との衝突を避けるべく、中央分離線寄りを走行中のB車の右前部が衝突した事故。A車運転者に運転操作ミス、対向車進路妨害による25%の過失を認め、B車側に、ハンドル操作を誤るなどの安全運転義務違反により75%の過失相殺をした。

 

大阪地裁 昭和63年5月31日判決
Aが所有し、これを車検のためB会社に預け、その従業員であるCに試乗させていた甲車(普通貨物車)が路外から通行車両で混雑していた道路に進入、左折しようとして道路外側線手前まで進入した後、道路に進入、同所に約12秒間停止していたところ、直進してきた乙車(原付)が衝突した事故。Aは甲車を自己のために運行の用に供していたものというべきであるから、自賠法3条に基づく責任ありとしたが、前方注視等を怠った乙車運転者に70%の過失相殺を認めた事例。

 
順次、判例を追加するつもり。
 

【16・11・03追記】
表題を「停止待機中にぶつけられたと主張する車の判例」から上記にあらためた。
 
【16・11・09追記】
判例を5つ追加した。
 

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ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ

hitininnno
その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にする。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。よろしくです。

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