泌尿器の後遺障害認定

昔、シークレットサービスだったとかいう大ホラ吹きのAさん

交通事故被害者の方で、道路交通誘導員を職業とされているAさんがいた。夏は暑くて顔は真っ黒になるし、冬は冬で寒いのをがまんしなければならない。たいへんな、頭の下がる仕事だと思う。そのAさんが夜間の道路舗装工事中に、片側車線が工事のためふさがれたため、そこを一方通行にし、対向車両同士をうまくさばいていた。作業車両の間でAさんがさばいていたところ、加害車がその作業車両の1台にぶつかり、その衝撃で作業車両の間にいたAさんは、作業車両同士に挟まれて大怪我を負った。両大腿骨骨折と骨盤骨折である。このAさんとは、事故から後遺障害の認定、そして示談までお付き合いした。

Aさんは、人はすごくいいのだけれど、大ホラ吹きのところがあって、自分はもともとはシークレットサービスをやっていて、要人警護を任務としていた。柔道何段、合気道何段・・・なんて話を大まじめにやらかす。そうか、人は見かけによらずすごいんだなあと、私もそこは調子を合わせていた。見栄っ張りなのだ。

実は、結婚詐欺にあっていた

退院後はコガネができたので、スナックに通いつめ、そこの若い女にいれこんだ。その女が好きになって、結婚話にまで進んだと本人はうれしそうに話す。1千万をはるかに超える損害賠償金の全部を銀行に預け、見栄っ張りのAさんは、彼女の前で太っ腹のところを見せたかったらしく、生活費はそこから自由におろしていいからということで、キャッシュカードをその女に渡し、暗証番号も教えた。それからしばらくして、女との連絡がとれなくなった。それで、私に相談に来たのだ。

銀行にどれくらい残っているんだ。
ほとんど空っぽだった。

結婚するとかいう話だったが、あれはやったのか。
いや、それが・・・まだ何もやっていない。

キスくらいはやったんだろうなあ。
いや、それも・・・

バカだよ、あんたは、あきれるくらいの大バカ者だ。

尿道障害の位置付け

話がずれすぎたので元に戻そう。

このAさんはこれほどの重傷だったので、後遺障害については、足の短縮と、股関節の可動域制限ほかいろいろありそうだった。今回話題にするのはその中のひとつ、尿道断裂による後遺障害である。骨盤骨折時の合併損傷として知られている。

ところで、尿道断裂による後遺障害は、泌尿器の障害に属する。泌尿器の障害は、①腎臓の障害と、②尿管、膀胱、尿道の障害に下位分類されている。そのうちの②の尿道の障害にあたる。 


【出典:福岡県泌尿器科医会HP

泌尿器障害の後遺障害等級

腎臓とGFR値

腎臓の障害
腎臓を失っていないもの一側の腎臓を失ったもの
7級GFRが30ml/分を超え50ml/分以下
9級GFRが30ml/分を超え50ml/分以下GFRが50ml/分を超え70ml/分以下
11級GFRが50ml/分を超え70ml/分以下GFRが70ml/分を超え90ml/分以下
13級GFRが70ml/分を超え90ml/分以下
上記のいずれにも該当しないもの
GFRが90ml/分を超えるもの
 
腎臓の役割として最も重要なのは体内を流れる血液を糸球体で濾過してきれいにするとともに、血液から取り除いた老廃物を尿として体外に排出することである。そして、GFRとは糸球体濾過量の略で、フィルターの役目を果たす糸球体が1分間にどれくらいの血液を濾過し、尿をつくれるかを示す。つまり、GFRは腎臓機能が正常かどうかの判定に使われる。100mL/分前後で、腎症が進行するとともに、また加齢や外傷による臓器損傷によってもGFR値は低下する。

尿管とは

尿管は腎臓と膀胱をつないでいる長い管で、左右に原則1本ずつある。尿管外傷というのを扱った記憶がないのでネットで調べてみた。家庭版MSDマニュアルによると、外傷例は銃による外傷以外はほとんどないらしい。尿管外傷になると、

尿管外傷を治療しないと、瘻(ろう:他の腹部器官などへ通じる異常な通路)の形成、尿管の狭窄、尿の持続的な漏出や感染などの合併症が起こることがあります。

尿道の障害

尿路変向術を行ったもの
非尿禁制型尿路変向術尿禁制型尿路変向術 外尿道口形成術尿道カテーテル留置
5級尿が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、パッド等の装着ができないもの
7級上記に該当しないもの 禁制型尿リザボアの術式を行ったもの
9級尿禁制型尿路変向術(禁制型尿リザボア及び外尿道口形成術を除く)を行ったもの
11級
 
排尿障害
9級残尿が100ml以上
11級残尿が50ml以上100ml未満
尿道狭窄のため、糸状ブジーを必要とするもの
14級 尿道狭窄のため、「シャリエ式」尿道ブジー20番が辛うじて通り、ときどき拡張術を行う必要があるもの(ただし、「準用」ないしは「相当」等級。
 
蓄尿障害
7級持続性尿失禁を残すもの
切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため、終日パッド等を装着し、かつ、パッドをしばしば交換しなければならないもの
9級切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため、常時パッド等を装着しなければならないが、パッドの交換までは要しないもの
11級 切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため、常時パッド等の装着は要しないが、下着が少し濡れるもの
頻尿(器質的病変、支配神経の損傷が必要。日中8回以上の排尿が認められ、多飲等の他の原因が認められないことが必要)
 
それに対して、膀胱、尿道の障害で、医師面談をしたことが何度もあった。とりわけ多いのは、先も説明した骨盤骨折に合併する場合と、脊髄損傷に合併する場合である。脊髄損傷に合併する場合について、専門書の記載から引用する。

脊髄損傷は運動障害、知覚障害に加え、排尿・排便障害、性機能障害を合併する。特に、神経因性膀胱による排尿障害は、蓄尿障害によるQOLの低下のみならず、排尿筋括約筋協調不全に起因する高圧排尿、高圧蓄尿および尿路感染などによる腎機能低下の誘因になり、患者の生命予後をも左右する。(P62)

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(つづく)

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