眼の後遺障害

左右の視力差がひどいと困ることがある

ぼくの右眼はかなり遠くまで見えるのに近くのものはぼけて見える。左眼はその逆で、遠方はぼけて見えるが、近くはハッキリ見える。両方の眼を開けているときはこのことに気づかないのだけれど、新聞や本を読んでいるときにこのことに気づく。最初は両眼で見ているのだが、しばらくすると片眼をつぶって左眼だけで見ているからだ。30分以上も本を見ていると、右眼はもともと活字を拾いづらくなっているため疲れやすくそのうち閉じてしまうのだろう。しかし、片眼だけで細かい活字を拾うのは相当に疲れる。読書が長続きしなくなった。

何でこんな話をしたのかというと、身体障害者に認定されるためには、片眼がまったく見えなくても、もう1つの眼が1.2以上あれば、両眼の平均が0.6以上になるから身体障害者に認定されないと聞いたからである。なんとも杓子定規で、機械的な、つまりいいかげんな判定である。ぼくでさえこんなに苦労しているのに、片眼がまったく見えなければその苦労はぼくなどの比ではないだろう。

ところで、本当に片眼になってしまったらどれくらい不便なのか。「片眼失明者友の会」によると、

1、現行の視覚障害者の認定条件では「1眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもので、両眼の視力の和が0.2を超えるもの」(6級)と規定されており、たとえ片眼を失明していても、他眼に0.6を超える視力があれば障碍者として認定されません。しかし、誰がどう考えても、片眼の失明は無条件に障碍であることは疑いない明白なことではないでしょうか?

2、このような不合理な認定条件を肯定することは、片眼を失明していても他眼がよく見えれば日常生活に困難はない、という誤った認識をもつ以外に出来ないことでしょう。

3、かりに眼帯をしてみればよくわかるだろうと思うのです。それが日常せいかつにおいてどれほど困難で辛い事か。たぶん半日も我慢できず眼帯を外してホッとするに違いないでしょう。しかし、片眼失明者にはそんな簡単棚純な話では済みません。もはやあホッとする事は生涯有り得ず、生涯その困難と向き合って生きていかなくてはならないのです。とても生易しい事ではありません。

眼の後遺障害

眼の構造

眼の障害は2つに大別される

交通事故で眼に障害を負ったばあい、どのように評価されているのだろうか。後遺障害の分類上、眼の障害はまず2つに分類される。ひとつが眼球そのものの障害、もうひとつがまぶたの障害である。

■眼球の障害
■まぶたの障害

 

傷病名もいろいろある

眼の障害というのは、視力だけとか視野だけとかというような単独で発生するというよりも、いくつもの障害が併合している場合のほうが多かった。そして、医師の書く診断書の傷病名もいろいろある。以下に分類してみよう。

加害物特性傷病名
鋭器外傷
(鋭利物による、組織の挫滅・離断・穿孔)
角膜・強膜・毛様体・虹彩・水晶体・硝子体の損傷
外傷性白内障
網膜剥離
鈍器外傷
(鈍的外力は眼球壁を伝わり、眼球の体側で再び集合してその部分に強い変化を生じさせる)
網膜震盪
眼球破裂
前房出血
虹彩離断
外傷性白内障脈略膜破裂
網膜裂孔
吹き抜け骨折
眼瞼裂傷
角膜裂傷
虹彩脱出
眼内出血
強膜破裂
水晶体脱臼
視神経管内規神経損傷

他にも、眼球打撲とか、眼窩底骨折、視神経管骨折とか、外傷性黄斑変性、外傷性散瞳とか、神経麻痺として動眼神経麻痺、外転神経麻痺、滑車神経麻痺などもあるだろう。

以上のような診断名がある場合、受傷の部位・程度のほか、画像の所見、各種検査所見に基づいて、後遺障害等級が認定される。

ただし、注意が必要なことがある。白内障とか緑内障とかの眼外傷に続発して発症する疾患もあるし、先にあげた例の中に眼内出血や網膜剥離など、外傷以外の理由で発症するものもあるため、事故との因果関係が問われるものがあることだ。そのときは、①続発といえる医学的理由が存在するのかどうか、②受傷時に頭部や眼部に直接外力を受けた事実があるのかどうか、③外傷の痕跡があるのかどうかなどが問われることだ。

眼球の障害

発生原因

眼球の障害はどのようにして発生するのだろうか。ひとつは、眼球そのものを負傷した場合だ。ぼくの扱ったものの中に、野球部所属の高校生が打球を眼に直撃し、治療のために全国の有名医を転々としていた例があった。もうひとつが、頭部外傷に起因する視神経損傷によるものだ。最後のひとつが、むち打ち症(頚椎捻挫)によって現れるばあいがあることだ。頚部の捻挫による損傷を原因として頚部交感神経に異常をきたし、その結果として眼の調整機能に異常が起きると考えられている。この場合は、眼の後遺障害として評価されず、むち打ち症の後遺障害の一症状として評価されるにとどまるのが現状である。

以上3つの発生経路を示したが、事故との因果関係という視点で考えていくと、眼球そのものへの打撃がもっとも因果関係がはっきりしているが、頭部外傷、むち打ち症といくにしたがって、因果の関係がわかりづらくなる。とりわけ、首をひねった結果、不随意性の眼球運動=眼振が発生するとともに、眼の視力が極度に落ちたという相談を最近受けたばかりなのだが、自賠責の後遺障害認定は非該当だった。なんとかならないかというのが相談内容だった。外傷に起因する他覚的所見により、後遺障害の存在を証明できることが等級認定の条件なこと、むち打ち症由来の視力障害は一過性のもの、いずれ治るものと考えているため、非該当になったようである。

眼球障害の各種障害

眼球の障害は6つに下位分類されている。

■視力障害
■視野障害
■調節機能障害
■運動障害
■外傷性散瞳
■流涙

*比較暗点を、14級の「局部に神経症状を残すもの」として分類評価する見解も存する。(「新型・非典型後遺障害の評価」より)

 

眼の検査方法

視力検査については、5mでの遠方視力と0.3mでの近方視力を計測する。視力が悪ければ屈折検査によって屈折異常(近視・遠視・乱視)によることが原因なのかの確認が必要になる。さらに、明室での眼の状態(眼瞼・涙器・眼位・眼球運動・結膜)を確認する。加えて、暗室での角膜・前房・虹彩・瞳孔・水晶体の状態を確認する。必要があれば、細隙灯顕微鏡で、まぶた、角膜、結膜、虹彩、水晶体などの傷の有無を確認する。自動視野計で視野(周辺視野・中心視野)を測定する。検査各種の詳細については【参考図書】にあたってほしい

視力障害

視力障害
等級障害のていど
1(1)両眼が失明したもの
2(1)1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの(2)両眼の視力が0.02以下になったもの
3(1)1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
4(1)両眼の視力が0.06以下になったもの
5(1)1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
6(1)両眼の視力が0.1以下になったもの
7(1)1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
8(1)1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの
9 (1)両眼の視力が0.6以下になったもの(2)1眼の視力が0.06以下になったもの
10 (1)1眼の視力が0.1以下になったもの
13(1)1眼の矯正視力が0.6以下になったとき

 

視力の測定

視力の測定は、原則として万国式試視力表を使用し、眼鏡により矯正した視力について行う。ただし、矯正が不可能な場合は裸眼視力による。

認定上の留意点

①.角膜の不正乱視が認められず、かつ、眼鏡による完全矯正を行っても不等像視を生じない者については眼鏡により矯正した視力を測定して認定を行う。

 

角膜の不正乱視

通常の乱視はメガネで矯正できるが、角膜表面が不整な形状を呈しているためメガネで矯正できない乱視のこと。

 

不等像視

左右両目の屈折状態等が異なるため、左目と右目の網膜に映ずる像の大きさ、形が異なるものをいう。この場合、両眼の視線が目標に正しく集中していても、両眼の映像を正しく合わせること(融像)が困難となり、両眼視できなくなって物が二重に見えたり立体視できなくなる。不等像視の検査は「コの字視標」というものを使う。

「2D以上の左右差があるとメガネでの完全矯正は難しい」と医学書では解説されている。

 

②.①以外のにつ者については、コンタクトレンズの装用が医学的に可能であり、かつ、コンタクトレンズによる矯正を行うことにより良好な視界が得られる場合には、コンタクトレンズにより矯正した視力を測定して障害等級を認定する。

 

③.眼鏡による完全矯正を行えば不等像視を生ずる場合であって、コンタクトレンズの装用が不能な場合には、眼鏡矯正の程度を調整して不等像視の出現を回避し得る視力により障害等級を認定する。

 

④.コンタクトレンズ装用の可否および視力の測定は、コンタクトレンズを医師の管理下で3か月間試行的に装用し、その後に行う。なお、コンタクトレンズの装用が認められるのは、1日に8時間以上の連続装用が可能な場合とする。

 

視力障害の認定

視力障害は、失明から矯正視力0.6までを後遺障害と認めている。矯正視力が0.6を上回るものは認定の対象にしない扱いである。なお、失明とは、眼球を失ったもの、明暗を区別できないもの、ようやく明暗を弁ずることができる程度のものをいい、光覚弁(明暗弁)または手動弁が含まれる。

光覚弁とは

暗室にて被検者の眼前で照明を点滅させ、明暗が弁別できる視力をいう。

 

手動弁とは

検者の手掌を被検者の眼前で上下左右に動かし、動きの方向を弁別できる能力をいう。

 

指数弁とは

検者の指の数を答えさせ、それを正答できる最長距離により視力を表すもので、「1m/指数弁」、「50cm/指数弁」「30cm/指数弁」等と表記する。このうち、「1m/指数弁」は視力0.02に、「50cm/指数弁」は視力0.01にそれぞれ相当するものとされるが、それより短い距離については換算は困難とされる。

 

両眼に障害が生じた場合

等級表で格付けする。したがって、1眼ごとの等級を定め、併合繰上げの方法を用いて相当等級を定める取扱はしない。ただし、両眼の該当する等級よりもいずれか1眼の該当する等級が上位である場合は、その1眼のみに障害が存するものとみなして等級認定する。

眼球の障害が2つ以上ある場合

眼球に系列を異にする2つ以上の後遺障害が残存した場合、認定実務上、これらは同一系列として扱い、併合の方法を用いて、相当等級を定めることになる。ただし、後遺障害の序列上1眼については8級(失明)を超えて、7級相当に扱うことはできない。また、両眼の場合にも視力が保たれているかぎり、併合の方法を用いて1級相当と扱うことはできない。

視野障害

視野の測定はゴールドマン型視野計を使用する。「v/4」指標による8方向の視野角度の合計が正常視野角度の合計の60%以下になった場合を「半盲症」「視野狭窄」「視野変状」という。60%以下にならないものは後遺障害に認定しない。

また、暗点は絶対暗点を採用し、比較暗点を採用しない。
 
【日本人の視野の平均値】

日本人の視野の平均値
方向視野:v/4
60(55~65)
上外75(70~80)
95(90~100)
外下80(75~85)
70(65~75)
下内60(50~70)
60(50~70)
内上60(50~70)

視野(視能率)の求め方→視野障害認定の手引
 
ちなみに、正常の視野は以下の図のようになる。イビツな形だけれど、視野の平均値と見比べれば正しいことがわかる。これで正常なのだ。もっと詳しい図が見たい人は、こちら

 
どうしてくどく説明したのかというと、ネット情報は間違いが多いからである。この図は正常な視野を表わしたものなのに、「右側半盲」だと解説している人がいるからである。後遺障害認定の際の内部資料に基づいて書かれたもので、ぼくも同じ資料を見ながらこの記事を書いているのだが、たしかに原本の図もわかりづらいがいちおうの色分けはされているし、正常図も載っているのだから、間違えることはない。文章で説明してもわかりづらいから、その原本図を示した。
 

 
正常図と重ねたものであることを黒と白と灰色で示している。しかし、ネット情報ではその説明がなく、白と灰色を区別しておらず、がほとんどなく見わけがつかない。これで正常図をみて、「半盲」だと判断してしまうだろう。先に紹介した「日本人の視野の平均値」についても、「視野障害認定の手引」を読めば間違いようがないのに、おかしな図を描いているサイトも存在した。ネットなんか信用したら、獲得できる後遺障害も獲得できなくなる。

上図は正常な視野のものと重ねたものだが、その部分を取り除くと、以下のようになる。こちらが実際の「右側半盲」図である。反転すれば「左側半盲」図になる。
 

 

眼の後遺障害認定の際に出てくる用語

【半盲】

注視点を境界として,片眼または両眼の視野の左半部あるいは右半部が欠損するものをいう。半盲には,両眼視野の同側が欠損する同名半盲と,反対側が欠損する異名半盲とがある。前者は右側半盲と左側半盲に分けられ,後者は両耳側半盲と両鼻側半盲に分けられる。脳腫瘍,頭蓋外傷などによる視神経路や,視中枢の障害などが原因となる。

 

【視野狭窄】

視野周辺の狭窄のことであって、これには同心性狭窄と不規則狭窄とがある。高度の同心狭窄は、たとえ視力が良好であっても著しく視機能を妨げ、周囲の状況をうかがい知ることができないため、歩行その他諸動作が困難になる。また、不規則狭窄には、上方に起こるものや内方に起こるもの等がある。

 

【視野欠損】

視野変状のひとつ。視野の不規則な欠損、たとえば扇状に視野が欠損したようなものをいう。

 

【暗点】

生理的視野欠損(盲点)以外の病的欠損を生じたものをいう。中心性、液性脈略網膜炎、網膜の出血、脈略網膜炎等にみられる。

比較暗点とは、v/4指標では検出できないが、より暗いまたはより小さな指標では、掲出される暗点をいう。

また、網膜に感受不受部があれば、それに相当して、視野上に欠損を生じるが、生理的に存する視野欠損の主なものはマリオネット盲班(盲点)であり、病的な視野欠損は、網膜の出血、網膜動脈の閉塞等にみられる。

 
(つづく)
【参考図書】


 

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電話番号:090-1314-0234

当事務所の立場

突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ

hitininnno
その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にする。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。よろしくです。

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