後遺障害2000件担当の保険調査員による痛み・しびれの後遺障害認定まで

後遺障害案件2000というのは、かなり誇っていい数字だと自負しております。その経験にもとづいた「痛みとしびれの後遺障害認定まで」の解説です。他の後遺障害を得意と称する専門家の書いた同種のものと比較してくださるとありがたいです。

肩の打撲(骨折なし)による痛みの後遺障害相談

半年前に交通事故にあいました、こちらは自転車で相手は車です。最近になって相手保険会社からそろそろ治療の終了ではと言われております。

下肢打撲等の痛みは完全に治ってるのですが、肩の打撲(骨折なし)による痛みがまったく改善せず、現在も左腕が肩のラインより上に上がらないような状態です。上げようとすると激痛が走るためです。ただし、そこから手のひらを返して上に向けて上げると180度の4分の3位までは上げることができます。

後遺障害に該当するでしょうか。該当するとして、何級になるのでしょうか。

肩関節の運動機能障害

文面を読んだかぎりでの回答ということになりますが、肩関節の可動域制限による後遺障害ということでしたら、仮に可動域が2分の1以下あるいは4分の3以下だったとしても残念ながら後遺障害に該当しません。理由は、可動域制限の理由が疼痛によるものだからです。

後遺障害に該当するためには、可動域制限の理由が疼痛ではなく、器質的損傷である必要があります。器質的損傷というのは、「ある障害や病変の原因などについて、身体の器官のどこかに物質的、物理的に特定できる状態にある損傷」ということです。そして、それが他覚的にわかることです。

この「他覚的にわかる」というのは、医者と自賠責調査事務所では捉え方が違っています。すなわち、自賠責では被検者の恣意が入る余地がなく操作不可能なもの、客観的に立証可能という性質のものだとして、制限的にとらえており、それでないと後遺障害に該当しないと判断しています(注1)。

たとえば骨折や脱臼、あるいは関節部分の骨折後の癒合不良、関節周辺組織の変性による関節拘縮、神経損傷などが生じており、かつそれが画像等でわかることです。

今回は骨折はなく、可動域制限の理由が疼痛によるとのことであり、傷病名も肩の打撲だということですから、器質的損傷も他覚的所見もありません。運動機能障害としての後遺障害に該当する可能性はゼロです。

念のため、器質的損傷があるかどうかを主治医に確認してみるべきです。

(注1)医者と自賠責調査事務所の「他覚的所見」の相違について

「他覚的所見」につき、自算会(現、損害賠償料率算定機構)と臨床医一般の理解が異なっているかのようにみえるからである。自算会は、これまでの認定例からみれば、厳密に客観的に証明し得る異常のみを他覚的所見とするもののようである。

たとえば筋萎縮、変形、短縮、画像検査の異常所見、電気生理学的検査による異常波形、血液検査における数値の異常などである。

これに対し、医師側は、患者の疼痛やしびれの申告に基づいて判定するスパーリングテスト、ジャクソンテスト、知覚検査はもちろん、さらには医師がよく観察しながらでないと正確な評価ができない徒手筋力検査などの結果をすべて他覚的所見とみなすのが一般である。

しかし、自算会では、右の検査のいずれもが患者の主観を通したものであるとして、厳密には他覚的所見と認めないとの扱いのようである。(P72)

「外傷性頸部症候群診療マニュアル」所収羽成守論文より

痛みの後遺障害

したがって、今回のような痛いから曲げられないような場合は、関節の可動域制限による運動機能障害としては後遺障害非該当です。

しかし、局部の神経症状として14級9号に該当する可能性があります。

末梢神経障害の自賠責後遺障害等級上の位置付け

末梢神経障害は、自賠責上、12級あるいは14級に位置づけられています。そして、「末梢神経障害に係る認定は、原則として損傷を受けた神経の支配する身体各部の器官における機能障害に係る等級により認定することになる」とされています。

「したがって、障害認定における「神経系統の機能または精神」の障害に関する末梢神経障害として問題になるのは、身体部位の機能障害として独立して評価されないものである」というところに特徴があります。
(以上、「後遺障害等級認定と裁判実務」P279)

常時痛とは?

ここで、抹消神経症状としての痛みの後遺障害について説明しておきます。痛みといってもその態様はいろいろあります。軽い痛みから重い痛みまで、持続性のある痛みから一時的な痛みまで、体を動かしたら痛む痛みから動かさなくても痛む痛みまで。

その中で自賠責上後遺障害に該当するのは、 常時痛です。後遺障害は永久残存性があることが条件だからです。

後遺障害診断書をみていると、

自覚症状欄に、「違和感がある」だとか、「肩が凝る」だとか、「鈍重感がある」だとか書いてあるものが中にあります。しかし、これだといずれ治ってしまうものだと判断されて、常時痛にはなりません。自覚症状欄に痛みや痺れと記載されていることが必要です。

ただし、「寒くなると痛み出す」とか、「身体を動かすと痛み出す」ではダメです。寒くないときは痛みがない、身体を動かさないときは痛みがないと判断されて、「常時」痛とはいえなくなります。

では、文字通り、寝ても覚めても痛みがないといけないのかと言ったら、必ずしもそうでもないようです。痛みの小康状態ともいうべきときというのが常にありますから、痛み出すことに日常的に一定のサイクルがある。そういうのは許容範囲にはいるようです。

また、先に身体を動かして痛い・動かさないときは痛みがないのでは後遺障害に該当しないと書きました。原則はそうですが、身体でよく動かす部位(たとえば膝などの関節部位)については必ずしもそれはあてはまりません(注)。

このあたりは自覚症状欄記載の微妙な言い回しになるのですが、主治医はどこまでが許容範囲でどこからが許容範囲でなくなるのかを知りませんから、医師面談の際に日本語の表現技巧の問題として、修正をお願いすることがよくありました。

単なる日本語の表現の問題だとして軽視していたら、取れる等級も獲得できませんよ。

なお、たとえば骨折後の知覚異常も評価対象になります。骨折という明らかな変性所見があるからです。

(注)

労災必携では、常時痛について「通常の労務に服することができるが、受傷部位にほとんど常時痛を残すもの」(14級の9)としており、「ほとんど」という表現を使って、「常時痛」に幅を持たせています。

他サイトではそのことに言及しているものがほとんどないため、後遺障害に該当するためには「常時」痛みがないとダメだみたいに解説しているものがほとんどですね。

この点に触れている書籍があったのでご紹介しておきます。「後遺障害の認定と異議申立」(P168)では、

「ほとんど常時」の具体的内容は難しいが、身体組織に損傷の事実が確認でき、損傷による傷害と残存症状との間に因果関係が認められ、平常時以外であっても、運動時、動作時に疼痛があり、その運動、動作が日常的である場合は、認定対象となる可能性があると思われる」としています。

この点については、当サイトでより具体的に解説しています。

12級と14級の判断の違いはどこに由来するのか

12級認定の条件:「局部に頑固な神経症状を残すもの」
14級認定の条件:「局部に神経症状を残すもの」

12級と14級の違いは、表現上「頑固」のあるなしになっています。

ここで言う「頑固」ですが、痛みの訴えの強さとは無関係です。私の母はどんなに痛くてもそれを訴えない人でした。芯の強い人なんだなあとびっくりしました。ところが、父は、それほどでもないことでも看護師さんに痛い・痛いと執拗に訴える人でした。

この例でわかるように、痛みの訴えが強いかどうかは、個人の性格に負うところが大なので、自賠責では評価の対象にしていません。

12級の「頑固」といえるための条件

では、12級の「頑固」といえるための条件とは何でしょうか。以下の3点が重要です。

①自覚症状欄に痛みや痺れの記載があること。

このことの大切さについてはすでに書きました。

②画像所見があること。

MRIが大切です。レントゲン写真だけというのがときどきありますが、これはかなりのマイナス要因です。

長期間に痛みなどの神経症状の訴えがあれば、何かあるのではとなって、MRIをとるのが自然な流れです。レントゲンだけだと、その自然な流れに逆らいます。大した症状ではないと主治医が判断したのだろうと判断されてしまいます。

③神経学的所見があること。

ここが最大の関門だと思います。後遺障害を仕事にしている人の力量の差が一番出るところではないかと思うからです。

今でこそ弁護士が後遺障害の専門家のような評価をうけていますが、数年前まではその地位にいたのが行政書士でした。が、その行政書士も儲かるからということでここ10年ほどの間に後遺障害分野に進出してきた「にわか」専門家にすぎません。このあたりの経緯について下記の記事で書いたことがあります。

交通事故専門弁護士とか、後遺障害専門弁護士とか

すなわち、神経学的検査といってもいろいろあります。そのすべてが陽性ならいいのですが、検査によって陽性だったり陰性だったりするし、症状や画像との整合性においても疑問が出てくる場合もありえます。神経学的検査についてはかえってやらなければよかったというものさえあります。

非該当の補強材料となる場合と 該当の材料となる場合とがあるからです。内容しだい、両刃の剣です。そのあたりの判断が出来るかどうかです。

傷病名や治療内容、症状固定後の通院状況などを総合的に判断して決めていくのですが、この判断はたくさんの経験を積まないとなかなか難しいものがあると思います。

たとえば通院状況を重視しがちなのが頚椎捻挫の場合です。しかし、骨折事案については必ずしもそうではないところがあります。これ以上の内容は経験に基づくノウハウにあたるものなので書きません。

私たち保険調査員のここからが腕の見せ所です。ご相談には応じますよ。

なお、自賠責調査事務所は、12級の可能性がある場合について、治療したすべての病院に対して「医療照会」を行うことも知っておいてください。

12級の「証明」と14級の「説明」の違い

注意すべきもう1点です。

神経症状である痛みで後遺障害に認定されるかどうかですが、RSDなどの「特殊な性状の疼痛」の場合を除いた痛みは、後遺障害等級としては、12級か14級か、あるいは非該当です。この3つのうちのどれに該当するかは、その痛みが、

医学的に「証明」できるときは、 12級。
医学的に「説明」できるときは、 14級。
医学的に「証明」も「説明」もできないときは、 非該当

です。

痛みは、痛みを訴えている本人にしかわからないものです。どんなにいろいろな検査をしてみても、どれほどの痛みなのかを客観的に論証することはできません。

ですから、ここで痛みのていどを「証明」するとか痛みのていどを「説明」するとかと言っていますが、痛みのていどを「証明」することも「説明」することも、厳密にいえば不可能なことですよね。

だから、「証明」「説明」は一種の言葉の綾です。「証明」も「説明」もできないのだから、痛みのていどを他のメルクマールで推測するしかありません(注1)。

そのメルクマールというのが他覚所見の有無・その内容です(注2)。それによって決めることにしています。それによって、痛みを「証明」できるかどうか、できないなら「説明」できるかどうかという方法を自賠責は採用しています。

たとえば、今回のような肩の痛みの原因が、肩関節内骨折が原因だとする場合があるだろうし、肩関節の変性疾患(たとえば腱板断裂など)が原因だとする場合もあります。

前者は後遺障害等級12級に該当しますが、後者ならよくて14級どまりです(ただし、外傷性の腱板断裂は別)。

その理由は、事故との因果関係に求めます。前者は事故との因果関係が曲がりくねっていなくてストレートですが、後者は、もともとあった変性疾患という基盤に事故による外力が加わったため誘発されそれによって発症したものだから、因果の関係がストレートではありません。

事故とは無関係とはいえないものの、事故が引き金になったという評価です。

自賠責調査事務所はこの点に注目して、12級の「証明」と14級の「説明」をふるいわけています。

図にしてみるとこうなります。
 後遺障害等級12級後遺障害等級14級非該当
事故との因果関係がストレート×
事故との因果関係が間接的×
事故との因果関係なし××

最後の非該当というのは、以上のいずれにも該当しない場合です。今回のご相談のケースは、骨折所見もなく、画像上の変性所見もありません。たとえどんなに痛みがひどくても、自賠責上は後遺障害に認定されません。

(注1)痛みの程度はそれを訴える本人にしかわからない。

疼痛があればそれがどのような疾患であろうと確実にQOLは低下する。QOL低下の原因が明確であるので、それを取り除けば回復すると思われる。

しかし、疼痛は機械的・化学的刺激のみで作られるのではなく、多かれ少なかれ精神的・心理社会的要因によって修飾されている。痛みの辛さを評価するのは患者本人であり、その程度は患者の心の動きで決定される。極端な場合、完璧に治療しても、患者がまだ痛いといえば治っていないことになろう。

機械的・化学的要因は手術や鎮痛薬で治療することができる。しかし、心理社会的要因までは及ばない。結局、身体という構造体を修理することだけが本質的な目的なのではなく、種々の要因が絡んで出現している痛みの病態をさまざまな手法を用いて改善させ、QOLを上げるのが目的なのである。

丸田の慢性疼痛理論によれば、確実なことは以下のごとく2つある。
①心と体は予想以上に近いものである。
②患者の訴えは患者の病理だけに起因するものではない。痛みという知覚を主観的にどう体験し、その体験をどう表現するかは、周囲の環境との相互作用によって決定されている。(「プライマリケアのための整形外科疼痛マニュアル」P203-)
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(注2)他覚的所見について
参考までに、井上久医師の論考(「医療審査」より)をあげておきたい。痛みなどの自覚症状は第三者にわかるものではなくて、本人にしかわからないものに対して、骨折などは画像を撮影すれば第三者にもわかります。

井上DRは、主観の例として自覚症状をあげ、次に他覚所見をあげて、他覚所見を、より主観的要素の強いものから客観的要素の強いものに3分類しています。後遺障害認定上の「証明」を考える上でたいへん参考になる分類なので、ご紹介しておきます。

㈠主観
純粋な自覚症状 ex痛み、しびれ、凝り、倦怠感、脱力感、冷感、火照り・・・
 
 
㈡客観
①主観を通した他覚所見
②主観も入り得る他覚所見
③客観的に証明される厳密な意味での他覚所見

以下、その説明です。

①患者の自覚的訴え・申告に基づき客観的に把握されるもので、心因性要因もしくは意図的要因が容易に入る可能性あり。例:圧痛、疼痛性可動域制限、握力、スパーリングテストなどの神経根圧迫徴候、ラセーグ・SLRテストなどの神経根牽引徴候・・・

②知覚・運動・反射など総合的所見や、場合により各種画像検査、電気生理学的検査、専門的特殊検査などによる裏付けが必要になるもの。例:知覚鈍麻・脱失、筋力低下、手指巧緻運動障害、排尿障害、性機能障害、歩行障害・歩容異常・・・

③客観的に証明される厳密な意味での他覚所見。例:出血、皮下出血、腫脹、浮腫、皮膚変色、皮膚瘢痕、発汗異常、脱毛、筋硬結・過緊張、筋委縮、反射異常、変形、血液検査所見、画像検査所見、電気生理学的所見(筋電図、神経伝導速度、各種誘発電位検査・・・)

この区別を理解しているかどうかで、後遺障害認定までの道のりが険しいものかそうでないかが決まってくるのではないでしょうか。

予後所見欄について

この欄には「障害内容の憎悪、緩解の見通しなどについて記入してください」とあります。「 緩解(寛解)」とは、症状が軽減、安定している状態を表す言葉です。主治医の本音が書かれているとされているところです。

ここに「後遺障害に該当しない」とか、「緩解の見通し」などと書かれたらアウトです。「今後改善する可能性は低い」ならいいのですが、「不明」でもかまいません。何も書いていない? そういうのもたしかにときにありますね(苦笑)。

私の調査した中に「後遺障害に該当しない」と、はっきり書いてあるのがいくつもありました。このような場合は医師面談を実施して、当該傷病の後遺障害の要件を医師に確認します。たいていはそんなの知るはずもありませんから、説明し、その文言の削除に応じていただくことになるか、新たに後遺障害診断書の書き直しに応じていただくことにしていました。

以上、後遺障害認定の一連の流れについて、痛みを題材にしてふだん思うところを書いてみました。もし間違い等ありましたら、ご教示いただけるとありがたいです。

なお、自賠責の判断にどうしても納得がいかないということでしたら、裁判をするしかありません。

痛みや痺れに関する後遺障害裁判例

非該当事案

東京地裁 平成13年4月11日判決
首の痛み、頭痛などを残した被害者について、レントゲン上骨傷なし、明らかな神経学的所見なしの場合につき、「他覚的所見はなく、精神症状を医学的に証明し得るとはいえないし、医学的に説明可能な神経系統または精神の障害を残すものとは認められない」と判断している。
札幌地裁 平成9年12月22日判決
事故後、吐き気、上腕脱力などを訴えた被害者について、深部腱反射正常、レントゲン、MRIではc6、c7頚椎に骨棘が認められ、その椎間が狭小化していたが、脊髄の圧迫は認められず、CTでは異常がなく、ジャクソン陰性、スパーリング陰性であった場合に、痺れなどの症状は一貫しているが他覚的神経学的所見は認められず、もっぱら心因的、気質的な要因に基づいて残存したとして、後遺障害を否定した。
東京地裁 平成11年5月10日判決
傍脊柱筋の第5、6両側に圧痛と右傍脊柱に疼痛があった被害者について、ジャクソン±、スパーリング-、レントゲン問題なし(C6/C7の椎間腔がやや狭いことが認められたが問題ないとされた)との結果について、「神経学的には問題ないと診断されていること、平成10年には概ね事故前の状態に回復していたこと」等から「労働能力を喪失したといえるほどの後遺障害が残存したとまではいえない」。

14級9号認定事案

大阪地裁 平成8年2月2日判決
頸部痛、腰部痛、上腕の痺れを訴えた被害者について、腱反射陰性、ジャクソン陰性、握力低下あり、ラセーグ陽性で、MRI上C4、C5頚椎間の後部への突出が見られえた事案。「症状の発症および推移を合理的に説明できる」が、「MRI上明白な神経圧迫は認められないこと、その痺れや痛みの程度から」14級とした。
名古屋地裁 平成14年3月15日判決
レントゲン異常なし、頚椎MRIでC5、C6椎間板ヘルニアが見つかったが明確な圧迫は認められず、ジャクソン陰性、スパーリング陰性であった事案。「事故後により生じたものと認められる原告の後遺障害は、事故後一貫して継続している頸部痛、頭痛のほか右上肢第2、第3指の痺れの範囲であると認められる。また、その程度は、神経根症状の可能性があるという程度にとどまり、ヘルニア等による直接的な神経圧迫はないのであるから、自覚症状が他覚的所見で明らかとなる程度までには至ら」ないとして、14級に認定した。

12級13号認定事案

神戸地裁 平成14年9月30日判決
疼痛による頸部の運動障害、四肢に痺れ、知覚障害、軽度の筋力低下と画像上頚椎椎間板の突出、くも膜下腔の圧排像等が存した事案。「MRI検査等による医学的に証明しうる検査結果等が存し、その自覚症状を合理的に裏づけるに足りる明らかな他覚的所見が存することを合わせ考え」12級に認定した。
東京地裁 平成12年3月14日判決
事故後1年5か月後のMRIによりL4/L5、L5/S1の椎間板が正中部で突出があり、椎間板ヘルニアが認められたが、下肢の知覚低下、腱反射低下がなかった事案。腰椎捻挫の症状は時に他覚的な所見がなくても患者本人の痛み等が強い場合があり、腰椎の椎間板ヘルニアは事故とは別の原因で生じたとの反証は不十分であるとして、事故後に生じたものと認め、それが医学的に証明されていることから12級とした。

【参考書籍】
「後遺障害等級認定と裁判実務」(高野真人編著)

【17・12・06追記】
痛み診断について、加茂drがこのように説明されていた。参考のため。

痛みの診断は

まず、痛みを伴うことのある特異的な疾患(悪性腫瘍、感染症、リウマチ系、痛風系)の除外診断をする。

次に

⑴ 組織損傷を伴った痛み

⑵ 組織損傷があるように表現される痛み(組織損傷は長くても約3ヶ月で治癒すると思われるのでそれ以上続く痛み)

⑴or⑵を診断して、それで終わりです。

⑴ならば、組織損傷の治療+痛みの治療

⑵ならば、痛みの治療だけ

組織損傷の治癒とは、元どおりに修復される必要はない。例えば、肉離れで元どおりに修復されず、凹んでいても痛みがないことが多い。断端が閉鎖した状態。

⑵の痛みの治療のキーポイントは

傾聴・共感・受容・支持・保障

「なるほど、そうですか」で始まるわけだ。

「そんなはずがないでしょ」ではうまくいかない。

他人が体験したことを治療しようというわけですから。

整形外科医のもっとも苦手とするところです。こういうことが苦手だから、整形外科を選択したのですから。

外傷が加わったとき身構えたか、不意をつかれたか、恐怖はどれぐらいだったか、体のどこに力が入ったか、外傷後不安は、外傷後の加害者側の対応に納得しているか。持病はあるか。

このような聞き取りをして総合的に鑑定するのだろう。

1 COMMENT

京介

はじめまして。京介と申します。

交通事故により前十字靭帯損傷と内視鏡検査にて確定いたしました。未だに歩行時の痛みが消えない状況で10ヵ月経過しました。ドクターから前十字靭帯損傷のみでも歩行時に痛みがでるのはありえるので、後遺障害申請もできるとのことですが、前十字靭帯損傷の単独損傷で後遺障害の12級13号は認定されますでしょうか。ラックマン陽性ですが、ストレスXP陰性です。

よろしくお願いします

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