後遺障害認定における、症状固定後の通院の重要性

【1回ダメだったからと言ってあきらめるのはまだ早い。出典はhttp://www.genyize.com/blog/if-at-first-you-dont-succeed-try-try-again】

自賠責に後遺障害申請し非該当だったが、異議申立てしたら14級が認められた事例

ある行政書士さんのブログからの引用です。

最近結果が出た事案のお話です。
赤信号停車中に追突され、頚椎捻挫、腰椎捻挫のケガを負い、左上肢に強いしびれを残して症状固定した被害者の方から後遺障害のご依頼を受けました。画像所見と自覚症状から14級が認定される可能性が高く、12級の可能性も考えられたのですが、最終的に神経学的検査でそれほど有意な所見が得られなかったため、12級は難しいと判断し、申請を行いました。帰ってきた結果は非該当でした。

これまでの経験上、治療経過や各種所見等を総合的に判断して14級が否定される材料が一つも思いつかなかったのでとてもびっくりしました。

すぐに異議申立の手続きに移りました。前回提出したMRI画像より、解像度の高いMRIを撮影し、上肢の痺れを証明すべく神経内科の専門医のもとへ行き、筋電図検査を受けました。しかし、期待するような検査結果はでませんでした。

主治医に改めて意見書を書いてもらい、日常生活や労務上での支障を事細かに書いた陳述書を付け、前回申請後に通院した領収書を添付して申請しました。

結果、等級が変更され14級9号が認定されました。

認定理由書には初回申請の時と同じく、「所見が乏しく障害が証明されたものと捉える事は困難」と書かれ、その後に「しかしながら、症状固定後の治療が認められ、これらの治療状況等を勘案すれば14級9号に該当するものと判断する」とありました。

以上から、異議申立において、14級9号が認定されるには、他覚的所見が得られることと同じくらい症状固定後の治療が重要視されていると改めて痛感しました。交通事故により神経症状が残存したにもかかわらず、後遺障害が否定された方で、症状固定後も通院を続けている場合には異議申立を検討してみてはいかがでしょうか。

 
コメント欄も引用します。

2. Re:大変参考になりました
>リュウタ×2さん
過去にも同様の案件はいくつかありましたが、ピンポイントに症状固定後の通院だけを理由に認定された(理由書に書かれていた)のは初めてみました。
後遺障害専門 某行政書士事務所

1. 大変参考になりました
貴重な情報、ありがとうございます。

症状固定後とか、治療打ち切り後とかの治療継続については、その後の治療費はいったん自費扱いになる。そのため、それでも治療を継続するのは症状の訴えが本当なのだろう、詐病の可能性が低いと自賠責もとらえ、通院治療状況を肯定的に評価するといわれています。そのことを裏付けるものですね。

大変参考になりました。
リュウタ×2

症状固定後の通院の重要性

この事例でもわかるように、異議申し立てで重要なのは症状固定後の通院の重要性です。したがって、症状固定後の通院があったことを証する「領収書」のコピーを必ず添付してください。

さらにもうひとつ付け加えるなら、異議申し立ての場合に弁護士や行政書士がよく添付される主治医の意見書ですが、不適切というか的外れの意見書が相当に多いと聞いております。不適切な意見書を添付したためにかえってマイナスの評価をされるくらいなら、ここは調査事務所に医療照会をかけてもらったほうがよろしいかと思います。
 
なお、「リュウタ×2」とあるのは、ぼくのハンドル・ネームです。

等級認定を不服として争う方法

自賠責の後遺障害等級認定が否定されたり、低評価されたりした場合の争う方法としては、以下の3つがあります。今回の例にあるような①自賠責への異議申し立てをする以外にも、②紛争処理機構への申請をする③裁判をするの3つです。それぞれの特徴を書いてみます。

①自賠責への異議申し立て

こちらへの異議申し立ては費用もかからず、既判力がないため何度でもできます。不利益変更もできないとされています。つまり、最初に14級で認定されたものを否認はできないのです。一度決まった等級評価を覆すことはできない。

最初の後遺障害申請をしたところと同じ組織に対する異議申し立てになるので、新たな資料を加えないと異議申し立てが通りにくい傾向があるものの、絶対通らないというわけでもありません。とりわけ骨折事案など画像所見が決め手で他覚的所見が認められないとされ、後遺障害認定を否認されたり、低評価だったりした場合です。異議申し立ての場合は、同じ組織に属するとはいえ、今度は専門の医師が画像を精査します。最初に担当する調査事務所では大量かつ画一的な処理をするため画像をよく見ていないことがありうるし、画像読影は職人芸的な経験も要するため、誤・読影している可能性もあります(注1)。
 
(注1)このことについては、「後遺障害における画像読影ができたらどんなにかいいけれど、それと成功報酬型とは微妙な関係にあるかもだ」という記事で詳しく書いた。
 

②紛争処理機構への申請

こちらは異議申立て先とは形の上では別組織です。審査の申立ては1回限りの書面審査で、不利益変更はありません。紛争処理申請による変更率は、発足当初の平成14年度は25%でしたが、平成23年度は11.3%と、「民事交通事故訴訟の実務Ⅱ」ではなっていましたが、実際はやや違うようです。
 


 
紛争処理機構の変更率
henkouritu
 
運用がすごく厳しくなっています。先の本では厳しくなったわけではないとして、「紛争処理機構の変更の結果を見て、損保料率機構が運用を改めているから」(P176)としていますが、これって循環論法になっていませんか。説明の意味がぼくにはよくわかりません。ちなみに、下図は損保料率機構の後遺障害に対する支払件数とその割合です。特に改善されたということでもないようです。
 
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③裁判

自賠責実務は定型的・画一的・書面審査を基本にしていますが、裁判は個別的・具体的事情を尊重します。したがって、自賠責の後遺障害認定結果に左右されないというタテマエです。そのため、裁判の結果、不利益変更もありえます。また、自賠責にあった被害者を有利にという取り扱い(たとえば過失相殺を被害者に有利にする取り扱い)をしていないため、過失相殺は厳格に適用されます。

もし、事故被害者の過失が大きくなる可能性があるようでしたら、自賠責の保険金を先に回収しておく必要があります。先に回収しておけば、あとで裁判の結果が被害者に不利だったとしても、自賠責から多く払った分を返してくれとは基本的には言われません。相当悪質でないかぎりは(このことについては「自賠責と裁判所の判断が相違したとき」という記事で詳しく書いた)。

また、受傷と後遺障害の因果関係が不明なときもそうです(このことも「素因減額に対する自賠責と裁判所の態度・対応の違い」という記事で書いた)。被害者請求を先行させて、自賠責の保険金をまず回収する必要があります。
 

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知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ

hitininnno
その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にし、自己を無責任な立場に置くことになる。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。丸山真男のことばを最後に引用しておきます。

丸山真男から

ゲーテは「行動者は常に非良心的である」といっておりますが、私たちが観照者、テオリア(見る)の立場に立つ限り、この言葉には永遠の真実があると思います。つまり完全にわかっていないものをわかったとして行動するという意味でも、また対立する立場の双方に得点と失点があるのに、決断として一方に与するという意味でも、非良心的です。にもかかわらず私たちが生きていく限りにおいて、日々無数の問題について現に決断を下しているし、また下さざるを得ない。純粋に観照者の立場、純粋にテオリアの立場に立てるものは神だけであります。その意味では神だけが完全に良心的であります。

私たちの社会というものは、私たちの無数の行動の網と申しますか、行動の組合せから成り立っております。社会がこうして私たちの行動関連から成り立つ限りにおいて、私たちは行動あるいは非行動を通じて他人に、つまり社会に責任を負っています。その意味では純粋に「見る」立場、ゲーテの言う意味での完全に良心な立場というものは、完全に無責任な立場ということになります。

したがってこの点でも神だけが、完全に無責任でありうるわけであります。認識することと決断することとの矛盾中に生きることが、私たち神でない人間の宿命であります。私たちが人間らしく生きることは、この宿命を積極的に引き受け、その結果に責任を取ることだと思います。この宿命を自覚する必要は行動関連が異常に複雑になった現代においていよいよ痛切になってきたのです。

世のなかには一方では、認識の過程の無限性に目をふさぎ、理論の仮説性を忘れる独断主義者もいれば、またそもそも認識の意味自体を頭から蔑視する肉体的行動主義者がいます。しかし他方その半面では、物事はそう簡単にはイエスかノーかきめられないのだ、もっとよく研究してからでなければなんともいえないという名目の下に、いつも決断を回避することが学者らしい態度だという考え方がかなり強い。

あるいは対立する政治的争点に対して、あれももっとも、これももっとも、逆にそれを裏返しとして、あれもいけない、これもいけないということで、結局具体的な争点に対して明瞭な方向性を打ち出すことを避ける態度をもって、良識的であるとか、不偏不党であるとか考える評論家やジャーナリストもかなりいるようであります。

たびたびゲーテの言葉を引いて恐縮ですが、ゲーテはこういうことをいっています。「自分は公正であることを約束できるけれども、不偏不党であるということは約束できない。」今申しましたような世上いわゆる良識者は対立者に対してフェアであるということを、どっちつかずということと混同しているのではないでしょうか。
「現代政治の思想と行動」丸山真男 P452-454

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