損保の人身担当者はどれほどの知識と経験があるのかを考えてみた

人身担当者にシロウトが勝てないわけ

今日のテーマはぼくにとって頭の痛い問題というか、かなり切実な問題なので、いずれ取り上げてみたいと思っていた。

交通事故にあい受傷したとき、被害者は相手損保の人身担当者とやりとりをしなければならなくなる。大手掲示板の回答などをみていると、損保人身担当者はブロなんだから、被害者のような素人ではとても勝ち目がないなどと回答している場合がほとんどである。ていうか、勝ち目ありなんて回答している例などみたことがない。

それはもっともだ。彼らは日々の業務としてその種の交渉に臨んでいるし、社内および社外の研修も充実している。だから、知識や経験のどれひとつをとっても素人などに負けるわけがない。

総論しては大変わかるのだが、では具体的な各論として、プロとしての彼らの力量というか、レベルはどれくらいなんだろうか。ぼくの偏見に基づいて思うことを書いてみた。

後遺障害に関する知識をどのようにして学ぶのか

ぼくは損保本体にいたわけじゃないから、内部事情についてはよく知らない。しかし、損保にときどき出向いていたし、電話ならしょっちゅうやり取りはしていた。損保の社内研修については何も知りようがないが、社外研修なら、ぼくもできるだけ参加していたので、損保担当者と同席する機会が何度もあった。

ぼくの限られた経験ではあるが、ぼくの偏見になってしまうことを十分承知の上で、あえて表題について考えてみた。こんな表題で書いちゃうと、お前ごときになにがわかるかと、当の人身担当者から反発されそうだ。反発されたときはそのときだ。大いにけっこう。そうしてください。

ぼくが調査会社に入社してまもなく、医学についてまったくのシロウトなので、医療知識を習得するための第一歩は、損保の損害保険医療通信講座を受講することから始まった。これは3コースにわかれていて、最初に受けたのが初心者用のAコース、次にBコースへと進んだ。そこで、きっちりと頭部外傷や頚椎捻挫、骨折などの初歩や基本的知識を学ぶ。もうひとつCコースというのがあるが、これはぼくは受講していないので詳細はわからないけれども、たしか、レセプトの読み方とか健康保険の切り替え手続きに関する講座だったと思う。この通信講座は損保担当者ももちろん受講する。というか、そのための通信講座である。ぼくたち社外調査員は、おなさけで受講できるにすぎない。

伊豆の医療研修について

さて、本題である損保担当者の力量について、ぼくの思うところを書いてみよう。それを知る絶好の機会は社外の医療研修である。日本損保協会の管轄下にある医研センター(伊豆)の3泊4日の医療合宿研修という、この業界では大変有名な医療研修がある。これは4コースにわかれていて、一番の初歩が応用コース。次が研究コース。さらに特科コース。最後が上級コースである。参加するのは各損保の人身担当者やぼくらのような調査会社の医療調査担当者、それと料率算定機構の査定者である。別に損保顧問弁護士用の研修もある。

応用コースは初歩だと先に説明したけれども、人身担当歴3~5年くらいの人を想定しているらしいし、その上の研究コースはそれよりももっと知識と経験のある入社7、8年のいわゆる中堅クラスを想定している。ぼくは全部の受講を希望していたのだが、応用と研究の2つのコースは受講できたものの、その上の特科は、当時の上司に嫌われていたためか、お声がかからなかった。だから受講できたのは応用と研究だけである。

どういうことをそこで学ぶのか。そのことを調べるためにかつては存在していたはずの「医研センター」HPを探したが、現在は閉鎖されており、見つからなかった。それで、ぼくの記憶をもとに書いていくしかない。

応用コースは、医研センターの講師である医師から、頭部外傷、骨折、頚部損傷などの講義を3泊4日ほぼ缶詰状態で受ける。研究コースはその発展型で、講師の医師による授業があるほかは、受講者によるグループ討論が新たに加わる。さらに上級の特科コースでは重度後遺障害や精神医学などの講義がある。

ぼくは可能な限り受講するつもりだったし、とりわけ後遺障害の授業が聞ける特科コースはぼくにとって垂涎の的だった。しかし、先に書いた理由で参加できなかった。ちなみに上級コースというのは新設されたコースで、ここでは「医療過誤」「医事法」「麻酔科学」「法医学」「判例・医療」の各講座がある。これら特科や上級コースは、損調経験が10数年から20年クラスが受講しているらしい(5、6年前の記憶に頼っているため、現段階ではどうなっているのかはまったくわからない)。

人身担当者のレベル

交通事故被害者が加害者側損保の人身担当者とやりとりすることになると先に書いたが、その直接の担当者のレベルはたいてい損調経験2、3年から7、8年であることが多い。ということは、上記医療研修でいうところの応用コースもしくは研究コースレベルである。そのコース履修者はどの程度の力量なのか。

それを知る絶好の機会があった。研究コースではグループ討論というのがあって、講師の先生から演題を与えられ、それを7、8人のグループで討論する。ああでもない・こうでもないとお互いが意見を言い合う。そのようにして、グループの結論を出し、会場で発表するのである。ぼくが参加したときの演題は「脊髄損傷事案」だった。ぼく以外はすべて損保人身担当者だった。お互いの経験や知識が知れるまさに絶好の機会であった。

このときのグループの結論はほぼぼくの案でまとまった。この研修に参加する直前にぼくはたまたま「脊髄損傷事案」をやっていたので、そのときの知識が頭に残っており、それをグループ内での討論の際に述べた。そしたら、それがほぼそのまま採用されてしまったわけである。こっちが拍子抜けするほどだった。他から反対意見や疑問が出たわけでもない。なんだ、この程度か。だったら、ぼくとどっこいどっこいじゃないか。ぼくと同レベルで、要するに大したことはないのである。

相手のレベルがどれくらいなのかを把握するのはすぐにはできないが、自分より上か下かはほんの15分も話していればわかるものである。事故被害者が直接やり取りをする人身担当者のレベルは、これまでの電話のやり取り等も含めてぼく以下かよくてほぼ同レベルで、要するに大したレベルではないのだ。しかし、特科や上級クラスの担当者は、ぼくなど足元にも及ばないほどにもっとレベルが上であり、そういうのが各支社には1人は必ずいるものである。

人身担当者は後遺障害が認定されたかどうか、それを直接知る立場にある

もうひとつ重要な点がある。損保の人身担当者は自賠責事務所としょっちゅう連絡しあっており、関係が密であるし、後遺障害の認定・非認定を知る立場にある。それはすごく有利なことである。対して、よく誤解されているのだが、ぼくのような調査員は、後遺障害の認定・非認定について直接知る立場にないことだ。後遺障害について主治医への確認のための医療調査を調査員が担当するが、その後どうなったかを知る立場にない。被害者請求の代行などたまたま知ることがあったりするが、必然ではない。ここが人身担当者と社外調査員のもっとも大きな違いかもしれない。他にも違いがいくつもあるが、逆に調査員だからかんたんにわかることなのに、人身担当者にはわかりづらいこともあるだろう。

経験値ではどうしても太刀打ちできない

損保の人身担当者は人身の案件を毎日扱い、したがってそのこなす量は半端じゃない。最近、サイトをみていると交通事故専門家がやたらと増えたけれども、損保人身担当者からみれば、年に数10件しかやっていない専門家など、「専門家」に値しない。某大手掲示板で、ある交通事故専門家は自分のブログの自己紹介欄で「事故示談取扱件数351件」を売りにしていたが、別の回答者である損保人身担当者は、それでは経験値として少なすぎると切って捨てていた。

対抗策について考えてみるべきでは

そういう業界に関係しないかぎり、年に扱った件数が数十というのはやむをえないとぼくは思う。10年間やっても数百件である。しょせん、個人でできることといったらその程度である。だから、そういう人たちが多く集まって、情報や経験、知識の共有化を行う。その必要性を強く感じる。

個々の力は限られていても、3人寄れば文殊の知恵というではないか。そうでもしないと損保と対等に渡り合えないんじゃないだろうか。これって今、非常に大切なことだと思うのだ(ぼくは現役でないから、このことがいつも不安なんだけれども、いや、そういうことはみんなやっているよということだったらたいへん失礼な話でした)。

5、6年前とくらべて後遺障害の分野への参入者がとにかく増えに増えた。すでに淘汰の時代にさしかかっているのだろう。かつて後遺障害専門というカンバンを掲げていた行政書士さんのHPをつい最近訪問したら、後遺障害分野から撤退されていた。いやはや、厳しい選別の時代になったものだと思った。

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事務所所在地・連絡先

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当事務所の立場

突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ

hitininnno
その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にする。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。よろしくです。

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