交通事故被害者にならないために、道路インフラの問題点にもっと目を向けるべきだ

【自分の仲間を必死になって救出しようとしている子犬。この子犬だって、このままではクルマの犠牲になってしまうかもしれない。安全なところにいて立派なことを言っているだけでは何事も始まらない】

ある司法書士さんの述懐

以前から疑問に思っていることから書き始めたい。

ある司法書士さんのブログを拝見していたら、このようなことが書かれていた。

司法書士のなかにも、テレビなどで大々的に宣伝をして債務整理や過払い請求の依頼を集めようとする者たちが少なからずいます。

債務整理を「売り」にしたブログなども、よく目にします。

そうした人たちのなかで、誰か一人でもギャンブル障害の問題に真剣に立ち向かっている人がいるでしょうか。

 

道路インフラなどの原因にもっと目を向けるべきだ

しばらく前から、ぼくもうすうす感じていた。同じようなことが、交通事故関係にも言えることを。

保険会社は営利企業だから出し渋っている。だまされてはいけませんよ、本当はもっとこんなにもらえるのですよと、事故被害者のための情報提供をされているサイトは、それこそいっぱいある。まるで百花繚乱のごとく。ぼくのブログもそのうちのひとつだが、ネット上には、交通事故被害者のため、交通事故被害者の味方だと語るサイトだらけである。

しかし、不思議なことに、事故が起こったあとの「対処療法」についてはこんなに多く熱く語っているのに、肝心の「原因療法」について、すなわち、事故前の、事故そのものををなくすことについてはだれも語らない。たとえば、道路インフラの整備を怠っている行政の不作為について問題追及しているサイトなど見たことがない。事故被害者の味方、被害者の立場に立つというのなら、事故後にいくらもらえるかももちろん大事だけれど、事故にならないためにどうしたらいいのか、そっちのほうが根源的でもっと大切なことだ。

このように、「対処療法」については熱心に語るくせに、「原因療法」については黙して語らず。語るとしても、クルマに乗るときは安全運転で・・・とか、横断歩道を渡るときは左右の確認を怠らず・・・などと、いつもの「自己責任論」としての、運転者や歩行者のモラルの問題に矮小化して語るのみ。そんなことなどぼくが小学生のころから聞き飽きるほど口すっぱく言われていたことだろう。

実を言うと、かつてのぼく自身もそうだった。道路インフラに言及した記事がまったくなかったわけではないが、ぼくの書く記事のほとんどは対処療法としての、事故になった後のことばかりだった。ぞういうぼくが道路インフラにまで目が届くようになったのは、自転車に乗り出したことがきっかけだった。(だから、エラソウなことを言える資格などない。)

日本は、典型的クルマ社会

日本の道路という道路はクルマのための道路であり、歩行者や自転車のための道路ではなかった。歩行者にとって上り下りのつらい歩道橋などという存在。横断歩道の極端な少なさ。歩道のない道路の多さ。歩行者信号の待ち時間の長さと、横断時間の短さ。分離信号機の少なさ。自転車道の少なさ。ボンエルフの少なさ・・・。日本がクルマの通行を優先させている事例はまだまだいくらでも挙げることができる。

自転車は、道路を走ればクルマから邪魔者扱いされ、歩道を走れば歩行者から危険視扱いされる。悲しき存在としての自転車。このままだといつかぼく自身も交通事故の被害者になりそうだ。そうならないためには、これまで繰り返されてきた運転者や歩行者のモラル頼みではダメなのだ。道路インフラの整備こそが大切なのだ。自転車に乗り出して、そんなごく当たり前のことに、ぼくはようやく気づいたのであった。

交通事故死が減った理由

ところで、最近は、交通事故死者数そのものがかなり減ってきている。
 
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上図をみればわかるように、これまでで一番多かったのが1970年で、「1万6765人」だった。それが2014年には「4113人」(2015年は4117人)にまで激減した。半減どころか、1/3減以下だ。これだけをとりあげれば、めでたしめでたし。すごいぞ、ニッポン。

しかし、ぼくはこの数字に手放しで喜べない。1970年の「1万6765人」という数字があまりに異常すぎたからだ。そんな数字と比較すれば、なんでも「正常」に見えてしまうことだろう。

死亡事故が少なくなった理由としていくつかあげられる。自動車の安全性能の向上とか、取り締まりの強化とか。その中でもいちばんの理由と思われるのが緊急医療体制がよくなったことだろう。実をいうと、交通事故死者数は24時間以内の死者数をカウントしたものである(注1)。緊急医療体制が整備された結果、従来は24時間以内に亡くなっていた人たちが、24時間以内で亡くなることが少なくなり、24時間以後に死亡するため統計上カウントされなくなった。また、これまで助からなかった人たちが重度の後遺障害者として生存が可能になった。
 

(注1)

現在は、1か月以内の交通事故死亡者数も公開されている。1か月以内でカウントするのが国際標準だからだ。24時間以内だと死亡者数が小さくカウントされるため批判され、ようやく1か月以内の死亡者数も公開されるようになった。

 
ここ数年、たしかに24時間以内での交通事故死亡者数はかなり減っている。しかし、後遺障害については、交通事故による死亡者が減る一方で後遺障害者数は増加しているとの損保協会の指摘がある(注2)。
 

(注2)

損保協会発表の後遺障害者数は2011年6月発表のものに基づく。その後、2014年9月発表の「自動車保険データに見る交通事故の実態」報告書では、2012年度の後遺障害者数は59797人となっており、やや減少している。

日本の交通事故死者数はいまだに戦争並みの数字である

とはいえ、「4113人」という数字は、イラク戦争のアメリカ軍の総死者数「4486人」に匹敵する数字である(注3)。「交通戦争」は死語になったのではなく、今も続いているのである。
 

(注3)

アメリカ軍の戦死者数は延近研究会共同研究による。

 

交通事故死は人為的死である

このように書くと、ガン死のほうがもっと多いよと反論される方がおられるかもしれない。だが、ガン死は老いの1種である。「老い」とは、細胞の遺伝子が傷つき、それが蓄積して、体にさまざまな障害を引き起こす肉体の変化のことだ。ガンもまさにそうである。そして、交通事故死などと違って、ガン死も含めた病死は、たいていは年齢を重ねたうえでの死である。あの世からそろそろお呼びがあるだろうと思っていて、回りもそう考えていて、その上での死である。悲しいことではあっても、ある意味仕方がないことだし、避けようがないことである。順番通りの死。しかし、交通事故死は、前触れもなく、ある日突然、年齢とは無関係にやってくる。

前者の病死は順番どおりの自然な死といえるが、後者の交通事故死は、人為的な死である。死の順番を人為的に乱した死だといえよう。避けようと思えば避けられた死。インフラ整備が進んでいたら、回避できたかもしれない死。政策不備による死。クルマ優先社会のなかの犠牲死。すなわち、「自然死」に対する「政治死」といえよう。

自転車レーンはかえって危険である

そのような背景があって、今、都市部で自転車利用者が増えたことなどがあり、道路インフラにもっと目を向けるべきだという論調が、マスコミでも最近多く取りあげられるようになった(たとえば毎日新聞の「銀輪の死角」キャンペーンなど)。そのこと自体はとてもいいことだし、もっとやってほしいくらいだ。

しかし、その論調の中身にぼくは危機感を覚える。道路インフラそのものを改良すると費用がかかるからという理由で、車道と物理的に分離した「自転車道」(注4)にはまったく目もくれず、車道の端っこを色塗りしただけの「自転車レーン」(注5)を作ればクルマの運転者が尊重して安全だという、根拠不明の甘い見通しを立てた上で、自転車は「軽車両」だからなどとしてクルマと同視し車道に放り込んでしまうという乱暴きわまりない発想。そんなので、交通事故が減るのだろうか。自転車を車道に追い立ててしまったら、かえって事故が増えるに違いない(このことについては別記事「自転車は車道のほうが安全なのか」で詳しく書いた)。

自己責任論には飽き飽きした

ヒューマンエラーなどを原因とする自己責任論は聞き飽きた。もううんざりだ。道路インフラにもっともっと注目すべきなのに、せっかく注目されても、いつものようにあらぬ方向に誘導され、かえって交通事故が増える方向にむかっている。そんな現状がある以上、どんなに妨害されても、ぼくは今後とも声を大にして道路環境問題についてとりあげていくつもりである。ぼく以外にも、ごく少数ながら、同じ思いで記事出しをされているサイトもある。自転車愛好者や道路行政にかかわった方々である。いずれのサイトも相当に圧力をうけながら頑張っている。だれかがやってくれるなどと、ぼくだけ知らん顔はできない。当サイトからリンクを貼っているので、どうぞ、そちらも注目してください。
 

(注4)

自転車レーン:ペンキを塗っただけの視覚的分離。そのため自動車が容易に進入ができ、画像にあるように路駐が絶えない。

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(注5)

自転車道:縁石などによる物理的分離。

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当事務所の立場

突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ

hitininnno
その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にする。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。よろしくです。

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