わかりづらい道路標識は、過失割合にどう影響するのか

日本のわかりづらい標識

車を運転していると、わかりづらい道路標識や案内標識をときどきみかける。わざとわかりづらくしているんじゃないかと勘ぐりたくもなるくらいだ。しょせんはお役所仕事なのだろう。道路利用者の利便など、二の次、三の次なのだろう。ネットでみつけてきたそのひどい例をいくつかご紹介する。


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(出典:http://blogs.yahoo.co.jp/yamayasu1620/33184642.html
 
これは地元金沢の西インターチェンジ付近にある案内標識である。ドライバーが一瞬で理解できるように作られるべきだと思うのだが、1つの限られたスペースの掲示板上に情報を詰め込みすぎた結果、こんなにわかりづらい案内標識になってしまっている。ぼくは地元だからこの案内標識を見る必要もないが、金沢が初めてという人がこれを見たらきっとまごつくだろうなあ。
  

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(出典:http://kyoryuchi.seesaa.net/article/155480706.html
 
いずれの標識も「ここから」とあるので、1箇所に情報を集約・整理するべきだと思うが、3つに分離した状態でそれらを1箇所に放り込んで掲示した悪い例である。何が言いたいのかさっぱりわからない。事故になりそう。
 

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「2輪の自動車」って、いったいどんな「自動車」だろ?と思ってしまうし、ここは「2輪以外の自動車」と表記すれば足りるだろう。
 

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(出典:http://yamaiga.com/hen/main5.html
 
どう言ったらいいのか。出典元を確認したら、「側道、歩道、本線(陸橋)、歩道、側道という風に道が並んでいて、ようは「歩道には車は入らないでね」ということを言いたいだけの標識なのである。」
 

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(出典:http://photoxp.jp/pictures/69509
 
出典元で確認すると、「全国的にも珍しい逆転式一方通行となっていて自動車などの進行方向が午前と午後で逆転する」ということらしい。
 

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(出典:http://www.recordchina.co.jp/a64345.html
 
これは海外迷い板芸術作品と言ったところか(苦笑)。

お口直しのよい例

ひどい例ばかりみてきたので、お口直しによい例も見ておきたい。粗食ばかり食っていると粗食が当たり前のように思えてしまってそれが最高の料理だと勘違いしかねない。最高の料理がどんなものなのかを味わってこそ、健全な批判精神が身につくというものだ。

以下の画像はろぜつさんのサイトから拝借しました。

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さすがはオランダである。人々の道を通行する権利が「交通権」という基本的人権として確立されているだけのお国柄である。それに比べて日本のは、絵柄が同じだから近くまで行かないと判別しづらい。近くまで行ったとしても、どっちが規制区間の始まりで終わりなのか、一瞬迷わせる。一瞬の迷いが交通事故の原因になると警察はやかましいくらい言っているくせに、こんなお粗末な看板を作って嗤うしかないだろう。

道路標識等が有効に機能していない場合の過失割合はどうなるのか

道路上には各種の道路標識が林立している。クルマを運転するとき、その指示どおりにしているわけだが、道路標識の設置等に瑕疵があったり、道路標識そのものに瑕疵があったため、その指示が無効とされた例がいくつかある。ぜひご紹介しよう。
 

標識の設置位置に問題があった場合

 
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上図は一方通行路の途中から進入したクルマがいわゆる逆走したケースである。右折地点では一方通行路であることがわからないため、それでも一方通行違反が問えるかどうかで裁判になった。裁判所は一方通行違反を問えないと判示している。
 

最高裁 昭和37年4月20日判決
標識令にいわゆる「一方通行」とは、当該道路における指定方向に逆行する通行を禁止する場合の通行方式をいうものであるから、道路の「一方通行」を行う道路の入口に所定の指導標識(現行の規制標識)を設置するほか、その道路の出口等所要の場所に指定方向に逆行する通行を禁止すべき内容の「禁止標識」(現行の規制標識である車両進入禁止)を設置することを要する。

 

大津簡裁 昭和39年12月14日判決
「一方通行」を指定した区間の入口および区間間の必要箇所に「一方通行」の規制標識を立てるほか、その出口等所要の箇所に「車両進入禁止」または「指定方向外進行禁止」等の禁止方向に進入する車両の通行を禁止すべき内容の規制標識を立てる必要がある。

 

道路標識自体に問題があった場合

 
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これも冒頭にいくつか挙げた例と同じの、一見して意味不明の標識のお仲間さんである。一見したところ、ぼくにはさっぱりわからない(笑)。意味を理解するのに何分もかかる。何のためにあるのかわからない道路標識。これを理解しようとすれば交通渋滞になってしまい、かえって事故を誘発しかねない。こういうひどい道路標識について、裁判所はどう判断したのか。裁判所は、仮にこの標識の意味が分かっていても(故意犯)、道路標識の表示自体に問題があるとして、無罪を言い渡している。
 

最高裁 昭和43年12月17日判決
道路標識は、いかなる車両のいかなる通行を規制するのか容易に判別できる方法で設置すべきものである。

 
刑事事件では故意でも無罪だけど、民事だとどうなるのか、ぼくにはわからない。しかし、たとえば②や⑤のような道路標識なら、すぐには理解不可能なのだから、そのような道路標識の規制違反を理由にして、過失を問えないと考えるべきだろう。
 

【参照条文】

道交法4条

都道府県公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、又は交通公害その他の道路の交通に起因する障害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、信号機又は道路標識を設置し、及び管理して、交通整理、歩行者又は車両等の通行の禁止その他の道路における交通の規制をすることができる・・・

道交法施行令1条の2の1項

法4条1項の規定により都道府県公安委員会が信号機又は道路標識若しくは道路標示を設置し、及び管理して交通の規制をするときは、歩行者、車両又は路面電車がその前方から見やすいように、かつ、道路又は交通の状況に応じ必要と認める数のものを設置し、及び管理しなければならない。

 

「道路標識等」には「道路標示」が含まれるということの意味

道交法4条で規定されている「道路標識等」の「等」には「道路標示」が含まれる。「道路標示」とは、道路上の中央線や外側線などのことだ。では、こういう場合についてはどのように理解すればいいのだろうか。

冬になると雪が降り、路面に積もる。ぼくが住んでいる北陸の石川県はそうである。その結果、雪が積もって、車道にある中央線や外側線が見えなくなる。ぼくが保険調査をしてまだ間がなかったころ、このような雪道で対向車同士が正面衝突事故を起こした事案を扱ったことがある。対向車同士の正面衝突事故はどちらが相手車線に入ったかどうかで過失が決定される0対100の事故である。そこでぼくがやったことは、雪道の中央線があるらしい箇所に見当を付けてスコップで雪をかきわけ中央線のありかを確認して、どちらが相手車線に進入したかを決定していた。これは正しいことか。

(回答)

当初道路標識等を適法かつ客観的に認知できるように設置してあったとしても降雪のため道路標識の標板が白くおおわれ、その意味が読みとれないとき又は道路標示が見えなくなっているとき(煤煙・じんあい等による場合も同じ)は、その道路標識は一時的ではあるが、その間は有効な道路標識等ということはできないので、交通規制の効力は失われたものと解さなければならない。

この場合、道路標識と道路標示を併設しなければならないとされている交通規制については、いずれか一つでも見えなくなったときは、その規制の効力を失うが、道路標識又は道路標示を設けて行う交通規制、例えば、はみ出し禁止については、両者を併置することが義務づけられていないので、道路標識でもよく道路標示でもよいことになるので、降雪等のため併設された一方の道路標示が見えなくなっていても、他方の道路標識に視認性があれば、なお、有効な交通規制ということができる。(「執務資料・道路交通法解説」より)

 
以上から、先の質問でぼくがやったことは明らかなミスであり、雪道の現況をもとに中央線を再設定(想定)して考えるべきだったことになる。「道路標識等」に「道路標示」が含まれることの意味はかなり大きい。いずれ記事にしたい。
 
(追記)未整理判決がいくつかあり、いずれまとめたい。

神奈川簡裁 昭和56年3月31日判決
指定方向外進行(左折)禁止の道路が「道路標識、区画線および道路標示に関する命令」に定める設置場所に設置されていなかったとして、その規制の効力が否定された事例。

 

名古屋高裁 昭和50年12月10日判決
道路標示が道路標識と併置されていない場合の規制の効力について

 

大津地裁 昭和50年6月17日判決
道路右側に設置された道路標識の効力が否定された事例。

 

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突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ

hitininnno
その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にする。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。よろしくです。

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