パート、アルバイトの休業損害

雇用が増えたというけれど

3日前の朝日新聞の「実感乏しい経済成長」という記事はこういう書き出しから始まった。

「アベノミックスによって名目GDPは44兆円増え、過去最高水準。雇用は大きく改善し、全国津々浦々で確実に経済の好循環が生まれている」

1月下旬の参院本会議で、安倍首相は4年間の成果をこう強調した。

 
安倍総理はいつもこんなふうに雇用が増えた・増えたと自画自賛されておられます。マスコミもいっしょになって雇用が増えた・増えたと大合唱していましたので、その内実について調べてみました。

その内実は、じいさん・ばあさんのアルバイトが増えた

増えた・増えたと自画自賛している雇用ですが、正規雇用は増えておらず、非正規雇用が増えたということがこの表からわかります。それも、大幅にです。ここまでは国会で民進党が追及していたので、ご存知の方もおられるかと思います。問題なのはここから先です。その増えた非正規雇用の年齢別内訳と推移が下の表です。
 

 
非正規雇用は全年齢層で全体的に増えていますが、とりわけ中・高齢者層(55歳以上)の非正規雇用が大幅に増えたことがこの表から一目瞭然です(55歳~64歳は平成2年139万人→平成27年412万人。65歳以上は平成2年41万人→平成27年267万人)。

アルバイトが増えただけだから平均給与もあがらない

もうひとつ、こちらは平均給与の推移です。
 

 
サラリーマンの平均給与は、ここ20年、1997年(平成9年)の467万円をピークに、基本的に下がってきています。また、非正規雇用もどんどん拡大しており、2000万人、労働者の4割に迫ろうとしています。非正規雇用の拡大は、下からの賃金抑制圧力になっていて、正規雇用の賃金増を押しとどめています。正規社員で給与があがっているのは大企業の正社員です。マスコミなんかもその一員です。それ以外は、たいていは給与はあがらず、ぼくの周辺では、消費税があがり物価もあがったため、実質賃金がさがっている例のほうが圧倒的に多い。

正社員の減少は、若者の減少が背景にあると言い逃れができなくもありません。しかし、年齢別内訳でもわかるように、高齢者層の働く人が大幅に増えたということが「雇用が増えた」ことの実態です。なぜ高齢者が働かざるをえなくなるのかというと、老後の資産である年金では足りなくなり、生活不安でやむなく働かざるをえないケースが増えたからでしょう。

国会では、いつものことですが、民進党の批判は、どうしてだか、ここをつきません。年金や医療、介護の改悪が進む中で、将来への不安が広がり、無理をしてまで働かないとやっていけない高齢者がたくさんいるのではないか。ぼくの周辺にはそのような実例に事欠きません。こんな実態なのに、雇用が増えた・増えたなどと、どうして自画自賛できるのでしょうか。ぼくはその厚顔無恥ぶりに怒りさえ感じます。ゲートボールに興じているだけが高齢者ではありません。そういう恵まれた高齢者もいますが、いずれ、早晩、彼らもまた働かざるをえなくなるか、そうでなかったしても、次世代が苦境に立たされることになるだろうと、ぼくは考えます。

ということで、正社員の休業損害についての記事を書こうと書き始めたのだけれど、正社員は後回しでいいでしょう。パートとかアルバイトとかの休業損害のほうが今後需要が確実に高まりそうなので、こちらを取り上げることにしました。

相談

時給が1600円、日額が10000円。
月の勤務日数が15日間、月の支給額が150000円。
この場合、休業損害はいくらくらいになるのか教えてください。
ちなみに、先月1月にいただいた休業損害は10日分だったのですが、57000円でした。提出書類は休業損害証明書だけです。

パートとは?

10000/1600=6.25(1日の労働時間)
6.25×15=93.75(1か月の労働時間)

1日の労働時間が6.25時間だと、1か月では93.75時間にしかならないし、1週間では30時間未満である。

すなわち、1週が30時間未満だと「給与所得者」でなくて、原則としてパート扱いになる。ここで「パート」というのは「原則として雇用期間を定めて雇用主に対して労務を提供し、その対価として賃金等を得ている者であって、1週間の労働時間が30時間未満の者」をいう。

「給与所得者」と「パート」とで休業損害に関してどんな違いがあるか

自賠責の休業損害算定基準では、

(1)「給与所得者」だと1日あたりの収入額が定額(5700円)を下回っても定額補償されるのに、「パート」だと定額である5700円を下回る場合は実額しか補償されないこと。

 

(2)「給与所得者」だと休業損害証明書記載の休業日、さらに休業初日より継続治療ならその間の土・日などの休日も支給対象になるが、「パート」だと休業日数が原則実治療日数になること

 
今回の相談者の例では、今回の1月分の支給は10日分で57000円だった。つまりこれだと休業日額は5700円にしかならない。これまでに提出した書面は休業損害証明書だけなので、立証が不十分だとして、自賠責の定額である日額5700でしか保険会社は認めなかったのだと考えられる。源泉徴収票を追加資料として提出すべきである。

今後の保険会社との交渉で注意する点

下の表は、休業損害を立証するための書面一覧と、パートの場合の、立証書面である。パートは、「日雇い・アルバイト」に含まれる。

職業別休損立証書面
休業損害証明書
源泉徴収票
確定申告書
所得証明書
賃金台帳
支払調書および明細書
職業証明書
住民票

 
日雇い・アルバイト
実額認定①+(②or③or④)
定額認定

 
休業損害証明書のみでは定額の5700円しか認められないことが、この表からもわかるだろう。

次に休業日数について一言したい。パート、アルバイトの休業日数は「原則実治療日数になること」である。この場合、「被害者の傷害の態様、職種等を勘案して治療期間の範囲内で実治療日数の2倍」という例外規定があること、「就労形態(勤務時間、勤務期間等)の実情からみて、休業損害証明書の内容に信憑性ありと認められる場合は休業損害証明書の記載どおりに認定される」という扱いが可能だということも知っておいてほしい。

主婦でパートの休業損害

ネットでパートの休業損害を検索すると、たいてい主婦でかつパートの場合で論じられていたので、ここでもそのことに言及したい。

主婦(主夫)である被害者にパートやアルバイトの収入減少が認められる場合は、主婦としての休業損害額とパートなどの休業損害額とを比較して、どちらか多い額を認定する。したがって、パートの休業損害が実額補償であるため定額以下になることもありうるのに対して、主婦業がそれに加わると日額5700円の定額が休業損害額の最低限度額として補償されることになる。なあ、主婦(家事従事者)は、日額5700円の定額補償である。

シルバー人材センター登録者の休業損害

高齢者のパート・アルバイトが大幅に増えたので、シルバー人材登録者についても言及したい。

登録者については、「実額」×「稼動予定日」の算式で積算する。

日給者の食費とか交通費とか

日給の内訳が、日給・食費・交通費(実費支給)となっている場合、日給・食費相当分を認定する。交通費については、実費支給なら現実に損害が生じないため認められない。一律支給の場合は、給与の一部とみなすことができるので、休業損害として扱う。
 

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