勤務先が休業損害証明書を書いてくれないとき

休業損害証明書を書いてくれない

この前、知人の行政書士さんと話し合っていたら、「勤務先が休業損害証明書を 書いてくれないため困っている人がいるのだがどうしたらよいのだろうか」という質問を受けた。

勤務先が休業損害証明書を書いてくれないということがたまにある。書いてくれないんですよ、なんとかならないでしょうかと言って、事故被害者から泣きつかれたことがぼくも何度かあった。どうして書いてくれないのかぼくにも理解できないので、そういうときは勤務先に行って、どうして書いてもらえないのかその理由を問いただす。そして、書いていただくよう説得する。ふつうはこれで終わる。

問題はそれでも書こうとしない場合である。梃子でも動かないというやつだ。ぼく自身はそこまでのひどい事案にあたったことはないが、ネットで調べてみたらどうしても書かない例がかなりあるようだ。自分のところの従業員が怪我をして困っているのにどうして書かないのかその理由がまったくわからない。誤解しているばあいもある。休業損害証明書を書いたら何か不利益があるのではなどと漠然と考えているばあいだ。そういう場合はこちらが説明すれば理解してもらえる。しかし、そういうのではなくて、とにかく書かない。たいした理由もないが、書きたくない。そういう経営者がいるようなのだ。

休業損害証明書を書いてもらえないばあいに、労基に訴えてもダメだ

その場合、ネット情報の中には、労働基準監督署に訴えろなどと、的外れの回答をしているものがあった。労働関係に起因することならともかく、そうでない場合にまで労基に訴えてもラチがあかない。

最初に断っておくけれども、交通事故にあって怪我をし、そのため仕事ができなくなって損害を被った。これらのことはすべて事故被害者が立証しないといけないことだ。保険会社に事情を説明すればいいようにしてもらえるなんて噴飯物のアドバイスもネット上にあったが、立証もせずに保険会社担当者の同情を買うという手はまったく通用しない。

自賠責と任意保険の休損に対する考え方の違いについて

では、どのようにして立証していくか。これは自賠責と任意保険で違ってくる。自賠責と任意保険の大きな違いは、前者が規定による定型的支払(定額5700円から上限19000円)であること。一定の立証書面さえあれば自動的に支払の対象になることだ。後者は、事故との因果関係を重視し、実際にどれくらいの損害が発生したのかを事故被害者のほうで立証して、それに対して支払う。大きく違いをまとめると、こうなる。

自賠責における休業損害の立証書面を表にしたものはすでに記事にしたことがある。→「自賠責に休業損害を請求するとき、どんな書類が必要か」。そこから給与所得者の例を引用する。

職業別休損立証書面
休業損害証明書
源泉徴収票
確定申告書
所得証明書
賃金台帳
支払調書および明細書
職業証明書
住民票

給与所得者
実額認定①②+(⑤)
定額認定

たとえば、今回の事例が給与所得者だったとしよう。仮に日額15000円だったとする。その場合は、上記表より、「休業損害証明書」と「源泉徴収票」が必要になる。以上の2つは勤務先が発行する書面、いわゆる私文書だから真実性の担保としては本来は不十分なのだ。ただ、公務員とか大企業なら情実で書類を書くということはないだろうから問題はない。しかし、社長と従業員が一緒に仕事をしているなど関係が密な零細の会社だったり、家の仕事を手伝っているばあいなど人的つながりが強かったりしたばあい、休業損害証明書を書く人物の第三者性を担保できないのではないかと疑われるような「ゲマインシャフト的」要素の強い会社だと思われたりしたら、以上のふたつの書面だけでは足りず、さらに賃金台帳なども要求される。

どれくらいの給与をもらっていたのかの立証がされていない場合については、定額認定(日額5700円)になる。その場合のハードルは低く、「休業損害証明書」だけでいい。

間接事実を積み上げていく方法

問題は、勤務先がこの基本中の基本の書面である「休業損害証明書」の発行さえも嫌がる今回の場合である。通常は立証書面がないのだから、それでおしまいだ。支払えないということになる。だから、勤務先に「休業損害証明書」を何としてでも出してもらうしかない・・・。しかし、それでも書いてもらえないばあいは以下のようにするしかないだろう。

たとえば給与明細書。これだけでは客観性に欠けるため、給与が銀行振り込みなら通帳の記載部分のコピーなどを用意する。タイムカードがあるならその写しを確保する。とにかく、自分は仕事をしていること、給与をもらっていること、いくらもらっているかをこうした間接事実を積みあがることで推定させていく。

自賠責は定型文書で立証するのが基本である。しかし、書類が揃わないなど、どうしてもそういうことが不可能な今回のようなケースだってありえる。その場合は、基本書面が出ていないことを理由にすべてダメということにはならない。このように間接事実を積みあがることで立証していけば、自賠責のほうでも改めて調査するという段取りになる。基本の立証書面が出ていないから、たとえば先の例としてあげた実額1日15000円の認定はハードルが高くなるが、少なくとも定額である1日5700円の認定は十分可能である。

任意保険についても立証の仕方の基本は同じである。

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