電柱支線接触・急勾配・傘さし・片手・無灯火・歩道走行・轢き逃げ後接触など自転車関与事故と判例

電柱支線(ワイヤ)接触事故

自転車やバイクが電柱支線に接触する人身事故。この手の事故報道をときどき見かける。たとえば、

神戸の国道2号 白バイ追跡された後に単車と衝突、弾みで…

12日午前8時ごろ、神戸市垂水区塩屋町1の国道2号で、同区の20代男性が運転するオートバイが電柱を支えるワイヤに衝突した。男性は即死し、衝突の弾みで切断された上半身が山陽電鉄の線路内に飛ばされた。オートバイは事故直前まで、兵庫県警長田署の白バイに追跡されていたという。

長田署によると、事故の数分前、同市長田区内の国道2号で、速度超過のオートバイを発見。停止を命じる署員の足をひいて逃走した。白バイが追いかけたが、対向車線に入るなどしたため、追跡を打ち切っていた。直後に別の単車と衝突し、男性は弾みでワイヤに突っ込んだとみられる。

出典(毎日新聞) – Yahoo!ニュース

ふだんは下の写真のようにカバーがついていて何気なく見ている電柱支線だが、このように恐るべき凶器になることがある。

東京地裁八王子支部 昭和47年10月25日判決
自転車に乗った者が電柱支線(道路側に83cmはみ出して設置)に接触し、左足を負傷した事故。支線ガードが設置されていなかったとして、電柱支線の設置管理に瑕疵があったとされた。ただし、自転車側にも前方の注意を怠った過失ありとして、50%の過失相殺を認めた。

 下り勾配5.51%での自転車死亡事故

宇都宮地裁 昭和56年12月24日判決
ガードレールで車道と仕切られた幅1m、地下道部分の下り勾配5.51%の自転車専用道路(行政法規の許容限度に合致している)で、自転車が転倒し搭乗の主婦が死亡した事案。当該自転車道の設置保存に通常の安全性を欠いていたとは認められないとし、瑕疵を認めなかった。

百聞は一見に如かず。裁判官も法令の許容範囲内などと机上の空論ばっかり言っていないで、実際に自転車に乗って、坂道を下ってみたらどうか。調査員の調査小道具のひとつに勾配計があるが、5%は相当にきつい坂である。そのことを少しでも実感していただくため、ユーチューブを貼り付けておいた。

勾配5%の坂は分度器を見ると大した坂でないように思われますが、自転車には大変きつい坂です。勾配5%の坂が20mあると、もはや坂の向こうは見えない・・・という自転車利用者の嘆きの声をネットでみつけた。ユーチューブの映像(1分27秒から)をみると、「勾配5%」がどれほどすごいかがわかるだろう。

なお、勾配〇%と勾配〇度の違いについてはこちら「道路標識でよく見る「勾配○%」 「角度」じゃなくて「%」の意味は?」が詳しい。

救護義務違反のひき逃げをされた後、後続車に轢かれ死亡した事故

名古屋地裁 昭和62年2月27日判決
夜間、信号のある見通しのよい交差点で赤信号で道路を横断した自転車搭乗者に加害車が衝突。救護活動をすることなく加害者は轢き逃げし、その結果、後続車2台に被害者が轢過され死亡した事故。救護義務違反と被害者死亡との因果関係を認定した。なお、対面信号赤で道路を横断した被害者に50%の過失相殺を認めた。

自転車側の傘さし等運転での4輪車との衝突事故

大阪地裁 平成10年1月23日判決
深夜、見通しの良好な交差点を青信号にしたがって渡っていた自転車搭乗の被害者が、右折の自動車と衝突した事故。無灯火のうえ左手でハンドルを握り、右手で傘をさしていた被害者に10%の過失相殺を認めた。

なお、無灯火違反があるかどうかは事故発生時間が夜間であるかどうかで決まる。夜間であるかどうかは、日の出時間と日没時間を気象庁HPに確認し(ネットで調べることができる)、その範囲内なら夜間でないことになるため、無灯火でも違反にならないが、日没後、日の出前が事故発生時間なら、無灯火違反による過失を問うことができる。日没直前もかなり暗いので、ケースによっては無灯火違反による過失が問えるかもしれない。
傘をさしていた歩行者が対向自転車に気づくのが遅れた事故
では、逆だったらどうなるだろうか。すなわち、自転車ではなく、歩行者が傘をさしていたため、前方がおルスになっていた場合である。

大阪地裁 昭和63年3月22日判決
早朝、歩道のない道路上での、対向自転車と歩行者との衝突事故。風雨のため傘を低く前方に出してさし、前方を見ることができない状態で道路を歩行していた歩行者である被害者に前方不注視の過失があり、30%の過失相殺を認めた。

道路右寄りを片手傘差し運転で通行していた自転車が、歩行者に背後から追突した事故

東京地裁平成18年判決
住宅街路上で、片手で傘をさしながら道路右寄りを運転していた加害自転車(高校生)が、ふつうに歩行していた被害歩行者の背後から追突し、頚椎捻挫などの受傷させた。加害自転車は前方不注視、左側通行違反、安全運転義務違反の過失があり、被害自転車に生じた損害を賠償する義務があるとし、歩行者の過失相殺を認めなかった。

店から出てきた歩行者に歩道上を走行していた自転車が衝突した事故

大阪地裁 平成19年3月28日判決
本件事故現場は,幅員約10mの歩道であり,歩道の東西には地下鉄の出入り口がある。また,地下鉄の出入り口東側には,自転車が駐輪していることが多く本件歩道の通行可能部分は狭くなっていた。さらに,歩行者が出てきた店舗の前には2台の看板が設置してあり,そのうちの1つの看板は,歩行者の肩から上が見える程度の高さがあった。自転車(被告)は,南から北へ傘をさしながら走行し、他方,歩行者(原告)は,店舗から本件歩道へ出てきた。両者の接触事故。「原告が本件看板の西側に足を踏む出す際,左右の安全確認を怠っており,本件事故の発生した時刻が夜間であったこと,原告が看板の裏側から現れたこと,原告が被告の進路上に踏み出したのが衝突の直前であったことなど,被告にとって原告が発見しにくい状況にあったことは認められる。しかしながら,歩行者の安全を確保するため,歩道上においては,自転車は歩行者の進行を妨げてはならないとされているところ,本件現場が地下鉄の出入り口付近であり,歩行者の出入りが予想される場所であることや,本件看板によって見通しが悪くなっていたこと,駐輪している自転車によって通行可能部分が狭くなっていたことに鑑みれば,被告としてはより慎重に通行することが求められていたというべきである。さらに,本件事故当時,被告は片手で傘を差しており,被告自転車の操作をしにくい状態であったことを考慮すれば,過失相殺を行わないのが相当である。」

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください