交通事故被害者を2度泣かせない https://jiko-higaisya.info 石川県・福井県・富山県にて、後遺障害2000件、交通事故調査5000件の経験を持つ元保険調査員2人で始めた事務所です。当サイトでは経験に裏打ちされた独自情報を発信中です。当事務所の提供する交通事故・後遺障害情報を他サイトと比較してみてください。なお、ボランティアでの相談を行っております。詳細については、「お問合せ」欄を確認してください。 Sun, 18 Nov 2018 07:22:08 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.8 「自動車事故工学」(江守一郎著) https://jiko-higaisya.info/reading/automobile-accident-engineering/ https://jiko-higaisya.info/reading/automobile-accident-engineering/#respond Thu, 15 Nov 2018 06:19:33 +0000 https://jiko-higaisya.info/?p=16390

前前々回、交通事故に関する記事で江守一郎氏の「自動車事故工学」という本を取り上げた。取り上げたといっても、かんたんなコメントだけだったので、あらためてこの本の感想を書いてみたい。

交通事故鑑定というのは、対象となった交通事故を可能なかぎり再現することである。江守氏はそのように交通事故鑑定を定義されたあと、「はしがき」のところで交通事故鑑定の勘所をこのように述べられている。

事故を再現するにあたって一番始めにすべきことは、非常に常識的に事故の態様を頭の中に描き出すことである。車両のどことどこが接触したのか、車両は2回接触したのか、車両はそのまま停止したのか、または1回転して停止したのか等々、全く数式抜きで車両や人間の運動を想定し、しかもその想定された事故の態様は、現場に残された物的証拠をすべて無理なく説明できるものでなければならない。この段階では、数学は全く入ってこない。この本にはかなり多くの力学的数式が書いてあるから、そのような計算をしないと事故の再現ができないような錯覚を起こしている方がおられるが、これは全然見当違いである。すなわち、この本にある数式抜きの一般的な原理だけを理解して下されば、数式を用いずに誰でも事故の解析はできるし、また自分で行った事故の解析を誰にでも数式を用いないで納得してもらうことができるはずである。

私は美しい力学的計算をした多くの事故解析の中に、明らかに常識と矛盾するものが多いことを発見した。すなわち、解析手法そのものは正しいかも知れないが、問題の事故とは基本的に異なった事故態様の解析をしているのである。この本にある力学的計算は、正しい衝突態様が確立された後に細かい詰めをする段階で初めて役に立つ。(赤字は引用者による)

 
さらに「序」において、

自動車事故には、人間、自動車、道路(すなわち環境)が関係しているので、そのおのおのについて最小限度の知識がなくては、事故という複雑な現象を理解することはできない。しかも事故の種類は多様であり、著者も、かなりの自動車事故を扱ったが1つとして同じような事故に出合ったことがない。事故にはきめ手になる原因がなく、むしろ人間・自動車・環境が構成するシステムの崩壊と考えた方がよい場合が多い。したがって、この本では事故の原因を列することは避け、理解に必要な原理を説明することにした。(P3)

 
難しい数式は後回しでいい。数式に惑わされるな。それよりも、「常識」とか「一般的な原理」から見てどうなのか。事故の再現にとってそれがもっとも大切だと言っているわけである。

それでは、ここでいう「常識(的)」とか「一般的な原理」とかいうのはどういうことだろうか。この点の説明に詳しいのが、類書と一線を画す江守本の特徴である。たとえば、

車のこわれ方を見ただけで特別な場合(たとえば正面衝突)以外は衝突速度を推定することは困難である。このような簡単な力学を理解しないで事故再現のエキスパートと称し、車のこわれ方を見て推定速度を推定している人々を私はアメリカで沢山見かけた。(P15)

 
とか、

人間が情報を読みとって行動を起こすまでの遅れ時間を反応遅れという。陸上運動で100mのスタートをみればわかるように、人間は情報に反応するにはそう長く時間はかからない。陸上競技の選手で1/10秒ぐらいだが、普通人はたいてい2/10秒ぐらいと考えてよい。これらの値はある現象が起きることを期待し、注意力をそのことに集中している場合の反応遅れで、自動車を運転したりほかのことを考えていれば、当然もっと長くなる。

以上は、何が起こるかをあらかじめ知っている場合であるが、自動車事故ではだれも衝突が起こることを予期しない場合が多い。このような場合には、まず何が起こったのかを発見しなければならないから、反応遅れはさらに延び、秒のオーダーになってくる(P18-)

 
とか、

人間の反応遅れは事故に関するかぎり厄介の性質である。とくに、人間の反応遅れが衝突の継続時間(あっという間の時間、正面衝突で0.1秒、追突や側面衝突で0.2秒という実車実験の測定結果による。引用者注)より長いから、事故に遭った当事者でも正確に衝突のプロセスを述べることはできにくい。ましてその時の推定速度などについてはまったくでたらめな証言しか得られない。事故における自分の立場を不利にしないために故意に事実と違った証言をすることもあるが、多くの場合、その人の信じている事実そのものが怪しいから、一般には目撃者や当事者の証言は参考程度と考えた方がよい。(P21)。

 
とか、

(対人衝突について)「おとなと子供では、はねられた後の運動が異なることが認められる。・・・おとなが自動車にはね飛ばされると、まずボンネットの先端で腰を、バンパーの先端で脚を打つ。人間に加わる力は重心より下にあるために、人間は重心を中心として回転を起こしボンネットの上に乗せられる。その後ボンネットの上をすべり、頭をウィンドシールドにぶつけて、さらに回転を続ける。人間に加えられた回転および並進の運動エネルギーが全部ポテンシャルエネルギーとして消費されるまで重心の位置が上がり、その後はボンネットの上をすべって自動車の前方に落ちる。自動車がブレーキをかけない限りひかれることになる。

これに反し、子供は重心の位置が低いから、衝突によって子供に加わる力は重心の位置より高いか、または同程度である。したがって子供は・・・単にはね飛ばされて倒れ、ボンネットの上に乗ることはない。ごくおおざっぱに考えれば、子供に加わる衝撃力は重心に近いために回転を起こさない。おとなは回転を起こすから重心の加速度は子供に比べて小さい。回転してボンネットに上がっても、最終的には車速まで加速されるわけだから、加速度の合計は子供と同じになる。おとなはボンネットの上にはね上げられると、腰のほかに頭その他の部分を打撲するが、おのおのの打撲による加速度のレベルは小さい。

最後に地面に叩きつけられるときの衝撃はボンネットの上に上がって落ちるほうが大きいことは明らかである。子供はボンネットの上に上がらないで押し倒されるから、衝撃後地面に叩きつけられるまでの時間は短い(P113‐)

 
むち打ちについてもごもっともといえる記載がある。

追突における車の加速度は正面衝突に比してはるかに小さいから、頚に力を入れるとか、手を頭の後に組めば、頭が後方に回転することは十分防げるはずである。しかし衝突の継続時間が約0.2secと短く、人間の反応遅れと同程度、またはそれ以下であるために、追突されることがあらかじめわからない限り、体を緊張させることはできず、むち打ちを起こしてしまう。

したがって、同型の車の追突では、衝突車も被衝突車も減(加)速度の程度は同じであるにもかかわらず、追突する車の乗員は衝突を予期しているから傷害は少なく、被衝突車の乗員は予期しないからむち打ち症を被る。このようにむち打ちは、人間の反応時間の遅れ以内で起こるから、能動的な装置では効果を期待することができず、受動的な装置によって防ぐ以外に方法はない。(P125)。

 
ぼくがこれまでに書いた記事(「むち打ち損傷に関する工学鑑定について」や、「車の損傷程度から衝突速度を推定する」という記事で主張したいことと同旨である。さらに、まだ完成していないが、「空走時間「0.75秒」は、どこまで正しいのか?」という記事を書くきっかけを与えてくれたのは、事故にあったことがある人ならだれだって知っている常識から「0.75秒」を疑うことである。「0.75秒」(あるいは~1秒でもいいが)では早すぎるし、仮に正しいとしても、若者も高齢者も一律に「0.75秒」を適用するのはまったくおかしい。

また、判例タイムズの過失相殺率基準本では、事故当事者の「過失」のみを対象にして、そのほかの車や環境要因は取り上げていない。その理由は、それらは事故原因にならない、万が一なったとしても無視していい存在ということらしい。そのような主張もかまわないが、そのためには根拠を示すべきである。江守本は、その点についても批判の書となりうる。

こういう「常識」「一般原理」がこの本にはいたるところに書かれている。交通事故を現にやられている先生方には必読の書だとぼくは思う。ぼくが所持しているのは1974年発行の旧版で10年ほど前に購入した。その新版(1985年発行)も出ている。値段(現時点で2万円を超えている)が当時よりもさらに高くなった。ぼくもあのとき、思い切って新版を買っておくべきだった。

この本にはこのように原理・常識が書いてあるから、古くても十分使えると思う。交通事故鑑定人の中にもこの書を推薦している方も多い。本当は新版がいいのだけれど、そのうち安くなったらぼくも買い替えるつもりだ。

最後に。著者も強調していることだが、「正しく事故を再現できるような資料を得るには、現場に居合わせた調査官が有効で適切な記録をしてくれなければ不可能である」。

ここでいう「有効で適切な記録」とはどういう種類ものを指すのか。
たとえば、信号のない交差点において、一方に一時停止規制がある。一時停止規制のあるほうから一時停止後当交差点を進入したと主張するA車が左方交差道路から進入したB車と衝突した。衝突地点は一時停止線から10mだったとしよう。A車の衝突時の速度が時速30㌔だったとしよう。問題は10mの間に時速30㌔に加速できるかどうかである。できなければ一時停止はしていなかったことになる。

時速30㌔に加速できるのかどうかを計算するために、江守氏は以下の計算式を本書であげている。

v=√0.65×9.8×10≒8m/sec=29km/h

「0.65」は新しいタイヤと乾燥・アスファルトの摩擦係数。
「9.8」は重力加速度の大きさである9.80m/sec^2 から。

 

以上の計算は可能な加速度の上限を与えるから、実際にはそこまで加速することはできない。車が停止したかしないか、または少なくともどのくらいの速度で交差点に入ってきたかというような問題は、このような簡単な計算で十分判定できるケースが多い(p36)

 
たとえ計算式の意味するところがわからなかったとしても、その基礎となる情報であるタイヤの状態や路面の状態などを調査する者が的確に記録すればいいということになる。

新版 自動車事故工学―事故再現の手法 新版 自動車事故工学―事故再現の手法 ]]>
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PHPを7.1に変えたら、不具合発生。 https://jiko-higaisya.info/miscellaneous-thoughts/php%e3%82%927-1%e3%81%ab%e5%a4%89%e3%81%88%e3%81%9f%e3%82%89%e3%80%81%e4%b8%8d%e5%85%b7%e5%90%88%e7%99%ba%e7%94%9f%e3%80%82/ https://jiko-higaisya.info/miscellaneous-thoughts/php%e3%82%927-1%e3%81%ab%e5%a4%89%e3%81%88%e3%81%9f%e3%82%89%e3%80%81%e4%b8%8d%e5%85%b7%e5%90%88%e7%99%ba%e7%94%9f%e3%80%82/#respond Thu, 15 Nov 2018 00:43:12 +0000 https://jiko-higaisya.info/?p=19559

PHPを7.1に変更したら、画像を取り込めなかったり、記事の更新ボタンを押しても画面が白くなったり。プレビューが表示されなくなったりで大弱り。まだほかにもあるかも。データベースとの連絡がうまくいっていないようです。現在、プロバイダーにどうしたらいいのか質問中です。回答には最大2日間を要するみたいです。その間、記事出しもできないというのも困る。

それで、ちょっとテストのつもりでこの文章が公開できるのかやってみました。公開できるのだったら、多少の不具合があっても記事出しができるからです。

テストの結果。
文章は公開できる。画像はダメ。ということがわかった。新規に記事を書くのはなにかとメンドーだが、これまでに書いた記事の文章の手直しには差しさわりがなさそうだ。

【追記18・11・17】
PHP5.6モジュールに変えてみた。同じ。解消できず。5.6の別のにも変えてみたが、同じ。

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アマゾンの書籍広告を個別記事の左サイドに載せた https://jiko-higaisya.info/miscellaneous-thoughts/%e3%82%a2%e3%83%9e%e3%82%be%e3%83%b3%e3%81%ae%e6%9b%b8%e7%b1%8d%e5%ba%83%e5%91%8a%e3%82%92%e5%80%8b%e5%88%a5%e8%a8%98%e4%ba%8b%e3%81%ae%e5%b7%a6%e3%82%b5%e3%82%a4%e3%83%89%e3%81%ab%e8%bc%89%e3%81%9b/ https://jiko-higaisya.info/miscellaneous-thoughts/%e3%82%a2%e3%83%9e%e3%82%be%e3%83%b3%e3%81%ae%e6%9b%b8%e7%b1%8d%e5%ba%83%e5%91%8a%e3%82%92%e5%80%8b%e5%88%a5%e8%a8%98%e4%ba%8b%e3%81%ae%e5%b7%a6%e3%82%b5%e3%82%a4%e3%83%89%e3%81%ab%e8%bc%89%e3%81%9b/#respond Sat, 10 Nov 2018 09:36:04 +0000 https://jiko-higaisya.info/?p=16369

表題にあるとおりで、広告がややいっぱいいっぱい感があるかもしれません。ぼくがそう思うのですから、ここを訪問されている方はもっと思うかもしれません。やや、やりすぎな感じもしないではないのですが、当サイト運営にはどうしてもおカネがかかってしまうため、できるだけ出費+収入=ゼロを目指しております。

で、当サイトの収入と出費の話です。

まず収入についてですが、googleの広告(今年1月から開始)による収入が今は月に××××円に届くかどうかくらいですが、ほんの数か月前までは××××円とか××××円とかだった。アマゾンからの広告収入ですが、ここ最近は月2000円に届きそうなのですが、今年度を月平均にしてしまうと、1000円を超える程度だと思います。当サイトからの収入はそれだけです。

出費のほうですが、本代を計算してみたところ、年間(昨年12月~今年11月まで)で交通事故に関するものに限定すると6万円に若干満たないくらいでした。今年は医学書をほとんど購入していないため、本代は例年の半分くらいでした。あと、ブロバイダー代が月に6000円くらいだったか。独自ドメイン代が年間8000円くらいだったか。うろ覚えですが。サイトを始めた5年前からの出費を考えると、大赤字もいいところです。

googleからの収入が入るようになった本年にかぎって計算しても、というか計算するまでもなく、それでもやはり赤字ですね。これからはトントンになればいいかと思っています。

以上、広告についてお見苦しいかもしれません。もうこれ以上増やすつもりはありませんが、しばらくは(あるいはこのまま)この調子で頑張りたいと思います。

(追記)
グーグルアドセンスの決まりでは、収益がどれだけあったのかを公開できないらしい。そのため×にした。やったらいけない決まりが他にもあるようで、そのうちの代表的なものは知っていたが、これは知らなかった。

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交通事故調査・賠償、後遺障害で役立った本 https://jiko-higaisya.info/reading/book/ https://jiko-higaisya.info/reading/book/#respond Thu, 08 Nov 2018 04:51:03 +0000 https://jiko-higaisya.info/?p=16219

アマゾンからの紹介手数料について

このところアマゾンからの紹介手数料が月に2000円近くになる。なんだ2000円ポッチで喜んでいるのかと言われるかもしれないが、貧乏人のぼくにとって、何もしないで入る収入なので、夢みたいなもので、それだけでたいへんうれしい。クリックし、本を購入していただいたみなさん、どうもありがとう。

できることなら収入をもっとあげたい。と思ったので、目障りかもしれないが、以下の本の紹介記事を書くことにした。いずれは、幣サイトの左サイドに移し、常時みなさんの閲覧に供しようかと思う。お前の推薦する本じゃ参考にもならんわと言われそうだが、貧乏人を助けると思って、そこはチト我慢してください。みなさんがクリックし、アマゾンでじゃんじゃん本を買っていただけるとぼくの収入ももっと増える。その結果、毎月確実に2000円を超えるはずだと算段した。実は、四国の田舎の交通事故専門の弁護士さんのやり方を真似てみたいのである。

交通事故にかかわる分野はいっぱいある

交通事故にかかわる分野は多岐にわたる。たとえば事故の原因を探ろうと考えたら、交通事故鑑定の最低限の知識が必要になるし、過失割合や賠償の範囲を知ろうと思ったら、道交法や民法、自賠法、保険法の知識も必須である。事故で死傷しているなら、医学的な基礎知識もひととおり知らないと話にならない。

それだけではまだ足りない。運転者はどういう心理状態で交通事故をやらかしてしまうのか、交通心理学の知識も必要になることがあり、それがないがために、事故の真相に迫れないことがある。また、事故当事者のいわゆるヒューマンエラーにしか目がいかない人が多いが、道路環境にまで目を向ける必要がときにあるかもしれない。

これまでに購入した本の中で、特に役立ったもので、現時点で入手可能なものに限定して紹介してみたい。

事故調査に役立つ本

当事務所では交通事故鑑定をやるだけの能力に欠けているためこの分野は扱っていないが、事故現場や事故車の確認を実施するうえで、「証拠」の保全が欠かせない。そのためには事故鑑定の最低限の知識がどうしても必要になる。あるいは、世に出回っている鑑定書の真贋を見極めることなどぼくらにはできない相談だが、疑問を抱く程度のためにも基本的な知識は必要である。

1⃣ 実用 自動車事故鑑定工学 実用 自動車事故鑑定工学
林洋氏の代表作。古いという批判があるが、定番教科書である。ぼくも記事を書く上で大変お世話になっているし、ちょくちょく引用している。

 

2⃣ 自動車事故工学―事故再現の手法 (1974年) 自動車事故工学―事故再現の手法 (1974年)
江守一郎氏の代表作。新版(と言っても1984年)が出ているが、高くて買えなかった。これも定番教科書のひとつと言われている。

 

3⃣事故解析技法 自研センター

旧版(平成元年)を持っている。新版(平成20年5月改訂版)は5250円。この本でいちばんすごいと思ったのは、軽微物損事故の実験が豊富なこと、すなわち、バンパーの破損・へっこみ具合から加害車両の速度を推定する実験結果がたくさん載っていることである。なお、自研センター発行の本は一般書店では入手できないようだ。ネットで専門店から入手可能である。

 

4⃣バリア衝突実験写真集 (第3版、2011年)自研センター

側面擦過衝突や偏心ポール衝突、車対車側面衝突、車対車フルラップ追突などの多様な衝突条件での実験結果が掲載されている。事故車の傷をどう評価するのかを知るための必須の文献だと思う。3150円。

 
個々具体的な事件の適用例については、林洋氏や江守一郎氏の本が参考になった。ここではそのうちのごく一部を紹介する。

 

 

 

過失割合・賠償の範囲に役立つ本

代表的なものだけを挙げた。

 

2⃣

通称「赤本」といわれているやつ。「青本」を挙げていないのはたんに持っていないからである。念のため。

 

3⃣ 概説交通事故賠償法 第3版 概説交通事故賠償法 第3版
自賠責の国際比較が載っているのがいい。新版は扱い量が少なくなったのが残念だけれど。

 

4⃣ 交通損害関係訴訟 (リーガル・プログレッシブ・シリーズ) 交通損害関係訴訟 (リーガル・プログレッシブ・シリーズ)
東京地裁民事27部の裁判官が参加している。裁判所の判断の傾向を知るのに有用。

 

5⃣ 17訂版 執務資料 道路交通法解説 17訂版 執務資料 道路交通法解説
道交法の定番教科書。

 
6⃣ 二訂版 基礎から分かる 交通事故捜査と過失の認定 二訂版 基礎から分かる 交通事故捜査と過失の認定
「信頼の原則」という記事を書いた際に、たいへん参考になった。この本なくして「信頼の原則」の記事の信頼度は無きに等しい。

保険を知るのに役立つ本

学者の書いた保険法の本なし。持っていないからである。が、以下の3冊があればたいていのことは足りると思う。

 

2⃣ 損害保険の法務と実務(第2版) 損害保険の法務と実務(第2版)
相手のことを知らないと勝負にならない。

 

3⃣ 逐条解説 自動車損害賠償保障法 逐条解説 自動車損害賠償保障法
自賠法条文の解説書。

後遺障害を知るのに役立つ本

後遺障害についての本は別記事(「後遺障害を知るために読むべき本」)に書いたことがある。詳しいことはそちらの記事に譲り、ここでは基本中の基本書だけの紹介にとどめたい。ただし、精神疾患に関する本の紹介がまだだった。外傷性になじまない疾病性の傷病は、事故との因果関係を立証するうえでもっとも難しい事案である。ぼくがこれまでに読んだ精神疾患に関する本の中で「よかった」本・読まないと先に進めない本を紹介したい。

1⃣労災障害認定必携

専門店が扱っているらしい。

 

後遺障害をやるのだったら、これは必読書である。ひととおりのことが書いてあるし、参考文献の紹介も熱心である。以上、ふたつは基本中の基本の書。

 

3⃣ DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引 DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引
精神疾患の診断基準本。が、こちらはダイジェスト版である。ダイジェストでないほうはこちら。
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル
高くて買えなかった。

 

4⃣
DSM-4の監修者だった人(アレン・フランセス)のDSM-5使いこなし本とその限界を示した本
精神疾患診断のエッセンス―DSM-5の上手な使い方 精神疾患診断のエッセンス―DSM-5の上手な使い方

 

6⃣ 看護のための精神医学 第2版 看護のための精神医学 第2版
交通事故との因果関係で問題になるうつ病やてんかんなどの外因性精神病が詳しく説明されている。

 
ついでなので新刊本の紹介も。

8⃣ 後遺障害入門―認定から訴訟まで 後遺障害入門―認定から訴訟まで
最近読み終えた本。はしがきからおわりまで一言も逃さないつもりで読んだ。若い時は別にしてここまで熱心に読んだ本は最近記憶にない。先に紹介した弁護士本をたぶんに意識した本である。つまり、高野本に載っていない遷延性意識障害とかPTSDとかを積極的にとりあげている。大変勉強になった。が、あえてひとつだけ不満がある。偉い先生方の本に対して「不満」とは何事かと思われたかもしれない。これはいずれ別記事でとりあげたい。

交通心理学に関する本


歩行者 人動車 道―路上の運転と行動の科学 歩行者 人動車 道―路上の運転と行動の科学
他にもいくつも類書が出ているし、持っているが、この本のみの紹介にとどめる。この本はとにかくすばらしい。調査研究の宝庫みたいで。

番外編

いいもわるいも特殊分野の本なので、これを見るしかないという本。

1⃣ 裁判例にみる交通事故物的損害 全損 第3集 裁判例にみる交通事故物的損害 全損 第3集
旧版(第2集)は持っているが、新版の第3集はまだ買っていない。買うかどうかもわからない。全損賠償の決定版。

 

 

 

4⃣ 加害者・被害者のための自動車・物損事故解決のしかた―保険と過失割合算定方法がよくわかる本 加害者・被害者のための自動車・物損事故解決のしかた―保険と過失割合算定方法がよくわかる本
上の3著の著者・海道野守氏が一般向けに書かれた物損請求書。古いが、わかりやすくてすごくいい本である。記事ネタにも何度かした。

 

5⃣ 2018年版 損害賠償における休業損害と逸失利益算定の手引き 2018年版 損害賠償における休業損害と逸失利益算定の手引き
これも休業損害分野の唯一の本。毎年のように改定されている。ここの先生は休業損害だけでなく、実は休車損の調査もやられていたから、休車損の本も書いていただけるとありがたいのだが。

心に残った本

心に残るかどうかはその本のすばらしさにもよるが、読者の世界観とか価値観とかと共鳴し合わないと成立しない。だから、ここで取り上げた本の中には、なんだあんな偏向本というのもあるかもしれない。

自動車の社会的費用 (岩波新書 青版 B-47) 自動車の社会的費用 (岩波新書 青版 B-47) 交通死―命はあがなえるか (岩波新書) 交通死―命はあがなえるか (岩波新書) 加害者天国ニッポン―交通死・重度後遺症被害者は告発する。 加害者天国ニッポン―交通死・重度後遺症被害者は告発する。 クルマを捨てて歩く! (講談社プラスアルファ新書) クルマを捨てて歩く! (講談社プラスアルファ新書) ]]>
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事故状況に関する相談については先1か月はご遠慮ください https://jiko-higaisya.info/information/%e4%ba%8b%e6%95%85%e7%8a%b6%e6%b3%81%e3%81%ab%e9%96%a2%e3%81%99%e3%82%8b%e7%9b%b8%e8%ab%87%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%e3%81%af%e5%85%881%e3%81%8b%e6%9c%88%e3%81%af%e3%81%94%e9%81%a0%e6%85%ae/ https://jiko-higaisya.info/information/%e4%ba%8b%e6%95%85%e7%8a%b6%e6%b3%81%e3%81%ab%e9%96%a2%e3%81%99%e3%82%8b%e7%9b%b8%e8%ab%87%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%e3%81%af%e5%85%881%e3%81%8b%e6%9c%88%e3%81%af%e3%81%94%e9%81%a0%e6%85%ae/#respond Tue, 30 Oct 2018 01:11:40 +0000 https://jiko-higaisya.info/?p=16144

誤解されると困るので一言しておきますが、別に相談がいっぱいあるわけではなく、あいかわらず少ないのですが、比較的に多い事故状況に関する新規の相談については11月中は受け付けないことにしました。いま、目一杯です。家庭のことや仕事のことで時間があまりなく、残された時間については他の重い案件に集中したいこと、それでも時間が残っていたら、新規の記事出しや過去の記事の見直しに時間を使いたいからです。

したがって、事故状況に関する相談については、後回しにされるか、無視されるかと思っていただきたい。とりあえず、11月いっぱいは事故原因に関する相談についてはこちらは相談にのれませんので、悪しからずです。

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https://jiko-higaisya.info/information/%e4%ba%8b%e6%95%85%e7%8a%b6%e6%b3%81%e3%81%ab%e9%96%a2%e3%81%99%e3%82%8b%e7%9b%b8%e8%ab%87%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%e3%81%af%e5%85%881%e3%81%8b%e6%9c%88%e3%81%af%e3%81%94%e9%81%a0%e6%85%ae/feed/ 0
そうじゃなく、弱いモンの味方せえよ。 そやなかったらお前らの存在意義は何なんや?ちゅう話でね。(上岡龍太郎の言葉) https://jiko-higaisya.info/miscellaneous-thoughts/%e4%b8%8a%e5%b2%a1%e9%be%8d%e5%a4%aa%e9%83%8e/ https://jiko-higaisya.info/miscellaneous-thoughts/%e4%b8%8a%e5%b2%a1%e9%be%8d%e5%a4%aa%e9%83%8e/#respond Sat, 27 Oct 2018 09:22:52 +0000 https://jiko-higaisya.info/?p=16050

【上岡龍太郎の言葉】

はたから見てたら羨ましく見えるんやろうね。
自由な時間に好き勝手やってエエ思いしてるように見える、
そやから変に嫉妬する連中が出てくる。

つまり、見栄えが悪い子供の教育に悪い。
何より朝から晩まで働いてる俺の胸糞悪い。

僕ら芸人は良いですよ、末路哀れは覚悟の上、
そんなもん畳の上で死ねん、親の死に目にも遭えんと思ってますよ。

そやけど人生で身動きとれん様になった人に救いの手を差伸べんと、
変に迫害する連中が居るのには呆れる、それも政治家。

政治家とか言う連中は何の為に存在するのか分ってない奴が多すぎる。
政治家で強いモンの味方する奴なんか最低ですよ、

強い奴はほっといても生きていけるんやから。
そうじゃなく、弱いモンの味方せえよ。
そやなかったらお前らの存在意義は何なんや?ちゅう話でね。

 
上岡龍太郎は知性を漂わせる話し方をされる人だったと記憶していたけれども、それに加えて、反骨精神がこんなに旺盛な芸人だったことを知ったのは上岡が芸能界を引退した後のことだった。上岡はオカルトを嫌悪し、論理を重んじ、権力者におもねらず、弱きを助け、強きをくじこうとした。上岡は庶民に対するやさしさに満ち溢れていた。

もし、上岡が芸能界を引退していなかったなら―――という仮定で語るのはなんだかむなしすぎるけれども、もし今も芸能界で健在だったなら、たまにつけるとテレビでよく見かける、でかい声だけしか能がない、強いものになびいてばかりの恥知らずな電波芸者どもをあんなにはびこらせることはなかったかもしれない。

下の動画は横山ノックが亡くなったときの告別式での上岡の献杯の言葉。その天才話術とあふれるほどのやさしさ。ぼくは自分の気持ちが揺らいでいるとき、落ち込んでいるときにこの動画を見る。

しょせん、人間なんてちょぼちょぼやしなあ、えらくなったってなんぼのもんやい。人生一度きりやしなあ、やれることは限られているけれども好き勝手にやってみたい。それでも人に対するやさしさだけは忘れるなよ、自分より弱いモンを踏みつけにして嬉々としているサイテーの連中にだけはなるなよと、上岡の声が聴こえてきそうな気がしてくる。

そんなふうに叱咤激励されて、当サイトで記事を書いている。内心はこんな記事ばっかり書いていたら敵ばっかりつくってしまうなあ、もうやめとこうかなあ、そんなふうに心が揺れるのをなんとか抑えて。

みなさんも、ぜひ上岡の献杯の言葉を聴いてください。

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https://jiko-higaisya.info/miscellaneous-thoughts/%e4%b8%8a%e5%b2%a1%e9%be%8d%e5%a4%aa%e9%83%8e/feed/ 0
脳脊髄液減少症の相談 https://jiko-higaisya.info/whiplash-injury/cerebrospinal-fluid-hypovolemia/ https://jiko-higaisya.info/whiplash-injury/cerebrospinal-fluid-hypovolemia/#respond Fri, 26 Oct 2018 08:11:17 +0000 https://jiko-higaisya.info/?p=16041

損保業界では「うさんくさい」「詐病じゃないのか」とコテンパンに言われ放題の脳脊髄液減少症。2日前にこの傷病で相談があった。ネットで判定基準をみつけたので、かんたんなメモとして残しておきます。

脳脊髄液減少症の判定基準はこちらです。

冒頭から厳しいことばです。「減少」するというがどれくらい減少するのか計測できない。現状では唯の推論だと。いちおう本文のほうも引用しておきます。

*研究班では、以下の基準を作成するにあたり、疾患概念についての検討を行った。「脳脊髄液減少症」という病名が普及しつつあるが、現実に脳脊髄液の量を臨床的に計測できる方法はない。脳脊髄液が減少するという病態が存在することは是認できるとしても、現時点ではあくまでも推論である。画像診断では、「低髄液圧」、「脳脊髄液漏出」、「RI 循環不全」を診断できるにすぎない。

以上のような理由で、今回は「脳脊髄液減少症」ではなく「脳脊髄液漏出症」の画像判定基準・画像診断基準とした。

 
ざぁっと目を通しましたが、減少量の把握ができないため、脳脊髄液減少症に伴う各症状および隣接傷病からその存在を類推するという手法を採用するしかないみたいです。検査の内容は以下のとおり(冒頭の画像を見てね)。

低髄液圧症については、頭部MRI(硬膜肥厚) ・髄液圧測定

髄液漏出症については、脳槽シンチ・MRミエロ ・CTミエロ

 
結果は厳しいようです。

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「お問合せ・苦情等」を改訂しました https://jiko-higaisya.info/information/%e3%80%8c%e3%81%8a%e5%95%8f%e5%90%88%e3%81%9b%e3%83%bb%e8%8b%a6%e6%83%85%e7%ad%89%e3%80%8d%e3%82%92%e6%94%b9%e8%a8%82%e3%81%97%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f/ https://jiko-higaisya.info/information/%e3%80%8c%e3%81%8a%e5%95%8f%e5%90%88%e3%81%9b%e3%83%bb%e8%8b%a6%e6%83%85%e7%ad%89%e3%80%8d%e3%82%92%e6%94%b9%e8%a8%82%e3%81%97%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f/#respond Fri, 26 Oct 2018 04:33:37 +0000 https://jiko-higaisya.info/?p=16032

調査費用を支払ってでもいいから、調査を受けてほしいというご相談・ご依頼が、まだまだ少ないけれど、今月は3件、夏以降からは、月に平均して1、2件はあるようになりました。全部お断りしましたが、本日から弁護士を通じてならお受けできるかもしれませんとお答えすることにしました。

ただ、近傍はともかく、遠方でも正式に調査を受けるとなると、家庭の事情や仕事の事情があったりするため、そんなにかんたんではないかもしれません。やったことがないので、こればかりはぼくもよくわかりません。それに、歳も歳なので、がむしゃらに働きたいとも思いません。無理がきかない。いいかげんですね。

実際に動けるようになるのは来年以降かと思いますが、とりあえず「お問合せ・苦情等」を一部改定しました。何かお気づきの点や問題になりそうな点がありましたら、教えていただけるとたいへん助かります。

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「憲法学教室 第3版」(浦部法穂著)を読み返す https://jiko-higaisya.info/reading/the-constitution-of-japan/ https://jiko-higaisya.info/reading/the-constitution-of-japan/#respond Thu, 25 Oct 2018 13:58:55 +0000 https://jiko-higaisya.info/?p=15761

憲法改正ももう待ったなしに

本日、ネットを見ていたら、「安倍晋三首相 所信表明演説で憲法改正議論進展に意欲 第197臨時国会召集」というニュースをやっていた。憲法改正が具体的な政治日程になってきた。もう待ったなしだ。

日程にあがっているものの、まだ改正(改悪)されたわけではない。が、そういうぼく自身は半ばあきらめかけている。それじゃいけないと思う。2年半前に、出版されたばかりのある憲法書を旧サイトで紹介したことがある。2名の弁護士の方から「いいね」と賛意もいただいた。日本国憲法とはどういう憲法なのか。「押し付け」だの、「古臭い」だの、「翻訳調」だのと本質的でないところでぼろんかすに言われているが、実際のところはどうなのか。みなさん、この機会に憲法書を読んでみよう。憲法改正までまだ間がある。あきらめるのはまだ早い。そう思い、改めてその記事を紹介してみたいと思った。

浦部法穂の「憲法学教室」

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もう風前の灯火になりかけつつある日本国憲法。ぼくはすばらしい憲法だと思うし、ぜんぜん新しくもないのに、なぜだか「新」9条論とかいわれているものも含めて、改憲など決して許してはならないと強く思う。その、大切な日本国憲法への熱い・熱い思いそのままの憲法書がこのたび発売された。いや、今だからこそまさに発売された。浦部法穂の「憲法学教室」のことである。立場も明確、論理も明快.。だからすごく読みやすい。憲法改悪阻止のための知的反撃の書である。10年ぶりの大幅改訂版だということだったので、旧版は持っていたがさっそく注文することにした。

憲法学教室 第3版 憲法学教室 第3版

その浦部憲法書に対して、偏向しているとか、中立的でないとか、わけのわからん批判がある。そもそも偏向してない本、中立的な本なんてこの世に存在するのだろうか。存在するのだったら、ぜひ教えていただきたいものだ。

偏向とは何か

偏向とは何か、中立的とは何か。これらの言葉の意味するところについてちょっとでもまじめに考えてみたことがある人なら、安易にこれらの言葉を使っての批判などできないはずである。自分は偏向していない、中立の立場なのだとおめでたくも考えている人が多いようなので、そのイデオロギー性について、丸山真男が以下のように書いている。ご紹介しよう。

ゲーテは「行動者は常に非良心的である」といっておりますが、私たちが観照者、テオリア(見る)の立場に立つ限り、この言葉には永遠の真実があると思います。つまり完全にわかっていないものをわかったとして行動するという意味でも、また対立する立場の双方に得点と失点があるのに、決断として一方に与するという意味でも、非良心的です。にもかかわらず私たちが生きていく限りにおいて、日々無数の問題について現に決断を下しているし、また下さざるを得ない。純粋に観照者の立場、純粋にテオリアの立場に立てるものは神だけであります。その意味では神だけが完全に良心的であります。

私たちの社会というものは、私たちの無数の行動の網と申しますか、行動の組合せから成り立っております。社会がこうして私たちの行動関連から成り立つ限りにおいて、私たちは行動あるいは非行動を通じて他人に、つまり社会に責任を負っています。その意味では純粋に「見る」立場、ゲーテの言う意味での完全に良心な立場というものは、完全に無責任な立場ということになります。

したがってこの点でも神だけが、完全に無責任でありうるわけであります。認識することと決断することとの矛盾中に生きることが、私たち神でない人間の宿命であります。私たちが人間らしく生きることは、この宿命を積極的に引き受け、その結果に責任を取ることだと思います。この宿命を自覚する必要は行動関連が異常に複雑になった現代においていよいよ痛切になってきたのです。

世のなかには一方では、認識の過程の無限性に目をふさぎ、理論の仮説性を忘れる独断主義者もいれば、またそもそも認識の意味自体を頭から蔑視する肉体的行動主義者がいます。しかし他方その半面では、物事はそう簡単にはイエスかノーかきめられないのだ、もっとよく研究してからでなければなんともいえないという名目の下に、いつも決断を回避することが学者らしい態度だという考え方がかなり強い。

あるいは対立する政治的争点に対して、あれももっとも、これももっとも、逆にそれを裏返しとして、あれもいけない、これもいけないということで、結局具体的な争点に対して明瞭な方向性を打ち出すことを避ける態度をもって、良識的であるとか、不偏不党であるとか考える評論家やジャーナリストもかなりいるようであります。

たびたびゲーテの言葉を引いて恐縮ですが、ゲーテはこういうことをいっています。「自分は公正であることを約束できるけれども、不偏不党であるということは約束できない。」今申しましたような世上いわゆる良識者は対立者に対してフェアであるということを、どっちつかずということと混同しているのではないでしょうか。

「現代政治の思想と行動」丸山真男 P452-454

〔新装版〕 現代政治の思想と行動 〔新装版〕 現代政治の思想と行動

浦部憲法はむちゃくちゃ偏向している

浦部憲法は「公正であることを約束できるけれども、不偏不党であるということは約束できない」という類の本である。そう、むちゃくちゃ偏向しているのだ。すなわち、庶民の立場に立って、為政者に対して憲法を守れと強く主張している。したがって、けっしていわゆる中立的な本ではない。世に多く出回っているような、為政者にも理解を示し、庶民にも理解を示すというような、一見中立的だが、どっちつかずで、どちらにもいい顔をしようとする。その結果、為政者への「しばり」になりきらない現状追認の本とは一線を画す。

どんなにひどい犯罪者集団であれ、どんなにむごい反社会集団であれ、かれらの犠牲者数は多くても数十人か数百人ていどである。が、歴史を振り返ると、為政者による犠牲者数はその数倍どころでない。数百万あるいは数千万に達するのだ。桁がそもそも違うのである。

「 権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」。この本は、このような為政者性悪説観にたって、その被害の途方もない大きさを二度と繰り返さないために、為政者からの最大の被害者である庶民の立場であることを著者は明確に示し、その上で為政者を縛るための論理を展開している。憲法が為政者を縛るためのものであるなら、立憲主義に立つことを徹底するなら、ぼくは浦部の立場を熱烈に支持する。そこが、たとえば芦部本との決定的な違いだろう。芦部憲法を1度読んだことがあるが、頭が悪くてメンドくさがり屋のぼくには、芦部本の、まわりくどくて、行間を読まないと理解しがたい難解さに、退屈きわまりなかった。
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うさんくさい「新」9条論

ここで、ついでに「新」9条論についても一言しておきたい。下記は、斎藤美奈子氏の新聞に公開されたエッセイで、公開当時非常に評判になった。「新」9条論のうさんくささの本質を突いていたからである。

ある所与の現実と、その現実に対応させられた言葉がある。ところがこの言葉自体は、現実そのものにではなく、現実にあてがわれた観念と組みあわさっている。この観念と言葉との関係はピッタリ一致するものではなく、実はうさんくさいものだ。憲法の文言だって同じだ。

「新」9条論を唱えている学者たちは、9条の文言をもっと厳密に規定しなおせば解釈改憲など起こりっこないと考えているらしい。しかし、どんなに厳密に規定しなおしても、憲法の文言もそれが言葉で形作られているかぎり、言葉一般の特性である観念と言葉との関係にあるそのうさんくささから逃れることはできない。斎藤美奈子氏はそのことを言っているのである。

「一流」とかいわれているらしい学者やマスコミ人たちがこぞってそのことが理解できないらしく、どんなに批判されても撤回する様子がまったくない。蛙のツラに小便。どうしてわざわざこのタイミングに、政府与党の違憲行為を追認するかのような「新」9条論なのか。自分たちが唱えている「新」9条論が自民党の憲法改悪論議に収斂されてしまわないのだろうかと、どうして思わないのか。自民党の改憲が成就するときがかれらのお役御免の時期なのだろう。

そんなうさんくささ満載の「新」9条論に、どうして同意できるのか。

国連は国際間の紛争解決にどれだけ寄与しているのか

あわせて、新9条論の中には、紛争解決請負人とか称する人物が国連中心主義を唱えている。理念はともかく、実際の国連がどうなっているのか。ぼくの印象では、国連は国際紛争の解決に役立つためという理念とは裏腹に、国際間の紛争をかえってこじらせているという印象がある。ぼくの印象のどこまでが正しくてどこまでが正しくないのかを知りたくて、「国連を支配するアメリカ」という本も参考のために買った。

目次
1.国際連合―その創設者たちと歩み
2.中心的な舞台―ワシントンのイラク戦争における国連の役割と権能
3.誰が国連を支配するのかー国連内民主主義の闘い
4.平和維持、介入、そして全く新しい世界
5.ワシントンがしがみつく「自分たちのための平和」
6.戦争に突き進む「平和維持」
7.世界の注目を集めて
8.中東・パレスチナ問題は例外
9.結論―新しい国際主義の下での国連

2005年発行と古いが、目次をみるだけで、国連の理念がいかに捻じ曲げらたのかがわかるだろう。唯一の超大国であるアメリカが、どのように国際連合を自国の「外交政策の道具」として扱い、国連創設時の高邁な理念・理想をゆがめてきたかについて記述してある。書き出しからいきなりこうである。

2003年8月19日、米軍占領下のバクダッドにあるキャネル・ホテルに設置された国際連合イラク本部の外で、トラックに積載された巨大な爆発物が炸裂し、国連職員22人が死亡しました。これは、国連が無理やり米国の戦略的支配に服従させられるとき、どんな代償を支払わなければならないのか、そのことをすさまじい形で私たちの面前に突きつける事件でした。・・・(P13)

国連中心主義のうさんくささもここにある。

以前は中古でも高くて買えなかったが、今だと1円で買える。郵送料込でも258円だ。

国連を支配するアメリカ―超大国がつくる世界秩序 国連を支配するアメリカ―超大国がつくる世界秩序

今からでも遅くない。一家に一冊、日本国憲法書を

さあ、みなさん、この機会に憲法書を読んでみましょうよ。大部の浦部本(636ページ)でなくて(それでも3、4日もあれば読めると思う)、たとえば下記の新書でもいいから、とにかく、食わず嫌いで日本国憲法に悪い印象を持っている方、よく知らない方にはお勧めである。
日本国憲法 新装版 (講談社学術文庫) 日本国憲法 新装版 (講談社学術文庫)
憲法という希望 (講談社現代新書) 憲法という希望 (講談社現代新書)

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事故車の傷の見方 https://jiko-higaisya.info/research/scratches-on-the-car-accident/ https://jiko-higaisya.info/research/scratches-on-the-car-accident/#respond Tue, 23 Oct 2018 08:49:29 +0000 https://jiko-higaisya.info/?p=15953

事故現場での着眼点は何か

交通事故の原因調査において、事故現場の確認は必ず実施しなければいけない訪問先のひとつである。現場に行き、何を調べるのか。

□道路の形状(片側何車線か、直線路かカーブか、傾斜があるのかなど)
□見通し
□発見地点、危険感知地点、衝突地点、停止位置など
□速度規制など規制関係
□事故の痕跡の有無とその計測

車線幅などもいちおう調べているが、メンドーなときは歩幅で測ることもあった。広路・狭路とか、センターラインのない道路上での対向車同士の衝突事故などの特定の場合に正確な数値が必要だが、過失割合に関係することは案外少ない。交通量もケースによる。信号サイクルも調べるが、これには問題があることは別記事で書いたとおりである。

車の傷をどう評価するか

次に車の損傷の確認。これは実施しないことのほうが多い。調査の確認先(修理工場)に入っていないことが多いからである。したがって、損傷部位等は、損保からの情報に頼った。が、修理工場が近くにあり、破損詳細についてどうしても知りたいときは、手弁当で確認に行った。事故車の確認ポイントは以下のとおり。

破損部の見方・10か条
1⃣傷は相対的に見よ。
2⃣破損部は、互いに相手側に証拠を残す。
3⃣損傷部位、部品の移動方向に注意せよ。
4⃣整合性は、傷の高さで見よ。
5⃣時には、一次衝突損傷と二次衝突損傷とが重なっていることがある。
6⃣衝突変形により車輪は拘束されたかに注意せよ。
7⃣傷には、押し込み変形と引きずり変形とがある。
8⃣押しつぶされ痕と押し上げられ痕に注意。
9⃣車室内の乗員の二次衝突痕に注意。
🔟古傷は錆で見分けよ。

 
この10か条は下記の書籍から引用したもの(P70-)である。ぼくには鑑定の知識・経験が足りないから、著者の林洋氏からの受け売り知識である。かんたんな箇条書きだけなので、これだけだと何のことやらさっぱりわからんだろうから、以下に、ぼくの経験も踏まえて説明したい。

1⃣傷は相対的に見よ。

衝突すると、剛性の高い車体部位は剛性の低い車体部位にその形を刻印する。その刻印の仔細を確認することによって、事故があったのかどうか、あるいは衝突時の姿勢が明らかになる。

2⃣破損部は、互いに相手側に証拠を残す。

車は衝突し合うと、相手側の衝突部位に塗料や合成樹脂やタイヤの摩耗粉を擦り付けることが多い。写真で写りづらいので、絵に描くか、現物を採取しておく。相手車の特定や、事故があったのかどうかなどの際に役立つ。

3⃣損傷部位、部品の移動方向に注意せよ。

損傷部位、部品の移動方向は衝撃力の方向を示している。したがって、損傷部位、部品の移動方向を見れば、衝突の相対姿勢や相対速度の方向をおおむね推定することができる。

4⃣整合性は、傷の高さで見よ。

偽装事故か否かの判断をする際に役立つ。損傷部位の地上高を比較する。また、塗料、合成樹脂、タイヤ等の付着位置(地上高)も確認する。→「偽装事故の手口と、逮捕にいたるまで」参照。

5⃣時には、一次衝突損傷と二次衝突損傷とが重なっていることがある。

一次(元)衝突と二次(元)衝突の説明の詳細はこちら→「車の損傷程度から衝突速度を推定する」に書いたことがある。参照願う。

重心を大きく外れた衝突の場合には、衝突の結果激しい回転運動が起こり、2度目の衝突が起こりうる。この場合、一次衝突の損傷以外に二次衝突の損傷ができる。これらを区別すること。なお、一次衝突の損傷は激しく、二次衝突のは浅いのが特徴である。

6⃣衝突変形により車輪は拘束されたかに注意せよ。

衝突後、車は路面を滑走して残余の運動エネルギーを滑走の摩擦仕事により消耗して最後に停止する。そのことから、エネルギー保存の法則に基づいて衝突後の速度の推定計算が行われるが、この際に問題になるのが車輪の拘束状態である。自由に回転運動する状態であるか、完全に拘束されてロックしているか、拘束の程度によって滑走の摩擦係数の値が大きく違ってくるからである。

車体が押しつぶされてタイヤに強く当たれば、車輪はロックされるから制動状態と同じことになり、摩擦係数は制動時と同じ値をとる。駆動輪は、駆動軸系に損傷、変形が及んで車体と干渉しても拘束される。

7⃣傷には、押し込み変形と引きずり変形とがある。

停止している車に他の車が心向きに衝突する場合には、衝突面が横滑りしていないから、押込み変形だけが起こる。

しかし、偏心衝突や斜め衝突の場合には衝突面で横滑りが起こるから、押込み痕といっしょに摩擦力が作用する方向の引きずり痕が印象される。引きずり痕は、やわらかい衝突面の筋状の引きずり痕、相手車の塗料、タイヤ等の付着痕等により識別される。具体的解決例→「停止待機中だと主張した場合の判例と過失割合」

8⃣押しつぶされ痕と押し上げられ痕に注意。

大型トラックと乗用車が衝突したときのように、床面の高さが大きく異なる車同士の衝突の場合、乗用車は大型トラックの下に潜り込むかたちになり、その車体には、上から下向きに押しつぶされた痕が形成される。また、大型トラックは乗用車の上にのしかかるかたちになるから、その車体には下から上向きの押し上げ痕が形成される。

乗用車同士の衝突の場合にも、急制動のためにノーズダイブ(前のめり)姿勢で衝突すると、フロントバンパーを被追突車のリアバンパーの下に潜り込ませ気味に衝突させることになる。この場合には、比較的に軟弱の車体前面を直接被追突車のリアバンパーの後面に衝突させるから、追突車側の損傷に比べて比較的に顕著なものになる。また、衝突後はバンパー同士で噛み合った状態になりやすい。

9⃣車室内の乗員の二次衝突痕に注意。

シートベルトを着けていない二次衝突痕は、衝突姿勢推定の重要な証拠になることがある。衝突部位としては窓ガラス、ステアリングホイール(ハンドル)、ダッシュボード、変速機操作レバー、シートの背もたれ等がある。

🔟古傷は錆で見分けよ。

衝突・損傷部位からは塗装がはがれるから、長期間放っておくと表面が錆つく。事故が新しいものか古いものかの判断に有効である。

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