広告と、その広告を掲載しているサイトとの関係

広告と掲載サイトとの関係

よくある話ですが、芸能人がいわゆる広告塔になって、後で問題が発生したときに「私は知らなかった」とか、「私も騙された」とか言って、弁明することがあります。これはまだいいほうで、頬かむりしたままのこともあります。広告塔になっていたり、自サイトで広告を載せていたりする以上、そこから何らかの収益があるのですから、少なくともそれに見合った責任が生じるかと、私は考えています。

さて、すでに気づかれているかと思いますが、10日前から、当サイトでも広告を載せることにしました。いろんな広告が出ているのですが、調べてみたら2000社の広告があるそうです。私自身これまでにその中のごく一部を見ただけですが、中に違和感のあるものも混じっています。私の場合は広告だけ見てクリックすることがほとんどないため、広告の実際の中身についてはまったく知りません。クリックしないのは、クリックをするごとに、たとえば1クリックで30円とかの当方の収益になるため、私がクリックしたら詐欺みたいなものです。それで、クリックすることをできるだけしないようにしています。ただし、これには例外があって、広告文から判断して当サイトでこれまでに書いた記事の趣旨と明らかに矛盾するかもしれないものについては、その中身を確認するためクリックしています。「明らか」にですから、多少矛盾していても、そこは目をつぶるつもりです。

ある出版社の広告についてです。クリックして中身をちょっと確認したら、いわゆる真珠湾攻撃陰謀説などに立った出版物の広告でした。かつて辺見庸の新刊紹介の記事を書いたことがあり、その記事の中でいわゆる真珠湾攻撃陰謀説に触れたことがありました。私の立場をはっきりさせるために、もういちど過去記事を再掲しておきたいと思います。

辺見庸の「1★9★3★7」完全版

増補前の本はすでに読んでいたが、あらためて完全版を買い求めて読んだ。

作者の辺見庸という人は、海外特派員の経験が長かった元新聞記者だったから、ものの見方が横に広がるという特徴がもともとあった人だ。海外の経験と日本のそれとを比べてものを言う。考える。そういうタイプの人だった。

その対極にあるのが、海外との比較ではなくて、日本の過去との比較に徹する人たちだと思う。横へは少しも広がらないで、日本の過去へと遡ろうとする。そして過去の遡りも明治維新までくらいで、それよりも過去に遡ろうとしないのがその特徴だ。そういう人たちのものの見方はたいてい「偉いさん」の視点でものごとをとらえることになっていて、そこに立脚して、きわめて細い糸でたぐりよせるような歴史観になっている。以前読んだ半藤一利の「昭和史・1926-1945」は、そのひとつ、いや大ベストセラーで、昭和史の第一人者だと言われているらしいからその代表格だろう。

辺見のように横へ広がるのと、半藤のように過去に遡るのと、どちらにも一長一短があるだろう。しかし、辺見の場合は、これまでの横への広がりにくわえて、最近の書「1937」で、自分の父親(戦場現場の小隊長クラス)に自分自身を投影することで1937年の日本の過去へと遡ろうとした。そのため、そこでの描写は、細糸をたらすような歴史観ではなく、もっと立体感のある骨太なものになっていると、「1937」を読みながらそのように強く感じた。

日中戦争からアジア・太平洋戦争へ。これが通常の歴史書の描き方である。半藤の「昭和史」もまたその部類である。そして、たいていの歴史書はアジア・太平洋戦争の書き出しが真珠湾攻撃から始める。半藤の著書もまたその類なのだが、たいていの歴史書とはちがって、歴史学会ではトンデモ説の部類のひとつして完全に否定されている真珠湾攻撃陰謀説へと半藤は傾くのである。歴史修正主義の信奉者がアメリカがわざと日本に攻撃させたという類の「陰謀論」に、半藤は見事に乗っかるのである。

アジア・太平洋戦争は真珠湾から始まったのか。

一般向けの書、岩波新書「アジア・太平洋戦争」(吉田裕著)ではこうなっている。

1941(昭和16)年12月8日午前2時15分(日本時間)、日本陸軍のタクミ支隊は英領マレー半島のコタバルへの上陸を開始。続いて3時19分には、日本海軍の機動部隊から発進した第一次攻撃隊が真珠湾への空爆を開始、ここにアジア・太平洋戦争の幕が切って落とされた。(P9)

 
同様の記載は、「昭和の歴史7 太平洋戦争」でも確認できる。


日本政府はイギリス政府に対して何ら宣戦布告をしていない。「真珠湾」が「だまし打ち」だろうとなかろうと、たとえ陰謀説どおりに、アメリカが「やらせた」のだったとしても(そんな証拠はないが)、少なくとも日本はイギリスに対しては完全な一方的奇襲を敢行したのである。オランダや中国に対しては、宣戦布告の対象にすらならなかった。

たいていの歴史書は、その立場にかかわらず、戦争を「真珠湾攻撃」から語り始める。そして12月8日といえば「真珠湾の日」と記憶されている。しかし、時間の順序からいえばマレー半島侵攻から始めるべきなのだ。このあたりが、陰謀説が流布される下地になっているように思う。

アジア・太平洋戦争は「真珠湾」からではなく、「マレー」から始まった。半藤の歴史修正主義色の濃い「昭和史」がベストセラーになり、「リベラル」界隈でも一定の評価を得ている現象は、日本風味「リベラル」の限界を示すものといえそうだ。

ブロックは必要最小限にしたい

私の立場はこのようにはっきりしています。真珠湾攻撃陰謀説というような歴史修正主義に反対の立場です。自分の立場とはあいいれない、明らかに矛盾する広告は載せるわけにはいかないでしょう(ただし、ある出版社から歴史修正主義に立つ本が出版されていたことを理由に、当該出版社の広告を全部否定していいのかという問題もあります。個別に広告を載せないということができるといいのですが、現状はそうなっていないため難しい問題です)。

最近のコメントからも、ある弁護士事務所の広告について問題点を指摘されました。広告については初期設定のままなので、できるだけはやくブロックするなりの検討を加えようかと思っています。ただし、ブロックという処置は、必要最小限にとどめたい。自分とはあいいれないことなど世の中にはいっぱいあるので、細かく言い出したらキリがない。そこは鷹揚にかまえて対応しようかと思っています。あまりに目に余れば・・・という主観的な判断になるかと思います。
 

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