高次脳機能障害について質問される
snsのフォロワーさんから、高次脳機能障害について質問されたことがあります。私はそれに答えませんでした。高次脳機能障害は交通事故が典型で頭部外傷に起因するのですが、その件は頭部外傷に起因するものではなかったこと(ただし、下記本では頭部外傷にかぎらないと書いてある)、現在裁判で紛争中だったことの2点から、回答するのをためらってしまいました。そういうのは委任した弁護士から聞いた方がいいと思ったからです。
質問というのはこれです。
頭部外傷以外にも病因はいろいろある
なお、下記本で高次脳機能障害の「病因」としてあげられているのは、
- 脳血管障害
- 頭部外傷
- 変性疾患
- 感染症・炎症
- 悪性新生物(脳腫瘍・転移性脳腫瘍・術後後遺症など)
- 中毒性疾患(薬物・アルコール・職業中毒など)
- 自己免疫疾患など
裁判による紛争性のあるものなのだから、請求(可能)先があることが条件になるので、病因も限られるとおもいます。たとえば変性疾患は老化が原因なので、加害者が存在しません。
- 334ページ
- 医学書院
- 2006/4/24
交通頭部外傷による高次脳機能障害認定のための3要件
以下に書くのはその交通事故による頭部外傷の場合です。交通事故が典型ですが、たとえば屋根から落下して頭部外傷を負った場合なども該当するとおもいます。その場合、高次脳機能障害と認定されるための要件は以下の3つです。交通事故の場合は、因果関係が直接的ではっきりしているものが多い(事故→ex骨折など)ため、因果関係が争点になることは少ないのが特徴ですが、質問のあったケースは、3要件以前に、因果関係をどう証明するのかという問題もありました。
さて高次脳機能障害認定の要件のひとつめが、頭部外傷による画像所見があること。
ふたつめが、事故時からの一定期間の意識障害の存在・程度。
みっつめが、異常な症状の存在(等級にかかわる)。
この3つの要件がそろっていないと、後遺障害に認定されることはありません。自賠責でも裁判でも。「事故後の意識障害が軽く、画像所見も乏しいにもかかわらず極めて重篤な障害の訴えがある場合には非器質性の精神障害(あるいは両者の合併したもの)と認定されやすい傾向にある」(P89)。認定されても14級どまりだということです。
- 666ページ
- 新日本法規出版
- 2017/8/4
医学が解明できていない病気は実際いろいろある
だから、実務をみるかぎり後遺障害に認定される余地はないのではないかと…とおもったのですが、頭部外傷以外については責任はもてないので口を閉ざすほうがいいかとおもいました。
なお、元裁判官の書いた本によると、この3要件がそろっていないものは、「病気じゃない」と裁判所は判断しているとのことです。内心「これはどうみても病気だろ」とおもっていても、「医学が解明できていない病気は実際いろいろあって…」と述懐しています。
- 192ページ
- 学陽書房
- 2017/12/9