交通事故専門弁護士とか、後遺障害専門弁護士とか

当サイトでは無料で相談にのっています。その相談の中で一番多いのが交通事故や後遺障害に強い弁護士の探し方です。弁護士に依頼しようと考えているのだけれど、ネットでみるとたくさんありすぎてどうしたらいいのかわかりません。教えてくださいというものですね。あるいは、現在委任中の弁護士への不満からそういう話になりがちです。

アイキャッチ画像は <a href=”https://www.photo-ac.com/profile/43626″>acworks</a>さんによる<a href=”https://www.photo-ac.com/”>写真AC</a>からの写真。プロもいろいろあるんですね。インチキ占い師。弁護士はどうなんだろう。

父が高次脳機能障害に

父が脳梗塞で倒れ、入院してから1か月近く経過しました。恐れていた高次脳機能障害があるのかどうかですが、注意障害とか記憶障害とか失語症とか・・・まだまだいくつかありそうです。

症状改善のためにも家族の助けが必要だから、大慌てで高次脳機能障害に関する本を読み始めたばかりです。これまでは他人事としてその種の本のウワツラを読んだだけでしたが、今は事情が違います。

専門書を読むだけでなく、病院へいけばそれを専門とするらしい医者もいますし、言語聴覚士も、作業療法士もいます。わからないことはどしどし教えてもらおうと思います。

…と書いたのは2年ほど前のことでした。

高次脳機能障害が得意だと称する専門家

ところで、ネットで検索すると、高次脳機能障害の専門家と称する人がいっぱいいることがわかります。しかし、専門家だと称しているわりに、高次脳機能障害の後遺障害認定にまつわる経験談がまったく書かれていません。医学の教科書をそのまま引き写したかのような固い表現ばかりの既視感いっぱいのサイトばかりが目立ちます。

あえて断言してもいいけれど、こういうサイトは経験値がほとんどゼロのドシロウトですね。現に、高次脳機能障害を一度も扱ったことがないと思われる方(後遺障害をやり始めて数年)までが、高次脳機能障害に関する医学的なむずかしそうな記事をたくさん書いているのを発見しました。そこまではたいした努力家だと感心したのですが、あとがいけない。

宣伝上手というか、商魂たくましいというか、ここまでやるかというか、あきれたことに、「当事務所では、高次脳機能障害の認定経験が多数あります」と宣伝していました。経験年数数年で、そうあるわけではない高次脳機能障害の認定経験が多数だって。虚言もたいがいにしてほしいです。

この宣伝文句につられて、この人に仕事を依頼したら、ウソの上塗りの対応をされることは間違いなしだろうし、その結果、本来なら認定されるべき後遺障害も認定されない可能性が高い。高次脳機能障害者を家族に持つ者としては、こういう宣伝をすることに良心が痛まないのかと思います。

自称交通事故専門弁護士の特徴

前にも引用したことがあるけれど、交通事故分野では老舗のひとつである西川雅晴弁護士(昨年引退されました)は、このことに関して興味深い指摘をされていました。

自称交通事故専門弁護士のHPには独特の特徴があり見分けることが可能です。特徴の一つは弁護士の実体験に基づく有益な情報・知識を被害者に提供しようとする姿勢がないことです。交通事故に関する教科書的な記載はあるにはありますが、書籍に書かれていることばかりです。

もう一つの特徴は弁護士のマーケティングを手がける企業が作成した集客用HPであるためどれも似たような表現・構成となっていることです。相談料・着手金0円、チェックシート、増額事例、当事務所が選ばれる理由、相談・解決件数の多さを誇る等の記載があればその目印となります。

HPは専ら集客目的であるためそれ以外の要素は切り捨てられ、どのような弁護士か分からないという点も特徴です。

HPのデザインが似通っているのは当然としても、高次脳機能障害を初めとするコンテンツまで似かよっています。内容だけではなく「血の通っていない」点までそっくりです。理由はコンテンツも業者から買っており、みずからの体験に基づくものではないためと思われます。

そう・そう。実体験に基づく情報・知識がまるで載っていない。教科書で見たようなどこか既視感があって、どれもこれもまるで金太郎飴のように似ている。

かつて、私も同じ趣旨の記事――「交通事故の専門家が一挙に増えたけれども、それで事故被害者は救われるのか」――を(2013-01-25)付けで書いたことがあります。その後の進展も含めて加筆し、改めて公開することにしました。

10数年前のネット状況は、後遺障害にまったく無関心だった

10数年前までは交通事故をテーマにして積極的に情報発信をしている媒体はあまりなくて、私が思いつくままに書き出してみると、あの交通事故110番さんや柳原三佳さんのホームページ、広島の行政書士さん、あと、ブックマークしている保険調査員の事件簿、小松弁護士さんや田舎弁護士さんや西川雅晴弁護士のホームページなど、どう考えても両手の10本の指で収まりそうでした。

これがさらに数年前にさかのぼると、交通事故110番さんと元損保社員で司法試験受験生である風太郎さんなど3つくらいしか思いつきません。後遺障害というふうにさらに限定してしまうと、当時さかんに情報発信していたのは交通事故110番さんだけだったと思います。

ところが、今や、交通事故専門、後遺障害専門家ばかり

ところが今や大盛況です。交通事故、その中の「後遺障害」に限定して検索しても10や20どころか100やもっと多くの数の専門家のホームページやブログがヒットします。

ここ10数年ほどの間に交通事故の後遺障害を専門と称する人が倍増どころか100倍増したわけですね。一時期は行政書士がこの分野への参入が目立ちましたが、非弁行為とかでほとんど撤退された感があります。

私が保険調査員として後遺障害にかかわったのが12年、調査員をやめてからの相談件数も含めると、調査員当時、年間に後遺障害だけで5、60件程度のぺースで担当していましたので、これまでに1000件くらい経験したことになるかと思います。

当事務所にはもう1人のお付き合いしていただいている元保険調査員がいて、そちらは私よりも経験年数が7、8年多いから、私ら2人の後遺障害にかかわる調査経験はどう少なく見積もっても2000件を下回らないと思います。

それでも、恥ずかしながら告白すると、今だによくわかっていないし、自信がないのが実情です。石の上に3年とかいうけれども、後遺障害に関しては3年ではまだまだ全然ダメのヒヨッコで、7、8年目の段階でも、自分の無知を恥じて医研センターの伊豆の医療研修には欠かさず参加していたものです。

が、それでも人様の相談に乗れるレベルじゃありません。後遺障害の専門家と称する人の中には、自分や自分の家族が交通事故にあい、そのことが縁で後遺障害をやりだしたというふうにプロフィールに書いている人がいます。その後の経験については具体的には何も語らず(語れず)、とにかくお任せくださいの一点ばり。腰が抜けるほどのすごい話です。そんなのでカネとってやるのかよ。

事故専門もしくは後遺障害専門家が増えた理由

この大盛況の理由について、この分野の老舗ともいうべき交通事故110番さんのホームページに興味深い記載をいくつか発見しましたので引用します。

1974年3月、示談代行保険が発売され、これ以降は、保険屋さん主導による解決の流れができました。つまり、交通事故に限っては、弁護士の受任件数が、急激にガタ落ちしたのです。

これがかつての話です。しかし、その後、司法制度改革の結果、弁護士の数が激増したこと、クレサラ問題におけるいわゆるグレーゾーンでの過払い金バブルの発生。それと似たような構造が交通事故損害賠償の世界にも存在したことによる交通事故専門家の大量発生というふうに、これまでの一連の流れを大きくまとめることができます。

ところで、クレサラ問題におけるグレーゾーン金利での過払い金バブルというのはどういうことでしょうか。それは、利息の金利がダブルスタンダードだったことに由来します。

かつて、利息の金利には2つの基準が存在していました。高いほうの金利の基準が10とします。さらにもう一つの基準のほうは5だとしましょう。カネを貸したほうは高いほうの金利である10で返してもらいたいし、借りたほうは金利の低い5で返すべきでした。

ところがこの二重基準について知らない借り手は10のほうの高い金利で返済していました。いったん高いほうの金利で任意に支払ってしまうと、あとで返せとはいえなくなるというのが、民法の本に書いてあったことです。支払えと強制はできないが任意に支払ってしまうとそれは有効になるというのです。

そういう債務を「自然債務」といったり、あるいは「債務があるが責任がない」とか、いや、「責任はあるが債務がなかった」だったか、まあ、そういう難しい話は法律家の先生にまかせて先に進みます。

ところが、2006年1月、最高裁判所は消費者金融会社に対して、「利息制限法」の上限金利である15~20%と「出資法」の上限金利29.2%の間の、曖昧にされてきたいわゆる「グレーゾーン金利」を認めないとする判決を出したのです。

つまり、2つあった基準を低いほうの基準に統一し、これまではいったん返済してしまうと後で返せとは言えなかったと言われていたのが、この判決によって返せといえるようになりました。

これをきっかけに、グレーゾーン金利分のいわゆる「過払い金」を消費者金融会社から取り戻そうと、債務者や過去に消費者金融会社を利用していた完済者がいっせいに余計に支払った分を返せと動き出しました。

事故110番の宮尾氏によれば、

実際の過払い金返還請求の手順は、一般的に、弁護士や司法書士が代理人となって消費者金融会社に依頼人との取引履歴の開示を求め、過払い金を取り戻す。ただ、このやり取りの中では、消費者金融会社側との話し合いや交渉、裁判に持ち込まなければならない事態などの“面倒”な作業は、最高裁判所の判決が出たおかげでほとんど発生しなかった。

弁護士と司法書士にとっては、時間と労力をかけずに過払い金という“成功報酬”が獲得できる、実にオイシイものだった。空前のバブル到来である。そこに食いついたのが・・・新興の弁護士法人だった。

サラ金のグレーゾーン金利で荒稼ぎをした(それら新興の弁護士法人の)グループが、一斉に交通事故に流れ込んでいます。多数の職員を配置して、着手金無料、報酬は増えた分の20%、薄利多売を演出しており、正にサラ金方式を導入しているのですが、受任件数は増えていると予想しています。

サラ金におけるグレーゾーンと同じようなダブルスタンダードが交通事故損害賠償の世界にも存在したということです。すなわち、いわゆる任意保険基準と裁判基準の2重構造です。サラ金の場合は多く払った分の返還を求めるものですが、こちらのほうは裁判基準による増額を求めるものです。

そのおいしい金脈を狙って士業が交通事故分野に雪崩れこみ、その結果としての交通事故専門家のサイトの現在の乱立です。しかし、「乱立」には以下のような問題点があると事故110番代表者である宮尾氏はいいます。

問題点は、やはり業務知識に乏しく、節操がないことです。被害者の個別事情を十分に勘案して訴訟で心証形成を行って高額判決を勝ち取る?薄利多売は積み上げていかないと採算に合いません。したがって、崇高な理念は最初からありません。

そのため、

訴訟提起は、端から念頭になく、すべて、保険屋さんとの話し合い解決一本槍、その後は依頼者の説得です。

保険会社はそれをどう見ているのかというと、

訴訟ベースでも、顧問医の意見書を提出、被害者側に反論と立証を迫ります。経験則に乏しい弁護士は、これに対抗することができず、振り回され、フラフラにされ、ほぼ全件が勝ち負けのあいまいな和解による解決で押し切られています。(新興の弁護士法人は)、査定の下請けとしての位置に甘んじており、逆に歓迎されているお粗末さです。

交通事故外傷と後遺障害の知識は、取って付けたようなもの、その上、交渉力が欠如しているとなれば、これはお話にならないレベルなのです。 サラ金であれば、この程度の交渉力でも十分通用したのです。しかし、相手が保険屋さんとなると、この手の交渉力では足下を見られます。

弁護士業界について、私はあまり詳しくなかったので、当時、宮尾氏のこの記事はたいへん参考になりました。

宮尾氏が言うように、数年の経験値で専門家と称するのは交通事故被害者に誤解を与え二次被害になりかねず、たしかにどうかと私も思いました。交通事故被害者の方は弁護士選びで注意すべきことです。

弁護士を紹介してという相談が増えた

交通事故に強い弁護士を教えてほしいという相談がときどきあります。相談の中のひょっとしたらトップかもしれません。弁護士が誰も受けてくれないと女性相談者から泣きつかれたため、最初はお断りしたのですが、それ一回こっきりですが、いっしょに弁護士探しのお手伝いをしたことがありました。

遠方だったため、これはと思う弁護士事務所へ電話し、要件をいうと、たいていは事務員のところで弁護士につないでもらえません。運よく弁護士が出られても、私がこういう相談があるのですがと一言言っただけで、モロ警戒されます。いわゆる非弁提携の話だと勘違いされるのです。

だから、詳しい話もできず話の始めのところで、電話を切られてばかり。それに懲りて、私は弁護士探しのお手伝いは一切しないことにしました。電話代だってこっち持ちだし、ほうほうのテイで追っ払われるのですから、もううんざりでした。

事務員に一切合切まかせっきりの某弁護士事務所

以下に紹介するのはごく一部だと思うのです。他はこんなことはありえないと思いたいものの、弁護士界隈に詳しいわけでもないので、ちょっと信じがたい話です。

ある相談者によると、ネットでも大々的に後遺障害に強いと宣伝している某弁護士事務所ですが、1年ほどかかわっておきながら、一度も担当弁護士とは話をしておらず、最初から最後まで事務員任せだったといいます。

いやぁ、それはひどい。非弁じゃないですか。

そうなんですよ。それで最後に初めて担当弁護士と電話でお話ができたのでそのことを言ったら、お忘れですかねって。最初の電話のとき相談にのっていましたよ。すべて事務員任せじゃないですよと言うのです。

…(゚0゚;ノ)ノ ヒョエッ!!

もちろん、弁護士の多くは自分ができないと思ったらお断りすると聞いているので、こういう弁護士事務所は例外なのだろうし、当サイトでのリンク先で一番多いのが弁護士なので、世の中には信頼していいと思われる弁護士もたくさんおられると思います。

ただ、中にこんな弁護士事務所も確実に存在することは紛れもない事実なので、気を付けてくださいとしか言いようがありません。

弁護士選びのコツ

最後の「コツ」は、「餅は餅屋に任せる」べきでしょうから、西川先生の文章でここはしめたいと思います。

私は被害者になったつもりで、弁護士を捜すとしたら「何か客観的な基準がないだろうか」という前提で考えてみました。結局、行きついたのは弁護士の獲得判例数ということになりました。

判例集があるというのは多くの方がご存じだと思います。交通事故関係では自動車保険ジャーナル(以下「自保ジャーナル」といいます)が代表的なものです。
全ての判決が収録されているわけではありませんが、損保関係者、法律関係者から見て興味深い事案、言い換えると被害者側からすれば勝つのに苦労する事案の判決が掲載されています。
そのため、自保ジャーナルに掲載されている判決で被害者側で勝訴(部分的勝訴も含む、以下獲得判例と言います)を収めた弁護士は困難事案につき損保と闘って勝った(またはある程度勝った)と評価することができます。

以上は「交通事故に強い弁護士」の探し方に関することですが、当サイトでもいくつかそのことに関連する記事を書いております。要は、こういう弁護士はやめとけ。
簡裁交通事故訴訟。物損事故は立証が大変だ 自賠責で後遺障害等級認定後の弁護士不要論についてぼそぼそとつぶやいてみる 損保の提示額をまずはみてからにしようと提案する弁護士

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