海外留学中に交通事故に遭ったら・・・

格安で留学する方法

外国で留学中に交通事故にあったという、いわゆる「渉外事件」のご相談をつい先日Tさんからいただいた。場所はフランスだという。

ぼくも留学した経験がある。その当時、チベットで日本人旅行者がイヌに噛まれ狂犬病にかかって亡くなったという情報などもあり、日本人が足を踏み入れないような僻地に行くことも目的のひとつだったので、事前に、狂犬病と破傷風の予防のため八重洲口だったか銀座だったかの診療所でワクチン接種した。留学生になったのは、そういう僻地に行くのに、一般の海外旅行者の身分よりも多少便宜を図ってもらえるとか、外国人に未開放の地域に出入りしやすいとかと聞いていたからだった。だから、留学していたと言っても、大学(留学生寮)は寝泊まりするだけだった。授業にはほとんど出た記憶がない。これは、日本の大学にいたときもそうだったけれども。

留学するためには、日本にある仲介組織を経由するのがふつうだ。ぼく以外の日本からの留学生はすべてそこ経由だった。しかし、間に仲介組織をいれると、お金がバカ高くなる。貧乏なぼくには、そんな余分なお金などない。で、直接、目的の大学まで行って、そこで交渉した。その結果、留学費用は、正規の費用の半分以下、たぶん3分の1に近い費用ですませることができた。ぼくが留学したあとも、日本人の一般旅行者で会社から休暇をとって旅をしていたMさんがいて、ぼくと同じ方法でそのまま留学生となって居ついた例があった。現在もこういう方法が通じるかどうかわからないけれど、やってみる価値はあると思う。ところで、交渉には会話は必要だろうと決めてかかる人が多い。が、ぼくは会話なんて全然できなかった。が、正規で入学した連中の中には、通訳とかやっているのもいた。会話ができるかどうかは関係ない。要はやる気があるかどうかである。お金がないというのが一番やる気にさせてくれる。

ルートが確立されているところとか、有名大学とかはむずかしいのかもわからないが、外貨を必要としている国とか、日本人が知らない無名大学だったら、そのチャンスはあるかと思う。ぼくの場合は、当時ならだれもが知っているような有名大学に入学できたかもしれないが、欲しいのは留学生の身分だけだったので、無名大学を選んだ。最初からダメだとあきらめないで、とにかく試してみることだ。

(交渉したから格安になったわけではないと思う。中間搾取がなくなった分、安くなった。それだけのことかもしれない。)

留学中に加入した「海外旅行保険」

そのときに事前に加入したのが、M社の「海外旅行保険」だった。その保険について以前ちょっとだけ記事にしたことがある。→「海外旅行保険など、旅にまつわるトラブルは、なんとかなるさで乗り切ろう」

外国において日本人が一方当事者となった交通事故

海外で日本人が交通事故に遭う場合を「渉外事件」と言うようだ。ぼくにはそのような経験がないため参考になりそうなことは書けない。その場合に注意しておきたいことについて、赤本〈P380-〉が参考になった。以下は、その赤本からの引用もしくは要約である。

国際裁判管轄

原則として、日本の裁判所は管轄権を有せず、事故地である外国の裁判所が管轄権を有する。が、例外もある。外国における日本人同士の事故の場合であり、以下の条件のひとつでも該当するなら、日本の裁判所で裁判できる。

①被告の住所等が日本国内にあるとき
②併合請求の場合
③合意管轄・応訴管轄があるとき

 

準拠法

事故地で訴訟が提起された場合、準拠法も事故地の外国法になると思われる。

この態様の場合の処理方法

被害者の場合

現地の弁護士を探して依頼するのが通常である。現地の知人や日本企業、場合によっては領事館で紹介してもらうか、日本の「渉外法律事務所」に依頼して紹介してもらう例が多い。

加害者の場合

〇保険に加入していた場合、保険会社が示談を代行し、現地でそしょうにならずに解決することもある。

〇現地で示談で解決できなかった場合、訴状および呼出状が日本の加害者あてに送達されてくる。日本の裁判所経由で送達がされ、訴状と呼出状の日本語の訳文が添付されている場合には、適法な送達になるので、訴訟は係属する。

〇現地で訴訟を提起された場合、保険に加入していたときは、保険会社に連絡すれば、現地の弁護士を付けてくれる。が、実際には、保険会社との折衝がうまくいかず、呼出状に記載された答弁書提出期限が迫ってしまう場合があるようだ。その場合は、現地の裁判所に手紙を書き、時間の猶予を与えてくれるよう要請する。

外国語が不得手の場合

そういうときは、日本のその種の交渉を専門とする渉外弁護士が現地の弁護士との間に入って調整する。

外国裁判の承認・執行

日本人が加害者の場合、被害者は外国裁判所での判決を日本で執行するためには日本の裁判所で執行判決〈民訴24条〉を得ることが必要である。が、日本では懲罰的損害賠償の支払いを命ずる外国判決の執行は、民訴118条3号の公序に反するとする最高裁判例(平成9年7月11日判決)があるため、執行判決をすることができない。

フランスが事故地の場合のフランス強制保険事情

フランスの強制保険はどういう内容のものなのかについて、以前記事にしたことがある。→「自賠法は、被害者救済のためにある」。これだけでは情報量が少ないので、調べたうえでもう少し詳しいことがわかれば追記したいと思う。

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当事務所の立場

突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ


その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にし、自己を無責任な立場に置くことになる。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。丸山真男のことばを最後に引用しておきます。

丸山真男から

ゲーテは「行動者は常に非良心的である」といっておりますが、私たちが観照者、テオリア(見る)の立場に立つ限り、この言葉には永遠の真実があると思います。つまり完全にわかっていないものをわかったとして行動するという意味でも、また対立する立場の双方に得点と失点があるのに、決断として一方に与するという意味でも、非良心的です。にもかかわらず私たちが生きていく限りにおいて、日々無数の問題について現に決断を下しているし、また下さざるを得ない。純粋に観照者の立場、純粋にテオリアの立場に立てるものは神だけであります。その意味では神だけが完全に良心的であります。

私たちの社会というものは、私たちの無数の行動の網と申しますか、行動の組合せから成り立っております。社会がこうして私たちの行動関連から成り立つ限りにおいて、私たちは行動あるいは非行動を通じて他人に、つまり社会に責任を負っています。その意味では純粋に「見る」立場、ゲーテの言う意味での完全に良心な立場というものは、完全に無責任な立場ということになります。

したがってこの点でも神だけが、完全に無責任でありうるわけであります。認識することと決断することとの矛盾中に生きることが、私たち神でない人間の宿命であります。私たちが人間らしく生きることは、この宿命を積極的に引き受け、その結果に責任を取ることだと思います。この宿命を自覚する必要は行動関連が異常に複雑になった現代においていよいよ痛切になってきたのです。

世のなかには一方では、認識の過程の無限性に目をふさぎ、理論の仮説性を忘れる独断主義者もいれば、またそもそも認識の意味自体を頭から蔑視する肉体的行動主義者がいます。しかし他方その半面では、物事はそう簡単にはイエスかノーかきめられないのだ、もっとよく研究してからでなければなんともいえないという名目の下に、いつも決断を回避することが学者らしい態度だという考え方がかなり強い。

あるいは対立する政治的争点に対して、あれももっとも、これももっとも、逆にそれを裏返しとして、あれもいけない、これもいけないということで、結局具体的な争点に対して明瞭な方向性を打ち出すことを避ける態度をもって、良識的であるとか、不偏不党であるとか考える評論家やジャーナリストもかなりいるようであります。

たびたびゲーテの言葉を引いて恐縮ですが、ゲーテはこういうことをいっています。「自分は公正であることを約束できるけれども、不偏不党であるということは約束できない。」今申しましたような世上いわゆる良識者は対立者に対してフェアであるということを、どっちつかずということと混同しているのではないでしょうか。
「現代政治の思想と行動」丸山真男 P452-454

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