【出典: Los Angeles Times】
目次
相談依頼が少しずつ増えているけれど、地元からのものがないのだ
ここ最近、毎日記事出しをするくらいのつもりで記事を書いている。その結果、弊サイトは、googleのアクセス解析で、平日は500以上のアクセス数(セッション数)をカウントするようになった。500のアクセス数など、他の分野ではたいした数字ではないのだろうけれど、交通事故による賠償関連だとこんな数字でも相当に多いようだ。
しかし、交通事故では全国的に著名な某弁護士さんのサイトは1日1000のアクセス数だし、交通事故業務とは関係ないが、登記情報メインに情報発信されている某司法書士さんは、1日少なくとも730ていどのアクセス数があればネット営業だけで食べていけると強調されているが、その数字にもまだ足りない。あと1か月以上あるので、年内には700台を達成できたらと思う。
ところで、アクセスしてくるのは東京や大阪や福岡や名古屋、札幌などの大都会が断然多くて、肝心の地元である石川や福井が1日に数件ていどと、すごく少ない。メールなどによる相談も週に1回くらいいただけるようになったが、地元からの相談は、相談者の氏名・住所を聞いたわけでもないが、たぶん1件もない。などと嘆いていたところ、数日前、地元の方から電話をいただいた。地元からの初めての相談である。思い切って電話番号を公開したかいがあったというものだ。これまでは、たまにかかってきても、どこか探りをいれるような、胡散臭いものばっかりだった。
地元からのアクセスは、現状ほとんどないのだけれど、ここ数週間にかぎってみれば必ずしもそうではない。能登で起きたマイクロバスの事故のことを記事でとりあげたら、その記事にアクセスしてくれる石川の人が多かったからである。2匹目のドジョウ狙いでもないが、石川県内で起きた事故のことを本日はとりあげてみたい。どうせとりあげるなら、石川県内で起きた、でっかい事故のことについて書いてみたい。
加賀市内で発生した踏切事故
保険調査員は車による交通事故だけを調査しているわけではない。車以外に、列車の事故調査なども、過去に何度か私は経験している。次にあげる画像は、列車とトラックが踏切内で衝突した事故現場の画像である。画像では雪がないが、事故は積雪のある冬に発生した。トラックがスリップを起こし、踏切内で立ち往生したのだった。なんとかトラックを動かそうとあせっていたものの、そのうちに警笛が鳴り出し、踏切の遮断機がおりだして、あわててトラックの運転手が非常ブザーを鳴らしたが、手遅れだったのか、福井方面から来た列車と衝突した。
10年ほど前に加賀市内で発生した踏切事故だ。相当に大きな事故だったのでネット検索ですぐに何か情報がみつかるかと思ったのだが、どれだけ検索してもみつからなかった。この事故の調査を担当したのは私だけれど、手元に当時の報告書があるわけでもないから、記憶に頼ってこの記事を書くしかない。だから、細部に間違いがあるかもしれない。ただし、調査上の秘密に関することもあるためなんでも書くわけにいかない。踏切事故に一般的だが、自動車事故にはない特有の問題についてここでとりあげてみたい。
調査の目的は、JR側は踏切内で起きた事故はJR側に過失がないと主張する。それでもJRに過失が問えないのか、それと踏切内の積雪によるスリップが原因でトラックが立ち往生したわけなので、踏切内の除雪作業に不備がなかったかどうかも調査目的のひとつだった。依頼する損保も、損害額が莫大でかつ100%こちらの過失だと言われれば、道路環境の問題についても無視するわけにいかず、目を向けることがあるという事例である。
JR側の主張
JR側の主張をわかりやすく説明しよう。
踏切内で警笛が鳴り、遮断機が下りた上での事故だった。それにもかかわらず踏切内にいることは、全面的にいる側の過失だという主張である。もっともである。赤信号で交差点に進入した信号無視車と同じ理屈。信号無視した車両が全面的に悪いのと同様に、警笛が鳴った踏切内にいるトラックが全面的に悪いということだ。
判例タイムズ38の「過失相殺率の認定基準」本では
踏切内の事故と信号のある交差点内の事故とは似ている。判例タイムズ38の「過失相殺率の認定基準」本でも、信号無視車は全面的に悪く、過失100である。ただし、これはあくまで原則であって例外がある。列車による踏切内の事故について考えるうえで参考になるだろうから、その原則と例外についてまずは押えておこう。
車両等は、信号機の表示する信号等に従わなければならず(法7条)、信号機の設置された交差点における信号の規制は、ほとんど絶対的である。したがって、信号違反車と信号遵守車との事故は、原則として、信号違反車の一方的過失に基づくものとされる。
しかし、実際のところ、信号の変わり目では、赤信号車の停止は余り期待することができず、また、見込み発進的青信号車も少なくない。そのため、信号にしたがっている車両であっても、通常の前方に対する注意を払っていれば容易に信号違反車を発見して衝突を回避し得るのに、その措置を全くとらなかった場合等には、法36条4項又は70条違反の過失を認めてよいであろう。
もっとも、自動車運転者は、通常、信号機の表示するところに従って自動車を運転すれば足り、信号違反車を予想して徐行して交差道路の車両との安全を確認すべき注意義務はないというのが判例(最高裁 昭和43年12月24日判決等)であるから、信号遵守車に過失が認められるためには、特に減速して左右の確認をするまでもなく、通常の速度で、通常の前方(交差点内ないしそれに近接する場所)に対する注意を払っていれば衝突を回避し得る場合に限るべきである。(P207)
信号に従っている車両であっても、前方左右に対する通常の安全確認をせず、又は信号違反車の発見後容易に回避措置をとることができたのに、これを怠った場合には、過失を認めてもよいであろう。したがって、ここでいう過失とは、通常の前方(交差点内ないしそれに近接する場所)に対する安全不確認又は発見後の回避措置懈怠を意味する。例えば、信号待ち後青信号で発進するに当たり、軽度の注意で赤信号車を発見することができるのに、信号のみを見て発進した場合等がこれに当たる。赤信号車が明らかに先入している場合も、その発見は容易であるので同様に考える。(P208)
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道交法33条について
踏切の種類と設備
【出典:「踏切すいすい大作戦」HP】
踏切事故に特有なこと
交差点内の信号無視車の事故を参考のため書いたが、踏切事故には交差点内の事故にはない特有のことがある。「交通の百科事典」より引用する。
鉄道の事故が、ほかの輸送機関の事故と比べて最も特徴的な点は、事故発生箇所は線路のあるところに限られるということである。対して、船舶や航空機では事故発生・被害発生箇所の想定が難しい。自動車でも基本的には道路でのみ発生するとかんがえてよいものの、道路の敷設場所があまりにも広範にわたるため、事故発生箇所をあらかじめ想定することは難しい。つまり鉄道の事故については、直接的な被害は、線路上か、線路から数メートル~10数メートルの範囲内に限られるといえる。
このように鉄道の事故が広域災害につながることは(危険物を運んでいる場合を除いて)ないと考えてよい。ただし、特に都市圏においてよくみられる状況であるが、鉄道では事故発生箇所をただちに回り道して運行するという対応が難しいため、1か所で発生した事故の影響(遅れや運休)が他の路線に二次的影響を及ぼすといった例が多い。
①列車衝突事故
②列車脱線事故
③列車火災事故
④踏切障害事故
⑤道路障害事故
⑥鉄道人身傷害事故
⑦鉄道物損事故
ほかに、運転手が停止信号を見落として他の列車の進路をさまたげたり、列車の部品が取れたまま走行したりという事態は、事故発生のおそれがあるとしてインシデント(Incident)とよぶ。
鉄道の事故が発生した際、原因の究明や今後の事故防止のための調査は不可欠な活動であるが、わが国では国土交通省の外局である運輸安全委員会がこれを公的・中立的・非懲罰的な立場から行っている。運輸安全委員会は2008年10月1日に航空・鉄道事故調査委員会を改組して設立された。
13年。大蔵省(現、財務省)令による。
踏切は道路交通と鉄道交通の交点である。鉄道は、鉄の線路と鉄の車輪との間の摩擦力が小さいため、制動距離が非常に長い。自動車であれば時速100キロの場合は40mほどで停止できるが、鉄道ではそれが一桁は大きくなる。踏切で鉄道を止めると制動距離が長い分、制動時間も長く、さらに、再加速の時間自動車より長い。このような特性の違いが、鉄道交通を遮断させず、道路交通のみ一方的に遮断させる1つの根拠になっていると考えられる。
道路側からみた場合、踏切は特殊な形態での交差点であり、交差点全体からみて数が少なく、交通事故全体からみて事故数も少ないことから、安全問題としての注目度は低い傾向にある。そして、踏切において遮断される時間の長さが大きな問題とされる。
このほかにも、架線があることを注意する踏切注意標が踏切上部や脇の電柱等に標示されたり、注意柵が設置されたり、非常ボタンや監視カメラの標示等もある。
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その他の統計資料
【鉄道事故の発生状況と原因】
(JR西日本HPより)
【踏切事故の内訳】
(内閣府HPより)
本件調査結果の概要
この調査のために私は事故現場に足しげく通った。10回近く現場やその周辺に行っただろう。周辺というのは、事故現場にさしかかる列車の視認可能範囲、すなわち踏切内にいるトラックの発見可能な位置を確定させるためにどの地点でそれが可能なのかを調べるために、事故現場手前の路線上を何度も踏査したからである。
(追記予定)