事故車の傷の見方

事故現場での着眼点は何か

交通事故の原因調査において、事故現場の確認は必ず実施しなければいけない訪問先のひとつである。現場に行き、何を調べるのか。

□道路の形状(片側何車線か、直線路かカーブか、傾斜があるのかなど)
□見通し
□発見地点、危険感知地点、衝突地点、停止位置など
□速度規制など規制関係
□事故の痕跡の有無とその計測

車線幅などもいちおう調べているが、メンドーなときは歩幅で測ることもあった。広路・狭路とか、センターラインのない道路上での対向車同士の衝突事故などの特定の場合に正確な数値が必要だが、過失割合に関係することは案外少ない。交通量もケースによる。信号サイクルも調べるが、これには問題があることは別記事で書いたとおりである。

車の傷をどう評価するか

次に車の損傷の確認。これは実施しないことのほうが多い。調査の確認先(修理工場)に入っていないことが多いからである。したがって、損傷部位等は、損保からの情報に頼った。が、修理工場が近くにあり、破損詳細についてどうしても知りたいときは、手弁当で確認に行った。事故車の確認ポイントは以下のとおり。

破損部の見方・10か条
1⃣傷は相対的に見よ。
2⃣破損部は、互いに相手側に証拠を残す。
3⃣損傷部位、部品の移動方向に注意せよ。
4⃣整合性は、傷の高さで見よ。
5⃣時には、一次衝突損傷と二次衝突損傷とが重なっていることがある。
6⃣衝突変形により車輪は拘束されたかに注意せよ。
7⃣傷には、押し込み変形と引きずり変形とがある。
8⃣押しつぶされ痕と押し上げられ痕に注意。
9⃣車室内の乗員の二次衝突痕に注意。
🔟古傷は錆で見分けよ。

 
この10か条は下記の書籍から引用したもの(P70-)である。ぼくには鑑定の知識・経験が足りないから、著者の林洋氏からの受け売り知識である。かんたんな箇条書きだけなので、これだけだと何のことやらさっぱりわからんだろうから、以下に、ぼくの経験も踏まえて説明したい。

1⃣傷は相対的に見よ。

衝突すると、剛性の高い車体部位は剛性の低い車体部位にその形を刻印する。その刻印の仔細を確認することによって、事故があったのかどうか、あるいは衝突時の姿勢が明らかになる。

2⃣破損部は、互いに相手側に証拠を残す。

車は衝突し合うと、相手側の衝突部位に塗料や合成樹脂やタイヤの摩耗粉を擦り付けることが多い。写真で写りづらいので、絵に描くか、現物を採取しておく。相手車の特定や、事故があったのかどうかなどの際に役立つ。

3⃣損傷部位、部品の移動方向に注意せよ。

損傷部位、部品の移動方向は衝撃力の方向を示している。したがって、損傷部位、部品の移動方向を見れば、衝突の相対姿勢や相対速度の方向をおおむね推定することができる。

4⃣整合性は、傷の高さで見よ。

偽装事故か否かの判断をする際に役立つ。損傷部位の地上高を比較する。また、塗料、合成樹脂、タイヤ等の付着位置(地上高)も確認する。→「偽装事故の手口と、逮捕にいたるまで」参照。

5⃣時には、一次衝突損傷と二次衝突損傷とが重なっていることがある。

一次(元)衝突と二次(元)衝突の説明の詳細はこちら→「車の損傷程度から衝突速度を推定する」に書いたことがある。参照願う。

重心を大きく外れた衝突の場合には、衝突の結果激しい回転運動が起こり、2度目の衝突が起こりうる。この場合、一次衝突の損傷以外に二次衝突の損傷ができる。これらを区別すること。なお、一次衝突の損傷は激しく、二次衝突のは浅いのが特徴である。

6⃣衝突変形により車輪は拘束されたかに注意せよ。

衝突後、車は路面を滑走して残余の運動エネルギーを滑走の摩擦仕事により消耗して最後に停止する。そのことから、エネルギー保存の法則に基づいて衝突後の速度の推定計算が行われるが、この際に問題になるのが車輪の拘束状態である。自由に回転運動する状態であるか、完全に拘束されてロックしているか、拘束の程度によって滑走の摩擦係数の値が大きく違ってくるからである。

車体が押しつぶされてタイヤに強く当たれば、車輪はロックされるから制動状態と同じことになり、摩擦係数は制動時と同じ値をとる。駆動輪は、駆動軸系に損傷、変形が及んで車体と干渉しても拘束される。

7⃣傷には、押し込み変形と引きずり変形とがある。

停止している車に他の車が心向きに衝突する場合には、衝突面が横滑りしていないから、押込み変形だけが起こる。

しかし、偏心衝突や斜め衝突の場合には衝突面で横滑りが起こるから、押込み痕といっしょに摩擦力が作用する方向の引きずり痕が印象される。引きずり痕は、やわらかい衝突面の筋状の引きずり痕、相手車の塗料、タイヤ等の付着痕等により識別される。具体的解決例→「停止待機中だと主張した場合の判例と過失割合」

8⃣押しつぶされ痕と押し上げられ痕に注意。

大型トラックと乗用車が衝突したときのように、床面の高さが大きく異なる車同士の衝突の場合、乗用車は大型トラックの下に潜り込むかたちになり、その車体には、上から下向きに押しつぶされた痕が形成される。また、大型トラックは乗用車の上にのしかかるかたちになるから、その車体には下から上向きの押し上げ痕が形成される。

乗用車同士の衝突の場合にも、急制動のためにノーズダイブ(前のめり)姿勢で衝突すると、フロントバンパーを被追突車のリアバンパーの下に潜り込ませ気味に衝突させることになる。この場合には、比較的に軟弱の車体前面を直接被追突車のリアバンパーの後面に衝突させるから、追突車側の損傷に比べて比較的に顕著なものになる。また、衝突後はバンパー同士で噛み合った状態になりやすい。

9⃣車室内の乗員の二次衝突痕に注意。

シートベルトを着けていない二次衝突痕は、衝突姿勢推定の重要な証拠になることがある。衝突部位としては窓ガラス、ステアリングホイール(ハンドル)、ダッシュボード、変速機操作レバー、シートの背もたれ等がある。

🔟古傷は錆で見分けよ。

衝突・損傷部位からは塗装がはがれるから、長期間放っておくと表面が錆つく。事故が新しいものか古いものかの判断に有効である。

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突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ


その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にし、自己を無責任な立場に置くことになる。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。丸山真男のことばを最後に引用しておきます。

丸山真男から

ゲーテは「行動者は常に非良心的である」といっておりますが、私たちが観照者、テオリア(見る)の立場に立つ限り、この言葉には永遠の真実があると思います。つまり完全にわかっていないものをわかったとして行動するという意味でも、また対立する立場の双方に得点と失点があるのに、決断として一方に与するという意味でも、非良心的です。にもかかわらず私たちが生きていく限りにおいて、日々無数の問題について現に決断を下しているし、また下さざるを得ない。純粋に観照者の立場、純粋にテオリアの立場に立てるものは神だけであります。その意味では神だけが完全に良心的であります。

私たちの社会というものは、私たちの無数の行動の網と申しますか、行動の組合せから成り立っております。社会がこうして私たちの行動関連から成り立つ限りにおいて、私たちは行動あるいは非行動を通じて他人に、つまり社会に責任を負っています。その意味では純粋に「見る」立場、ゲーテの言う意味での完全に良心な立場というものは、完全に無責任な立場ということになります。

したがってこの点でも神だけが、完全に無責任でありうるわけであります。認識することと決断することとの矛盾中に生きることが、私たち神でない人間の宿命であります。私たちが人間らしく生きることは、この宿命を積極的に引き受け、その結果に責任を取ることだと思います。この宿命を自覚する必要は行動関連が異常に複雑になった現代においていよいよ痛切になってきたのです。

世のなかには一方では、認識の過程の無限性に目をふさぎ、理論の仮説性を忘れる独断主義者もいれば、またそもそも認識の意味自体を頭から蔑視する肉体的行動主義者がいます。しかし他方その半面では、物事はそう簡単にはイエスかノーかきめられないのだ、もっとよく研究してからでなければなんともいえないという名目の下に、いつも決断を回避することが学者らしい態度だという考え方がかなり強い。

あるいは対立する政治的争点に対して、あれももっとも、これももっとも、逆にそれを裏返しとして、あれもいけない、これもいけないということで、結局具体的な争点に対して明瞭な方向性を打ち出すことを避ける態度をもって、良識的であるとか、不偏不党であるとか考える評論家やジャーナリストもかなりいるようであります。

たびたびゲーテの言葉を引いて恐縮ですが、ゲーテはこういうことをいっています。「自分は公正であることを約束できるけれども、不偏不党であるということは約束できない。」今申しましたような世上いわゆる良識者は対立者に対してフェアであるということを、どっちつかずということと混同しているのではないでしょうか。
「現代政治の思想と行動」丸山真男 P452-454

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本现场可以用汉语对应、如过在日本有遇到交通事故的无论是中国人还是台湾人、请随时商量、商量的时候、请在网上「留言」。

【推薦図書】

これまでに購入した中で、特に役に立った図書です。アマゾンから購入可能なものに限定しました。アマゾン以外からの購入図書については、こちらこちらの記事をごらんになっていただきたい。

(事故調査)

1⃣
林洋氏の代表作。定番教科書である。現場調査に欠かせない視点を提供してくれる。

 

2⃣
江守一郎氏の代表作。新版(と言っても1984年)あり。これも定番教科書のひとつと言われている。

(過失割合・賠償の範囲に役立つ本)

 

2⃣
交通事故訴訟をリードする東京地裁民事27部の裁判官が参加している。裁判所の判断の傾向を知るのに有用。

 

3⃣
道交法の定番教科書。

 

4⃣
「信頼の原則」という記事を書いた際に、たいへん参考になった。この本なくして「信頼の原則」の記事の信頼度は無きに等しい。

(保険を知るのに役立つ本)

1⃣
これ一冊あれば、任意保険のたいていのことはわかる。

 

2⃣
自賠法条文の解説書。

(後遺障害を知るのに役立つ本)

後遺障害をやるのだったら、これは必読書である。参考文献の紹介も豊富。

 

8⃣
先に紹介した弁護士本をたぶんに意識した本である。つまり、高野他本に載っていない遷延性意識障害とかPTSDとかを積極的にとりあげている。

(交通心理学に関する本)



類書はたくさんあれど、外国の調査研究が宝庫のように詰まっている。

(特殊分野編)
いいもわるいも特殊分野の本なので、これを見るしかないという本。

1⃣
旧版(第2集)は持っているが、その後の判例の展開を示した新版の第3集あり。全損賠償の決定版。

 

 

 

4⃣
上の3著の著者・海道野守氏が一般向けに書かれた物損請求書。古いが、わかりやすくてすごくいい本である。

 

5⃣
これも休業損害分野の唯一の本。毎年のように改定されている。ここの先生は休業損害だけでなく、実は休車損の調査もやられていたから、休車損の本も書いていただけるとありがたいのだが。

(交通事故を考える上で、最初に読んでおきたい本)

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