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交通事故紛争(とりわけ後遺障害案件)の本人訴訟のすすめ、やればできる。

しばらくご無沙汰していた。法律紛争に3件もかかわっていたため

当ブログの更新を怠っていたのにはわけがある。ここ4年ほどの間に3件の法律上の紛争にまきこまれたからである(法律上の紛争の当事者になるなんて夢にもおもわなかった)。それも無事解決できたので、当ブログの更新ができる時間的・精神的余裕ができた。3件はいずれも弁護士相手だったが、二つは本人訴訟で、もう一つは示談で解決できた。いずれも交通事故紛争でなく、労働問題などだった。

ところで先日相談があった。詳細は書かないが、保険金詐欺をやったことが保険会社にばれてしまった。それで大クレームになっている。どうしたらいいのか。この分野が得意な弁護士を紹介してほしいとか。そんなのおれに言われてもしらんよ。れっきとした刑事問題じゃないか。やるまえに言ってくれれば止めていたのにね。

なんでこんなことを書いたかというと、こちらはりっぱな刑事事件なのに、賃金不払いなど労基法違反も刑事事件になりえるのにもかかわらず(人の財布から金銭を盗れば犯罪です。給与を支払わないということは労働者の財布から金銭を奪ってるのと同じで、ドロボーと同じ。労基法でも刑事処分の対象になりえると規定されている)そんなことにめったにならないからである。それどころか、裁判所は口外禁止条項まで容認する。会社側は弁護士3人がかりでおれをねじこもうとしたが、逆にコテンパンにやられたため、口外されたくないっていうのもあったのだろう。マスコミ報道もされていたから、あれがそう――といえばわかる人もいるに違いないが、口外するなだから、なにも書けない。

法律的なことを書くのはおっかなかったけど、ちょっとだけ自信になった

この3件を解決できたことで自信がついた。 というか、弁護士をかいかぶりしすぎていた。弁護士相手でも3勝無敗なんだから、運がよかったことももちろんあるが、これは誇っていいとおもう。一つは個人相手だったが、ほかのふたつは大企業が相手だった。もちろん、相手弁護士に言わせるなら、いずれも和解解決であり、お互い譲歩したのだから、こちらが完敗したわけじゃないよと、反論してくるかもしれない(正確に書くなら、示談の1件は紆余曲折あれ最終的にはおれの要求が全部通ったのだから、これはまぎれもない完勝)。

さて、本題である本人訴訟についてである。弁護士をつけずに本人訴訟で勝とうとおもったら(あるいは有利な和解)、証拠を確保できているかどうかだ。それと、裁判のルールを理解すること。主張責任とか立証責任とかの、要件事実を知らないと、勝ち目はない。示談時にごり押しすればなんとかなるなどと勘違いしている人がときどきいるけど、「弱者」には不可能である。なお、「要件事実」ではこの本がすごくよかった。とっかかりの本としておすすめだ。

ところで、ここでいう「弱者」とは、端的にいって経済弱者である。経済強者である大企業は、もちろんお金があるし、有能・有名弁護士を雇うこともできる。持久戦にも強い。組織力もある。そういう相手に勝とうとおもったら、経済弱者はせめてもの知識の面で対抗できるレベルにならないと話にならない。

「ゼロからマスターする要件事実」(岡口基一著)。

https://amzn.to/4eNDTpK 裁判やるならこの本は必須だろう。わかりやすいし、ここまでは司法書士レベル、ここは修習生レベル、ここまでやれば弁護士レベルなどとなっていて、たいへん励みになる。

後遺障害認定されたらあとは自分でやってみてもいいかもしれない

交通事故紛争とりわけ後遺障害案件についてだが、自賠責調査事務所で等級が認定されているものについては本人訴訟でもじゅうぶんやれるとおもう。この件についての手続面について知っていたらやれるはずだ。弁護士もつけずに自分だけで?そう思うだろうが、「後遺障害案件についてだが、自賠責調査事務所で等級が認定されているものについて」なら、おすすめである。もちろん、最低限の勉強は必要だ。労働事件のハードル(未払い賃金は必ずしもそうでもないが、不当解雇だとかになるとハードルはすごく高い)と比較すれば本人訴訟でもやれるのではないかと私はおもう。

仮に後遺障害案件で3000万請求が可能なケースで弁護士に依頼すると、着手金以外に成功報酬をとられる。相場はおよそ3分の1くらいかとおもう。つまり、3000万円のうちの1000万円は弁護士にかかる費用だとおもってほぼ間違いない。等級認定前なら医療知識が必要になりハードルが高いから、優秀な弁護士利用はうなずける(だから、自信のない弁護士はたいていは認定された後で来てほしいと言うのだ)が、認定された後に依頼するのはいちばんおいしいところを弁護士にわざわざさしだすようなものだとおもう。

ただし、等級認定後でもハードルが高いものがある。それは、自賠責が認定した等級が不満でさらに上位等級を目指す場合である。これは優秀な弁護士でないと無理である。私がここで言っているのは、自賠責で認定された等級を自賠責基準ではなく、裁判基準で要求する場合である。

自賠責が認めた等級認定を裁判所が尊重するからである。法律的にいうと、「一応の証明」がなされたと、裁判所は評価しているからだ。相手がそれを崩そうとするなら、反論・反証をしなければいけない。ということです。つまり、立証責任はあちらにある。立証できなければこちらの勝ちということなのだ。

以下の記事でもそのことをとりあげた。

私が自分の経験に基づき本人訴訟でもいけると言っても、シロウトの放言扱いされ信用されないので、以下に皆さんが納得できるだろうことを付記しておきたい。

「後遺障害については、自賠責保険の後遺障害等級認定を経ておくことが便宜であり、自賠責保険で認定された後遺障害等級は、訴状においてあらかじめ明らかにするとともに、後遺障害等級認定票を書証として提出する必要がある。裁判手続での後遺障害の認定は自賠責保険の後遺障害等級認定に拘束されるものではなく、裁判所が、訴訟に現れた全証拠から自由な心証に基づいて認定・判断するものである。

しかし、自賠責保険での後遺障害等級のいずれかの等級に該当すると認定された事実があると、特段の事情のない限り、後遺障害等級に見合った労働能力喪失率と慰謝料の額について「一応の立証」ができたと考えられるから、裁判所は被告からの十分な反証のない限り、同様の等級を認定することが多く(P13)」(判例タイムズ38から引用)

判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準

https://amzn.to/49wXdqw 交通事故過失割合のバイブル。損保担当者もこれみて交渉してくる。

ここでは「一応の立証」とあるが、「一応の証明」と同じ意味である。「一応の証明」とは「裁判官が蓋然性の非常に高い経験則にもとづいて事実上の推定をするときには、その例外の事態はめったに生じないから、その事実は、ほとんど証明されたものとしてあつかってもよい(林屋礼二「新民事訴訟法概要」P318 )。「一応」とあるが、「ほとんど」という意味である。

林屋礼二「新民事訴訟法概要」

https://amzn.to/41wh1Zc この本は法律素人でもわかりやすくかかれていると定評の教科書である。1度読んでわかるとは思えないけど、2度読めばわかる。素晴らしい本だ。書評も同じ意見である。

余談というか蛇足。弁護過誤の話。

SNSのフォロワーさんから相談があって、労災の等級認定をうけたがこれからどうしたらいいのかというものだった。これはここの記事と同じで、等級認定うけたんだったら、自分でやってみたらと答えた。わざわざ弁護士に依頼しなくても、あとは型どおりの手続を踏むこと。それと、裁判にはルールがあるから訴状など出して、法廷で主張責任が貴方のほうにあるからその主張をすること、訴状等に書いただけは足りないから等と、事前の準備を怠らければハードルはおもうほど高くないよと答えたのだ。

が、やはり不安なのか(これもわかる)、けっきょくは弁護士に依頼した。ところが、その弁護士が和解したらしく、それも完全清算条項付きのを勝手にしてしまったらしい。それで大損(金額はしらないからこれはたぶん)したらしく、弁護過誤だとかで訴えるとか[(ただし、やってくれる弁護士がいないとか)、もっとしんどいことになっている。おカネは損するし、また訴訟…踏んだり蹴ったりのようだった(うろ覚えで書いているので正確かはいまいち)。

皆さんも気を付けてね。

うろ覚えもなんだから、正確な情報はこちら。ただ、労災に慰謝料請求なんてあったっけ。それとも労災以外に慰謝料を請求したいってことなのか。それなら意味がつうじる。

3 COMMENTS

恵子

ホームズさんの訴訟も無事、解決され、安心致しました。

本当に良かったです。

事故はこりごりですが、これからも時々、拝見させてください。

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ホームズ

ホームズです。恵子さんへ
コメントありがとうございます。
ひょっとして情報よせていただいた方?記事にすると約束していた方だったら、そのままになっていること申し訳ありません。記事出しは忘れていません。

裁判は、記事に書いたように終結しました。いちばんよかったのは自信が持てたことです。最初、相手が弁護士なのでけっこう緊張しましたが、団交から裁判まで付き合いが長くなると、そういうのがまったくなくなりました。会社の取締役から、うちの有名な弁護士に法律論争やるつもりなのかと言われたこともありました。そんな大それたことをやっているつもりはまったくなくて、単に反論しただけです。

口外禁止条項付きなので、これくらいで。コメントまたしていただけるとうれしいです。

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恵子

軽微事故で、ホームズさんのホームページにお世話になった者です。

記事出しのことよりもホームページがずっと更新されてなかったので、
裁判の経過が良くないのかと心配してました。

正しい結果が出たことが、嬉しかったです。

このコメントにはどぞ、返信お気遣いなく

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