最近あった相談
先日の相談のなかに、事故直後症状がなかったので警察主導のもと物損で処理したところ、あとから症状が出てきたため病院へ行き、警察で人身に切り替えた。それが加害者をいたく刺激したらしく、そのときは症状の訴えもなく物損にすると言っていたくせに人身にしやがって、うちの保険を使わせないからと相手損保担当者を介して言われ、その担当者から、契約者の承諾を得られないため、自分の加入している人身傷害保険を使えと言われて困っている、なんとかならないかという相談だった。
被保険者の同意がなくても、被害者の直接請求権は発生する
事故直後に必ず症状が出るとは限らず、事故の翌日とか、2、3日後とかに症状が出るのがむち打ち損傷なので、相手損保の言い分はおかしいと返事した。それに、契約者の承諾がないと示談代行ができないと、決まり文句のように損保・共済は主張するが、損保・共済がかかわっているのは代理人としてではなく、当事者の資格でかかわっているはずなので(注1)(注2)、それもおかしな主張だと返事した。損保は代理人・当事者を自分に都合よく使い分けていないだろうか。
①対人事故により、被保険者が法律上の損害賠償責任を負担すること。
②保険会社が被保険者に対して支払責任を負うこと。この2つの要件が充たされたときは、被害者は保険会社に対して損害賠償額の支払いを直接請求することができる。この場合、被保険者の同意は直接請求権発生の要件ではないので、被保険者の同意しないときであっても、被害者の直接請求権は発生し、保険会社は被害者に損害賠償額を支払うことになる。
(11)損害賠償請求権者の直接請求権(P56以下)
- 480ページ
- 保険毎日新聞社
- 2023/8/28
- 480ページ
- ぎょうせい
- 2007/9/1
詳しくは別記事で書いたので、そちらを参照ください。
症状が遅れて発生する慢性硬膜下血腫は事故の特定で争いになる
それはそうと、症状が遅れて出てくるのはむち打ち損傷が有名だが、事故から1か月以上経ってから症状が出てくるものもある。慢性硬膜下血腫である。この傷病のやっかいなところは、軽微な頭部打撲が原因でなることが多く、私が担当した慢性硬膜下血腫事案の中には、酒好きの男性で、頭部打撲? いつしたかなあと思案している高齢者の方がいた。けっきょくはいつの事故なのか思い出せなかった。この例でわかるように、慢性硬膜下血腫でいちばんの争点は、事故との因果関係、事故の特定である。
さて、事故が特定できない場合はどうなるかだが、事故との因果関係が立証できないことを理由に、保険が使えないという場合が多い。
ところが、おどろくべきサイトがみつかった。そこでは、慢性硬膜下血腫は、「頭部に強い衝撃を受けたことがきっかけで」発症すると書いてあった。弁護士のポータルサイトだった。医学書には慢性硬膜下血腫は軽微な頭部外傷でなると書いてある。調べが足りなさすぎだ。
- 456ページ
- 医学書院
- 2024/2/13