自賠法について

法の目的

事故で負傷した被害者を救済するためということが自賠法の目的なのだけれど、教科書に書いてあるようなことをコピペしておいて、エヘン、こういうことなんだよと薀蓄を傾けてもあまり意味があるようにも思えない。そんな内容なら、ここに訪問された方は既視感があって、ほかのサイトと同じような内容になってしまうので、たぶんまじめに読んでいただけない。最低必要なこと、省略したらまずいことは既視感があろうが書かないといけないが、なるべくふつうの教科書では指摘されていないことへの言及もしてみたい。

自賠法の目的は被害者救済ともうひとつ、「あわせて自動車運送の健全な発達に資すること」(法1条)がある。前者のことばかり注目されているけれど、この法の目的は、「自動車運送の健全な発達」と切り離せない。つまり、クルマ社会であることが前提になっている。クルマ社会から発生する弊害をできるだけ除去することが目的になっているが、クルマ社会自体を除去するのが目的になっていないことである。ここをすっ飛ばしてしまうと、自賠法の礼賛になってしまって、この法が持つ限界が見えてこない。どういう限界があるのかは、国際比較をすることではっきりしてくる。そのことに言及した記事が「自賠法は、被害者救済のためにある」である。

自賠責と任意保険の相違点

自賠責と対人賠償保険の相違点
自賠責保険 対人賠償保険
保険金を請求できる人 15条:被保険者(保有者・運転者)

16条:被害者

被保険者
保険金が支払われる範囲 自動車の運行によって、他人の生命または身体を害した場合における法律上の損害賠償責任を負担したことによる損害 被保険自動車の所有・使用・管理に起因し、他人の生命または身体を害した場合における法律上の損害賠償責任を負担したことによる損害額から自賠責保険等で支払われる金額を差し引いた額とする。

被害者請求の場合は、上記の額から、被保険者が損害賠償請求権者に対し、すでに支払った損害賠償金を差し引いた額とする。

保険金が支払えない場合(無責・免責) 【無責】
①次の3条件を証明したとき、自動車の保有者は損害賠償責任を負わず、保険金等が支払われない。→(3条但書)
ア:自己および運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと

イ:被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと

ウ:自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったこと

【免責】
②保険契約者または被保険者の悪意によって生じた損害については保険金が支払われない(14条)。ただし、被害者請求については、この免責規定は適用されない。

③重複契約

*自賠責保険では、被害者の「他人性」が否定されない限り、被保険者の父母、配偶者または子の生命または身体を害した場合(いわゆる親族間事故)も担保される。

他人の生命、身体を害して法律上の損害賠償責任を負った場合でも、次のような損害に対しては、保険金が支払われない。

①支払われない損害
ア:保険契約者・記名被保険者またはこれらの者の法定代理人の故意によって発せした損害。

イ:記名被保険者以外の被保険者の故意によって生じた損害。ただし、それによってその被保険者が賠償責任を負担することによって被る損害に限る。

ウ:戦争・変乱・暴動等や、天災および原子力による損害。

エ:被保険者が第三者と特約を結んでいたために加重された賠償責任によって被る損害。

②支払われない対象者
ア:記名被保険者

イ:被保険自動車を運転中の者またはその父母、配偶者もしくは子

ウ:被保険者の父母、配偶者または子

エ:被保険者の業務(家事を除く)に従事中の使用人

オ:被保険者の使用人の業務に従事中の他の使用人

*記名保険者による同僚災害担保特約

上記オについては、被保険自動車の所有者および記名保険者が個人である場合は、記名被保険者が被る損害に限り、保険金が支払われる。

支払われる保険金の限度 自賠法施行令によって次のように被害者1名につき支払われる保険金の限度が設けられており、この範囲内で支払われる。

①傷害の場合
ア:治療費・休業損害・慰謝料等に対して→120万円

イ:後遺障害については等級に応じる。

(別表第一)最大4000万円

(別表第二)最大3000万円

②死亡の場合(限度額)
ア:死亡にいたるまでの傷害による損害(120万円)

イ:死亡による逸失利益等の損害(3000万円)

保険金等の請求方法
仮渡金の請求
内払金の請求
一括払い
共同不法行為
減額または過失相殺
保険責任の始期・終期
保険契約の無効
保険金・損害賠償額の支払い
訴訟関係費用(訴訟費用・弁護士費用・仲裁・和解・調停費用等)