交通事故証明書の甲乙がどのような理由で記載されているのか、ネットで調べてもせいぜいわかるのは過失の大小によって区分されているということくらいです。ほぼ毎日のように警察署・交番に出向くのが仕事である保険調査員は当の警察官からその理由を聞き出せるもっとも近い立場です。
以下の文章を読めば、「そういうことなのか」と納得されることでしょう。
目次
- 1 事故証明書の甲・乙のどっちにどうしてこだわるのか
- 2 甲・乙は過失の大小とは無関係とは言うものの・・・
- 3 実際は過失の大小によって付けている
- 4 肝心なことがネットでは書かれていない
- 5 事故証明の甲・乙はどんなふうにして入れているのか
- 6 事故証明書の記載は必ずしも正しくないこともある
- 7 警察から多重事故を単独事故2つにされた例
- 8 センターラインをオーバーしたのはどっちかで争いがあった例
- 9 事故証明書の甲・乙は、テキトウに入れられているわけではない
- 10 交通事故証明書の入手方法
- 11 交通事故証明書が出るばあいと出ないばあい
- 12 道交法違反と民事上の過失との関係
- 13 まとめ
- 14 事故証明書の事故類型で本来側面衝突が追突になっていた場合
事故証明書の甲・乙のどっちにどうしてこだわるのか
今年になってから2度弁護士と直接お会いするなり電話するなりでお話する機会がありました。いずれも地元の弁護士で、ひとりは相談者加入損保の顧問弁護士。もうひとりが、福井県であったもらい事故の勝訴判決を勝ち取った弁護士。交通事故の過失割合で揉めている方からの相談が私にあり、その件の受任していただける弁護士を探していました。
いずれの弁護士も、事故状況についてはかんたんに聞くだけで、そんなことよりも関心があったのは、交通事故証明書の甲乙でした。すなわち、事故証明書の甲にはいっているのか、それとも乙にはいっているのかです。事故状況よりもそちらのほうがたいへん気になるようでした。
甲にはいっていると私が答えると、ひとりの弁護士は裁判をやってもむずかしいでしょうねと答え、もうひとりは受任しないと断られてしまいました。
甲・乙は過失の大小とは無関係とは言うものの・・・
甲・乙についていまいちど確認してみたい。これが交通事故証明書です。
見てのとおり、交通事故証明書には甲・乙の記載があります。そして、事故証明書の甲・乙の区分は、「過失の有無とそのていどを明らかにするものではない」と明記されています。にもかかわらず、弁護士は甲か乙かに異常にこだわりました。
実際は過失の大小によって付けている
タテマエはともかく、実際は、過失が大きいほうが甲、過失が小さいほうが乙という記載分けがされているからです。それもかなり厳格に。
だから、弁護士はそのことにこだわるのだし、保険会社も、事故証明書を取り付けて、当該事故について警察がどちらが過失が大きいと捉えているのかを推測するために、必ずこの甲乙をチェックしています。そういう私も、相談者が甲なのか乙なのかに非常に関心があります。
肝心なことがネットでは書かれていない
ところが、この、肝心要のことについてネットで検索してもほとんどそのことの詳細について答えてくれる情報がありません。せいぜいが、甲は過失が大きいほう、乙は過失が小さいほうと書いてあるだけです。中には自信がないのか、「・・・が、必ずしもそうではない」と書いているサイトもあります。
事故証明書は事故発生から早い段階で作成されます。ふつうは2週間とか3週間と言われています。が、2週間とか3週間だとまだ捜査中のものもあります。そのため、どっちが過失が大でどっちが小なのかまだ決められないものもあるはずです。
だから、そういうことも含めて、もっと具体的に、どんなふうにして事故当事者の一方を甲に入れ、他方を乙にいれているのか、過失の大小というような抽象的な言い回しでなくて、もっと具体的に警察の運用方針について言及しているサイトがないかしらとネットで調べてみましたが、ひとつもありません。
事故証明の甲・乙はどんなふうにして入れているのか
そんな運用方針なんてそもそもあるのかと思われた方がおられたかもしれません。もしおられたなら、それは事故証明書を見ていない証拠です。何十枚ていど見たってわからないですね。何百枚、何千枚見ていれば、そこにはっきりした運用方針らしきものが見えてくるはずです。
以下がその「運用方針」です。
運用方針の第一
過失の大きいほうが甲、小さなほうが乙。
運用方針の第二(第一の例外)
事故証明書は事故発生から2~3週間で発行されることが多い。つまり、捜査終結前に発行されることがあります。そして、事件が終わっていない段階なら、どちらが過失が大でどちらが過失が小なのかもまだ確定していないということです。この場合はどうするかです。
信号の色に争いがある場合
「確定していない」とは、たとえば、信号のある交差点でのいわゆる右直事故で信号関係に争いがある場合とかです。一方は青信号で入ったと言い、他方は右折可の信号で右折したと主張している場合に、まだ事件は終結していないのだから信号関係もまだ決められないはずです。したがって、どちらがより過失が大きくてどちら小さいのかも決まっていません。
そこで、このばあいは、便宜的に右折車側を甲にし、直進車側を乙にしています。これは、本来は信号の色で決しなければいけないのですが、そのことに争いがあり現段階では不明です。そこで、信号の色を無視して、仕方なく直進車優先という原則で甲乙を記載することにしています。
では、双方信号青・青主張の場合はどうでしょうか。これはどっちを甲にし、どっちを乙にしていいのかわからないので、この場合は、過失の大小とは無関係に甲乙をいれています。
センターオーバー事故の場合
対向車同士のセンターオーバー事故で、車道中央付近が衝突地点というのがかなりあります。そして、双方が相手がセンターオーバーしてきたと主張している場合だと、どっちがセンターオーバーしたのかすぐに決められないことがあります。「双方信号青・青主張の場合」と同じ扱いになりますね。すなわち、過失の大小とは無関係に甲乙をいれる。
警察が多重事故だと判断している場合は、1事故扱いで事故証明書1枚で記載され、別々の事故だと判断しているなら、2事故以上の扱いになるので、事故証明書が複数枚になります(注)。
警察の判断がどちらなのかを知るために、これも大変重要ですね。
交通事故における共同不法行為と判例
運営方針の第三
たとえば歩行者とクルマ事故で、歩行者側に怪我がある場合は、過失の大小とは無関係にクルマ側を甲にしている場合が多い。
以上は、私が当初抱いた推測がもとになっていますが、その後、警察官から私の推測がどこまで正しいのか裏をとりました。したがって、間違いないはずです。
事故証明書の記載は必ずしも正しくないこともある
ところで、この交通事故証明書は裁判で事故がいつ・どこで発生し、その当事者がだれなのかを示す証拠書面です。しかし、そのことと、その記載が正しいかどうかはまた別問題です。私がこれまでに経験したなかに、事故証明書記載の事故現場と実際の事故現場が違っていたことが何度かあったからです。
現場の写真撮影のために事故証明書に記載された事故現場に出向きました。が、その現場は、事故があったというにしてはその痕跡らしきものがまったくありません。おかしい。
それで事故の当事者に確認してみたんですね。いや、そこじゃなくてもうひとつ隣の交差点だというのです。警察に行って、本当にここが事故現場なのかと確認したら、間違えた、申し訳ない・・・ということがありました。もちろん、事故証明書の訂正をしていただきました。
こういうことは警察が現場臨場していないときにとくに起こりやすいのです。軽微な物損事故だと、こういうことが起こりえます。警察は物損事故にまったく無関心なので、こういう場合は現場に行かず、事故当事者を警察署や交番に呼びつけて、道路地図上でここだなと確認するだけです。
このケースもまさにそうで、田んぼの中の交差点だったから、ひとつ隣の交差点に間違えてしまったのです。
また、事故当事者を間違えていたということがありました。これは警察のミスではなくて、運転者が別の運転していない人間にすり替えたケースです。飲酒運転をした夫がそのことの発覚をおそれ、妻に身代わりになってもらうのがその典型です。他に、家族で一方が加害者、一方が被害者のケース(運転者と同乗者がその典型)もあります。任意保険で免責(保険金が出ない)になることがあるためです。
さらに、事故証明書の甲・乙を逆に入れていたこともありました。これは担当警察官が間違いを認め、書き直そうかと言ってくれましたが、事情がわかればそのままでいいと、特に書き直していただきませんでした。
警察から多重事故を単独事故2つにされた例
交通事故証明書の見方ができるかどうかで過失割合がどれほど大きく違ってくるのかの好例を示したい。たとえば先のところで、警察が多重事故と考えているのか、それとも何の因果の関係もない単独事故が複数発生した事故と考えているのかの見分け方として、事故証明書の枚数に注目してほしいと書きました。
以下のコメントは別記事に付けられたものですが、事故証明書の見方がわからない「交通事故専門家」なら、警察が事故証明書に単独自損事故扱いしている時点であきらめてしまうのではないでしょうか。警察がこんなふうに考えているのだからと、それであきらめてしまう。
冒頭でご紹介した弁護士もあるいは「あきらめ派」のようにも思いました。その結果、相手に過失を問えそうな事例であるにもかかわらず、100%自分の責任にされてしまいます。以下の当事務所の回答例を参考にしてください。
東名高速
2017年 3月 14日
初めまして本日仕事の移動中に非接触事故を起こしてしまい
どうしたらよいのかわからず
色々なサイトを観覧していましたらこちらにたどり着きました
誠に失礼ながら質問よろしくお願い致します。高速道路80キロ程で走行中に事故は起こりました。
スポーツ系の仮ナンバーを付けた5台位のグループの
自分の前方を走る一台の車のクラッシュに巻き込まれた形になります。車間距離もある程度あけてはいたのですが
前方の車がいきなり煙を上げ左右に振られクルクル回転してしまいました
瞬時に何が起こったかよく分からずブレーキをかけるタイミングが少し遅れた意識はあります
とっさに衝突を避けようと
急ハンドルと急ブレーキで運転の自由が無くなり
相手との衝突は避けられたのですが
自分の車が中央分離帯に衝突してしまい大破してしまいました。その後チームのような仮ナンバーの軍団がクラッシュした車に駆け寄り
車屋のようでその運転手にいれじえをしたようです自分は一応車から降りガードレール外に避難しましたが
警察が来る前に事故車のみを残して去っていってしまいました。警察の事故検証が始まり
事情を説明しましたが
車間を開けていれば十分止まれたでしょ?
の一点張りで別々の事故、自損事故
で処理されました
JAFで自分の車両を移動させて休憩していると
だんだんと体調がわるくなり救急車を呼びましたかなりのスピードでガードレールに衝突しており
車両はバン系なのでフロントガラスに思い切り頭を打ち付け流血しており病院で検査してもらうと額にガラスが入っていたり、どうやら肺に傷があるらしく検査入院になってしまいました。病院が事故処理をした警察に電話をしてくれたようで後日診断書を持って行く約束をしましたが
単独事故扱いになってしまうのでしょうか。
当然会社の保険を使いますが
相手に相当の因果関係を感じます。今後どのようにアプローチして行けばよいでしょうか?
よろしくお願い致します
ホームズ事務所
2017年 3月 16日
たいへんお困りのようですね。回答します。警察が自損事故扱いにしているのなら、事故証明書を取り付けてください。相談者の自損事故と相手の自損事故のふたつです。事故の発生時間と事故場所を確認し、いずれも近接していることをまずは確認してください。
このような事故状況なら、相手車がくるくる回っていてどのように対応しようか迷いを生じるのは当たり前のことです。その結果、危険回避がちょっと遅れるくらいはふつうにあることです。まして高速道路上の事故なのです。スピードが出ているわけだから、車間距離が多少あったとしてもそれは瞬時になくなってしまうものです。高速道路上では落下物でさえ落とした側に過失が問われる。いわんや、この事故状況においてをや。
ということで、高速道路上の巻き込まれ回避のための非接触事故や雪道の前車のスリップによる後続車の回避による非接触事故については、前車の動きが不安定・予測不能なところがあり、事故との因果関係が認められやすいことを覚えておいてください。
繰り返しますが、この事故状況なら非接触であっても事故との因果関係を認めてしかるべきです。警察が自損事故扱いをしているにせよ、この場合は無視してかまわない。警察に確認するのは、たとえば前車の事故発生時間と同じか1分程度の遅れであること。事故場所が近接していること、この2点です。
私が調査をやっていたら、当然に非接触事故扱いですね。ただし、過失割合は相談者のほうが大きい可能性があります。
センターラインをオーバーしたのはどっちかで争いがあった例
事故証明書の読み取りが不十分だったために裁判で負けてしまったと思われる相談がありました。本人訴訟ではなく弁護士に委任していてこれではあまりになさけない話です。
センターラインをオーバーしたのはどっちだ
事故証明書の甲・乙は、テキトウに入れられているわけではない
警察官も人の子ですから、たまに間違えて甲・乙をいれることがあります。このことを理由に甲・乙なんて意味がない、テキトウに入れられると結論づけしているネット情報がありました。それはとんでもない間違いですね。そもそも間違っていれるのだから、基準があることが前提になっているわけです。基準があるからこそ、それからの逸脱を間違いだと認識している。
警察署交通課の課長クラスになると、狸おやじがいっぱいいるから、そんなものに決まりなんてないと言うのが常なのですが、それを真に受けてしまうようではどうしようもないです。
後日知ったことですが、公的にもその基準が存在することがわかっており、情報公開までされているようです。「当事者順位の決定方法」。山中理司弁護士のサイトで知りました。
交通事故証明書の入手方法
事故証明書の入手方法については他のサイトでふつうに書いてあることなのでこれまでは省いていました。かんたんに触れておきます。
交通事故証明書は自動車安全運転センターから発行されており、事故当事者等の申請で交付される。事故があった事実および当事者等がこれにより証明される。人身事故については事故発生から5年、物損事故については事故発生から3年までなら交付可能です。
交付申請できる者とは、交通事故の加害者、被害者のほかに、交付を受けることについて正当な利益を有する者(損害賠償の請求権者である親族、保険の受取人、保険会社など)であり、事故を扱った警察署、事故の日時、場所等を申請書面に書いて、手数料(1通600円)を、運転センター窓口で支払えばその場で交付してもらえます。
【交通事故証明書申請用紙】
また、警察署や交番、駐在所等に郵便為替申請用紙が備え付けられていて、その用紙に必要事項を記入して郵便局で振替手続きを行えば(別途、払込料金がかかる)、郵送で入手することもできる。
他にも、事故当事者ならネット申請できるようです。自動車事故安全センターHPの申請フォームに入力する。この場合の料金は、コンビニもしくは金融機関のペイジー等で支払うことになります。
以上の情報は、(「交通事故訴訟」・民事法研究会・P585―による)
交通事故証明書が出るばあいと出ないばあい
いわゆる非接触事故についても、加害者に一定の責任が認められれば「誘因事故」として事故証明書が発行されます。また、加害者が明らかでない場合については、事故の相手を「路面」とすることで証明書が発行されます。
もちろん、電柱などにぶつけたというような自損事故でも事故証明書は発行される。ただし、警察への事故届けが遅れたため、事故があったことの確認ができない場合は、事故証明書は出ないこともあります。事故届けは早めにしてください。
道交法違反と民事上の過失との関係
道路交通法の違反行為によって交通事故が発生したときは、過失が事実上推定されることが多いです。しかし、そのような刑事上の判断がそのまま民事上の判断と一致するわけでありません。すなわち、刑事上無罪だから、民事上の賠償責任もないということには必ずしもならないので、注意してください。
「道路交通法を遵守していたとしても、過失がなかったとまではいうことができない。道路交通法は、一般的・定型的に守るべき義務を定めているにすぎず、当該事案においての結果回避義務を定めているわけではないからである。つまり、過失は、具体的な結果の予見可能性と回避可能性、その回避義務違反によって判断される。これに対して、道路交通法は、抽象的危険をどのように防止するかという観点から定められている。道路交通法に違反していないこと、すなわち、過失がないことにならないのはそのためである」(「交通事故訴訟」・民事法研究会・P43)
逆に、道路交通法に違反しているけれども、民事上の責任が問われないケースだってあります。
たとえば轢き逃げは、道路交通法の救護義務違反と自動車運転過失致死傷罪の2つの罪の併合罪が成立します。民事では慰謝料の増額事由にもなりえます。しかし、当て逃げの場合は、一般的には民事上の慰謝料増額事由にはなりません。
事故被害者の中には、加害者が当て逃げしたから過失が膨らむと考えたり、慰謝料の請求ができると考えている人もいます。当て逃げも轢き逃げも事故後にやったことという点では同じだけれども、民事上の評価という点ではこのように違ってくることをぜひ覚えておいてください。
まとめ
念のために強調しておきたいのですが、交通事故証明書の甲乙の記載は過失の大小によって記載されるが、その内容は絶対的なものではなく、あくまで過失の大小が推測できるだけです。その記載だけで過失の大小が決定されるわけではありません。
しかし、冒頭でも述べたように、弁護士にかぎらず、交通事故賠償分野で活躍されている専門家は甲か乙かに異常にこだわります。同様のこだわりは、たとえば警視庁交通鑑識業務に長年従事した藤岡弘美氏の著書である「交通事故調査の手法・手引き」(保険毎日新聞社・P60)においてもみられます。
(双方青・青主張の)場合、現場調査に基づいた各資料から総合的に判断検討して、結論を導くより方法はなく、このような事故にあっては取扱い警察においても、双方の冷却期間をおく等その処理期間が長期にわたり、警察調査においても結論を導き出すことはできない。この場合「交通事故証明書の当事者別または事故態様別欄記載事項」を参考とし、後に科学的に結論付ける方法しかない。
甲乙がどのような記載方法によっているかの予備知識を持っているかどうかは重要ですね。もしそのことがわかっていないと、どっちを甲にし、どっちを乙にしていいのか決められないため、便宜的に甲・乙を振り分けている場合があるにもかかわらず、事故証明書の甲乙の記載を絶対視してしまうということになりかねません。
【16・7・25追記】
もう1つ、重要なことを書き忘れていた。下の航空図をみてほしい。
「兵庫県川西市向陽台3丁目11-73」とか書かれているのがわかるかと思う。この住所は事故証明書の「発生場所」の記載にしたがって検索したものである。どんな事故だったのか。T字路交差点を突き当たり路側に右折した自転車が突き当たり路からT字路交差点に向けて進行していた車と衝突した事故だった。
この種の事故のばあい、過失割合に大きく影響するのはどちらが相手車線に進入したかである。事故証明書では衝突地点に最も近い地番を記載することがルールになっている。「兵庫県川西市向陽台3丁目11-73」とあるが、これは自動車側の車線寄りの番地である。このことから、以下の推定が可能である。
当該事故は、自動車側の車線上が衝突地点である。自転車が相手自動車にぶつかってきた事故だということになる。したがって、基本的には自動車が乙、自転車が甲だが、もし自転車側に怪我があったばあいは、必ずしもそうはいえない―― という推測である。
【17・06・08】交通事故証明書の甲乙記載方法について非常に詳しく解説されておられる山中理司弁護士のサイトから、引用したい。
1 原則
(1) 当事者に過失の差がある場合
当該交通事故の当事者順位は,「過失の軽重」により,重い方を「先位当事者」,軽い方を「後位当事者」とします。(2) 当事者間の過失の程度が同程度の場合
「人身損傷の程度」により,損傷の軽い方を「先位当事者」,損傷の重い方を「後位当事者」とします。2 例外
(1) 単独事故の場合
常に車両等の運転者を第1当事者とし,その相手方となった「物件」等を第2当事者とします。(2) 同乗者の場合
同乗者(運転者のいる車両等に同乗している者に限ります。)については,直接当該事故に関与した当事者以外の後位当事者とします。(3) 家屋内等物件の中にいた場合
例えば,運転者AはCを同乗させて走行中家屋Bに衝突,同乗者C及び屋内にいたDが共に負傷した場合,第1当事者は運転者A,第2当事者は家屋B,第3当事者は同乗者C,第4当事者は家屋内にいた者Dとなります。(4) ひき逃げ事故の場合
ひき逃げ事故で,当事者不明の場合は,過失の大小を問わず「逃走した当事者」を第1当事者とします。ただし,登録修正期間内に逃走者を検挙した場合,原則に従って当事者順位を決定します。
他にも、非接触事故の扱いなど非常にためになった。
事故証明書の事故類型で本来側面衝突が追突になっていた場合
本日の相談。道路を直進中、駐車場から出てきた車との接触事故。自車左最後部にぶつかる。回避余地なしと思うがどうか。
— ホームズ (@9qAjddBmc9FsCu9) December 23, 2019
どうともいえない。とりあえず事故証明書の事故類型がどうなっているかを確認せよと指示。回避可能性なしと警察が判断した場合「追突」欄に〇。それならゼロ主張も可能かも。
上のケースだと、事故証明書の事故類型は通常は「側面衝突」に〇のはずです。
が、あえて「追突」に〇をしていたケースがありました。そのケースというのは信号のないT字路交差点での、直進車と右折車との接触事故でした。直進車側の左最後部に右折車の左前部が接触したものです。
担当の警察官にその意図を確認しましたら、「ふつうは「側面衝突」だが、今回は「追突」と同評価していい」との返事でした。
そこから、「回避可能性なし」と評価できる場合は「追突」に〇をするケースもあるのだと私は判断しております。ほかにご意見があればどうぞ。
こんばんは。
「たとえば歩行者とクルマ事故で、歩行者側に怪我がある場合は、過失の大小とは無関係にクルマ側を甲にしている場合が多い。」と私も思っていました。
ところが、今月重過失の調査案件の事故証明書は、赤信号を無視し酩酊していた歩行者を甲、自動車を乙でした。
でも、そうするとどちらの過失が大きいか明らかだと思いました。
luckyさん、コメントありがとうございます。あまりにコメントがつかないので、コメント欄がひょっとしてなにか機能不全でも起こしているのかと思っていましたが、違うようですね(苦笑)。
luckyさんのご指摘の件ですが、ぼくも歩行者が甲になっていた場合があったので、「多い」として、例外的に、歩行者が甲になるばあいがあることを暗示したつもりでした。
実を言うとこの記事を公開する前に、自宅に一番近い交番に行って、歩行者の当事者の事故で、どういう場合に甲にいれて、どういう場合に乙に入れるのか聞いたのです。ところが、窓口にいた警察官らしいおっさんが、私は警察官じゃないからわからんとか言い出して、本署の交通課に行って聞いてくれというしまつ。交番の窓口とかにアルバイトのおっさんがいることは知っていたけれど、そのときもそうでした。結局、交通課には行かず、確認を怠ったまま当記事を公開したしだいでした。
たぶんですが、luckyさんの事例にもあるように、信号無視で飲酒による酩酊状態という罪責の重さが関係しているのは間違いないのでしょうが、そのメルクマールがどこにあるのかがよくわかりません。luckyさん、ぼくの横着かもしれませんが、こんど、機会がありましたら、そのあたりのところも聞いていただけるとありがたい。
実は、警察へ聞きに行ったのですが、甲乙の過失の軽重は回答できないと交通課課長からいわれてしまいました。
ほかの案件で甲乙についても聞いても「どちらかを先にいれないと書類が作れない」「五十音順」「年齢順」などがありました。
内部規程がいろいろあって大変だなあと思いましたが・・・。
ところで、アルバイト警官っているんですか?
初めて知りました。
luckyさん、わざわざご苦労様でした。やっぱり教えてくれませんか。役職がつくほどしゃべらないですね。むしろ現場にいる巡査レベルだと、自分はこうやって甲乙を入れたと率直に話してくれますね。
アルバイト警官についてですが、うちの親戚で公務員を退職後、警察署の窓口業務についていた人もいました。そういう人たちのことです。誤解するような表現だったのですいません。警察官をアルバイトでやっているというのではなくて、警察署や交番で窓口対応をしている定年退職者の方という意味です。そういう人がときどきいます。
こんにちは。
甲乙にそんな意味合いがあったのですね。
2ヶ月ほど前に息子(バイク)が車と事故をしましたが
息子には当時の記憶が飛んでおり、おかげで日常的にどうしているかと言う事しか主張できず、
相手の保険屋には相手の主張だけで話を通されそうな雰囲気です。直進どうしの事故で息子に一時停止があり、一燈機の信号(息子赤点滅、相手黄色点滅)がある交差点での出会い頭の衝突でしたが、事故証明書には乙の欄に息子の記載がありました。あちこちネットで調べても残念ながら効力はないとあったので実況見分調書を取らないとと思ってますが、保険屋によっては有利な情報なら活用してくる事も有るんですねね。因みに、調書を取るべく担当警察署に電話してみたら受付のおじさんは何にもわからないと一点張りでした。
交通課に繋いでもらって送致番号を聞こうとしましたが、そちらでも、刑事書類の謄写なんか出来ない。聞いたこともない。他の隊員にそんなの出来ないよね?なんて確認をされてたのも電話口から丸聞こえで、受付のおじさんの件は納得しましたが警察官すらバイトなのかと思えてしまいます。
「息子赤点滅、相手黄色点滅」は、事故状況として確定していることなのでしょうか。それと、息子さんの一時停止も。息子さんのほうが「赤点滅」だと、ふつうは息子さんのほうが過失大になる。したがって、事故証明書では息子さんが甲であるはずなのに、乙になっている。
乙になっている理由(修正要素は考慮外)。
ひとつ。バイクの一時停止が認められたため。
ひとつ。息子さんが怪我をしているため。
ということで、前者であることの確認のために実況見分調書を入手したいということなのかなあと思います。限られた情報からはそのように読めます。
送致番号については電話じゃ普通答えてくれないんじゃないでしょうか。警察まで行かないと。刑事記録の謄写については警察ではできません。検察庁に行ってください。
息子だけが怪我をしています。
調書の時は記憶がないので、いつもどーしてるか確認があり、一時停止無し減速のみと報告。
怪我をすると息子の方が過失が多くても乙になるんですね。
そーなると、事故証明書の甲乙は曖昧で、効力が無くても納得です。
調書は息子に記憶ない為か、保険屋は息子は減速無しの8割だと主張、警察からはお互いに減速して同速度の事故でしょうとの説明だったので確認までに見てみようか
と思ってます。調書もずさんだとよく書き込みされてますが、それで確定されてるならどうしようもないかなと思えます。
送致番号は調書に同席した時の雰囲気から予測できましたが、もしかしたら直接来てと言って下さる方が居るのでは?と儚い希望を持ちダメもとで聞いてみました。実際は予想通りでしたけど。検察庁に閲覧可能か聞いてみます。
ありがとうございます。
大変参考になりました。
娘がこの間巻き込み事故(娘直進、相手左折自転車専用青信号横断中、相手のトラックの前タイヤに巻き込まれ)
まだ2度目の泣きはありませんが、
不思議なことに事故証明書は私(父)はすでにもらったのですが、相手方保険屋は「まだもらえていない」(事故後約20日現在)とのこと。保険屋は最初「うちらで取り寄せます」と言われたのですが、真相を知りたかったため保険屋に内緒で直に取りに行きました。これって一通しかでないんですかね?
別冊判例タイムズ38号も購入し10:0ではと思うんですが、向こうは9:1と言って来たり「交通事故、自損事故、第三者(他人)等の行為による傷病(事故)届」の過失度合いは空欄にしておくってきたり、、。
まもなく2度目の泣きがくるかもしれません。
娘さんのお怪我のほうはどうだったのでしょうか。トラックの巻き込まれ事故というと悲惨なケースが少なくありません。もし重症でなければいいと思いつつ、いずれにしろ損保との交渉ごとは、GONさんも大変そうですね。
事故証明書は関係者なら請求できます。もちろん相手損保は請求できるから、1通ということはありません。
>向こうは9:1と言って来たり
損保は過失ゼロの事故を認めたがりません。示談の最初なのでそのように言ってきたのだと思います。1割の過失だと評価した事実およびその理由が何かを明示していただくことです。
もしわからないことがありましたら、いつでも質問してください。
ありがとうございます。
こういったところがあるととても助かります。
よろしくお願いします。
この間娘の事故の件で保険屋と話し合いがありました。
用紙を見せられ交通費はお子さんが載ってないとそれ以外は無理だの
そちらにも過失が1割あるなどと言われかなりひかれていました。
本当に2度泣きたい気分です。
判例タイムズでは1:9となっているとのことでしたが、自転車専用道路があれば-5といったんですけど、「それはなかった」と言い切ってました。その写真を見せると「たとえあったとしても横断歩道で事故だったら無効ですよ」と話を着てくれません。
見舞いや物をもっていかなくてはいけないときも「本人が通院だけが支払いになるので、見舞いやそれ以外はカウントされません。ですからひと月毎日行ったとしても入院と退院の2回までです」とのこと、、、
あ~本当にどうしたらいいんでしょうか、、、、泣きたいです。
お返事遅れてすみません。
>用紙を見せられ交通費はお子さんが載ってないとそれ以外は無理
お子さんは重傷だったのでしょうか、傷病名や入院状況等がわからないので回答できません。見舞いについては、被害者の症状(足の骨折等で歩行困難であるなど)または被害者が幼児である(1人では通院できないため)等の理由がある場合に限られます。そのあたりはどうだったのでしょうか。
過失割合の当不当については、事故現場の確認ができないため、コメントできません。せめて、事故現場の「住所」と、事故状況を教えていただかないことには。
今回はイニシャルで失礼します。
たいへん参考になりました。
今係争中の事故で、相手方は甲になっていました。保険会社が事故証明書を入手しているはず?なのですが、
にもかかわらず、強硬な態度をとってきたのは?に思います。
保険会社側から…「あなたの加入している保険会社と話をさせてくれれば」・・これには「驚き」でした。
ちなみに、事故担当者が、衝突直後の写真を提供してから、変更になり、前任から言われたこと(事故検証)等
がすべて反故になりました。
他の項目も拝見させていただきましたが、保険会社同士だと過失割合が変わるのか?
それとも・・素人相手に「さまざまな法律用語」を弄し、相手を納得させてしまうのか・・これには損保会社の方針
なのかな?・・とも思いました。
保険会社との示談交渉を打ち切った現在、その損保からの「代理人」まぁ・・代位請求権でしょうか。
を求める弁護士からの連絡はありません。
様々なケースの対応を知り、感謝しています。
T.Kさん、コメントありがとう。
たいへん評価していただきありがとうございます。独断と偏見の
記事が多いかもしれませんが、間違いがあるなら批判していただ
ければいいと思い、できるだけ、教科書に書いてあるような内容
のものをただなぞったようなものにだけはしないよう心掛けてお
りますし、T.Kさんの参考になるような記事を今後とも書けたらと
思います。
また、コメントしていただけるとありがたいです。
今回もイニシャルにて失礼いたします。
損保の裁定に納得がいかず・・本人訴訟に至りました。
交通事故証明では、こちら側「乙」に入っています。にもかかわらず、相手方は「弁護士」をつけ、請求の棄却を
してきました。全面戦争ってことですね。答弁書に「和解」があると思ったのですが・・
記事を読む限り、金目か・・もしくは「懇願された」という感じです。
初めてコメントします。イニシャルで失礼します。先月、兄が交通事故に遭い無くなりました。広い3車線の真ん中を走り、転倒して左の車線に倒れ左車線を走って来たトラックに轢かれ病院には運ばれましたが心肺停止状態でした。少し落ち着き、事故証明書も発行してもらい見たところ、兄が甲、乙は無しで、丙がトラックの運転手でした。相手側の保険屋が1ヶ月経っても何も言って来ないので相手側の社長に問い合わせると、因果関係が分からないと動けないと言ってるとのこと。こちらは死んでいるのにまるで加害者のような扱いに感じます。警察は書類送検したと言ってますが、私たち被害者側はどんな事をどう動けばいいのでしょうか…何も分からず悲しみだけが残っています。
お返事遅れて申し訳ありません。どう言葉をかけていいのか。
情報量が少なすぎて、いく通りもの解釈が可能です。亡くなられた兄が甲で、乙の記載なしというのはたとえば自損事故のケースでよくある記載です。丙は、ガードレールになっていたりする。自損事故を起こし、ガードレールにそのときぶつけたという事故状況です。今回、トラックが丙扱いなら、いわゆるもらい事故扱いなのかもしれない。
他にもいくつか解釈が可能なので、これ以上の詮索はやめますが、いずれにしろ、亡くなられた兄は、かなり不利な立場に追い込まれていることは事故証明書の記載をみるかぎり間違いないと思います。ただし、他の解釈も可能なのかもしれず、詳しい情報が必要ですね。
そこで質問です。兄はバイクにでも乗っていたのですか。それとも自転車?
転倒とありましたが、転倒した理由は? 事故状況の説明についてももっと詳しく。事故の発生時刻、一般路あるいは高速道路なのか。トラックはカメラ搭載なのか。目撃者は。などなど。
書類送検したということですが、送検されたのはだれでしょうか。事故証明書の内容だけで判断するなら、トラックではなく、亡くなられた兄自身のようにも思われます。
何もしないままこのままにしておくと、後になればなるほど、たとえば証拠が散逸するなど、相談者側に不利になるのではないかと思われます。
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初めまして。イニシャルですみません。
昨年の10月に接触事故がありました。
私はT地路から大通りに入るとこで、丁度直進と右折ラインの2車線になっている所から右折ラインへそのまま入りました。
その際は2車線になる前で車が何台か停まっていてくれました。
右折ラインに入りあと少しで車が真っ直ぐになる所で、相手が対向車線をはみ出して無理矢理追い越しをしてきて、対向車が来てウインカーも出さず急に前に割り込んで来た際に車が接触。
相手は自分が悪いのを分かっていて、停まっていてぶつけられたと主張していて、どこでどのように接触したのかも分からず、状況を全て私が説明し、そんな感じとしか言いませんでした。私は防犯カメラや目撃者を探しましたが、警察はないと言っており、相手は安心していました。
後日目撃者が出てきて、証言も私とほとんど一致していました。その為相手のみ2回目の現場検証を行っていました。
相手は私の任意保険に既に直してある傷をその時付いたと言ったり、事故当時から今に至るまで何度も話が二三転し、全く話が進まず弁護士を雇いました。
しかし、交通記録証明書で私は優先道路妨害との事で4点と髪が届きました。
その為私が悪いとの事で相手は強気に10:0と要求してきています。
これは私が10で悪いのでしょうか。
わたしは8:2で相手が悪いと思っていま進め続けています。
事故当時現場検証を全てやり、防犯カメラや目撃者をまち、私は嘘を言って居ないのに、乱暴な運転をしても優先道路を走っていたと言うだけで悪くないのでしょうか。
交通記録証明書の事もあり、弁護士は強気に相手には言えず、示談にしても相手の要求をほとんどのむ形になると言ってました。
私は泣き寝入りするしかないのでしょうか。