外傷性の非骨傷性頚髄損傷(中心性脊髄損傷)のケースでの事故との因果関係および後遺症

非骨傷性頚髄損傷で事故との因果関係に争いありとの相談

現在相談を受けているものに、表題の「外傷性の非骨傷性頚髄損傷」がある。後遺障害診断書では「軽度外傷性脊髄損傷」となっている。よく耳にする中心性脊髄損傷であることが多い。

相談の内容は、事故との因果関係と後遺障害に該当するかどうかである。相手側は診断書に書いてある「外傷性」は根拠のあるものでなく、事故は軽微なものであるため、事故との因果関係がないと判断しているのだ。すなわち、症状があることは認めるが、それは私病としての頚椎症性脊髄症によるものだ。あるいは精神疾患によるものだと主張して、いわば入口で門前払いにされている。事故との因果関係を否定しているのだから、後遺障害は論じるまでもないというのが相手の主張である。そこで、事故との因果関係ありとするためにどうしたらいいのか、そのための資料探しが当面の私がやらないといけないことである。

一般的に事故との因果関係を認めるための方法は、

①画像上に新鮮な骨折所見があるとか、浮腫、出血などの所見があること。
②初診時に、外傷所見があること。
③事故状況が重大なこと。
④事故前に症状がなく、事故後に症状があることで、事故との因果関係を認めること。
などである。

 
ということで、以下に書くことは、個別相談に応じるための覚書、あるいはメモである。この記事は、ヒマをみて継ぎ足していきたいので、最終的にどんな記事になるのやら、書いている私にもさっぱりわからない(笑)。

外傷性の非骨傷性頚髄損傷とは?

私には「外傷性の非骨傷性頚髄損傷」と言われても何のことだかさっぱりわからんから、そのことについて、以下の本から引用する。

 

外傷により、X線上明らかな骨折や脱臼を認めないにもかかわらず頚髄損傷を発症することがある。麻痺発現には受傷前より存在する脊柱管狭窄が重要な背景となるため、加齢に伴う頚椎変性疾患をすでに有する中高年齢者に好発する。既存の脊柱管狭窄因子として、先天的な脊柱管狭窄症、後天的な頚椎症性変化(骨棘形成、椎間板膨隆、頚椎不安定性(注1)、後縦靭帯骨化症などが挙げられる。圧迫を受けていた、あるいは先天的に狭い脊柱管におさめられた脊髄は易損性が高く、転倒など軽微な外傷でも麻痺を発現する。受傷時作用する外力の方向は過伸展が多いが、すべてではない。

過去の報告によれば飲酒の影響もあり、20~70%は受傷機転が不明、明らかなもののうち80%以上が過伸展損傷、残りは過屈曲損傷とされている。前額部、下顎などの顔面挫創は伸展損傷を示唆する重要な所見である。

(注1)頚椎不安定性:椎間板の変性のために、首を前に曲げたり、後ろに反らしたりしたときの、椎体の動きが異常に大きいことを言う。

頚椎症性脊髄症とは?

「頚椎症性脊髄症」については、以下の本から引用する。

 

□ 本ガイドラインでは、脊髄症を呈する変形性頚椎症に起因するいわゆる頚椎症性脊髄症を対象とする。

□ 頚椎症性脊髄症は、頚椎脊柱管の狭い状態に経年的な頚椎の変化(後方骨棘、椎間板狭小と後方膨隆)に頚椎の前後屈不安定性や軽微な外傷が加わって脊髄麻痺を発症する疾患の総称である。狭窄や骨棘などを頚髄の静的圧迫因子とし、後者を動的因子とする。

 
【頚椎症性脊髄症の症状経過】

 

通常は神経症状がなく首のこりや痛みだけの頚椎症の時期があり、多くの人はそのままの状態で止まり、神経麻痺までには至りません。しかし、脊柱管が狭かったり、頚椎の不安定性が強い場合などには、さまざまな神経症状が現れる頚椎症性脊髄症になります。

このため、発症の初期には首の痛みや手足の先のしびれなどが、病気が進行するとしだいに「手の動きのぎこちなさ(巧緻運動障害)」、「歩きにくさ(歩行障害)」、「尿の出にくさ、便秘(膀胱直腸障害)」などがあらわれます。

これらの症状の出方は一様ではなく、また、保存療法の効果にも個人で差があることから、病状の経過もさまざまです。

このため首の痛みしか出ずに早期によくなる人、保存療法が効果なく他の症状もしだいに加わり神経麻痺が徐々に進行する人、あるいは急激に悪化する人などがいます。

ふたつの傷病はどこが違うのか

どっちの定義も、急激な外力が加わたことが原因でなったことによるものか、それとも歳をとるとともにだんだんと老化がすすんでそれが原因でなったことによるものかという違いはあるにせよ、それ以外の説明は非常によく似ている。頚椎症性脊髄症にいたっては、外傷をきっかけになるとまで言っているわけだし、外傷でなるはずの非骨傷性頚髄損傷も受傷機転が不明なものが高率で存在するため、ほとんどその違いがわからなくなった。

素人によるうがった見方をするなら、同じ病態に対して、賠償してほしい方は脊髄損傷だと主張し、賠償を拒否したいほうは頚椎症性脊髄症だと主張している―――ようにもみえる。いったい、どこがどう違うのだろうか。双方を区別するための、具体的な、何かメルクマールとでもいうべきものがあるのだろうか。

非骨傷性頚髄損(中心性脊髄損傷)で事故との因果関係が争われた裁判例

1⃣東京地裁 平成9年1月29日判決

「加齢による骨棘形成は身体的特徴である」とされ、素因減額が否認された事例。
【被告主張】
被告顧問医作成の意見書には、原告の診断書記載に神経学的所見が不足しており「右上下肢しびれ感、筋力低下」が頸椎に由来していると確定できない。現在の資料で考えられる可能性は、

1,これらの症状が頸椎以外から引き起こされていて、事故との因果関係がほとんどない。
2,これらの症状が頸椎から由来しているとした場合、椎間板狭小、後方骨棘形成等の素因が外傷と共に症状形成に関係している。

のいずれかであり、いずれの場合にしても事故が100%症状形成に寄与しているとはいえないとの記載がある。そして、右意見書において、右上下肢しびれ感、筋力低下の症状が、頸椎以外から引き起こされているため、本件交通事故との因果関係がほとんどないとする根拠は、後遺障害診断書、「右」上肢、下肢の所見しか記載がなく不十分であること、受傷当初の診断書(同じ病院のA医師記載)では「左」上肢しびれ感との記載があったにもかかわらず、後遺障害診断書(同じ病院のB医師記載)のでは「右」に変化しており、右診断書に信用性がないことを挙げている。

また、仮に症状が頸椎由来であった場合、頚椎単純レントゲン写責では骨折、脱臼等の外傷性の所見は無い。主治医珍断書にもあるように、第4,第5頸椎間、第5,第6頸椎間に椎間の狭小、後方(脊髄神経の存在する脊柱管へ向かった)骨棘形成をみる。これらの変化は、数十年を経て徐々に形成された加齢変性による変化であって、今回の事故によって生じた変化ではない。本来の脊柱管前後径は狭くはないが、これらの加齢性変化によってやや狭窄しており、MRIのT2強調画像では第4~第6頸椎レベルでくも膜下腔(脊髄のまわりにある脳脊髄液をいれた空間)が狭められていて、軽い外力によっても脊髄が損傷されやすい状態(易損性という)になっている。

このような易損性の状態にある脊髄は通常人では頚椎損傷を起こさないような軽微な外力、とくに伸展力により前後方向の圧迫を受け頚髄損傷を発症する。本件は、受傷状況、物損から推定して頚椎に働い た外力は骨折や脱臼を起こすほど大きなものではなく、軽度な外力と被害者の素因が競合して生じた骨傷のない頚髄損傷と考えられる。以上により、仮に症状が頚椎由来であった場合でも症状形成には事故のみでなく素因も関与している。

【裁判所の判断】
B医師は、原告を診察した際、右上肢のしびれ感を原告が訴えており、右診断書(略)に左上肢しびれ感のみしか記載されていないのは右診断書を記載したA医師の見落としではないかと証言していること(略)からすれば、右診断書(略)と右後遺障害診断書(略)の各記載の齟齬をもって、右上下肢しびれ感、筋力低下が頸椎に由来していないことの根拠とは直ちにはいえない。

また、被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害者の右身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり斟酌することはできないと解すべきであるところ、右意見書の記載を前提としても、原告の第4,第5頸椎間、第5,第6頸椎間に椎間の狭小、後方(脊髄神経の存在する脊柱管へ向かった)骨棘形成が、数十年を経て徐々に形成された加齢変性による変化であって(略)、これが疾患に当だらないことはもちろん、このような身体的特徴を有する者が一般的に負傷しやすいものとして慎重な行動を要請されているといった事情は認められないから、前記特段の事情が存するということはできず、右身体的特徴と本件交通事故による加害行為とが競合して原告の傷害が発生し、又は右身体的特徴が被害者の損害の拡大に寄与していたとしても、これを損害賠償の額を定めるに当たり斟酌するのは相当でない。

したがって、原告の既往症を斟酌して損害額を減額すべきとする被告の主張(略)は失当である。

2⃣大阪地裁 平成11年10月21日判決(確定)

衝突事故で頸部・腰部痛を訴え、その後四肢麻痺を主張する49歳女子看護婦の事案につき、5か月位までは軽快する方向に向かっており、その後発症した右四肢麻痺は原因は不明というほかなく、本件事故との間の相当因果関係は認められないとされた事例。

3⃣東京地裁八王子支部 平成12年10月26日判決(確定)

男子マッサージ師の原告は、平成8年7月15日午後4時15分ころ、東京都田無市内で原付自転車を運転停止中、発進した被告運転の普通貨物車に追突され、転倒はしなかったがテールランプ破損と中心性脊髄損傷等で20日入院、103日実通院して14級10号を残したとして368万4、367円を求めて訴えを提起した。

裁判所は、中心性脊髄損傷、入院治療を否認した。受傷当日受診したA病院は「入院の適応ではない」としたが、翌日受診のB病院では「中心性脊髄損傷の傷病名で…20日間入院」したが、入院当日「勝手に外出しようとする」、「入院する必要性がないことが明らか」、「エアコンのフィルターを掃除している」等「脊髄損傷に特有の症状はなかった」し、入院の「真摯な傷病の治療中のものとは到底考えられない」と脊髄損傷、入院の必要性を否認した。

大阪地裁 平成7年3月30日判決
事故状況(急制動以前の直進車の速度および本件事故による損壊状況)に照らせば、衝撃の程度は必ずしも軽微とは認められない(しかも、前記各証拠によれば頚髄損傷は、相当軽微な
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