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自転車は「軽車両」だということの意味するもの
分類は、いうまでもなく、ある意図をもとにした体系化であるから、意図が変われば同じ対象についてまったく異なる体系・分類が可能である。たとえば人間を男と女というふうに二大別することもできるし、大人と子供というふうに二大別することもできる。分類自体は、ある意図をもった操作可能な、その意味できわめて恣意的なものである。
現代の日本では、自転車は「軽車両」である(道交法2条1項8号・11号)。「軽車両」なのだから、「歩行者」ではなくて、「車両」の範疇のひとつであり、要するにふつうの自動車の仲間というわけである。しかし、意図が変われば、自転車を歩行者の仲間とすることもできるし、歩行者でもなくて自動車でもなくて、まったく別のカテゴリーとして独立させることも可能である。自転車は軽車両なのだからなどと、あたかもそれこそが不動の真理でもあるかのように考えている人が多いので、最初に一言したまでだ。
自転車の交通法規
自転車は「軽車両」だが「自動車」ではないから、すべてが自動車と同じ扱いというわけではない。そのあたりのところをまずは整理しておきたい。自転車の交通規則にどういうものがあり、どれが自動車と共通し、どれが自転車独自のものなのか。そのあたりの確認から始めたい。
自転車道の通行義務
さらに、「自転車横断帯」がある。道交法2条1項4号の2で、「道路標識等により自転車の横断の用に供されるための場所であることが示されている道路の部分をいう」。
自転車のための「横断歩道」だと思ってもらえばいい。ほかにも、金沢市にある「自転車走行指導帯」とかいうのがある。国土交通省の解説によれば「道路交通法上、自転車が通行すべき「車道の左側端」を路面表示等により明示した部分をいう」らしいが、道交法上の用語ではない。なんかこんがりそうで、私も明確に区別できているわけではない(汗)。
普通自転車の歩道通行
②普通自動車の運転者が児童・幼児のほか、70歳以上の者・身体障害者など車道を通行することが危険であるとして政令で定める者の場合(道交令26条、道交規9条の2の2)。
③その他、車道又は交通の状況に照らして当該自転車の通行の安全を確保するため歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき
これらの規定で特に問題になるのが第3項である。「歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき」とは、どんなときか。「道路交通法解説16訂版」によれば、
としている。
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【東京国道事務所HPより】
横断・交差点の通行
なお、ネット情報の中には、
というような見解もあります。このような見解が本当に正しいのかどうか、道交法の解説書である「道交法解説」にはそのような説明が一切なかったし、「ある」とかいう昭和55年東京高裁の判例が本当に存在するのかどうかも調べてみたのですが、私の所持している判例集および判例検索ソフトでは、残念ながら見つかりませんでした。見つからなかったから即「ない」とは言えないものの、本当にあるのか疑わしい。もしあるのでしたら、自分の主張を裏付ける重要な(決定的な)判例なのに、あえていつの判例なのかを伏せる理由が私にはさっぱりわかりません。いずれにしろ、現段階では「無視」していいかと思います。
普通自転車の並進
路側帯の通行
自転車は軽車両であるため車道を通行しなければならないが、道路の左側部分に設けられた自転車可の路側帯を通行できる(法17条の2Ⅰ)。
車道の左側端通行義務
自転車は車道の左側部分を通行しなければならない(法17条Ⅳ)が、車両通行帯(注1)の設けられた車道を通行する場合を除き、車道の左側端に寄って通行しなければならない(法18条)。
二段階右折義務
自転車は、右折をするとき、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿って、徐行しなければならない(法34条Ⅲ)。
自動車と同様の規制
□ 信号に従う義務(法7条)
□ 交差点通行の際の左方優先・広路優先(法36条)
□ 一時停止義務(法43条)
□ 制限速度(法22条Ⅰ)
□ 急ブレーキの禁止(法24条)
□ 車間距離の保持(法26条)
□ 進路変更の禁止(法26条の2)
□ 灯火、合図義務(法52、53条)
□ 酒気帯び、過労運転の禁止(法65、66条)
□ 事故の際の救護義務・事故報告義務(法72条)など
損害賠償の範囲と損害額の確定
自転車は、道交法上の「軽車両」ですが、自賠法の適用がないため、人身事故の場合の補償に欠けるところがあります。また、自転車は任意保険に加入していないことが多いため、自転車を加害者とする事故のばあい、資力に問題が生じやすい。
次に損害賠償の範囲ですが、これは基本的に自動車同士の事故と変わりません。すなわち、人身事故の場合でしたら、治療費・通院交通費・慰謝料・休業損害・後遺障害による逸失利益など請求できます。また、物損事故でも基本は同じです。部分損の場合の修理費とか、全損の場合の車両時価とかです。理論的には休車損の請求も可能です。
また、自転車との事故での過失相殺の適用もあります。最新の判例タイムズの過失相殺基準本では、対自転車との事故が新設されたり、改定されています。しかし、自転車同士の事故など新設をみあわせたものもあります。
相談
場所は普通の交差点では無く立体交差転の手前の分かれ道です。(画像のURLを貼りますのでそちらも見て下さい)直進すると立体交差点の上に上って、左に車線変更すると立体交差点の下を通る道で私が左に車線変更した時の事故です。道は片道車線ですが大きな道路で車道の脇には歩道と自転車通行帯があります。
私が車線変更をしようとした時に立体交差点の上から降りてきた自転車に接触しそうになったため私はバランスを崩し転倒しました。自転車が下ってきた立体交差点には「自転車は右側通行をすること」という標識や看板があるのに自転車は左側通行をしていたので自転車はそもそもそこを走っていてはいけないはずでした。さらに私が転倒した道路上には自転車ナビライン(青い線で>>>>と道路に書かれている線で自転車の進行方向を指示している)があり自転車はそのナビラインを逆走してきました。
私は自転車が本来走ってはいけない道を本来走ってはいけない方向に走っていたのだから100%自転車が悪いと思っています。自動車と自転車の接触事故等の場合は自転車側が怪我をしている前提なので自動車側の過失割合が多く計算されていますが今回は怪我をしたのは私とバイクだけで自転車側は転等もせず無傷なので自転車側に有利な過失割合にされる理由もないと思います。
近日自転車側と過失割合について協議する予定ですが私は過失割合を何対何と主張するのが適切でしょうか?ご意見をお聞かせ下さい。
論点
ご相談の論点はこの2つです。とりわけ、2番目の論点が難問でした。
判例タイムズ過失相殺率基準本ではどうなっているのか
判例タイムズの基準本の第5章に、今回の事故当事者と同じ「自転車と四輪・単車との事故」があります。事故形態からいくと、その中の「対向方向の直進自転車と左折四輪車との事故」形態に一番近い。図【291】です。
この事故形態の基本過失割合と修正要素は以下のとおりです。
基本 | 自転車15:車85 | |
---|---|---|
修正要素 | 夜間 | ー |
自転車の著しい過失・重過失 | +5~10 | |
自転車:児童等・高齢者 | -10 | |
車:大回り左折・進入路鋭角 | -10 | |
車:合図遅れ | -5 | |
車:合図なし | -10 | |
自転車の横断帯通行 | -10 | |
自転車の横断歩道通行 | -5 | |
車のその他の著しい過失・重過失 | -5~10 |
まずは歩道走行の可否についてです。自転車は軽車両であるため、原則は車道走行です。しかし、本件は歩道走行であるため、そのことが過失割合に影響してくるかどうかです。道交法63条の4Ⅰ③の「「歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき」、すなわち、このケースでは、「著しく自動車等の交通量が多く、かつ、車道の幅が狭いなどのために、追越しをしようとする自動車等との接触事故の危険がある場合」に該当するかどうかです。
そこで事故現場を改めて確認してみましょう。交通量はこのような基幹道路なら多いといえるでしょう。車道幅ですが、現場画像が1枚だけなので、google map その前後を調べてみました。やはり狭いです。狭いか広いかは相対概念なので主観的な判断になってしまいますが、車に接触されそうで、私なら自転車で車道は通行したくない。危険を感じて歩道に逃れてもそのことで過失が問われるとは思えません。
参考のため車が他車を追い越す際の、外国の側方間隔の数値を上げておきます。日本にはこのような数値規制がないものの、参考になるはずです。また、山中以下の研究も参考のためにあげておきます。
自転車が加害者の場合の過失割合
論点2にかかわる問題です。この問題については別記事【→「過失相殺率と過失割合」】で書いているのですが、結論だけ述べるなら、「判タの基準本をそのまま援用はできないはず」なのですが、実際は、そのまま援用している現実がある。
(つづく)
ホームズ調査事務所さんの見解を待ってから交渉しようと思って待ってもらっているのですが、そろそろ見解を聞かせて頂けないでしょうか?
すみません。その後、緊急を要する相談やぼく自身の深刻な問題も新たに抱えていたりして、遅れたままになっていた。気にはなっていたのですが、かなりの難問もあるため結論に迷いもありました。いずれにしろ、申し訳ない。現状でとりあえず書き上げます。しばらくお待ちを。
写真のバイクと自転車の非接触事故について示談が成立しましたので報告いたします。
自転車:バイク=45:55で決着しました。
根拠は下記のHPより、自転車とバイクの接触事故はバイクが優先の道路であれば50:50とあります。
http://wakuwaku-jitensha.com/wkj0000176-post/
事故状況は自転車が複数のルールを破った状態であるので正常な運転をしているバイクのほうが悪質な運転をしている自転車よりも優先だったとみなして50:50
道路が雨で濡れていたのでバイクはもっと注意すべきだったとみなして5%減算して45:55となりました。
ご協力ありがとうございました。