交通事故で受傷すると、損保や共済は調査会社に医療調査を発注することがある。どういう目的で医療調査を発注するのか。現に、同意書を求められたが、どういう調査に使われるのかと心配されて質問をしてくる事故被害者の方がときどきおられる。その目的を知ることは損保業界の舞台裏に通じること、その手のうちを知ることでもあるから、損保との示談交渉を有利に進められることにもつながる。医療調査は、時期によって、あるいは事故態様によって、あるいは傷病によって、あるいは保険の種目によって、それぞれ発注の目的が違う。その目的は、大雑把だが、以下の4つに大別できるかと思う。
支払備金を見積もるための医療調査
支払備金とは、
交通事故が発生すると損保や共済は保険金や賠償金の支払い義務が発生するが、通常事故が発生してから損害額が確定し、保険金支払いが終了するまでは時間がかかる。特に裁判になったり、後遺障害が残存したりすると長期化するため、損害賠償金額が確定するまでに数年を要することもまれではない。保険会社では事故が発生するとすぐに調査を開始して支払うべき金額を予想し、それの金額を未払保険金として計上する必要がある。これが支払備金である。それをどれくらい計上していいのかを大雑把に予測するための調査がここでいう「支払備金を見積もるための医療調査」である。したがって、特に知りたいのは「症状固定時期」「就労可能時期」「予想される後遺障害の内容」である。
以上から、事故状況や負傷の程度から「長期化」が予想されたり、明らかな重傷事案でこの種の調査が必要になることが多い。
因果関係調査
①事故との因果関係
②既往症との因果関係
③合併症との因果関係
④外傷にはなじまない疾病性の傷病(精神疾患も含む)との因果関係
――である。④は、特に医学的知識と経験がものをいう分野である。
打ち切りのための医療調査
有名なのはむち打ち損傷の長期化事案であるが、主治医から「現状で症状固定とする所見」を取り付けるのが目的である。これは近い将来にむけての対策であるが、場合によっては過去に遡らせて、すでに症状固定にあることを理由に、現段階では債務が不存在であることを主張するための調査ということもある。
〈以下工事中〉