渉外交通事件(中国語のための序文)

渉外交通事件とは

通称赤本と呼ばれる「損害賠償算定基準」という本を見ていたら、最後のところに「渉外交通事件」という章があることに気づいた。「渉外交通事件」とは、「日本に滞在中の外国人が被害者や加害者になった場合には、一方または双方の当事者が外国人であるということで渉外事件となる」とあり、その中でも、交通事故に関するものを「渉外交通事件」という。

中国人向けのサイトを作ると言っていたなあ

もう忘れていたのだが、そういえば、以前の記事で、中国人向けの交通事故に関するサイトを開設したいと書いたことがある。→「「同文同種」だからという理由で、中国人に通訳をつけないのはおかしくないか」。そこでも書いたことだが、ぼくの中国語は、中国の現地で生活をしていたことを通して学んだものなので、中国語の文法についてはほとんど大して知らないし、いわゆる簡体字の知識もほとんどない。ぼくの中国語は、耳から、あるいは中国人のしぐさやそぶりを通して学んだものである。生活を通しての、その場面・場面で音声言語を通じて学んだものだ。したがって、文字言語としての中国語を書くというはたいへん苦手である。苦手で、ぼくには絶対にできないことだと思っていた。

中国語の長文の抗議文を書いたことがある。ただし、これ一回こっきりだ

ところが、一度だけ、中国語のかなり長文の文章を書いたことがある。それも、抗議文である。岩波の「日中辞典」に出ている例文を参考にして、それらをいくつもつなぎ合わせて、原稿用紙で5枚くらいはあろうかという、ぼくにしてはとほうもない長文の抗議文を書いたのだった。いったい原稿用紙で5枚も何を書いたのだろうか。毛沢東の有名な詩をそこで引用したことは思い出せるが、それでいったい何を書いたのか、ぼくにはまったく思い出せない。毛沢東の有名な詩とは、

江山如此多娇、
引无数英雄竟折腰。
惜秦皇汉武、
略输文采、
唐宗宋祖、
稍逊风骚。
一代天骄、
成吉思汉、
只识弯弓射大雕。
俱往矣、
数风流人物、
还看今朝。

のことで、中国の歴史について知っている人ならご存知の詩である。どういう意味かというと、ネットで調べたらうまい訳をみつけたのでご紹介する。

国家の山河がかくも美しく
無数の英雄たちがその前に腰をかがめてきた
惜しいかな秦始皇帝や漢武帝は文才がなく
唐李世民や宋趙匡胤はいささか風流でない
一代の天の驕子チンギスハンは
ただ弓を引き絞って大鷲を射ることしか知らない
皆過去のことである
風流な人物を数えるとするなら
今の世を見よ

 

「今の世を見よ」とは、つまり、毛沢東を見よということである。この詩を毛沢東が書いたのは中国を統一したあとではない。1936年のことだから、まさに長征の最中のことだ。「長征」と聞くと勇ましい響きがあるが、要は蒋介石の国民党軍から逃げ回っていたころのことである。そんなときにこんな詩を書いている。たぶんぼくのことだから、この詩から、こじつけもいいところだが、「中日友好」の大局に立てくらいの大風呂敷を広げたのかもしれない。いや、そうに決まっている。当時は毛沢東の神格化からまだ覚めやらんころだったからだ。

留学生寮から出ろ

中国語の抗議文を書いたいきさつについて説明しだすと長くなるが、お付き合い願いたい。ぼくはかつて若かりし頃の一時期中国のある大学の留学生寮に住んでいたことがあった。1年間の期限付きである。その期限が満了するまで留学生寮にいるつもりだったし、いる権利があった。ところが、期限が満了する5日前だか1週間前だか忘れたが、大学当局が次の外国人が来るから寮から出て行けというのだ。ばかやろう。いいかげんにしろ。契約は契約だろ。日本人をなめるな。ぼくはそう思った。

ぼく以外にも日本人が10数人いて、彼らも同様に怒っている。しかし、なさけないことに当局に文句を言う奴がひとりもいなかった。それで、ぼくひとりで怒りにまかせて抗議文を作ったのだ。問題はそのつぎはぎだらけの抗議文がちゃんとした中国語になっているかである。まったく自信がなかったので、知り合いの中国人に見てもらった。そしたら、すばらしい。ちっとも中国語の勉強しないお前がいつ勉強したのだと、お世辞半分に言われた。中国人は、へたくそな中国語でもお世辞で褒めるところがあるからこういうときに困るのだ。

お世辞半分どころかお世辞100%かもしれない。そうも思ったので、もうひとり、寮で日本人のボス的存在だった東京外大出で中国語科を卒業した、中国の特派員経験もあるM新聞の元記者だったとかいう年配の方に抗議文を見せた。赤ペンだらけになるかと思ったら、よく出来ている、これをそのまま当局に出せと言われてしまった。今にして思えば岩波の日中辞典のデキがよかっただけなのに、それ以来、なんとかなるものだという、根拠のない自信ができてしまった。

いつになるかわからないが約束は約束である

ということが昔昔あったので、赤本の「渉外交通事件」の章の、全部は無理かもしれないが、かつての約束をはたすべく、今後、少しずつでもいいから、機会があれば中国語に訳してみたいと思う。誤訳もありそうだし、専門用語もまったくわからないが、とにかくやってみるべし。そんな時間がいつあるのかわからないが、訳してデタラメだったら、ごめんなさい。だれか間違いを指摘していただけるとありがたい。
 

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


事務所所在地・連絡先

ホームズ調査事務所:
石川県加賀市
電話番号:090-1314-0234

電話・メールをされる前に、「お問い合わせ」欄を読んでくださいね。なお、メールについてはお返事に時間を要することもあるし、内容によっては、たとえば記事に書いてあることの再確認とか、あまり深刻とは思えないものについてはお返事しないこともありえます。電話ならその点確実です。

当事務所の立場

突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ


その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にし、自己を無責任な立場に置くことになる。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。丸山真男のことばを最後に引用しておきます。

丸山真男から

ゲーテは「行動者は常に非良心的である」といっておりますが、私たちが観照者、テオリア(見る)の立場に立つ限り、この言葉には永遠の真実があると思います。つまり完全にわかっていないものをわかったとして行動するという意味でも、また対立する立場の双方に得点と失点があるのに、決断として一方に与するという意味でも、非良心的です。にもかかわらず私たちが生きていく限りにおいて、日々無数の問題について現に決断を下しているし、また下さざるを得ない。純粋に観照者の立場、純粋にテオリアの立場に立てるものは神だけであります。その意味では神だけが完全に良心的であります。

私たちの社会というものは、私たちの無数の行動の網と申しますか、行動の組合せから成り立っております。社会がこうして私たちの行動関連から成り立つ限りにおいて、私たちは行動あるいは非行動を通じて他人に、つまり社会に責任を負っています。その意味では純粋に「見る」立場、ゲーテの言う意味での完全に良心な立場というものは、完全に無責任な立場ということになります。

したがってこの点でも神だけが、完全に無責任でありうるわけであります。認識することと決断することとの矛盾中に生きることが、私たち神でない人間の宿命であります。私たちが人間らしく生きることは、この宿命を積極的に引き受け、その結果に責任を取ることだと思います。この宿命を自覚する必要は行動関連が異常に複雑になった現代においていよいよ痛切になってきたのです。

世のなかには一方では、認識の過程の無限性に目をふさぎ、理論の仮説性を忘れる独断主義者もいれば、またそもそも認識の意味自体を頭から蔑視する肉体的行動主義者がいます。しかし他方その半面では、物事はそう簡単にはイエスかノーかきめられないのだ、もっとよく研究してからでなければなんともいえないという名目の下に、いつも決断を回避することが学者らしい態度だという考え方がかなり強い。

あるいは対立する政治的争点に対して、あれももっとも、これももっとも、逆にそれを裏返しとして、あれもいけない、これもいけないということで、結局具体的な争点に対して明瞭な方向性を打ち出すことを避ける態度をもって、良識的であるとか、不偏不党であるとか考える評論家やジャーナリストもかなりいるようであります。

たびたびゲーテの言葉を引いて恐縮ですが、ゲーテはこういうことをいっています。「自分は公正であることを約束できるけれども、不偏不党であるということは約束できない。」今申しましたような世上いわゆる良識者は対立者に対してフェアであるということを、どっちつかずということと混同しているのではないでしょうか。
「現代政治の思想と行動」丸山真男 P452-454

【当サイトご利用上の注意】

当サイト内の情報を利用したことにより何らかの損害が発生しても、一切責任を負いません。自己責任でお願いいたします。また、記事を書いた後に、法律が変わったりするなど、現状を反映していないことがあります。その後の改正等についてはフォローしていくつもりですが、ご注意ください。

著作権にかかわることですが、当サイトの記事をコピーされる方が後を絶たない。公開した記事なので、コピーしていただくのはまったくかまわない。ただし、判例文のコピーによる引用は別にして、それ以外の文章の引用については、引用元を示したうえで、どこからどこまで引用したかも明示してください。

なお、当サイトは中国語でも対応可能である。電話でもいいし、メッセージでもよろしい。

本现场可以用汉语对应、如过在日本有遇到交通事故的无论是中国人还是台湾人、请随时商量、商量的时候、请在网上「留言」。

おすすめ記事

アーカイブ

カテゴリー

Count per Day

  • 99現在の記事:
  • 757141総閲覧数:
  • 262今日の閲覧数:
  • 1230昨日の閲覧数:
  • 8092先週の閲覧数:
  • 24057月別閲覧数:
  • 523643総訪問者数:
  • 159今日の訪問者数:
  • 840昨日の訪問者数:
  • 5281先週の訪問者数:
  • 15765月別訪問者数:
  • 732一日あたりの訪問者数:
  • 5現在オンライン中の人数:
  • 2016年5月2日カウント開始日:

ピックアップ記事

2016.12.3

有能な弁護士と無能な弁護士、有能な調査員と無能な調査員

相談 お尋ねしたい事があります。調査会社調査員が相手先に調査に伺う場合、あらかじめ聴取する内容をQ&Aのような質問用紙を準備しそこに回答を…

ページ上部へ戻る