父が脳梗塞で倒れ、高次脳機能障害に・・・

【半側空間無視患者のために特別に設計された時計】(注)なお、石合氏によれば、ふつうの時計がこのように見えたら、無視の所見というよりも、言語性知能低下と関係しているとする。

だれもがやりたがる「高次脳機能障害」

後遺障害の中に「高次脳機能障害」というのがある。後遺障害等級認定を扱っている専門家なら、ほとんど例外がないくらいに、自分のサイトで「高次脳機能障害」の専門家だと謳っているし、あるいは記事を書いている。なぜかというと、「高次脳機能障害」は最高で後遺障害1級による慰謝料と逸失利益に加えて、介護・監視費用の請求まで可能なため、大きな賠償額になりうるからである。

それと、「民事交通事故訴訟の実務Ⅱ」によれば、自賠責で後遺障害に認定されている件数が年間5万~6万件、そのうち「高次脳機能障害」としての認定件数が3000件前後あるらしいから、総認定数の「7、8%」を占めるということである。つまり、言い方は悪いが、いわゆるドル箱であり、儲かるのである。だから、みんなこぞって「高次脳機能障害」の専門家の看板を立てたがる(苦笑)。

奥が深い「高次脳機能障害」

ところで、ぼくはこれまで「高次脳機能障害」についての記事は書かなかった。書かなかった理由は、バカ正直に告白すると、ぼくにその知識と経験が欠けていたからである。調査員時代、この「高次脳機能障害」を何度か担当したことがある。記憶にあるのは4、5回だが、もう少しあるかもしれない。当時は、社内にある資料を読んだり、ネット情報に頼ったりすることが多かった。書籍といっても、石合さんの定番「高次脳機能障害」という本を個人的に買い込んで読んだり、「賠償科学概説」に収められていた論文に目を通したくらいだ。これだけでは知識不足、経験不足は明らかだ。それを言い出したら、すべての後遺障害についても大なり小なり当てはまるため何も書けなくなるが、脳については特に奥が深そうなのでこれまで敬遠していたのだ。しかし、そうも言ってられなくなった。

ぼくも本格的に「高次脳機能障害」をやるはめに

実をいうと、父が脳梗塞で倒れたのである。意識障害を起こして転倒し、ぼくが病院にかけつけたときは転倒からおよそ2時間経過していた。そのときは麻痺の程度はわからなかったものの、ぼくとの受け答えがしっかりしていたので、不幸中の幸いだと安心してしまった。まだ大学を出たばかりかと思われる当番医の説明では、左脳に小さな梗塞があり、「血をサラサラにする薬」を使うべきだったかもしれないが、副作用としての大出血の可能性があるため使わず、経過観察をすることにしたと説明した。自宅に帰ってからそのことを思い出し、いや待てよ、医師の説明がちょっとおかしいことに気づいた。

脳梗塞というのは血栓で血管が詰まることによって引き起こされる病気なので、詰まらないようにするために血をサラサラにする必要がある。しかし、今回はすでに発症し詰まっているのだ。サラサラにする薬は今後の予防としての意味があるのだろうが、現に詰まっている血栓自体を熔解する作用はない。こういうときの一番の選択肢は、「血をサラサラにする」抗凝固剤ではなくて、詰まりものを溶かす血栓熔解剤ではないのだろうか。

そのような疑問を抱きながら、翌日、病院を再訪した。父の病状が悪化していた。右半身の麻痺とろれつが回らなくなっていた。嚥下障害による誤嚥性肺炎のリスクもあるらしい。この記事を書いている現在は病状が安定しているものの改善は見られず、高次脳機能障害のことが気になっている。父が今後どのような高次脳機能障害の症状に苦しむことになるのか、家族でどのような手助けができるのか、これをきっかけに、高次脳機能障害について本格的に勉強しないといけないと思う。

「半側空間無視」って?

病状悪化があったため、最初に抱いた疑問のことが気になった。そこで、関啓子氏の本で調べてみた。関さんの本を以前買い求めていたのは半側空間無視のことがどうしてもイメージできなかったからだ。弁護士などの書いているネット情報だと、目は見えているのだが、脳が認識できない状態のことで、本人は自分の病状の認識がないのだと説明されている。そして、その説明に持ち出されるのがこんな図である。
 
ひまわりの花の絵を模写したら、下の図のようになるらしい。これで自分の異状に気づかない??

半側空間無視とは、この分野の第一人者である石合純夫医師の定義によれば、

半側空間無視とは、大脳半球病巣と反対側の刺激に対する認知的処理が障害された病態であり、主に右半球の脳血管障害後に起こる。視野障害と異なり、頭部や視線の動きを自由にした状態で起こるために幅広い生活場面に困難を生じる。基盤となる障害メカニズムは空間性注意の右方偏倚であり、空間や物体の左側に注意が向かないために、見落としているという病識も生じ難い。【出典は脳科学辞典

 
見えなければ、頭を左右に動かすなどして視線を変えれば見ることができる視野障害とは違うのである。さらにこんなたまねぎ現象による症状もあるという。


 
つまり、左の空間が認識できないだけでなくて(無視は左の空間で起こりやすい)、右の空間にある対象物の左側も見えなくなるのだという。それでいて、病識がないのはどういうことだろう。ぼくにはますますさっぱりわからなくなった。そのため、半側空間無視など高次脳機能障害の専門家と知られ、ご自身も脳梗塞にかかったことがある関さんの本を読んでみたいと思った。いわゆる教科書的な説明だけではなくて、半側空間無視についてのご自身の患者としての体験も踏まえ、もっと具体的なイメージになるような説明を期待して買い求めていた。

関さんの本は、脳梗塞で倒れてから、復職するまでを時間を追い医学的知見をまじえながらの実にためになるわかりやすい本なので、いっきに読み通すことができた。もともとは作家志望だったらしく、専門用語は出てくるが、医学書にみられがちな肩がこりそうな文章ではない。半側空間無視の話はこれくらいにして、血栓熔解薬に話を戻そう。関さんの本にはこのように書かれていた。

血栓熔解薬について

急性期脳梗塞の治療として血栓熔解薬というものがある。血管内に生じた血栓を熔解し、虚血に陥った組織へ血液を回復させることを目的とした治療薬で、現在日本では発症3時間以内の脳梗塞に限って組織プラスミノーゲンアクチベータ(通称tPA)が保険適応となっている。血栓が溶けて血管が再開通すれば劇的に症状が改善することもあるが、必ずしも効果がみられるわけではない。また副作用として大出血をきたすことがある。

・・・発症間もなく投与されたtPAが奏功し、その後の私は良好な回復を遂げることができた。しかしr-tPAによる治療は、劇的な改善が期待される半面、副作用として大出血の可能性もある。梗塞に加えての脳内への大出血は予後が悪い。つまり私は脳梗塞後の脳出血のために、死に至る危険性もあり、私のr-tPA治療は両刃の剣であったのである。(P9-11)

 

しょせん他人の痛みはわからないが

交通事故被害者のためなどとぼくのサイトで宣言しているが、これまではしょせんは他人事だった。交通事故被害者が事故で受傷し、痛みを感じたとしても、ぼく自身は痛みを感じない。交通事故被害者が事故によって生活が困窮しても、ぼくはちっとも困窮しない。その場では同情しても、翌日にはそのことをまったく忘れてけろっとしている。ぼくはそういう性格なのである。だから、「交通事故被害者のため」と看板に掲げているのは偽善ではないかとも思うこともある。そうは思いたくないために、なるべく言行一致させたいと思った。これまでに書いてきた記事の中には、炎上するのを覚悟の上でそういう思いで書いたものがいくつもある。

今回は他人事ではない、身内の問題である。高次脳機能障害についてもっと知りたいと思い、以下の本を注文した。石合さんの古い版の本は持っていたが、2003年のもので、15年以上も古い。それで新版を改めて購入した。関さんの本以外は、ぼくのようなシロウトにはどれがいいのかわからないから、一般向け・入門書的なものから始めようと思い、テキトウに選んだ。

 

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