駐車場内の交通事故の過失割合と判例

【photo by Ben McLeod

新版判例タイムズ過失相殺本に新基準が掲載されるまで

「損保は駐車場内の事故をどうして50対50で処理したがるのか」という記事を書いたことがあるが、そこでは駐車場内で起こった事故の過失割合がどうなるのかまでは書かなかった。今回はそのことについて書いてみたい。

かつて、駐車場内の事故の過失割合については判例タイムズの過失相殺本では取り上げられていなかった。取り上げられていない最大の理由は、駐車場は道交法でいうところの「道路」に該当しない場合もあるため、相殺本がよりどころにする道交法違反≒過失という構成がとれるのかどうか未解決の問題があったことによるものと思われる。そのため過失割合を類型的に決めるのに困難が伴い、いわゆる非典型事故として扱われ、個別の判例研究が欠かせなかった。

かつての、駐車場の過失割合についての唯一と言ってもいい参考図書である「寄与度と非典型過失相殺」(ぎょうせい)では、このように書いてある。

駐車場の通路が道路交通法上の道路に当たるかどうかは、当該駐車場が、「一般交通の用に供する場所」(道交法2条1項1号)に当たるかどうかにより判断されることになる。

「一般交通の用に供する場所」とは、不特定の人や車が自由に通行することが認められ、かつ客観的にみて、これらの者の交通の用に供されている場所と解されている。(P321)

 
そして、道交法にあたる「道路」にあたらないばあいについては、判例タイムズ過失相殺本をそのまま適用ができないものの「参考」にできるとしている。その「参考」内容については、すなわち、

過失相殺基準が「適用」されない駐車場における事故の過失相殺率・過失割合を決定するにあたって、注意義務違反ないし不注意の程度や駐車場管理者の設定した通行方法の指示・遵守事項違反の有無を斟酌することはもちろん、優者の危険負担や幼児・児童・高齢者・障害者等の要保護者修正等も斟酌事由として考慮されるべき(P323)

 
としていた。

判例タイムズ38 過失相殺率の認定基準本で取り上げられた駐車場内の事故

今回、駐車場内事故を初めてとりあげたもっとも新しい判例タイムズ38「過失相殺本」では、そのあたりをどのように説明しているのかまずは見てみることにしよう。

大型商業施設の駐車場(引用者注:が多く存在することになった現状から)など、収容台数の多い駐車場を対象として、駐車場内における四輪車(=クルマと以下表記)同士の事故及び歩行者とクルマとの事故の過失相殺率に関する基本的な考え方を示すことにした。

駐車場内で発生した事故の法的責任に関連して、当該駐車場内の通路が道路交通法の適用される「道路」(法1条、2条1項1号)に当たるか否かが問題とされることがある。しかし、本基準は、駐車を主たる目的とする駐車場の特殊性、すなわち、クルマが後退、方向転換等の行為に出ることが多く、駐車しているクルマから歩行者が出てくることも多いため、走行していたクルマに対し、前方注視義務や徐行義務がより高度に要求されるという点(運転慣行)を踏まえて、過失相殺率を定めたのであって、駐車場内の通路で発生した事故については、当該通路が上記「道路」であるか否かにかかわらず、適用されるべきである。したがって、例えば、大型商業施設に設けられた収容台数の多い駐車場などでは、通路が上記「道路」と認められる場合もあり得るものの、そのような場合であっても、原則として本基準によるのが相当である。(P494)

 
駐車場が道交法でいうところの「道路」かどうかにかかわりなく、一律に本基準を適用すると宣言する。

さて、個別具体的に見てみよう。

通路の交差部分におけるクルマ同士の出合い頭事故

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■ここでは、直進、右左折の別なく、駐車場内の通路の交差部分に進入したクルマ同士の出合い頭衝突事故を想定している。

■道交法の「道路」かどうか否かにかかわらず、交差部分に進入したクルマ同士の出合い頭衝突事故が発生した場合は、原則として、双方が同等の過失責任を負うこととし、通路の幅員の違いや運転方法等の事項については、過失相殺率の評価に影響する基本的なものを修正要素として考慮する。

基本赤50対黄50
修正要素
赤:狭路、黄:広路
黄:T字路直進
+10
赤:一時停止・通行方向標示等違反+15~20
赤:その他の著しい過失+10
赤:重過失+20
黄:狭路、赤:広路
-10
黄:一時停止・通行方向標示等違反-15~20
黄:その他の著しい過失-10
黄:重過失-20

 

修正要素に関する説明

①「一時停止・通行方向標示等違反」。通路設置管理者が設けたものについても15~20%の過失加算修正として認める。

②「一時停止・通行方向標示等違反」と「狭路・広路」の修正要素が競合する場合、および「一時停止・通行方向標示等違反」と「T字路直進」の修正要素が競合する場合。いずれも前者が択一的に適用される。その結果、20%、15%の過失加算修正する。

通路を進行するクルマと駐車区画から通路に進入しようとしたクルマとの事故

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■駐車場内の通路は、当該駐車場を利用するクルマが当該駐車場内を移動するために不可欠な設備であるから、クルマが駐車場内の通路と駐車区画との間を出入りすることは当然に予定されている。したがって、通路進行車は、駐車区画に駐車していたクルマが通路に進入してくることを常に予見すべきであり、駐車区画退出車との関係においても、同車の進行を予見して安全を確認し、当該通路の状況に応じて、同車との衝突を回避することができるような速度と方法で通行する義務を負う。

■駐車区画退出車は、通路に進入する前の段階では駐車区画内で停止しているのであるから、通路進入車よりも容易に安全を確認し、衝突を回避することができる。また、駐車区画退出車は、通路への進入に際し、通路における他のクルマの進行を妨げることになるから、法25条の21項のような道路と道路外との間の出入りに関する法令上の規制を受けない場合であっても、通路に進入する際の注意義務として、進入しようとする通路の安全を確認し、通路進入車の通行を妨げるおそれがある場合は通路への進入を控える義務(法25条の21項に準ずる注意義務)を負う。したがって、原則として駐車区画退出車のほうが相対的により重い過失責任を負う。

■本基準は、双方のクルマに上記の各注意義務に違反した過失があったことを前提としている。双方のクルマの前進か後退かは問わない。

■本基準適用外。
(ア)進路進行車の過失の有無自体が問題になるもの。例。①通路進行車が急制動の措置をとっても停止できない距離に近づいた段階で駐車区画退出車が通路への進入を開始した場合。②通路進行車において、駐車区画退出車が通路に進入しようとしていることを認識して、駐車区画退出車が運転を誤って通路進行車に衝突した場合など。

(イ)通路を進行するクルマ同士の衝突と考えられるもの
たとえば、駐車区画退出車が、車両の向きや挙動から見て駐車区画からの退出を完了し、通路の進行を開始した後に通路進行車と衝突した場合。
 

基本赤30対黄70
修正要素
黄の著しい過失-10
黄の重過失-20
赤の著しい過失+10
赤の重過失+20

 

修正要素に関する説明

「著しい過失」や「重過失」とは、著しい不注視や通路を進行する他の車両の通常の進行速度を明らかに上回る速度超過、指示されている順路違反など。

通路を進行するクルマと通路から駐車区画に進入しようとするクルマとの事故

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■本基準は、駐車区画進入車の駐車区画への進入動作が、通路進行車からみて、ハザードランプ、方向指示器または後退灯の点灯や車両の向き等により、当該駐車区画のある程度手前の位置で客観的に認識し得る状態に至っていたことを前提とする。

■駐車場は、駐車のための施設であり、クルマが通路から駐車区画に進入することは、駐車場の設置目的に沿った行動である。したがって、駐車区画への進入動作は、原則として、通路の通行に対して優先されるべきである。

■駐車区画進入車は、駐車区画への進入に際し、通路における他のクルマの進行を妨げることになるから、当該通路における他の車両の動静を注視し、当該通路の状況に応じて、他車との衝突を回避することができるような速度と方法で進行する注意義務を負う。

■したがって、通路進行車により重い注意義務が課され、相対的に重い過失責任を負う。

■本基準は、双方のクルマに上記各注意義務に違反した過失があったことを前提としている。双方のクルマの前進・後退を問わない。

■本基準の適用外事例。通路進行車(赤)において、駐車区画進入車(黄)の駐車区画への進入動作を事前に認識することが客観的に困難であった場合(例えば、両車の距離が近接した地点で急に駐車区画への進入動作を開始した場合や、駐車区画から相当程度の距離を進行したところで後退による進入動作を急に開始したために、進路進行車には駐車区画進入車がどの駐車区画に進入しようとしているのかを認識することが困難であった場合など)。また、駐車区画進入車のすべての車輪がいったん駐車区画内に収まった後に、駐車位置の修正等のため、再発進して通路に進入する場合。
 

基本赤80対黄20
修正要素
黄の著しい過失-10
黄の重過失-10
赤の徐行なし+10
赤のその他の著しい過失+10
赤の重過失+20

 

修正要素に関する説明

駐車区画進入車の著しい過失・重過失の例。たとえば、駐車区画進入車が、切り返しや方向転換により進路を変える場合など、他の車両との関係でより慎重な安全確認と運転操作が求められる場合において、基本的な注意義務を怠ったとき(衝突まで通路進行車の存在自体を認識していなかったときや、急発進したときなど)は、著しい過失あり。

徐行について。駐車区画進入車が切り返しや方向転換によって進路を変更することは、通常予見することができる。したがって、通路進入車が駐車区画進入車の側方を通過する場合は、上記挙動を予見し、いつでも停止できる速度で進行すべきであり、進路進行車がこれを怠ったときは、運転方法に関する基本的な注意を怠ったものとして、過失加算する。

通路進行車の著しい過失・重過失例。通路進行車が標識または路面表示等で指示される順路に反して通路を進行していた場合には、著しい過失あり。また、通路進行車が通路を進行する他の車両の通常の進行速度を明らかに上回る速度で進行していた場合には、状況に応じて著しい過失または重過失として加算修正する。通路進行車が、順路に反して通路を進行していた場合において、徐行していなかったときは、「徐行なし」で加算修正していい。また、通路進行車が通常の進行速度を明らかに上回る速度で進行していた場合も、「徐行なし」で加算修正していい。

新基準のまとめ

①駐車場内は人車の往来が激しいという特徴があること、狭い空間内という特徴があることなどから、車両は低速あるいは徐行を求められるのがふつうなので、たとえ一般道路では優先とされる側でも、駐車場内では先にあげた理由から優先性が否定されたり、より多くの注意義務が課されるとするのが実務の考え方であったが、今回の新版過失相殺本は、その考えに沿うものである。

②道交法上の「道路」に当たるか否かにかかわらず適用されるべきとした。

③駐車場の特性により、後退、方向転換等の行為が頻繁にあることが予想されるため、前進・後退で過失割合に差を設けなかった事故形態がある。

④交差部分に進入したクルマ同士の出合い頭の衝突事故が発生した場合は、原則として、双方が同等の過失責任を負うこととし、通路の幅員の違いや運転方法等の事情については、修正要素として考慮することにした。

⑤駐車場内の事故について、公安委員会の道路標識標示主義を大幅に緩和し、駐車場管理者にその権限を認める考えを示した。

【参考】

道交法4条

 
都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、又は交通公害その他の道路の交通に起因する障害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、信号機又は道路標識等を設置し、及び管理して、交通整理、歩行者又は車両等の通行の禁止その他の道路における交通の規制をすることができる。この場合において、緊急を要するため道路標識等を設置するいとまがないとき、その他道路標識等による交通の規制をすることが困難であると認めるときは、公安委員会は、その管理に属する都道府県警察の警察官の現場における指示により、道路標識等の設置及び管理による交通の規制に相当する交通の規制をすることができる。

前項の規定による交通の規制は、区域、道路の区間又は場所を定めて行なう。この場合において、その規制は、対象を限定し、又は適用される日若しくは時間を限定して行なうことができる。

公安委員会は、交通のひんぱんな交差点その他交通の危険を防止するために必要と認められる場所には、信号機を設置するようにつとめなければならない。

信号機の表示する信号の意味その他信号機について必要な事項は、政令で定める。

道路標識等の種類、様式、設置場所その他道路標識等について必要な事項は、内閣府令・国土交通省令で定める。

 

道交法施行令1条の2の1項

(公安委員会の交通規制)
 法第四条第一項の規定により都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)が信号機又は道路標識若しくは道路標示を設置し、及び管理して交通の規制をするときは、歩行者、車両又は路面電車がその前方から見やすいように、かつ、道路又は交通の状況に応じ必要と認める数のものを設置し、及び管理してしなければならない。

従来の保険(調査)実務の扱いについて

新基準が公になるまでの、保険実務の基本的な考え方の一例を参考までに示しておきたい。新基準が絶対的なものではないのだから、「参考」になるだろう。

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①AとBの衝突事故。②AとCの衝突事故。③AとDの衝突事故の3つである。

①については道路幅員から判断すると、B車側の通路の幅員がA車側の通路の幅員の1.5倍なので広路狭路が該当する。この場合の判タの基本過失割合は、同速度ならA:B=30:70である。しかし、駐車場であるため、A側に10の過失加算修正をしてA:B=40:60を基本とする。

②については参考になる判例がある。

名古屋高裁昭和56年7月14日判決
パチンコ店および喫茶店付属の駐車場(東西約54m、南北約36m)について、「本件駐車場のうち駐車位置を示す区画線によって仕切られた各部分は、これを前記「一般交通の用に供するその他の場所」ということは困難であり、これを道路と認めるべきではないが、駐車位置区画線のない通路部分は、同駐車場の一部としてこれを利用する車両のための通路であるにとどまらず、現に不特定多数の人ないし車両等が自由に通行できる客観的状況にあると認められるから、前記「一般交通の用に供するその他の場所」に包含され、したがって、道路交通法にいわゆる「道路」に該当する」。

 
以上から、駐車スペースは「道路」に該当しないため、路外からの進入車との衝突事故になる。判タの基本過失割合はA:B=20:80である。駐車場という特性にしたがい、Aに10の過失加算修正を行って、基本30:70ということになる。

③このケースの場合、駐車場が道交法の適用を受ける「道路」なら、T字路交差点の事故になる(ただし、D車が駐車場に進入しようとしていた場合は交点の生じない事故になる点に注意を要する)。道交法の適用を受けない、すなわち「道路」でないなら、路外からの進入車との衝突事故扱いになる。

駐車場内事故の判例紹介

駐車場内の事故でよく引用される重要判例も紹介したい。

東京高裁平成11年3月31日判決
A車がマンション地下駐車場の中央通路を後方確認をしながらバックしてきたところ、いったん自己の駐車スペースに入ったBが切り返しで入れ直そうと突然通路に出てきたために衝突した事故について、過失割合をA:B=30:70とした事例。駐車スペースに仕切り板あるため双方とも見通し悪い。

 
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京都地裁 平成11年10月5日判決
深夜、路外駐車場から片側2車線道路に右折進入した被害車と速度超過の直進加害車の衝突につき、加害車両の速度等の判断を誤るなどして進路を妨害した被害車に75%の過失相殺が適用された事例。

 

大阪地裁平成7年5月26日判決
空港駐車場内の見通しの悪い交差点で、A車とB車が出合い頭衝突した事故。A車には減速徐行ないし停止をして交差通路の安全を確認しなかった過失があるが、B車は交差点自体に気づかずその安全をまったく確認しなかった過失および駐車場内の指示に従わないいわゆる逆走だったことから、Bの重大な過失に比べAの過失は軽微で、しかも、A車側は本来車両が進行してくるべき交差道路側の確認は十分にしていたことを理由に、A側の過失相殺を認めなかった事例。

 

静岡地裁 平成2年2月14日判決
パチンコ店北側出入口より同店駐車場に進入し、時速約25キロで進行中の加害者(普通乗用自動車)の右側面前部に、同店南側出入口から進入し、出入口で一時停止した後、時速約10キロで進行中の被害者(原付自転車)が出合い頭衝突した事故につき、左右の安全確認を怠った被害者に30%の過失相殺を認めた事例。なお、加害者側の主張は、双方とも見通しが悪い交差点での事故であり、どちらが優先するわけでなく、双方ともの前方不注意が事故原因であるため、基本50:50として、原付のため原付40:自動車60を主張していた。

 

札幌支部平成3年10月14日裁定133号
駐車場内において、普通乗用車(被害者)が、駐車位置を示す白線上を斜めに横切って通路へ出ようとしたところ、左手に普通乗用車(加害者)を発見、同通路に車体を半分ほどはみ出す形で停止した。それに対して、加害者が、同通路の前方出口を右折する目的で、通路の右側を進行し、被害者が停止せずそのまま横断通過するものと軽信したため被害者の左前前部に衝突した事故につき、加害者には、被害者が停止するものと軽信して通路右側を走行した過失があるが、被害者にも進行方向、加害者の発見、停止位置等が不適切であった過失があるとして、30%の過失相殺を認めた事例。

 
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東京高裁昭和57年4月27日判決
高速道路のパーキングエリア内の道路に停めていた被害車に、後続から進行して いた加害車が追突した事案で、自車を発進させる際、フェンダーミラーで後方を見るだけで右寄りに転把して発進させた被害車にも他車の動静の注意を怠ったものと3割過失を認めた事例。

 

【あとがき】
旧ブログに「駐車場内の交通事故の過失割合と判例」という記事を書いたことがある。判例タイムズの過失相殺本でこの種の事故が取り上げられていなかったため、アクセス数が非常に多かった。その後、判例タイムズの新版で駐車場内の事故も取り上げられるようになった。そのため、新版の記載を踏まえた改訂版の記事を書かないといけないとは思っていたものの、なかなか書くひまがなかった。今回ようやく書くことができた。

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当事務所の立場

突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ

hitininnno
その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にする。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。よろしくです。

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