自転車の車道走行安全論には、嗤うしかあるまい

(注)自転車専用レーン上に違法駐車車両があるため、自転車がそれを避けざるえなくなって、後続車両との接触のリスクが高まっている画像。

交通事故にまつわる都市伝説、過失ゼロの事故はめったにない。

交通事故に関するいわゆる都市伝説のひとつに「過失割合が100対ゼロの事故はめったにない」というのがある。ほとんどの事故は被害者側にも何らかの過失があるものだというのである。この都市伝説をはやらしたのは、たぶん、損保査定者だろう。このセリフが大好きだからである。どうしてこのセリフが大好きなのかというと、大手損保の損害調査部長だった海道野守さんがこんなことを書いている。

過失があるからと、代車料などを拒否する保険会社・共済が多いのです。代車料を断る口実に、被害者になんとか過失を認めさせようとします。認めさせた過失割合がたったの5%、いつの間に、過失があれば代車料などを支払わなくてもよいという間違った処理が保険業界の常識になったのでしょう。その結果、涙ぐましい5%の攻防戦です。(「はじめに」から)

過失があれば代車料を支払わなくてもいいというのは、まったく根拠がない。判例では過失割合分に応じて支払えということになっている。支払わなくてもいいというのは、損保が勝手に言い出しているだけである。世間には通用しない内規、すなわちただのひとりよがりなのだ。そのことに拘束されて涙ぐましい5%の攻防戦を演じているわけである。そのために言い出したのが、先の「ほとんどの事故は被害者側にも何らかの過失がある」であった。

ところで、実際に起こる交通事故で、過失ゼロの交通事故というのはどれくらい発生するのだろうか。以下は、交通事故を事故別に類型化した表である。
tutitotu

(出典:損害保険料率算定機構HPより)

これをみると、人身事故の4分の1以上が「追突」であることがわかる。追突事故は、正面衝突や側面衝突よりも怪我の程度が小さいといわれる。物損事故も含めたら、たぶんその発生割合はもっと多くなっているにちがいない。いずれにしろ、交通事故の中で追突事故が突出して多いことがわかるだろう。

追突事故の過失割合についてご存知の方も多いと思うが、原則、被害者側は過失ゼロである。したがって、交通事故で過失ゼロの事故の典型である追突事故が交通事故中突出して多いのだから、「過失割合が100対ゼロの事故はめったにない」ということはありえない。相当の部分を過失ゼロの事故が占めているのである。

新たな都市伝説である自転車の車道走行安全論

似たようなことは、「自転車は歩道よりも車道のほうが安全」にもいえるだろう。この都市伝説は以前はなかったもので、つい最近になってからまことしやかに喧伝されている。言っているのは政府である。さらに、当のサイクリスト団体もなぜだか賛成に回っていることが多い。それらの声をマスコミなども総動員して、あたかも疑いようのない真実であるかのように流布されている。いわば国策として推進されているのである。

「奈良中心市街地自転車ネットワーク計画検討委員会」による結論先行型アンケート調査

その言いだしっぺ、牽引車的存在が古倉宗治という人物である。この人物が中心になって日本全国を駆けまわり、「車道安全論」なるものをぶちあげている。以下に紹介する「奈良中心市街地自転車ネットワーク計画検討委員会」なるものも、氏が中心になって「車道がいかに安全なのか」を「検討」する会である。そのときのアンケート調査がこれだ。どこに問題があるのかは、賢明なる読者諸君ならすぐにわかるはずだ。

 

annkkto

現在、自転車は歩道はダメ、車道を走行しろという施策がほぼ国策のように強引に日本全国で推し進められている。どうして「強引」なのかの一例として、上記アンケート調査の例をとりあげた。これは、奈良市で実施されたあるアンケートの調査項目のひとつなのだが、「車道の一部をペイントで視覚的に区分する自転車レーンが奈良市民にどの程度受け入れられるかを事前に調査し、支持率が高ければ整備に踏み切ろうという目的で設けられた問いのよう」だと、ろぜつさんが書いている。

このアンケートの問いに対して、みなさんはどっちを答えますか。もう、車道って答えるしかないよね。そういうアンケートの質問の仕方なのだ。明らかというか、ふつう、ここまで露骨な誘導をやらんものだろう。それでも歩道と答えようものなら、そんな答えは絶対に許さんからなあという執念さえ感じられるほどのひどいアンケート調査だ。何が目的なのだろうか。(続く)

 

 

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


事務所所在地・連絡先

ホームズ調査事務所:
石川県加賀市
電話番号:090-1314-0234

電話・メールをされる前に、「お問い合わせ」欄を読んでくださいね。なお、メールについてはお返事に時間を要することもあるし、内容によっては、たとえば記事に書いてあることの再確認とか、あまり深刻とは思えないものについてはお返事しないこともありえます。電話ならその点確実です。ただし、「非通知」はだめです。

当事務所の立場

突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ


その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にし、自己を無責任な立場に置くことになる。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。丸山真男のことばを最後に引用しておきます。

丸山真男から

ゲーテは「行動者は常に非良心的である」といっておりますが、私たちが観照者、テオリア(見る)の立場に立つ限り、この言葉には永遠の真実があると思います。つまり完全にわかっていないものをわかったとして行動するという意味でも、また対立する立場の双方に得点と失点があるのに、決断として一方に与するという意味でも、非良心的です。にもかかわらず私たちが生きていく限りにおいて、日々無数の問題について現に決断を下しているし、また下さざるを得ない。純粋に観照者の立場、純粋にテオリアの立場に立てるものは神だけであります。その意味では神だけが完全に良心的であります。

私たちの社会というものは、私たちの無数の行動の網と申しますか、行動の組合せから成り立っております。社会がこうして私たちの行動関連から成り立つ限りにおいて、私たちは行動あるいは非行動を通じて他人に、つまり社会に責任を負っています。その意味では純粋に「見る」立場、ゲーテの言う意味での完全に良心な立場というものは、完全に無責任な立場ということになります。

したがってこの点でも神だけが、完全に無責任でありうるわけであります。認識することと決断することとの矛盾中に生きることが、私たち神でない人間の宿命であります。私たちが人間らしく生きることは、この宿命を積極的に引き受け、その結果に責任を取ることだと思います。この宿命を自覚する必要は行動関連が異常に複雑になった現代においていよいよ痛切になってきたのです。

世のなかには一方では、認識の過程の無限性に目をふさぎ、理論の仮説性を忘れる独断主義者もいれば、またそもそも認識の意味自体を頭から蔑視する肉体的行動主義者がいます。しかし他方その半面では、物事はそう簡単にはイエスかノーかきめられないのだ、もっとよく研究してからでなければなんともいえないという名目の下に、いつも決断を回避することが学者らしい態度だという考え方がかなり強い。

あるいは対立する政治的争点に対して、あれももっとも、これももっとも、逆にそれを裏返しとして、あれもいけない、これもいけないということで、結局具体的な争点に対して明瞭な方向性を打ち出すことを避ける態度をもって、良識的であるとか、不偏不党であるとか考える評論家やジャーナリストもかなりいるようであります。

たびたびゲーテの言葉を引いて恐縮ですが、ゲーテはこういうことをいっています。「自分は公正であることを約束できるけれども、不偏不党であるということは約束できない。」今申しましたような世上いわゆる良識者は対立者に対してフェアであるということを、どっちつかずということと混同しているのではないでしょうか。
「現代政治の思想と行動」丸山真男 P452-454

【当サイトご利用上の注意】

当サイト内の情報を利用したことにより何らかの損害が発生しても、一切責任を負いません。自己責任でお願いいたします。また、記事を書いた後に、法律が変わったりするなど、現状を反映していないことがあります。その後の改正等についてはフォローしていくつもりですが、ご注意ください。

著作権にかかわることですが、当サイトの記事をコピーされる方が後を絶たない。公開した記事なので、コピーしていただくのはまったくかまわない。ただし、判例文のコピーによる引用は別にして、それ以外の文章の引用については、引用元を示したうえで、どこからどこまで引用したかも明示してください。

なお、当サイトは中国語でも対応可能である。電話でもいいし、メッセージでもよろしい。

本现场可以用汉语对应、如过在日本有遇到交通事故的无论是中国人还是台湾人、请随时商量、商量的时候、请在网上「留言」。

【推薦図書】

これまでに購入した中で、特に役に立った図書です。アマゾンから購入可能なものに限定しました。アマゾン以外からの購入図書については、こちらこちらの記事をごらんになっていただきたい。

(事故調査)

1⃣
林洋氏の代表作。定番教科書である。現場調査に欠かせない視点を提供してくれる。

 

2⃣
江守一郎氏の代表作。新版(と言っても1984年)あり。これも定番教科書のひとつと言われている。

(過失割合・賠償の範囲に役立つ本)

 

2⃣
交通事故訴訟をリードする東京地裁民事27部の裁判官が参加している。裁判所の判断の傾向を知るのに有用。

 

3⃣
道交法の定番教科書。

 

4⃣
「信頼の原則」という記事を書いた際に、たいへん参考になった。この本なくして「信頼の原則」の記事の信頼度は無きに等しい。

(保険を知るのに役立つ本)

1⃣
これ一冊あれば、任意保険のたいていのことはわかる。

 

2⃣
自賠法条文の解説書。

(後遺障害を知るのに役立つ本)

後遺障害をやるのだったら、これは必読書である。参考文献の紹介も豊富。

 

8⃣
先に紹介した弁護士本をたぶんに意識した本である。つまり、高野他本に載っていない遷延性意識障害とかPTSDとかを積極的にとりあげている。

(交通心理学に関する本)



類書はたくさんあれど、外国の調査研究が宝庫のように詰まっている。

(特殊分野編)
いいもわるいも特殊分野の本なので、これを見るしかないという本。

1⃣
旧版(第2集)は持っているが、その後の判例の展開を示した新版の第3集あり。全損賠償の決定版。

 

 

 

4⃣
上の3著の著者・海道野守氏が一般向けに書かれた物損請求書。古いが、わかりやすくてすごくいい本である。

 

5⃣
これも休業損害分野の唯一の本。毎年のように改定されている。ここの先生は休業損害だけでなく、実は休車損の調査もやられていたから、休車損の本も書いていただけるとありがたいのだが。

(交通事故を考える上で、最初に読んでおきたい本)

おすすめ記事

アーカイブ

カテゴリー

Count per Day

  • 301現在の記事:
  • 907891総閲覧数:
  • 113今日の閲覧数:
  • 1783昨日の閲覧数:
  • 9874先週の閲覧数:
  • 16487月別閲覧数:
  • 620007総訪問者数:
  • 73今日の訪問者数:
  • 952昨日の訪問者数:
  • 6159先週の訪問者数:
  • 10532月別訪問者数:
  • 869一日あたりの訪問者数:
  • 1現在オンライン中の人数:
  • 2016年5月2日カウント開始日:

ピックアップ記事

2014.3.3

アメブロは「嫌中嫌韓」か「陰謀論系」のバカばっかりの「オワコン」なのでやめた

アメブロはやめた 当サイト以外に、これまで「交通事故被害者は2度泣かされる」というブログを運営してきた。が、更新は昨年(2017年)の4月…

ページ上部へ戻る