右折車と後続直進車との事故の過失割合

交差点で右(左)折しようとする車両は、交差点手前30mの地点から右(左)折の合図をしなければならない(法53条など)。そして、右折の場合は、あらかじめその前からできる限り道路の中央に寄り、かつ、交差点の中心の直近の内側を徐行しなければならない。左折の場合は、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り左側端に沿って徐行しなければならない(法34条)。以上が交差点における右左折の基本のルールである。

では、右左折車と後続直進車との関係はどうなっているのだろうか。

右左折車が進路変更する際に、後続車の速度または方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、後続車が優先する(法26条の2)。そうでないときは、適法な合図をした右左折車が優先する(法34条)。

以上であるが、ここでは「(右左折の準備行為である)進路変更車と後続直進車の事故」は扱わない。

右折車と追越直進車の事故

判例タイムズ過失相殺率基準本での、該当箇所(P264)では、「すでに交差点内又はその直近で右折態勢にある車両に後続直進車が追突する形態」のうちの、「右折車と追越直進車との事故」と「あらかじめ中央に寄らない右折車と後続直進車との事故」についてのみ、過失相殺率を基準化している。

追越直進車が中央線ないし道路中央を越えている場合(追越禁止交差点)

追越禁止交差点で、追越しのために中央線ないし道路中央を越えた追越直進車(2度目の進路変更を要しない)と、あらかじめ道路中央に寄り合図を出した右折車との衝突事故。

基本黄90:赤10
修正要素黄の著しい速度違反+10
黄のその他の著しい過失+5
黄の重過失+10
赤のあらかじめ中央に寄らない右折-10~20
赤のその他の著しい過失-10
赤の重過失-20

追越禁止でない交差点の場合

追越禁止でない交差点=優先道路の場合である(法30条)。当該交差点で、追越しのためにセンターラインないし道路中央を越えた追越直進車と、合図をしたが、あらかじめ道路中央に寄らない右折車とが衝突した事故。

基本黄50:赤50
修正要素黄の著しい速度違反+10
黄のその他の著しい過失+10
黄の重過失+20
赤の合図無し-10
赤のその他の著しい過失-10
赤の重過失-20

あらかじめ中央に寄らない右折車と後続直進車との事故

*後続直進車が中央線ないし道路中央を越えていない場合

基本の過失相殺率は、道路幅が十分あって直進車と右(左)折車が横を並んで通行できることで、先行する右(左)折車が合図をしたが、あらかじめ道路中央(左側端)に寄らずに右(左)折しようとしたため、後続直進車と衝突したという事故形態。

基本黄80:赤20
修正要素赤の15㌔以上の速度違反+10
赤の30㌔以上の速度違反+20
赤の著しい前方不注視、その他の著しい過失+10
赤のその他の重過失+20
黄の徐行なし-10
黄の合図遅れ-5
黄の合図なし-10
黄の直近の右左折-10
黄のその他の著しい過失-10
黄の重過失-20

あらかじめ左側端に寄らない左折車と後続直進車との事故

*後続直進車が中央線ないし道路中央を越えていない場合

基本黄80:赤20
修正要素赤の15㌔以上の速度違反+10
赤の30㌔以上の速度違反+20
赤の著しい前方不注視、その他の著しい過失+10
赤のその他の重過失+20
黄の徐行なし-10
黄の合図遅れ-5
黄の合図なし-10
黄の直近の右左折-10
黄のその他の著しい過失-10
黄の重過失-20

右折車があらかじめ中央に寄っては右折できない場合

右(左)折して進入しようとする道路が狭いとか、右(左)折進路が鋭角をなしているとか、右(左)折車の全長が長い等の理由で、あらかじめ道路中央(左側端)に寄ったのでは右(左)折できない道路において、先行する右(左)折車が、合図をしたが、あらかじめ中央(左側端)に寄らずに右(左)折しようとしたために、後続直進車と衝突した事故。

基本赤40:黄60
修正要素赤の15㌔以上の速度違反+10
赤の30㌔以上の速度違反+20
赤の著しい前方不注視、その他の著しい過失+10
赤のその他の重過失+20
黄の徐行なし-10
黄の合図遅れ-5
黄の合図なし-10
黄の直近の右左折-10
黄のその他の著しい過失-10
黄の重過失-20

左折車があらかじめ左側端に寄っては左折できない場合

基本赤40:黄60
修正要素赤の15㌔以上の速度違反+10
赤の30㌔以上の速度違反+20
赤の著しい前方不注視、その他の著しい過失+10
赤のその他の重過失+20
黄の徐行なし-10
黄の合図遅れ-5
黄の合図なし-10
黄の直近の右左折-10
黄のその他の著しい過失-10
黄の重過失-20

判例タイムズに載っていない非典型事故の判例

右折四輪×後続追越二輪(追越可)

岡山地裁倉敷支部 昭和50年6月19日判決
本件事故は車道幅員9mの道路を北進していた甲車(普通貨物自動車)が、事故現場である交差点(追越禁止場所ではない)で時速35キロで右折中、同車後方より追い越そうとして道路中央線右側を時速55キロで北進してきた乙車(自動二輪車)と衝突した事故。甲車は右折合図があったものの、対向大型車がいたため道路左側に寄った位置より後方確認不十分のまま右折した過失があり、乙車には甲車の右折合図の見落としと甲車が直進するものと軽信した動静不注視の過失があり、甲車6、乙車4とした。

路外への右折四輪×後続直進バイク(右側に回避)

福岡地裁 昭和57年1月29日判決
夜間の国道上において、路上にいったん停止した後、道路外の店に入るべく右折しようとした甲車(普通乗用車)に、後続の乙車(自動二輪・無免許)が中央線を越えて衝突した事故。乙車は前方にいた甲車の存在に気づくのが遅れ、右に回避したものの、右折中の甲車と衝突した。甲車にも右折に際して後続車両の確認、右折合図等を怠った過失があるとして、甲・乙の過失割合を3対7とした。なお、甲車運転者は同事故により運転免許停止処分を受けていたたため、運転者としての職務ができなかったことによる逸失利益を請求していた。その点については、行政処分は自ら招いた結果によるもので乙車運転者の行為に転嫁させうる根拠がないとして、事故との因果関係を否定した。

軌道敷の左から右折原付×後続軌道敷内直進車

大阪地裁 昭和57年10月28日判決
交差点を西から南に右折する際に、後方の安全を確認せず、西から東に直進してきた加害車(普通乗用車)に衝突された被害車(原付)に、20%の過失相殺を認めた。軌道敷の左から右折待機中の原付に軌道敷内直進のタクシーが衝突した事故。道路幅員19m。

路外への右折バス×追越四輪(バスとの衝突なし 縁石に衝突

札幌高裁 昭和59年11月19日判決
幅員6.2mの道路の片側1車線路において、先行の加害車(大型バス)を追い越すため被害車(普通乗用車)が加速して対向車線に入ったところ、加害車が道路右側の駐車場に入るべく右折しようとしたため、被害車があわててハンドルを右に切り道路右側の縁石に衝突した事故。クラクションやブレーキで衝突を回避できたとして、被害者に30%の過失相殺を認めた。

右折四輪×後続追越二輪

福岡地裁 昭和61年8月28日判決
交通整理の行われていない交差点での右折の加害車(普通乗用車)と同車を
追い越そうとした後続の被害車(自動二輪)との接触事故。交差点での追い越し、前方車の動静不注視等の大きな過失があった被害者に60%の過失相殺を認めた。他方、加害車の右折方法には違法はないが、中央線との間に間隔を置く等通常の右折方法によらなかった場合、その間隔の幅しだいでは後続車両の進行も考えられるから、右後方の安全を確かめるべき注意義務があったとして、加害車運転者に過失を認めた。

左側車線から右側車線に変更した後交差点右折A×後方直進B(片側2車線、B車直前までAに気付いていない)

東京地裁 昭和62年5月29日判決
片側2車線路の左側車線から右側車線に進路変更し、交差点を右折しようとした被害車(軽貨物自動車)に、右側車線を被害車の後方から直進してきた加害車(普通乗用車)が衝突した事故。当該事故につき、加害車運転者には前方不注視により被害車との衝突に直前までこれに気づかなかった過失ありとした。被害車運転者には左車線からいきなり右折しようとした過失があるとは認められないとして、加害者からの過失相殺の主張を否定した。

路面電車通、右折車×後続軌道上直進車

高松高裁 平成7年3月16日判決
車両通行可の電車軌道敷内を高速(被告車に気づいた時点で時速80キロ)で西行きに進行していた原告の普通乗用車と、電停南側の1車線となっている西行き車線を電停東端南側付近でウインカーを出して右折の合図をするとともに時速35キロに減速したまま右折しようとした被告の普通乗用車との衝突事故。原告4対被告6とした。

分離帯切れ目で右折旋回のため大回りA×後続B

大阪地裁 平成11年11月9日判決
片側2車線の右車線を進行中の先行車がいったん左に転把し分離帯切れ目から対向車線に大回り右折旋回しようとして、右車線を進行してきた後続自動車がこれに衝突した事故。両車の過失割合を5対5とした。先行車は左車線にはみ出るほど左にいったん旋回していたため合図が消えていた可能性あり。

 

教科書(判例タイムズ)の記載内容をもとに書いただけの「芸のない記事」なので、いずれ調査体験に基づく説明文と判例の追記を行いたいと思います。

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