交通事故では、相手の過失についてはあなたが立証責任を負い、あなたの過失については相手が立証責任を負う

弁護士など法律の専門家と話す何かの機会があると、私が年来疑問に思っていたことをぶつけることにしている。「疑問に思っていたこと」とは、別ブログでも記事にしたことがあって、つまりはこういうことである。すなわち、双方の主張する事故状況が相違するばあい、最終的にどのようにして解決するかである。私はその別ブログで、最終的には立証責任をどちらか一方に負担させることで解決するしかないと書いた。

たとえば、制限速度50キロのところで、相手車が100キロ出ていたと主張したいなら、100キロ出ていた事実を証明することによって利益を得る側に立証責任があるとした。同じ趣旨をある弁護士にぶつけたら、時速50キロしか出ていなかったことは速度超過がなかったことになり、そのことによって利益を得るのだから、双方ともに利益がある。よって、双方に立証責任があるというのだ。

では、双方に立証責任があるとしてだ。双方に立証させてみたが、それでも最終的に決着がつかなかった場合はどうなるのか。私が言っているのはそういうことである。そしたら、事故は複雑なもので、そんな単純に割り切れるものではない、総合的に考えるしかないというしまつだった。あるいは、立証責任に胡坐をかき、立証しないと裁判に負けてしまうよというのだった。

またまたこれだ。私の質問をはぐらかすなよ。回答できなくなると、単純化できない、総合的に考えろといういつもの決まり文句である。で、その「総合的」の中身を問うと、具体的な中身がなにもない。それに、相手に立証責任があるからこちらは何もしなくていいなどと私は言ったこともないし、言うつもりもないのだ。

繰り返しますが、相手の過失についてはあなたが立証責任を負い、あなたの過失については相手が立証責任を負う。自分に過失がなかったことの立証責任までは負わないはずだ。私の考えは間違っているのだろうか。どこかおかしいようでしたらご教示ください。

傍証として、こちらの弁護士が書かれた記事をあげておきたい。その記事の概略はこうである。

駐車場内で車と車が衝突する事故が起きた。デパートの駐車場内で駐車場所を待って停車しているところへ、バックしてきた車に相談者の車が衝突された。双方の言い分は以下のとおり。

相手側の言い分:
バックする時に後ろを確認したが、車がいなかった。ぶつかるまで気付かなかった。私(相談者のこと)が、後ろから突っ込んできたのではないか。

 

相談者の主張:
停止中のところをぶつけられた。当方に過失なしを主張する。

 
それに対する弁護士の回答

(引用開始)
「これは法律問題ではなく、事実認定の問題です。本来は、現場でもっと両車両の損傷を確認すべきだったでしょう。

相手の過失についてはあなたが挙証責任を負い、あなたの過失については相手が挙証責任を負います。あなたに自分の無過失を証明する責任はありません。相手は、裁判の場合、あなたの過失について証明できないでしょう。

あなたが停止していたなら、クラクションを鳴らさなかったとしても、それはあなたの過失ではないでしょう。ただし、あなたがなぜ、クラクションを鳴らさなかったのか、誰でも疑問を持ちます。あなたが、それをどう説明するかです。あなたの説明が納得できれば、あなたは無過失と認定されるでしょう。

他方、 相手は、バックする当初に後ろを見ただけで、その後は後ろを見ずバックし(進行方向を見ずに運転し)たのですから、極めて危険な行為をしたのであり、自分に過失がある」事実は変わらない。

 
私が求めているのは、こういう回答なのである。双方の言い分を同じ比重で聞いて、そのあげくの、どっちつかずの回答になったり、両者の言い分を足して二で割るような回答を求めているわけではないのである。

なお、保険調査では、双方の主張をそのまま報告するだけで、調査員の主観はいれない。いれたらダメなのである。「ありのまま報告」が基本である。ただし、双方の主張する事故状況が相違し、調査をしたものの最終的にどちらの言い分が正しいのかわからない場合も当然ありえる。調査の結果、たいていは、どっちの言い分が(より)正しいかがわかるものだが、それでもどっちが正しいのか結論が出しづらいことがある。そういう意味である。

そういうときは、調査員自身にどちらの主張が正しいと思うかと聞かれることがある。そういう場合は、他の調査員は知らないが、私は記事本文にあるように、立証責任がどちらにあるのかを基本にして説明をすることにしていた。調査員の参考意見としてである。

以上は、かつて書いた記事に若干の加筆をしたものだが、公開当時、某弁護士氏から「いいね」を押していただいている。決しておかしな、筋違いの疑問ではないと私は思っている。
 
[showwhatsnew]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください