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追越しと追抜きは違うよ
「追越事故の過失割合」に関する記事を書こうと思い、参考のためそのワードで検索して一番トップにあるサイトの記事を拝見したら、こんな説明だった。
・・・ことなのだそうな。追い抜きというのは、後ろから来た車が前の車を追い抜いていくとでも書いたらトートロジになってしまうため説明にならないので、追い越しにしたのだろうけれど、それが間違いの素だった。追越しと追抜きは違う。追い越していったらそもそも追い抜きじゃなくなる。追越しも追い抜きも区別せずに同じ意味だと思って使っている。
弁護士紹介サイトの記事である。この種のサイトに対してぼくは何も知らなかったのだが、交通事故分野では老舗格のひとつである西川雅晴弁護士のサイトに興味深い指摘があったのでご紹介したい。
自称交通事故専門弁護士のHPには独特の特徴があり見分けることが可能です。
特徴の一つは弁護士の実体験に基づく有益な情報・知識を被害者に提供しようとする姿勢がないことです。交通事故に関する教科書的な記載はあるにはありますが、書籍に書かれていることばかりです。
もう一つの特徴は弁護士のマーケティングを手がける企業が作成した集客用HPであるためどれも似たような表現・構成となっていることです。相談料・着手金0円、チェックシート、増額事例、当事務所が選ばれる理由、相談・解決件数の多さを誇る等の記載があればその目印となります。HPは専ら集客目的であるためそれ以外の要素は切り捨てられ、どのような弁護士か分からないという点も特徴です。
HPのデザインが似通っているのは当然としても、高次脳機能障害を初めとするコンテンツまで似かよっています。内容だけではなく「血の通っていない」点までそっくりです。理由はコンテンツも業者から買っており、みずからの体験に基づくものではないためと思われます。
ぼくのサイトの記事もパクられた
実を言うと、こことは別の紹介サイトであるが、ぼく自身の書いた記事がパクられてすごく困っているのだ。パクられただけならともかく、人のふんどしを使って、これまで検索順位1番だったぼくの記事を蹴落とし、トップの座についているのである。
ひどい。こんなのありかよ。この、ふんどし泥棒。こちらは無料で提供しているのである。一言言ってくれればともかく、紹介料という料金をとってのタダ乗りはどうかと思う。その結果、ひとつの記事で月に1000以上のアクセス数があったドル箱記事が、現在は500ていどにアクセス数が半減してしまった。パクられるだけでもひどいことなのに、順位まで奪ってしまうのだから、どうにかならないのだろうか。
追越しと追い抜き
さて、本題に移ろう。追越しと追い抜きはまったく違う概念である。そもそも、道交法では、追越しという用語は出てきても追い抜きという用語は出てこない。ネットでほかも調べてみると、まあ、いろんな説明がありますね(苦笑)。その説明に使われていたのが以下の図だが、どれが正しいのだろうか。
【追越し】
【追い抜き】
ぼくが正しいと思ったのは真ん中の図です。ただ、それ以外の図の中には自動車教習所からの出典のものもあって、なんだか自信がなくなってきました(苦笑)。エラそうなことを言ってぼくが間違えているかもしれない。不安になったので、この機会に調べてみることにしました。
以上の説明により、道交法上は真ん中の図【出典:yahoo知恵袋より】が正しい。が、過失割合を考えるときは、2度の進路変更を要求している。別の本からの説明も加えたい。
判例タイムズ過失相殺本の基本過失割合
追越しについての、判例タイムズの過失相殺基準本の総論の説明は先に紹介しましたが、各論部分、すなわち追越しが実際上問題になるのは以下の場面です。総論の説明とは必ずしも同じではないのだ。(以下追記予定)
同一方向に進行する車両同士の事故
【追越禁止場所における事故】
【追越禁止場所でない場所における事故】
交差点における右(左)折車と後続直進車との事故
【直進追越車が中央線ないし道路中央を越えている場合】
【追越しが禁止される通常の交差点の場合】
【追越しが禁止されない交差点の場合】
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追越しに関する判例紹介
深夜、見通しのよい幅員9mの国道直線路を5台の車が一団となって進行中、最後尾の加害車が先行の4台を追い越そうとして対向車線へ出て、3台をごぼう抜きで追い越し先頭の被害車を追い越そうとした際、休憩のため路外へ右折しようとしていた被害車と衝突した事故。後方の安全確認をしなかった被害車に30%の過失相殺を認めた事例。
交差点内の追越禁止区域で中央線を越えて右側から追い越しをかけた直進の加害車(普通乗用車)と右に寄らないで右折しようとした被害車(普通乗用車)との衝突事故。後続加害車の動静に十分注意して慎重に右折を開始しなかった被害者に約30%の過失相殺をした事例。
自動二輪車が四輪車を追い越す際にしばしば車道外側線の外側を通行することがあることは左折四輪車の運転者として当然予見すべきことであるとして、左折普通貨物自動車と後方からの直進自動二輪車の衝突事故について、普通貨物自動車に後方確認義務違反の過失を認めた。自動二輪車側には、速度超過と前方不注視の過失を認め、50%の過失相殺をした事例。自動二輪車時速20キロの速度超過。車道外側線外側2.2m、狭路へやや中央に膨らんでの左折だった。
路側帯を原付に搭乗して進行中の被害者に、右後方から道路左側の駐車場に入ろうとした加害車(普通貨物自動車)が衝突した事故。前方不注視、左側追越禁止違反義務を怠った被害者に、30%の過失相殺を認めた事例。
後方の安全確認を怠り、急に右折待機車の左前方へ車道外側線を越えて回避進行してきた加害車(普通乗用車)と車道外側線外側から2台追い越しをして直進走行してきた被害車(普通乗用車)との衝突事故。加害車合図なし、後方確認なし。加害者が、路側帯にあたらない車道外側線を走行して右折車の左側を追い越そうとする車両のないことを信頼したことは相当とはいえないとし、加害者に70%の過失相殺を認めた事例。
交差点を右折しようとした加害車(普通乗用車)に後続直進の被害車(自動二輪車)が衝突した事故。前方を走行していた車両が右折の合図をして交差点を右折しようとしているのに、その動静に留意するどころか、追い越しのための右側部分はみ出しが禁止された道路でありながら対向車線側に進出してこれを右側から追い越そうとし、急制動の措置をとることもなく衝突した被害者に60%の過失相殺を認めた事例。
片側2車線の第1車線を走行中の原告車(普通乗用車)が、車線変更のため第2車線から第1車線内に車体の一部を入れた被告車(普通貨物自動車)を避けようとして左ハンドルを切りながら被告車を追い抜きかけたところ、左側ガードレールに衝突しそうになったため逆に右ハンドルを切り、対向車線に飛び出して対向車と衝突した事故。制限速度を時速30キロ程度上回る時速70キロで走行し、適切なハンドル操作をしなかった原告と第1車線に入る前に十分な後方確認を行わなかった被告の過失割合を6対4と認めた共同不法行為事例。