ゼブラゾーンがからんだ事故の調査を何度かやっているのですが、そういえばこんなのもあって、一方が会社の社長でそのえらいさんのいうところでは、相手は貧乏人だからひがんでいるのだ…などと理由にもならないことを主張していたことを思い出しました。
この種の事故は、双方とも相手が悪いの一方的主張で、その原因の多くは、ゼブラゾーンに対する理解不足に起因していることが多いのです。
かつては判例タイムズ「過失相殺率基準本」という過失割合のバイブルのような本ではとりあげられていなかった「ゼブラゾーン事故」。が、最新版でとりあげられるようになりました。
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したがって、ここでは「基準本」の紹介から始め、「基準本」では取り上げていない事故について判例紹介するという構成になっています。
目次
ゼブラゾーンの典型的事故
実際に事故があった現場の画像を紹介します。これ、自宅の近くなんですよ。
ゼブラゾーンの事故というと、その典型的なものは画像にあるような道路立地です。判例タイムズ過失相殺率基準本で紹介されているのもこのような画像をもとにした図です。
すなわち、ゼブラゾーンに進入したクルマの前にいたクルマが、右折レーンに進入しようとして、後続あるいは並走中のゼブラゾーン進行車と衝突する事故がその典型です。
ゼブラゾーンに進入しなかった側からすれば、ゼブラゾーンがあったので、ここは進入してはいけないのだと思い、いったん車道左側に寄り、ゼブラゾーンの切れ目を越えたところで、右折レーンの道路標示にしたがい(画像参照)右折レーンに接続した直後、ゼブラゾーン走行車と衝突したというのが多いです。
ゼブラゾーンの過失割合
基本 | 黄30対赤70 |
---|---|
修正要素 | |
ゼブラゾーン進行 | +10~20 |
黄15キロ以上の速度違反 | +10 |
黄30キロ以上の速度違反 | +20 |
黄のその他の著しい過失 | +10 |
黄のその他の重過失 | +20 |
進路変更禁止場所 | -20 |
赤の合図なし | -20 |
黄の初心者マーク等 | -10 |
赤のその他の著しい過失 | -10 |
赤の重過失 | -20 |
ゼブラゾーン走行車30対ゼブラゾーン非走行車70が基本です。つまりは、ゼブラゾーンを走行しなかったほうが過失が大で、加害者になります。
この判断に納得できず、実は批判も多いのです。加害者とされた方はどうしてそうなるんだと、私の説明に納得される方は少なかった。真面目にゼブラゾーンを避け右折レーン表示にしたがって進路変更した挙句に事故となり、しかも自分の方が過失割合が大きいと加害者呼ばわりされるからです。
ゼブラゾーンとは?
さて、ゼブラゾーンとは何でしょうか。別名「導流帯」ともいわれています。「導流帯」のほうが正式名です。
この導流帯は
①道路交通法2条1項16号により交通規制の手段として公安委員会により設置される道路標示のもの
②道路法45条1項により、通路の構造の保全や交通の安全,円滑のために区画線として道路管理者により設置されるもの
の2つがあります。
ではこの導流帯に入ってはいけないか否かというと、
通路交通法2条1項6号に定められた「安全地帯」や道路交通法17条6項の「立入禁止部分」とは違い、ゼブラゾーンへの立ち入りは道路交通法上の処罰の対象とはなっていません。それでは何のために設けられているのかというと、諸説がありますが、どれもいまいちしっくりしないので、紹介はしません。 道交法17条第6項 「車両は、安全地帯又は道路標識等により車両の通行の用に供しない部分であることが表示されているその他の道路の部分に入つてはならない。」 「安全地帯」 路面電車に乗降する者や横断している歩行者の安全を図るために道路に設けられた島状の施設、または道路標識および道路標示によって安全地帯であることを示している道路の部分。 「立ち入り禁止部分」 規制標示「立ち入り禁止部分」をもって表示されるが、これは、車両の通行の導流、分離等を目的としたものである。この標示とほぼ同様の目的をもっているものに指示標示「導流帯」(注:ゼブラゾーンのこと)がある。「立入り禁止部分」は、車両の通行の用に供しない部分でることを表示するものであり、この部分に立ち入った場合には処罰されることになる(法119条1項2号の2)。これに対し、「導流帯」は、単に車両の走行を誘導するものである。 「(裕)の学科教室」という、この方面にすごく詳しいサイトがあり、そこからその区別を図示しており、私もたいへん勉強になりましたので、そちらから画像とその区別の説明をお借りしました。 「安全地帯」の実際 「立ち入り禁止部分」の実際 「運転免許学科試験」 車を運転していても、ゼブラゾーンとの違いになかなか気づきません。 大阪地裁平成2年3月13日判決 道路の合流地点におけるAB両車の衝突事故。Aは左側合流車線の交通状況に気を取られ、前方を走行するB車の動静を十分には注意せず、制限速度10㌔超の時速50㌔に加速しながら、ゼブラゾーンの一部を越えて車線変更した過失があると認め、他方、Bも左方に進路変更する際に、左方車線の交通状況を確認したのみで、A車が後方を追従走行するのを知りながらA車の動向を十分に注意せずに方向指示器も操作しないまま進路変更した過失があると認め、双方の過失割合はA60、B40とした。 大阪地裁 平成2年11月30日判決 渋滞車両の右側センターライン沿いのゼブラゾーンを高速走行してきた被害自動二輪車と道を譲ってくれたので渋滞車両の間を横断右折しようとした加害車の衝突につき、被害自動二輪車に5割の過失相殺が適用された事例。 神戸地裁平成4年8月28日判決道路外から道路に進入するため右折する場合
基本 赤10:黄90
修正要素 黄:既右折 +10
赤:ゼブラゾーン進行 +10~20
赤:15㌔以上速度超過 +10
赤:30㌔以上速度超過 +20
赤:その他の著しい過失 +10
赤:その他の重過失 +20
幹線道路 -5
黄:徐行なし -10
黄:合図なし -10
黄:その他の著しい過失 -10
黄:重過失 -20
道路外に出るため右折する場合
基本 赤20:黄80
修正要素 赤:頭出し待機 +10
赤:既右折 +10
黄:ゼブラゾーン進行 +10~20
黄:15㌔以上速度超過 +10
黄:30㌔以上速度超過 +20
黄:その他の著しい過失 +10
黄:その他の重過失 +20
幹線道路 -5
赤:徐行なし -10
赤:合図なし *
赤:その他の著しい過失 -10
赤:重過失 -20
ゼブラ―ゾーン事故の判例
ゼブラ通過車線変更車×右方に進路変更車
ゼブラ直進高速二輪×渋滞~横断右折車
ゼブラ直進二輪×渋滞列~右方転回車
渋滞中の3車線の道路を併進中の被害者(自動二輪)と加害車(普通乗用車)が衝突し、被害者運転者が反対車線にまで飛ばされた事故。加害車の右後方を走っていた被害車が道路右側のゼブラゾーン沿いに進行したところへ加害車が右方へ転回して起きたとして、前方への注意を怠った被害者に20%の過失相殺を認めた。