休車損害を請求する際に必要な資料とは?

休車損を請求する際にどんな資料が必要なのか、とりわけ有休車が存在しないことを立証するためにどういう資料を要するのか、そのような具体的なことについて、ネットではせいぜいが運輸局の提出資料くらいしかわかりません。それでは、自分の要求を貫徹することはたぶん無理です。

では、どういった資料が必要で、それらを集めてどうするのか。そのことを記事にしてみました。

休車損害に対する誤解

もう3年以上も前の話になりますが、開業してまだ間がない弁護士と話す機会がありました。話題がたまたま休車損害に及んだとき、その弁護士は、休車損の算定は簡単ですよ、ほら、このマニュアル本に算定式が出ている・・・と言ってのけました。聡明そうな若い弁護士でした。が、休車損害算定の実際は、彼が言うようなそのマニュアル本に書いてある公式どおりにいくとは限りません。

休車損は労多くして功少なし

休車損はむずかしい

実を言うと、調査会社への休車損調査依頼はけっこうあります。しかし、うちの支社で休車損害調査ができるのは、私ともうひとりしかいませんでした。が、実際は私がほとんど一手に引き受けていました。もうひとりの調査員が休車損害をやりたがらず、当時の上司がえこひいきする困った奴だったため、私がほとんど一手に引き受けざるえなかったのです。

どうしてやりたがらないのか。マニュアルにあるような算定式を当てはめれば容易に答えが出てくるようなかんたんな休車損なら損保でとっくにやっています。わざわざ調査にまわす必要がありません。

損保でもやれる人は少ない

損保社内では対応できる人がいないというのが一つの理由です。・・・というと、ウソだろと思うかもしれませんが、某大手の損保担当者は、うちの支社には休車損がわかる奴は1人もいないのよ、とため息交じりに言っていたから本当です。私はてっきりできる人が支社内に何人かいるのかと思っていたのですが、この言葉にはびっくりした記憶があります。

休車損の立証書面は膨大になるのでやりたくないというのがホンネ

やれないということがひとつの理由ですが、休車損は提出される書類の処理がときに大変なため、メンドーでやりたくないというのがもう一つの理由だと思います。やれないし、やりたくない。どっちの理由もそうだと思います。

メンドーなのは調査会社にまわせ

そういうメンドーなのは調査会社にまわすか、場合によっては弁護士にまわしてしまう。そういうこともあって、いったん弁護士案件になったものが弁護士が思いつきのような算定をしたためかえってこじれて処理しきれず、未解決のままになっているのがこちらにまわってきたこともあります。

弁護士がさじを投げた案件の尻拭いですよ。ぐちゃぐちゃになったやつの火消し役です。現場はもう修羅場なのです。このように、調査種目の中でもっとも難しいもののひとつといわれているのに、どうしてだかわからないが、社内の休車損調査の評価は低かった。だから、だれもやりたがらないのです。

だからといって、私は休車損が得意というわけでもありませんでした。本社に休車損のわかる人が1人いて、私にはわからないことばかりなので、しょっちゅう電話して教えを乞うていました。だから、だれでもできれば敬遠したいのです。

とにかく、この調査の担当にされると、気分が憂鬱になります。休車損はかんたんだと誤解している人がいたのでちょっと長話になってしまいました。本論にはいります。

休車損とは?

休車損害とは何か。そこから始めます。休車損害というのは、事故によって営業車が壊れ、修理したり全損になったりしたため、その修理期間中あるいは買替期間中その営業車が使えないことで発生する損害のことです。

休車損害 計算書 書き方

ネットで「休車損害」で検索すると、

>車の使用不能期間(休車日数)×(売上-変動経費)=休車損害額

と説明されていました。

休車損の計算の仕方の詳細についてはこちらの記事で書きました。
休車損害の算定

マニュアルどおりにいかないね

ネットではほかに、遊休車がどうだとか、判例がどうだとかなどとちょっこと書いてあるけれど、そんなことだけでは実際の算定にたいして役立たないのです。

たとえば遊休車が存在すると休車損が発生しないという原則があるのはわかりますし、そのことはどこのサイトでも書いています。しかし、算定の実際の局面で遊休車があると正直に答える運送会社など稀で、遊休車があってもそんなものは存在しないという口上から調査が始まります。運送会社の立場からいうと、口先だけで遊休車の存在を否定してもダメで、そのことを資料で明らかにしないといけません。

この分野はたぶん損保の独壇場ですね。支払う側の強みというか。今言ったように、休車損の立証責任は遊休車の有無も含めて運送会社側にあるからです。立証に必要な適切な資料を用意し、それをどううまくまとめることができるかどうかが決め手なのです。

運送会社は自分に立証責任があることを忘れていないか

ところが、運送会社側にはその立証の仕方がわからず、たいていは資料がないかあるいは不足しているか、おかしなことに、あっても出さないため十分な補償を得られない結果に終わっています。大手なら事故係がいるからそうでもないと思われるかもしれません。だが、私の限られた経験だけれど、大手も事情は似たようなものでした。

運送会社は、自分のほうに立証責任があること、そのための立証書面をふだんから管理し、整理・整頓していることが必要です。それをやらないで調査員に膨大な資料の山を整理もせずポンと渡す社長さん。そんなもの、だれがまじめに読み、計算すると思っているのですか。

全部の資料に目を通し、それを計算までしていたら数日どころかその週全部使わないと終わりません。サンプル調査というか、適当に書類をみるしかありませんよね。だって、段ボールに山と積まれているわけですから。一種の手抜きです。

そうさせないためには、運送会社はその時に備えて、ふだんから書類の整理・管理をしておき、それを図を使ったり、まとめとして結論を明確にするなど知力とパワーで圧倒するくらいでないと損保に負けてしまいますよ。損保担当者に対して、これはテキトウにやれないなあと思わせるくらいでないと。それができないなら、㌧あたりいくらという損保の提示額を飲んだほうがいいと思います。

休車損害算定のための確認事項

今回は、運送会社相手に、私が休車損害の算定のために確認していた一般的な事項を以下に思いつくまま記してみることにしました。いつも全部が必要ってわけではないし一部でいいばあいもありますが、ケースによってはさらに必要になるものもあるけれど、こういう事実を口頭ではなくて、資料で立証しないといけないのが大切なポイントです。

運輸局への提出資料でカバーできる場合もあるけれど、それだけで全部がカバーできるわけでないことも多く、かなり、大変です。損保や調査員にお任せするのではなくて、自分でやってやるという覚悟が必要です。そこを他人任せにしていたら、それも利害の対立する相手に丸投げして、それで自分の要求が通ると考えるほうがどうかしています。

提出資料一覧(立証すべき事項)

事故発生日時、場所
対象車両の詳細
破損状況
荷物の詳細(大きさ・保存可能か等)
積載限度と実際の積載量
対象車の発注先(特定されているかどうか)
運行範囲(長距離便、定期便など)
排ガス規制について
荷卸先の営業日
ドライバーの属性(正社員かどうか等)
対象車両に対するドライバーの専属性
ドライバーの怪我の有無
治療先
休業期間
ドライバーの翌日からの就労内容
事故後のドライバーの給与支払いの有無
休業損害の有無・内容
間接被害者の有無・内容
事故当日の措置
事故翌日からの措置
1遊休車使用
2実働車使用による社内調整
3外注依頼(傭車)
4キャンセル
5リース
6上記組み合わせ
→休車損害の形態
入庫先
入庫日
納車日時
休車期間
相当休車期間超過の場合の理由
事業内容
創業年
従業
ドライバー数
支店の有無
当該店から最寄の支店までの距離等
親会社・子会社(グループ会社も)
保有車両の数・内訳
実働車数
実稼働率
遊休車の有無
対象車両の代替性可否
対象車両代替可能台数
売上
配車率低下の有無+売上の低下の有無
固定費・変動費
季節変動の有無
増車・減車について
事故後、売上は減少していること
事故前同時期の売上と休車期間の売上の比較
ドライバー数の推移
キャンセルの場合の回復度

(追記)
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(ラッキーさんのコメント)
lakkey

(当事務所のコメント)
komenntott

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