積雪などのためセンターラインが消え、道路標識が見えなくなったときの事故の過失割合

センターラインが消えていたり、道路標識が見えなくなっていたりすると過失割合は?

問題の所在

信号のない交差点における出合い頭衝突事故。交差点中央にセンターラインがはいっている交差点だったら、通常の基本の過失割合は、優先道路側のB車側が10で、そうでない側のA車が90です。

上の画像は「(裕)の学科教室」よりお借りしました。優先道路について詳しい記事も書いておられますので、そちらもたいへん参考になります。

しかし、事故当時、事故現場は雪で覆われていてそのラインがみえなかったり、雪ではなくて長年放置していたため劣化し、ラインが見えなくなっていることって、ありますよね。さらに、雪道だと路肩に雪山が存在するなど、道路も狭くなっていたら、過失割合にどんな影響をするのかという問題です。

ここでは雪道を例にして説明します。雪で埋まったため道路標示であるセンターラインが見えないとか、道路標識が見えないという現場は、冬になれば地元である石川県ではいたるところに現出します。

そして、そこで事故も頻繁に起きています。そのような事故で過失割合をどのように決めたらいいのでしょうか。

見えていないのに見えているとして考えるのか、見えないものは見えないと考えるのか

考え方としてはふたつあると思います。実際は、積雪のためにセンターラインも車道外側線も道路標識も雪に埋もれて見えなくなっている。その現況で過失割合を決めるというやり方。

もうひとつが、雪がなかったものとして、すなわち積雪のため見えなくなっているセンターラインや車道外側線がみえているものとして決める。あるいは雪で実際は見えないのだけれど、見えるものとして道路標識を有効なものとして考えるやり方。

さあ、どっちだと思いますか。

そんなの現況でやるのが当たり前だろと思われた方も多いと思います。センターラインが見えないのに見えているものとしてやるなんて、それはむちゃだ、初めて来た土地だとそんなの期待がするほうが無理だろうということです。

いや、そうではない。土地勘のある人はもともと道路標示、あるいは道路標識にしたがって運転している。それが雪などでたまたま見えなかったとしても、すでに決められていることをたまたまの事情でくつがえすべきではない。

実をいうと、調査会社ではスコップ持参で現場確認に行くのが決まりでした。雪に覆われているセンターラインがどこにあるのか調べるためです。私だけがそんなことをやっていたのではなくて、先輩方がそうしていたから私もそれを見習っただけです。では、後者すなわち、たまたま見えなかったとしても見えているものとして扱うという考えが正しいのでしょうか。

それが間違いであることが以下に紹介する判例ではっきりします。

旭川簡裁 昭和49年3月28日判決

判例の現場は以下のとおりです。

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判決文から引用します。

1)道路交通法2条の規定に拘わらず除雪の堆積状態により、その一般交通の用に利用されるという道路の属性に変更をきたし、除雪された部分だけが有効に通行の用に供しうるので、同部分が道路としての客観性をもつにすぎなくなっていると解するのが相当である。すると、本件交差点における2路の幅員には広狭の差がほとんどない状態であることも明らかである。

 

2)事故当時交差点の中まで引かれた中央線表示は圧雪のため認識できない状況にあったのだから、車両の通行を規制するために引かれた規制表示としての効力を失っているものと認めなければならず、結局、本件事故にはいずれかが優先道路となすことはできない。

 

3)したがって、上記2路のいずれを通行する車両にも道路交通法上の本件交差点において徐行する義務があることは明らかである。

以上から、このケースでは「優先道路」ではなく、「左方優先」で決することになります。

「左方優先」が適用された場合の過失割合についてはこちらの記事を読んでいただけるとわかるかと思います。
左方優先の原則と判例

道路標示が見えなくなったためその効力が失われたとき、今回のように、雪がなければ優先道路だったものが優先道路でなくなったり、センターラインが見えなくなったため路面表示のセンターラインが意味を失うため、別にセンターラインを想定しなければならなくなるため、過失割合に大きく影響してくる。

また、今回は車道幅によっては、「左方優先」でなく「広路狭路」で決することも考えられた。

道路・車道の予備知識

広路について(判タ38より引用)

交差する道路の一方の幅員が他方よりも明らかに広い道路をいう(法36条2項、3項)。「明らかに広い」とは、車両の運転者が交差点の入口においてその判断により道路の幅員が客観的にかなり広いと一見して見分けられるものをいう(最高裁 昭和45年11月10日判決)。

・・・となっているがわかりにくい説明だと思う。「道路」は「歩道等」も含むためである。「本条の道路の幅員の広狭は、歩道または路側帯を除いた車道部分の幅員によって比較しなければならない」(最高裁 昭和47年1月21日判決)。

道路とは(自研センター資料にもとづく)
自転車歩行者道路上施設
自転車道
歩道
植樹帯
側帯中央帯
路肩
車道停車帯交通島(車道施設)
副帯
屈折車線
変速車線
登坂車線
車線

つまり、上図の、車道は、車道外側線外部分(路肩に含まれる)を含めたところの幅員が対象になる。判決文や弁護士の書いたものを読んでいてよくあることなので注意してほしいのだが、路側帯と車道外側線外は形態的には同じように見えるが、まったく別物である。その区別がされておらず、同じだと思って書いている。なお、車道外側線とは、通行するときに端に寄りすぎると危ないからこの線の右側を通って下さいという意味の区画線のことである。

rosokutai

この図だと、赤矢印のがそうである。線のどこ(中央か端からか)から計測するかも注意してほしい。

(なお、判例の現場図面の車道幅は、判例で紹介した実際の事故の車道幅の数値を簡略化して載せたので、正確でないことをお断りする。)

(16・5・17追記)
車道外側線外は車道かそうでないかについてだが、上記分類表によるなら「路肩」になるため、「車道」ではなくなるが、上記リンク先の控訴審判決では、あえて「車道」としている。

ネット情報をみるかぎり、圧倒的に車道扱いが多い。だとすると、上記分類表が間違っていることになる。引用元は自研センター。

車道外側線外(左)の車両通行が禁止されない実質から車道扱いとしたほうが説明の上で好ましいので、ここでは車道に含めることにする。

道交法4条の「道路標識等」の「等」に道路標示が含まれることの意味

道交法4条

都道府県公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、又は交通公害その他の道路の交通に起因する障害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、信号機又は道路標識を設置し、及び管理して、交通整理、歩行者又は車両等の通行の禁止その他の道路における交通の規制をすることができる・・・

 

道交法施行令1条の2の1項

法4条1項の規定により都道府県公安委員会が信号機又は道路標識若しくは道路標示を設置し、及び管理して交通の規制をするときは、歩行者、車両又は路面電車がその前方から見やすいように、かつ、道路又は交通の状況に応じ必要と認める数のものを設置し、及び管理しなければならない。

わかりづらい道路標識について書いた記事で書いたことだが、道交法4条の「道路標識等」の「等」に道路標示が含まれることの意味は大きいとした。どういうことかというと、

「執務資料・道路交通法解説16訂版(P87-)」によれば、道路標識等は適法かつ客観的に認知できるものであることが要求され、その具体的な内容としては、

当初道路標識等を適法かつ客観的に認知できるように設置してあったとしても降雪のため道路標識の標板が白くおおわれ、その意味が読みとれないとき又は道路標示が見えなくなっているとき(煤煙・じんあい等による場合も同じ)は、その道路標識は一時的ではあるが、その間は有効な道路標識等ということはできないので、交通規制の効力は失われたものと解さなければならない。

この場合、道路標識と道路標示を併設しなければならないとされている交通規制については、いずれか一つでも見えなくなったときは、その規制の効力を失うが、道路標識又は道路標示を設けて行う交通規制、例えば、はみ出し禁止については、両者を併置することが義務づけられていないので、道路標識でもよく道路標示でもよいことになるので、降雪等のため併設された一方の道路標示が見えなくなっていても、他方の道路標識に視認性があれば、なお、有効な交通規制ということができる。

すなわち、道路標識だけでなく、「センターライン」や「車道外側線」などの道路標示が見えなくなったときも、交通規制の効力は失われるからである。このことを裏付ける判例を見つけたので、旧ブログで記事として公開したら、かなりの反響があった。裁判官だった方がこの記事に注目してくれて、フェイスブックだったかツイートだったかで取り上げていただいたため拡散したのである。以下に若干の加筆をして再録する。

 

2 COMMENTS

lucky

某調査会社では、このコラムを社内用の資料として使用していますよ。
コピーを渡されたとき、「どっかで読んだことのある文だな」と思ったら、
このサイトにあるコラムでした。

そういえば執務資料道路交通法改正(17訂版)通行区分(10条)p148~149に車両外側線と路肩帯の区別、大阪高裁(H3.3.22)の判例が紹介されています。
それによると歩道が設置されていてその外側に白線が引かれている場合、白線と歩道の間は車道になります。この白線は運転者の視線誘導、側方余裕を保つための道路構造令第2条11号の側帯表示だそうです。

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ホームズ事務所

luckyさん、お久しぶりで。
この記事、一時期アクセスがすごかったことがあります。裁判官だった方がこの裁判例をツイートしてくれてあっという間に広まりました。あと、弁護士だとおもうのですが、この判例がのっている文献は何という問い合わせをいただいたことがあります。

車道外側線と路側帯の区別についての高裁の判断については、16訂版でも確認できました。この記事ではなくて路側帯について詳しく書いた記事に補足として使ってみようかと思います。

ご指摘ありがとうございます。今、記事を読み返し、リライト作業をしているところなのですが、我ながらこれは変だなアと思う記載がけっこう見つかって汗たらたらですね。今後もこれはおかしいとか、これが参考になるよという情報がありましたら、コメントよろしくお願いします。

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