相談
昨日相談をいただいた件である。相談された女性の方は4年前にアルバイト先であるブラック企業に就職し、1年前に1年有期のパートに変えられた。このたびその有期期間が満了し、会社から更新を拒絶されたのだという。自己都合退職の手続をするよう会社から申し渡され、本日、そのために会社に行く予定とのことだった。
実をいうと、2月に交通事故にあい、腰部打撲した。それからは体調がよくなく、仕事の上でも支障があったらしい。つまり、交通事故受傷が更新拒絶の大きな理由だった。現在、休業損害を相手損保からいただいているが、もらえなくなったら生活ができなくなる。今後、どうしたらいいのでしょうかというものだった。
回答
会社を退職すると、それ以降は無職になる。無職になると、休業損害を請求する理由を失う。ただし、交通事故が原因で退職に追い込まれたという事情があれば話は別である。したがって、休業損害を今後も継続して受け取るためには、自分から辞めたという自己都合退職ではなく、会社都合退職、すなわち解雇でないとダメである。それも、交通事故受傷を理由とする解雇というように、事故との因果関係がはっきりしている理由が必要である。
自己都合退職の場合は、失業手当も3か月の待機期間があるため、すぐには支給されない。解雇だと1週間後に支給される。したがって解雇のほうがこの面ではよろしい。なお、失業手当と休業損害は損益相殺はできず、両方とももらうことができる。
ところで、彼女の場合、最初がアルバイト、その後パートに変更されている。アルバイトからパートへの変更内容がはっきりしなかったが、4年間継続して働いている事実があるため、形式上は有期契約だが、実質上期限の定めのない雇用契約かそれに準ずる扱いが可能かもしれない。もしそうであれば解雇に正当な理由が必要になる。1年経過したから、はい、さようならとはいえなくなるのだ。
ということで、労働組合に相談することを私は勧めた。彼女ひとりでの交渉はいずれにしろ無理だから、全国組織の労働組合が相談にも交渉にも応じてくれる。労働組合といってもいろいろあるが、労使協調路線をつっぱしる組合はやめといたほうがいい、経営者に文句がいえる組合にすべきだと説明して、ネットで調べてそれらしい組合を紹介した。「ひとり組合」もOKならしい。
世はブラック企業ばかり
生活にすぐにも困るだろう人の首をかんたんに切る。路頭に迷わせることに、そのブラック企業の担当者は良心の痛みを感じないのだろうか。うちは慈善団体ではないと言うのだろうけれど、企業にも社会的責任というものがあるはずだ。金儲けだけやっていればいいというものでもないだろう。本当に世の中、こんな会社ばっかりだ。その彼女、本日会社に呼ばれていたのだが、組合とうまく相談できたのだろうか。会社とうまく交渉できたのだろうか。昨日の今日の話だから、気になる。
ユニオン結成について
この記事を書いたのは上記のとおりで、今から約8年前のことだった。その後、おれ自身でユニオンをつくり、会社相手に団交→裁判と進んだ。団交により組合員全員(おれ以外)の要求を会社がのむもので、おれの要求だけが裁判になった。それも和解になった。ただその内容については会社が口外するなという条件つきのため口外できない。ただし、ユニオンについてまったく未経験だったものの、会社との労働紛争を経験することで、日本の労働運動のいったんを知ることができた。以下はそのツイートだが(それに加筆した)、ユニオンを自前でつくりなり、どこかの労働組合に加入するなりのときに、参考にしていただければいいと思った。さて、はじめよう。
孔子の逸話にこういうのがある。酷使され 息絶え絶えの馬を目にした孔子が、弟子に「あの馬を買い取り、救いなさい」と命じる。弟子は「この国には何十万もの馬がいます。なぜあの馬だけを助けるのですか」と聞く。孔子は答えた。「この馬が私の目の前にいるからだ」。労働組合の思想もこれである。
ということで、おれはユニオンをつくった。ユニオンは2人いればつくることができる。つまり1人では無理でもう1人必要だが、どうしても賛同者がみつからない場合は、外部の労働組合に個人で加入するという手もある。問題は労働組合といってもいろいろあって、ピンからキリまであることだ。そして、たいていの労働組合はピンのほうだから加入する際は注意が必要だ。以下、ツイートから引用する。
平和だ、戦争反対だ、がいけないとは言わない。が、労働組合の本務は労働者の権利実現である。団交し権利実現のための行動に打って出る。その本務を忘れて(あるいはテキトウにやって)そっちのほうに現を抜かすのは本末転倒である。ていうか、労働者の権利なんて本当はどうでもいいのだろう。
うちはちいさくてもこれでも労組の「はしっくれ」である。矜持というものだってまだかろうじてある。こんなこと(大労組を批判すること)をツイートしたら労組の多くのフォロワーがドカンと逃げ出さないかとも思ったが、嫌われてもいい、言うべきことは言いたい。でないと、労組なんてやっている意味がない。
労働組合の思想、理想論を「孔子の逸話」を引用し、ぶちあげてみた。ところが現実は弟子の言い分の方が通用するようで、「この国には何十万もの馬がいます。なぜあの馬だけを助けるのですか」。助けていたら際限がないということになりかねない。私憤じゃだめ、公憤がなければとかも同工異曲だろ。口先ではともかく、労働者のために実際の行動をする「闘う労働組合」は、この日本では希少価値なのだと身に染みてわかった。