休業損害証明書の書き方と、賠償を満額勝ち取るために注意しなければならない5つのこと

自賠責保険上の休業損害認定の基本的考え方

(原則)交通事故にあってケガをしたため仕事ができなくなる。その間の収入減があったり、収入減がなくても有給休暇を使った場合に補償するのが休業損害による補償である。1日につき5700円を原則とする。

(例外)この原則には例外があって、家事従事者については、休業による収入減があったものとみなす

「みなす」なのだから、みなされた事柄を、反対事実を証明して覆すことはできない。すなわち「Aであれば、Bとみなす」とは、「Aである」以上は、どんなにBではないと主張・立証しても、「Bではない」とされることはないということなのだ。この文言でいうと、主婦(主夫)は、たとえ休業による収入減がなかったことを証明できたとしても、収入減があったとされるということである。

言われてみれば至極当たり前のことである。主婦は働いていないから収入減などありえない。休業損害は収入減があるときに補償の対象になるという原則に対する例外規定である。主婦は収入がないから休業損害を支払わなくてもいいという主張を封ずるためにある。他の職業とはこの点が決定的に違うことに注意したい(なお、ここで「規定」とあるのは「自賠責保険損害調査関係規定集」のことである。この規定集についてはぼくは虎の巻と言っているが、「ひたちの総合法律事務所のブログ」でも詳しく取り上げられており、別名「自賠責マニュアル」と言われているらしい。)。

休業損害の対象となる日数は、実休業日数を基準とし、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して治療期間の範囲内としている。

立証資料等により1日につき5700円を超えることが明らかな場合は、自賠法施行令3条の2に定める金額(19000円)を限度として、その実額とする。

 

比較・任意保険の考え方

任意保険は、自賠責保険のような、規定による支払いではなくて、実際の損害額を填補するための支払いという違いがある。すなわち、事故と相当因果関係のある実際に発生している損害を填補する。

積算方法

原則:休業損害額=休業損害日額×休業日数

5700円(定額)≦X≧19000円
円未満の端数は四捨五入する。

例外:下記表参照

職業別休業日数の原則と上限
原則上限
給与所得者休業損害証明書の日数同左
小規模法人役員実治療日数実治療日数の2倍or治療期間の少ないほう
自営業者
自由業者
家族従業者
家事従事者

幼児とか学生とか、あるいは年金生活者、金利生活者、生活保護の被保護者、地主など、事故により収入減のない者については、休業損害がないものとする。就職活動中だったらどうなるか。こんな調査をしたことがある。その人はハローワークに通っていたので、就労の意思はもちろんある。が、具体的に入社日が決まっているとか、内定をもらっているとかでないと休業損害の対象にはならない。裁判ならそうでもないのかもしれないが(うろ覚えのため「ないのかもしれない」と書いた。これでは回答になっていないので、後日調べた上でここは加筆したい)、自賠責とか任意保険では対象外である。

休業損害の積算につき、立証資料(注:自賠責における休損立証書面一覧はこちら)等が参照されるが、提出資料に疑義があるときや、不備があるときは、当該資料の発行者・作成者等から調査するよう努力する。

休業損害証明書の書き方

上にあげた書式は休業損害証明書である。休業損害証明書は給与所得者を対象にした書類である。すなわち、正社員だとか非正規社員(アルバイト・パートなど)が対象になり、個人事業主などはふつうこの書面を使わない。この書面でわかりにくいところ、注意すべきところ、記載に不備があるとあとで問題になりそうなところを重点的に説明したい。

提出資料に疑義があるときとは?

働いてもいないのに、働いていると偽装する保険金詐欺事案ではないかと問題視される。問題視された場合は、自賠責調査事務所は、新たな立証書面の提出を一括社(任意一括の場合)に求めたり、証明書入手経路や一括社側の休損認定理由を確認される。問題視されるチェックポイントを以下に列記する。(ただし、発行責任者が休業損害証明書を書いてくれないため、事故被害者が書いてしまう例も少なくないので、必ずしも詐欺事案とはかぎらない)。

①〇印が「全額支給しなかった」に付け替えらえていないかどうか。
付け替えられていた場合、あるいは〇印がされていない場合は、調査事務所は、賃金台帳等の提出を一括社に求める。

②筆跡が、他の書類(委任状とか請求書とかの筆跡と)同じあるいは酷似していないかどうか。
同じ、あるいは酷似している場合は、発行責任者でなく、事故被害者が書いたものだと強く推認できるため、調査事務所は一括社を通して再調査することになる。

③訂正・加筆等の箇所に発行責任者の訂正印があるかどうか。
ない場合は、改ざんの可能性があるため、一括社を通して、賃金台帳や出勤簿等の提出を行う。

④雇用主の社印がゴム印でない場合。
手書きの場合は、休業損害書の記載全体の信ぴょう性が疑われるため、一括社を通じて証明書入手経路などの再調査を行う。

休業損害証明書記載で問題になりそうな点について

事故当日の扱いについて

事故日が日曜祝日あるいは事故発生時が夜間のとき。
→事故当日に治療を受けた場合は、休業損害の対象にいれる。ただし、給与所得者に関しては、休業損害証明書で事故翌日から休業したことが証明されているときは、事故当日は算入しない。
(以下、工事中)

休業損害の上限

ボーナス減少分がある場合の記載欄がないが、その分を記載・算入することができる。その結果、1日の上限額(19000円)を超えるときは、上限額までとする。ただし、共同不法行為事案の場合は、19000円×契約数が上限になる。

社会保険料・所得税の扱い

休業損害日数を算出する場合に、社会保険料・所得税控除前の所得金額に基づき認定する。したがって、「差引控除額」が対象でないことに注意。


 

 

 
休業期間中、会社が給与の一部を支給している場合は、給与日額から一部支給日額を差し引いた額を休業損害日額とする。この休業損害日額が上限額(日額19000円)を超えるときは、上限額で打ち切る。一部支給されている場合については、「会社の立替損害」になる。

「会社の立替損害」

会社の従業員が交通事故で受傷し、治療費や休業補償の全部あるいはその一部を会社が負担している場合がある。


 

 

 

 

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当事務所の立場

突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ


その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にし、自己を無責任な立場に置くことになる。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。丸山真男のことばを最後に引用しておきます。

丸山真男から

ゲーテは「行動者は常に非良心的である」といっておりますが、私たちが観照者、テオリア(見る)の立場に立つ限り、この言葉には永遠の真実があると思います。つまり完全にわかっていないものをわかったとして行動するという意味でも、また対立する立場の双方に得点と失点があるのに、決断として一方に与するという意味でも、非良心的です。にもかかわらず私たちが生きていく限りにおいて、日々無数の問題について現に決断を下しているし、また下さざるを得ない。純粋に観照者の立場、純粋にテオリアの立場に立てるものは神だけであります。その意味では神だけが完全に良心的であります。

私たちの社会というものは、私たちの無数の行動の網と申しますか、行動の組合せから成り立っております。社会がこうして私たちの行動関連から成り立つ限りにおいて、私たちは行動あるいは非行動を通じて他人に、つまり社会に責任を負っています。その意味では純粋に「見る」立場、ゲーテの言う意味での完全に良心な立場というものは、完全に無責任な立場ということになります。

したがってこの点でも神だけが、完全に無責任でありうるわけであります。認識することと決断することとの矛盾中に生きることが、私たち神でない人間の宿命であります。私たちが人間らしく生きることは、この宿命を積極的に引き受け、その結果に責任を取ることだと思います。この宿命を自覚する必要は行動関連が異常に複雑になった現代においていよいよ痛切になってきたのです。

世のなかには一方では、認識の過程の無限性に目をふさぎ、理論の仮説性を忘れる独断主義者もいれば、またそもそも認識の意味自体を頭から蔑視する肉体的行動主義者がいます。しかし他方その半面では、物事はそう簡単にはイエスかノーかきめられないのだ、もっとよく研究してからでなければなんともいえないという名目の下に、いつも決断を回避することが学者らしい態度だという考え方がかなり強い。

あるいは対立する政治的争点に対して、あれももっとも、これももっとも、逆にそれを裏返しとして、あれもいけない、これもいけないということで、結局具体的な争点に対して明瞭な方向性を打ち出すことを避ける態度をもって、良識的であるとか、不偏不党であるとか考える評論家やジャーナリストもかなりいるようであります。

たびたびゲーテの言葉を引いて恐縮ですが、ゲーテはこういうことをいっています。「自分は公正であることを約束できるけれども、不偏不党であるということは約束できない。」今申しましたような世上いわゆる良識者は対立者に対してフェアであるということを、どっちつかずということと混同しているのではないでしょうか。
「現代政治の思想と行動」丸山真男 P452-454

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