タイヤの破損は、車両保険の対象になるのか

無知な奴ほどソンをする

保険契約をするときその約款のしおりに何が書いてあるのか、見もしないで契約する人がほとんどだ。だから、その内容をよく知らない人がほとんどだろう。こういうぼくもよく知らない。そのためよくあるのが、自分の保険が使えるのに使わずじまいになることだ。実をいうと、ぼく自身もその苦い経験がある。そういうときは、代理店が気づいたらアドバイスすべきだし、保険会社も気づいたらそうすべきだが、代理店の中には、営業は熱心だが事故があってからの後処理は熱意がない代理店もいるし、保険会社にいたっては請求がない以上知らん顔をされる。つまり、この世界も基本的に自己責任なのである。だから、保険について知らなかったでは大きくソンをする。

実をいうと、こんなことがあった。自殺の名所として知られる近くで、深夜、崖からの車の転落事故があり、男女2人が死亡した。車はレンタカーだった。自殺の名所近くでもあったことから、自殺ではないかと疑われた。自殺か事故か。有無責の判断。それがぼくの受けた調査の目的であった。査定との事前打ち合わせで、請求まだなんですよ。請求があったときに備えての事前調査です。

調査依頼先がどこだったかはずいぶん昔のことなので忘れた。というか、ぼくにだって書けないことはたくさんある。しかし、こういうことがあるから、無知な奴ほど救われないのである。

保険はタネ本を使えば楽に記事が書けそう?

そういうこともあって、自賠責だけでなく任意保険についても記事を書いていこうと思う。それにだいいち、保険の記事はアクセス数が比較的楽に稼げるらしいし、タネ本の文章に自分の体験をちょっこと肉付けするだけでかんたんに記事が書けてしまいそうだから楽チンだ。

では、任意保険についての一回目を始めたい。

質問

自損事故を起こした結果、左前タイヤとそれに付属のアルミホイルを大破してしまった。車両自体には損傷はなかった。車両保険でこの損害を填補できるのか。

 

タイヤは車両保険の補償の対象になるのか

通常、タイヤは消耗品だから、使えば使うほど磨耗してしまうので、そんなものをいちいち補償していたのでは保険会社も大変だ。だから、車両保険の補償の対象にならないように約款で免責にしている。つまり、自然消耗だったら払わなくていい。約款の記載は以下のとおりである。

車両条項第4条(保険金を支払わない場合)

第6号
タイヤ(チューブを含みます)に生じた損傷。ただし、被保険自動車の他の部分と同時に損害を被った場合または火災または盗難によって損害が生じた場合を除きます。

 
「自動車保険の解説」(保険毎日新聞社)の該当箇所の記載は以下のとおりである。

第6号は、タイヤの単独損傷を免責とする規定である。タイヤは部品中もっとも消耗度の激しいものであり、自然の消耗か保険事故かを判定することが困難であることによる。ただし、盗難、火災に起因する損傷または車両と同時に損傷を被った場合は、事故の確認が容易であるので保険金が支払われる。(P182)

回答

「解説」にあるように、タイヤの単独損傷を免責とする規定だから、アルミホイルを同時に損傷しているなら、どちらも填補される。

タイヤがいたずらされたら

では質問をひとつ。ぼくも経験があるのだが、いたずらによってタイヤをパンクさせられた場合はどうか。約款では盗難、火災は補償されると書いてあるが、それ以外の事由、たとえばいたずらでタイヤをパンクさせられた場合はどうなるのか。すなわち、限定列挙なのか例示なのか。これは限定列挙である。したがって、いたずら事故は約款に書かれていないので免責となり、保険金は支払われない。

高級なタイヤは申告を

純正品以外の高価なタイヤをつけていたばあいは、通常適正な補償範囲を超えていることになるため、補償の対象外になる。ふつうのタイヤのそれも時価分しか補償されないのがふつうだ。こういう場合は、高価なタイヤを取り付けたときに保険会社に申告しておくこと。購入したときのレシートもとっておくこと。

ホイルはセット品なので全部の請求が可能か

最後の質問。アルミホイルがひとつ大破した場合に、アルミホイルは4つセット売りがふつうだ。靴下とか靴とか手袋とかと同じように、このばあいもセットで請求できるのか。こういう質問をしてくる人がいたのだ。

これは難問だ

これはぼくにはたいへんな難問だった。保険会社はたぶん1つ分しか請求を認めないと思うけれど、セットで売られているのが商取引上の慣行なのだから、4つの請求がどうして認められないのか。ぼくにはその理由がよくわからない。ちなみに、我妻栄の「民法案内」では、

物には、常識的にみて、1つとみられるものと、2つ以上の別々の物の集まりとみられるものとがある。①自転車・時計・家屋などは、いろいろな部分品が組み立てられてできているが、1つの物である。クツや手袋は、左右組みになって1つとみられる。米や麦は、袋に入れて一袋1つといってよかろう。これに対し、別々の物の集まりのうちにも、いろいろの場合がある。まず、②ボートとオール・・・③工鉱業や、鉄道その他の運輸事業などの、1つの企業の施設全体・・・④ある会社の財産全体・・・(P142‐143)

 

などとなっていて、クツや手袋は、左右組みで物権の1つの客体(一物一権主義)とみなされている。セット品を構成するひとつひとつに代替性がなく、どれかひとつが欠けてもセット品としての機能を失うという運命共同体の関係にあるというのがその理由である。

では、ホイルはどうだろうか。ホイルは4つ組みで取引されているし、そのうちのひとつ破損して使えなくなったら、全部交換するのがふつうだ。現にそういうふうに考えて請求をされた方がいたのだ。が、ぼくにはむずかしすぎてそのときはその請求が正当なのか答えられなかった。いまも答えられない。どなたかわかる方がいらしたら教えてください。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


事務所所在地・連絡先

ホームズ調査事務所:
石川県加賀市
電話番号:090-1314-0234

電話・メールをされる前に、「お問い合わせ」欄を読んでくださいね。なお、メールについてはお返事に時間を要することもあるし、内容によっては、たとえば記事に書いてあることの再確認とか、あまり深刻とは思えないものについてはお返事しないこともありえます。電話ならその点確実です。

当事務所の立場

突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ


その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にし、自己を無責任な立場に置くことになる。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。丸山真男のことばを最後に引用しておきます。

丸山真男から

ゲーテは「行動者は常に非良心的である」といっておりますが、私たちが観照者、テオリア(見る)の立場に立つ限り、この言葉には永遠の真実があると思います。つまり完全にわかっていないものをわかったとして行動するという意味でも、また対立する立場の双方に得点と失点があるのに、決断として一方に与するという意味でも、非良心的です。にもかかわらず私たちが生きていく限りにおいて、日々無数の問題について現に決断を下しているし、また下さざるを得ない。純粋に観照者の立場、純粋にテオリアの立場に立てるものは神だけであります。その意味では神だけが完全に良心的であります。

私たちの社会というものは、私たちの無数の行動の網と申しますか、行動の組合せから成り立っております。社会がこうして私たちの行動関連から成り立つ限りにおいて、私たちは行動あるいは非行動を通じて他人に、つまり社会に責任を負っています。その意味では純粋に「見る」立場、ゲーテの言う意味での完全に良心な立場というものは、完全に無責任な立場ということになります。

したがってこの点でも神だけが、完全に無責任でありうるわけであります。認識することと決断することとの矛盾中に生きることが、私たち神でない人間の宿命であります。私たちが人間らしく生きることは、この宿命を積極的に引き受け、その結果に責任を取ることだと思います。この宿命を自覚する必要は行動関連が異常に複雑になった現代においていよいよ痛切になってきたのです。

世のなかには一方では、認識の過程の無限性に目をふさぎ、理論の仮説性を忘れる独断主義者もいれば、またそもそも認識の意味自体を頭から蔑視する肉体的行動主義者がいます。しかし他方その半面では、物事はそう簡単にはイエスかノーかきめられないのだ、もっとよく研究してからでなければなんともいえないという名目の下に、いつも決断を回避することが学者らしい態度だという考え方がかなり強い。

あるいは対立する政治的争点に対して、あれももっとも、これももっとも、逆にそれを裏返しとして、あれもいけない、これもいけないということで、結局具体的な争点に対して明瞭な方向性を打ち出すことを避ける態度をもって、良識的であるとか、不偏不党であるとか考える評論家やジャーナリストもかなりいるようであります。

たびたびゲーテの言葉を引いて恐縮ですが、ゲーテはこういうことをいっています。「自分は公正であることを約束できるけれども、不偏不党であるということは約束できない。」今申しましたような世上いわゆる良識者は対立者に対してフェアであるということを、どっちつかずということと混同しているのではないでしょうか。
「現代政治の思想と行動」丸山真男 P452-454

【当サイトご利用上の注意】

当サイト内の情報を利用したことにより何らかの損害が発生しても、一切責任を負いません。自己責任でお願いいたします。また、記事を書いた後に、法律が変わったりするなど、現状を反映していないことがあります。その後の改正等についてはフォローしていくつもりですが、ご注意ください。

著作権にかかわることですが、当サイトの記事をコピーされる方が後を絶たない。公開した記事なので、コピーしていただくのはまったくかまわない。ただし、判例文のコピーによる引用は別にして、それ以外の文章の引用については、引用元を示したうえで、どこからどこまで引用したかも明示してください。

なお、当サイトは中国語でも対応可能である。電話でもいいし、メッセージでもよろしい。

本现场可以用汉语对应、如过在日本有遇到交通事故的无论是中国人还是台湾人、请随时商量、商量的时候、请在网上「留言」。

おすすめ記事

アーカイブ

カテゴリー

Count per Day

  • 1518現在の記事:
  • 653836総閲覧数:
  • 270今日の閲覧数:
  • 1172昨日の閲覧数:
  • 8173先週の閲覧数:
  • 27453月別閲覧数:
  • 456564総訪問者数:
  • 157今日の訪問者数:
  • 766昨日の訪問者数:
  • 5275先週の訪問者数:
  • 17947月別訪問者数:
  • 731一日あたりの訪問者数:
  • 3現在オンライン中の人数:
  • 2016年5月2日カウント開始日:

ピックアップ記事

2017.5.18

自動車ドア事故と過失割合

自動車のドア事故が典型事故に格上げされた 駐停車中の自動車のドアを開けた際に、開けたドアが後方から来た自動二輪車や原付自転車、自転車と衝突…

ページ上部へ戻る