「評価損」の徹底分析

【「この紋所が目に入らぬか!」のつもりで、「評価損」という本ができあがった。】
現状で公開し、今後、加筆・訂正していくことにします。

評価損に対する保険会社の姿勢

物損の中で保険会社ともっとも揉めそうな損害項目のひとつに格落ちあるいは専門用語でいう評価損があります。保険会社に評価損を求めても基本的には認めません。もともとは裁判所も認めていなかった損害項目のひとつだったのですが、中古車市場が発達してきて、車が事故ると、買取価格が下落することが一般に知られるようになり、その後裁判所も評価損を認める方向に態度を変化させます。しかし、保険会社はいろいろなリクツをつけて基本的にはそのような損害項目を認めません。事故被害者が苦労して評価損が生じていることを示す立証書面を提出してようやく評価損を認めるようになったのですが、それでも修理費の10%くらいまでで、それ以上を要求すると、では裁判でもやられたらどうですかと、開き直ります。

いま、ぼくのところに相談されている方も、以上のような経過をたどられて、裁判を起こされています。ぼくもできるかぎりの援護射撃をするつもりで、いま、評価損について唯一の専門書である道海野守氏の「評価損」という本を再読し終えたところです。したがって、当記事は、修理費の10%ていどで示談したくない、裁判で争う意思のある方を対象に、ネット上にはまだ未公開の情報を盛り込んで、保険会社と戦う人を応援するために作成された記事です。戦うための知的武器を提供することを目的に書きました。そのためには先にご紹介した海道氏の著書を完璧に理解する必要があります。そして、ここにその本で得られた知識を公開しますので、みなさんは、その結論部分だけでなく、そこに至った手法を学んでください。

この本の序文にはこういう一節があります。

解決にもっともふさわしい裁判例を見い出し、その裁判例を根拠に交渉を開始しても、まったく反対の結論を導き出した裁判例を持ち出されれば交渉の根拠は吹っ飛び、自信がぐらつく、一番重要なことは、ある物的損害に関して、認否両方の裁判例を含め、「これ以外には、もうない」と安心して交渉することである。本書は、その安心を保証するものである。

 
評価損に関する有無を言わさぬ決定版。評価損に関する裁判例にもう全部眼を通し、全部検討したすごい本です。だから、もう四の五の言わせない。ごちゃごちゃ言うな。そういう趣旨の本です。この本を理解し、その手法を身につければ、保険会社は「へへぃ」とひれ伏すしかありません。水戸黄門の葵の印籠みたいに。
 
hirehusu

最新の「評価損」についての捉え方

海道氏が「評価損」という本を世に問うたのは平成14年です。あれからもう15年が経っています。裁判所は、現在「評価損」についてどのように考えているのでしょうか。まずはその点を確認しておきましょう。参考にしたのは「交通関係訴訟の実務」という本です。該当箇所の執筆者は中園浩一郎・東京高裁判事です。


 

技術上の評価損

修理をしても完全な原状回復ができず、機能や外観に何らかの欠陥が残存している場合には損害が認められる。事故によって、通常使用が可能とされる期間が短縮した場合も同様に考えられる。欠陥が残存している以上、事故車両の価値は事故前に比して低下していると考えられるからである。ただし、貨物運送用トラックなど、美観が多少損なわれたとしても、外観を重視しないため評価損が認められにくい。

取引上の評価損

修理し完全な原状回復された結果、欠陥が残存していない場合であっても、事故歴や修理歴のある車両は、中古車市場で価格低下する傾向がある。このことをどう評価するかについては、

不法行為による物の滅失、毀損に対する現実の損害賠償額は、特段の事情のない限り、滅失毀損当時の交換価格によりこれを定めるべきであるところ(最高裁 昭和32年1月31日判決)、中古車市場において事故歴や修理歴のある車両の価格が低下することは公知の事実ということができるし、また、評価損も、他の損害と同様、事故時に発生すると理解すれば、これを認めるに当たり、事故車両を売却して価格低下が具体的化・現実化していることまでは要しないと考えることができる。

このような立場から、現実の実務においては、一般論としては取引上の評価損を肯定した上で、具体的な事項に応じて、その有無・金額を判断している(P444)。

 

評価損の算定

事故当時の価格と修理後の価格との差額を直接認定する方法(神戸地裁 平成13年3月21日判決)、事故当時の価格の一定割合とする方法(大阪地裁 昭和48年6月8日判決)、修理費の一定割合とする方法等がある。

一般に、損害の程度が大きい場合は、修理費は高額になり、車両の価値の低下も大きくなり、修理費の金額と評価損は比例的な関係にあると考えられるから、実務における評価損の算定方法は、修理費の一定割合とされることが多い。

具体的な算定に当たっては、事故車両の車種、走行距離、初度登録からの期間、損傷の部位・程度(車体の骨格部分(中古車販売業者に自動車公正競争規約11条(10)、中古車に関する施行規則14条所定の修復歴の標示義務がある部分)か否か)、修理の内容・程度、事故当時の同一車種の時価、財団法人日本自動車査定協会の事故減価額証明書における査定(注)等諸般の事情を総合考慮して判断される。

(注)財団法人日本自動車査定協会の事故減価額証明書における査定額を評価損の額として認定した例:神戸地裁 平成11年1月27日判決、大阪地裁 平成12年9月6日判決、否認例:東京地裁 昭和61年4月25日判決、東京地裁 平成10年10月14日判決。(P445)

 
さらにもう一冊、新しい本で確認してみよう。

考え方としては、高級車では比較的新しいものについては(評価損が)認められる方向にあります。逆にいうと、一定の期間が経った大衆車については認められないということになるわけです。その空白部分の新しい大衆車や古くなった高級車はどうするかというのは、皆様で考えていただければよろしいのかなあと思います。

参考になるのが、赤い本2002年版です。当時の影浦裁判官の講演録では、これまでの判例の傾向を分析し、外国車又は国産人気車種で初度登録から5年以上、走行距離で6万キロメートル程度、国産車では3年以上、走行距離で4万キロメートル程度を経過すると評価損が認められにくい傾向にあるということです。初度登録からの期間、走行距離、損傷の部位、車種等を加味して評価損が認められるか否かを検討すべきだという裁判官からのコメントがありますので、だいたい裁判所はこういった考え方によっていると思います。

先ほど申し上げたように、このような相関関係で考えていただければいいと思います。評価損については、赤い本に書いてある点ですけれども、傾向としてはいくつかのパターンがあります。修理代の一定額について認めたものは、だいたい10パーセントから中には修理代と同じだけ認められるものもあるのですけれども、20~30パーセント程度の事例が多いと思います。あるいは自動車の時価の一定額、自動車の時価の何パーセントという形で損害を認めたものもあります。中には、事故時のあるべき時価と修理後の価格の差額が評価損だという考え方で認定している事例もあります。また、複合して判断しているものもあり、だいたいこのようなパターンに分かれると思います(「民事交通事故訴訟の実務Ⅱ」・P345)。

 

「相関関係で考えていただければいい」とあるけれど、そこが難しい。修理費の10%になるのはどういう場合か。30%になる場合はどういう場合か。どちらになるかで、結果は大違いだからです。

その相関関係を考える上で有益な本があります。2002年赤本と同じ年に発行された海道野守氏著「評価損」です。赤本よりやや遅れての発行です。こちらは、評価損に関する判例を片っ端から集めて、統計処理しているので、「相関関係」を知るにはたいへん有効な本です。

海道野守著「評価損」を徹底分析する


 
統計処理した結果が、以下です。
 
判決別評価損認否件数と認容率
判決年調査総件数認容件数否認件数認容率
昭和60年-63年151280.0%
平成元年-5年59401967.8%
平成6年-10年78483061.5%
平成11年-12年181583.3%
合計1701155567.6%
評価損を要求して提訴したうちの、「67.6%」が評価損を認められている。すなわち、評価損を請求したうちの3件のうち2件は認められていることになる。
 
 
自動車使用期間と認容率
使用期間調査件数認容件数否認件数認容率
10日以内77.8%
1か月以内131184.6%
6か月以内201680.0%
1年以内171588.2%
3年以内342779.4%
5年以内1050.0%
10年以内1145.5%
11年以上
50.0%
期間不明52272551.9%
合計1701155567.6%
評価損が、被害自動車の初度登録日から事故日までの経過期間に酔ってどのように影響を受けるかを示したものである。初度登録から3年以内であれば相当の高率で評価損が認められていることがわかる。また、11年以上経過したものでも50%認められているのは意外だった。なお、「期間不明」とは、裁判判決文に購入日や初度登録日が判明しないもののこと。
 
 
修理費率による認容率
修理費率調査件数認容件数否認件数認容率
5%以下60.0%
10%以下100.0%
20%以下1080.0%
30%以下151386.7%
40%以下75.0%
50%以下100.0%
60%以下80.0%
70%以下50.0%
80%以下100.0%
90%以下
100%以上
新車価格判明(58)(48)(10)(82.8%)
新車価格不明112674559.8%
合計1701155567.6%
たとえば高級外国車をちょっと修理しただけで修理費50万円にいってしまうが、国産の一般車の種理費50万円はかなりの損傷であるというように、修理費の大小だけでは損傷の大きさが決まらない。被害自動車の損傷の大きさが評価損認否にどのように影響しているのかを見るために、修理費と新車価格との比率を「修理費率」と名づけ、提示した。すなわち、修理費率=修理費÷新車価格×100である。消費税は計上していない。なお、「新車価格不明」とは、裁判例で新車価格(または購入価格)ないし修理費がわからないものの件数である。

なお、新車価格の代わりに事故当時の時価と比較する方法もあるが、時価は使用年数によって低下する変動指標であるため損傷程度を正確に表わすとは考えにくい。

上表を見るとわかることだが、標本数が少ないという問題があるかもしれないが、意外にも、損傷の大きさは、評価損認否にあまり影響していないことである。
 
 

認容理由分析
認容理由裁判件数比率
修理費から
損傷箇所から
2622.6%
事故歴車だから1714.8%
フェンダーに強度低下あり
フレームに歪みあり
色ムラ、色違いあり
エンジンに雑音あり
1311.3%
加害者が認めているから1210.4%
高級車だから108.7%
売却価格の低下7.0%
査定協会の査定7.0%
2週間の車両
7か月の車両
1年半の車両
4.3%
評価損の定義によるから1.7%
その他3.5%
理由の記載なし108.7%
合計115100.0%
裁判例が評価損を認容する理由はただ1つということは少なく、たいていはいくつかの理由を併記している。あえて、その中心的理由を選んで上表のとおり分類している。「修理費から」「損傷箇所から」を理由とするものは、いずれも損傷程度を評価損認容の判断基準とするものである。この理由が一番多い。ただし、損傷の大きさに評価損が影響されていないことは先に見た。「事故歴車」が第二なのにも注意したい。
 
 
否認理由分析
否認理由判例件数比率
欠陥が認められない
具体的な障害なし
性能、外観の低下なし
1730.9%
評価損の証拠なし1323.6%
損害程度から評価損なし10.9%
客観的価値減少の証明なし
価値の下落に具体性なし
10.9%
評価損なく売却した
下取価格に評価損の影響なし
7.3%
損害が現実化していない3.6%
6年経過の車両のため3.6%
特殊な外車のため1.8%
家族使用車のため1.8%
修理可能だから1.8%
その他3.6%
合計56100.0%
この表で注意したいのは「評価損の証拠なし」である。訴訟における立証方法の問題がからんでいると指摘されている。
 
 
車両を乗り続けた場合、売却した場合の認否率
被害者両の処分件数認容件数否認件数認容率
修理後使用中90573363.3%
修理後売却241562.5%
未修理売却151493.3%
その他の処分66.7%
不明322371.9%
合計1701155567.6%
事故後、被害車両がどのような処分をしたうえで評価損要求の裁判を起こしたかを分析したもの。「修理後使用中」とは、評価損の要求訴訟を起こした時点で、被害車両を修理し乗り続けている場合のことである。評価損が「現実化」していなくても認められていることを示している。
 
 
評価損の算出の仕方
算出方法認容件数比率
修理費基準5951.3%
総合勘案2824.3%
査定協会108.7%
売却金額6.1%
時価1.7%
その他7.8%
合計115100%
裁判所が採用した評価損算出基準で、もっとも多いのが「修理費基準」である。次いで多いが「総合勘案基準」である。これは、初度登録からの経過年数や高級乗用車、修理費用の大きさなど評価損を決定する要因を総合勘案して金額を決める方法である。「総合勘案基準」は、評価損発生の要因を列挙したうえで、いきなり評価損の金額が提示されるところに特徴があり、これは裁判官だからできる算出方法である。
 
 
修理費基準の割合
判例採用件数比率
1~9
10~191118.6%
20~291830.5%
30~392847.5%
40~493.4%
50~59
60以上
合計59100%
修理費の30%台がもっとも多い。同書では「裁判所では評価損算出方法として修理費の30%とすることが一般的であるといえる」としている。
 
 

まとめ

評価損一覧表  
番号判例車名使用期間 認否額(円)認容修理費(円)評価損/修理費(%)
大阪昭和60年12月27日プレジデント3年365400150036024.4
東京S61・4・10ルーチェ2か月否認600000
東京S61・4・25ベンツ280SE20日900000223370040.3
名古屋S61・5・30ワーゲン6か月13000044901029.0
大阪S61・10・14乗用車20000044000045.5
名古屋S61・10・31リンカーン19622301962230100
大阪S62・1・30ボルボ30分740700225880327.9
千葉・S62・7・15サンタナ8か月否認422520
横浜・S63・6・30ホンダ・ベルノ5か月152841103394014.8
10東京・S63・7・22ベンツ500SEC2か月500000184950027.0
11神戸・S63・8・18シボレーコルベット10年否認3620000
12東京・S63・10・28ベンツ280SL15年400000109900036.4
13福岡・S63・12・19ブルーバード7か月11500033500034.3
14東京・S63・12・22ベンツ8か月5000025847019.3
15東京・S63・12・23BMW745i約3年20000076244026.2
16大阪H1・1・17ジャガー5年5か月7000034390020.4
17東京H1・3・24ベンツ500SL否認531330
18横浜H1・6・27乗用車25200094385026.7
19東京H1・7・27ロータスエスプリ否認6438989
20名古屋H1・8・23乗用車22000073588029.9
21大阪H1・8・29BMWE635約1年24300081000030.0
22広島H1・12・27BMW翌日否認239000
23福岡小倉H2・3・22外車2週間13500040500033.3
24京都H2・8・21乗用車1年8か月5000015710031.8
25横浜H3・2・28ベンツ・ガルウィング15日前1500000491052530.5
26札幌H3・7・3乗用車10000012648407.9
27神戸H2・1・26ベンツ500SEL3年35000078200044.8
28東京H2・3・15乗用車否認
29岡山H2・5・31スカイライン200000140142014.3
30静岡H2・7・10乗用車18000094842019.0
31大阪H2・9・11フィアット2か月否認158490
32岡山H2・9・20ベンツ4500cc15年否認519315
33岡山H2・9・27乗用車360000120000030.0
34浦和H2・10・22乗用車6年5か月7600030887024.6
35名古屋H2・10・31BMW2年8か月348000189643618.4
36名古屋H2・12・21乗用車否認498355
37東京H3・2・7ソアラ3年1か月否認344504
38神戸H3・3・26クラウンロイヤルサルーン2年10か月450000120000037.5
39東京H3・4・25乗用車否認226800
40神戸H3・6・26乗用車否認35000
41東京H3・6・28乗用車9か月否認1328880
42東京H3・10・22乗用車否認2054587
43浦和H3・10・29ベンツ7か月33900096075835.3
44岡山H3・11・26ベンツ10日850000651920130.4
45大阪H3・12・16乗用車16279581397720.0
46岡山H4・2・17レージェンド6か月30000068907043.5
47京都H4・2・25乗用車13日25000084194329.7
48大分H4・2・26乗用車否認533140
49岡山H4・3・6乗用車3年5000025000020.0
50岡山H4・3・6乗用車3週間30000099172030.3
番号判例車名使用期間認否額(円)認容修理費(円)評価損/修理費(%)
51名古屋H4・3・25チェイサー8か月172800115200415.0
52神戸姫路H4・4・17乗用車15000019783307.6
53名古屋H4・4・17乗用車381000109138834.9
54横浜H4・4・27乗用車2年6か月14860274301020.0
55名古屋H4・6・26BMW5年600006428379.3
56神戸H4・8・21ワーゲン10か月212400141600015.0
57大阪H4・8・28乗用車9日579300190395530.4
58仙台H4・11・20外車4年否認721000
59京都H4・11・24ロイヤルサルーン11394049703022.9
60神戸H4・12・24グロリア410000108430037.8
61名古屋H4・12・25アルファロメオ2週間829711276570430.0
62大阪高裁H5・4・15乗用車否認1978330
63名古屋H5・6・11乗用車8か月297000809837
36.7
64東京H5・6・25高級乗用車2年5か月否認383889
65横浜H5・6・28乗用車10か月19766598832620.0
66大阪H5・8・27国産乗用車2年20000079310025.2
67岡山H5・9・16ベンツ5008年9か月595800198600030.0
68名古屋H5・10・8乗用車2年否認278100
69京都H5・10・27ベンツ500E1か月2000000691910728.9
70神戸H5・11・24ブルーバード3か月6000060204510.0
71神戸H5・11・29プレジデント否認788769
72大阪H5・12・22ベンツ6年否認1618521
73岡山H5・12・24乗用車1か月391496130498930.0
74大阪H6・4・26ベンツ1年630000209685330.0
75大阪H6・5・12ベンツ2年658000329000020.0
76大阪H6・6・21セルシオ2年11か月7000035089019.9
77東京H6・6・21ベンツ300E5か月49772074612958107.9
78東京H6・7・26ベントレー否認123600
79大阪H6・8・24トヨタ・ソアラ4か月否認346000
80東京H6・9・2乗用車3年否認610430
81岡山H6・9・6乗用車否認756636
82東京H6・9・13ベンツ4年6か月300000149573520.1
83大阪H6・9・20ベンツ1420000476000029.8
84大分H6・9・30乗用車300000
85岡山H6・10・25乗用車6日12300641002030.0
86岡山H6・11・10乗用車6436821456030.0
87神戸H6・11・24外車1年800000319300025.1
88岡山H7・1・31高級スポーツ車3か月256116128058020.0
89東京H7・2・14キャディラック1年11か月350000169669020.6
90岡山H7・2・20乗用車2週間否認604022
91東京H7・2・21ベンツ560SEL2年6か月971000268535436.2
92大阪H7・3・16クラウンワゴン3年11か月25202984009930.0
93東京H7・3・31デボネア1週間10000029584733.8
94横浜H7・4・6フェアレディ21000038604454.4
95浦和川越H7・4・20国産乗用車1年1か月否認774426
96岡山津山H7・4・25ポルシェ3年4か月1333557333389340.0
97東京H7・4・25ベンツ380SLC250000221061611.3
98東京H7・5・25ルーチェ1年5か月13682268411020.0
99大阪H7・6・30ベンツ280CE8年10000050876019.7
100横浜H7・7・31日産プリンス?299979999230.0
番号判例車名使用期間認否額(円)認容修理費(円)評価損/修理費(%)
101大阪・H7・8・18セルシオ600000199820030.0
102東京(1)H7・8・29クラウン3年否認1450000
103東京(2)H7・8・29アメリカトヨタセプター1か月否認1403663
104東京H7・9・19乗用車2か月5000048388710.3
105東京H7・10・17シルビア2か月否認869505
106東京(2)H7・12・24オペルアストラ前日
否認368420
107神戸H7・12・6ベンツE2012年6か月20000043260046.2
108東京(2)H7・12・27乗用車9か月6250017000003.7
109奈良H8・1・26乗用車704520234840030.0
110東京H8・1・31乗用車1年8か月134669134669410.0
111東京H8・2・14乗用車否認2144779
112東京(2)H8・3・6ベンツ600SEL1年11か月1500000570860026・3
113大阪H8・3・12乗用車2年2か月203510156372013.0
114大阪H8・6・7乗用車否認569855
115神戸H8・6・14乗用車20000068845229.1
116神戸H8・6・20乗用車否認87580
117東京H8・7・2フォードムスタング28年500005042319.9
118東京H8・9・4乗用車350000345000010.1
119神戸H8・9・20ベンツE5001か月530000177272329.9
120東京H8・9・27トヨタクラウンマジェスタ1か月半50000089368755.9
121東京H8・10・30ベンツ300E否認2050133
122名古屋H8・12・25乗用車1年半300000160000018.8
123大阪H9・1・17国産乗用車1年半否認133900
124名古屋H9・1・29乗用車3年6か月否認
125名古屋H9・1・31乗用車3か月600000226775126.5
126神戸H9・2・12乗用車4か月10791632375033.3
127名古屋H9・5・14カローラⅡ1年1か月否認436720
128神戸H9・5・27乗用車否認1211403
129大阪H9・6・26ジャガー否認1336180
130札幌H9・7・16国産乗用車4年6か月否認602910
131神戸H9・7・22外車1か月1300000384375433.8
132名古屋H9・9・24ジャガー2か月627000209087930.0
133神戸H9・10・15ベンツ5.98L6か月700000236900029.5
134神戸(2)H9・10・28乗用車6年否認1000000
135神戸H9・11・26ベンツ10か月780000260000030.0
136名古屋H9・11・28乗用車3年7か月否認1093685
137横浜H9・12・22外車9年500000262243819.1
138神戸H10・1・29ポルシェ6年7か月否認950000
139大阪H10・1・30乗用車否認
140東京H10・3・24ベンツ300CE5年8か月否認591700
141大阪H10・6・16乗用車否認
142名古屋H10・7・24サニースーパーサルン1年6か月5000049168310.2
143神戸H10・8・14ポルシェ19年否認519000
144東京H10・8・28ベンツE3203年170000166000010.2
145東京H10・8・31日産プレジデント1845000184597099.9
146大阪H10・9・11ベンツ4.97L否認1340000
147東京H10・10・14トヨタセルシオ2年9か月332028166014320.0
148名古屋H10・10・30乗用車否認291758
149大阪H10・11・5乗用車5日目2700016800016.1
150東京H10・12・9オデッセイ4473422367420.0
番号判例車名使用期間認否額(円)認容修理費(円)評価損/修理費(%)
151大阪H10・12・24外車7年否認656990
152名古屋H11・1・18国産ワンボックスカー9か月5336026680020.0
153神戸H11・1・27キャディラック2か月353000315000011.2
154札幌H11・1・28GMCサファリ5か月550000184101729.9
155千葉H11・1・29ベンツSL2ドア3年500000108029046.3
156名古屋H11・2・3ベンツ否認916850
157東京H11・6・15レンジローパー1年2か月380000190223220.0
158京都H11・7・6ベンツE32010か月65000091980070.7
159神戸H11・10・6BMW3年300000157500019.0
160神戸H12・1・27BMW9か月410000204828620.0
161東京H12・3・15ベンツS3202か月25000054679645.7
162名古屋H12・3・17セルシオ否認735000
163東京H12・3・29ベンツE-320T20分1350000339239239.8
164浦和H12・4・28ベンツ3年8か月150000105246714.3
165名古屋H12・6・23ポルシェ・カレラクーペ否認1223680
166東京八王子H12・8・16普通乗用車10800036445529.6
167大阪(1)H12・9・6フェラーリ30000096075031.2
168大阪(2)H12・9・6普通乗用車2年4か月373400230000016.2
169東京H13・3・27ホンダ・レジェント2年3か月10000099378810.1
番号追加判例車名使用期間認否額(円)認容修理費(円)評価損/修理費(%)
最高裁 昭和49年4月15日判決
鹿児島地裁昭和50年2月19日判決
東京地裁 昭和50年3月24日判決
東京地裁 昭和50年3月24日判決
京都地裁 昭和50年6月17日判決
名古屋地裁昭和50年6月18日判決
水戸地裁土浦支部 昭和50年9月9日判決
170東京地裁 昭和51年11月12日判決
171東京地裁 昭和51年1月23日判決
172大阪地裁 昭和51年3月25日判決
173東京地裁 昭和52年8月11日判決
181東京地裁 昭和52年6月2日判決
177大阪地裁 昭和52年7月29日判決
174東京地裁 昭和54年7月2日判決
176大阪地裁 昭和54年10月25日判決
175東京地裁 昭和56年12月21日判決
178神戸地裁 昭和58年3月30日判決
179大阪地裁 昭和58年9月27日判決
184大阪 昭和59年3月15日判決
180東京地裁 昭和59年3月16日判決
182京都地裁 昭和59年3月22日判決
183東京地裁 昭和60年3月27日判決
185大阪地裁 昭和60年6月21日判決
186神戸地裁 昭和61年12月19日判決
187京都 昭和62年9月28日判決
188横浜 昭和62年11月19日判決
189大阪 昭和62年10月6日判決
190京都 昭和63年9月20日判決
191東京地裁 昭和63年7月28日判決
192札幌 昭和63年11月16日判決
193京都 平成元年2月22日判決
194東京 平成2年4月27日判決
195京都 平成2年11月15日判決
196京都 平成3年5月29日判決
197岡山地裁 平成3年12月19日判決
198京都 平成4年8月25日判決
199神戸 平成5年1月13日判決
200福岡 平成5年1月26日判決
番号判例車名使用期間認否額(円)
認容修理費(円)評価損/修理費(%)
201大阪 平成5年5月11日判決
202京都 平成5年9月29日判決
203広島高裁岡山支部 平成5年2月25日判決
204大津地裁 平成5年11月30日判決
205名古屋 平成6年3月30日判決
206東京地裁 平成6年12月2日判決
207東京地裁 平成6年10月7日判決
208札幌地裁 平成7年5月26日判決
209東京高裁 平成7年6月21日判決
210名古屋地裁 平成9年4月21日判決
211横浜地裁 平成9年12月13日判決
212東京地裁 平成10年9月9日判決
213大阪地裁 平成10年2月20日判決
214仙台地裁 平成10年12月16日判決
215東京地裁 平成10年12月25日判決
東京地裁 平成12年11月28日判決
216東京地裁 平成12年11月21日判決
217京都地裁 平成12年11月21日判決
218長野地裁諏訪支部 平成12年11月14日判決
219広島高裁岡山支部 平成12年9月7日判決
220名古屋地裁 平成12年2月28日判決
221名古屋地裁 平成13年3月30日判決
222神戸地裁 平成13年3月21日判決
223東京地裁 平成13年1月31日判決
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(上記表は見にくいので、画像に変更するか、別の表に差し替えるつもりです。)

追加判例の評価損の判断内容

海道「評価損」は、昭和60年代から平成12年までの「評価損」に関する判例をほとんど網羅したものなのですが、若干漏れがあったので、こちらで追加しておきたい。

広島高裁岡山支部 平成5年2月25日判決
原告は、原告車購入代金850万円の1割の評価損を受けた旨主張するところ、前記認定事実によれば、原告は新車の原告車(ベンツ)を代金850万円で購入して10日間位経過後に本件事故に遭って損傷したものであるうえ、原告本人尋問の結果によると、原告は修理して1か月位経過した頃、原告車を550万円で他に処分したことが認められること等に徴すると、本件事故による評価損は原告主張の85万円を下らないものと認定するのが相当である。

 

京都地裁 平成2年11月15日判決
中古乗用車(車名不明)の格落ち損害が修理費の約1割認められた事例。
28万6000円の修理費。初度登録が昭和57年6月10日。事故は昭和60年12月8日。3年6か月。累積走行距離が3万8826キロ。

 

京都地裁 平成3年5月29日判決
初度登録後丸4年を経過した外国産乗用車であるから、新車と同等にみる必要はなく、外観に欠陥を生じたとしても、修理代の約20%を評価損とみるのが相当とされた事例。

原告車の販売価格が本件事故による損傷のため修理代金相当額15万8,400
円の減額となったことを認めるに足りる証拠はない。しかし、修理をしても、なお、外観若しくは機能に欠陥を生じて商品価値が下落するような場合には、交通事故による損害として、いわゆる評価損を認める余地がある。原告車は、初度登録は昭和58年8月、有効期限63年8月12日、累計走行粁68,210キロメートルであるから、新車と同等にみる必要はなく、外観に欠陥を生じたとしても、右認定の修理代などの約20%に該当する5万円を評価損とみるのが相当である。

 

東京地裁 平成2年4月27日判決
乗用車(マークⅡ)が75万円の修理費を要し、査定価額差24万円を格落ち損害として請求する右事案につき、機能、耐久力障害が明らかでなく、査定価額の減額をもって損害とは認められないとされ、請求が否定された事例。

原告は、修理後の本件車両の査定結果による減価額分相当24万6,000円の損害を被った旨主張する。(証拠略)は原告主張に合うようではあるが、原則として、修理によって原状回復がなされたものと認めるのが相当であるから、事故による修理があるからといって本件車両の使用価値、交換価値の減少が避けられなかったものとすることはできず、機能障害、耐久力障害等の具体的な障害の発生も明らかでないから、単に一般的な査定価額の減額をもって損害とは直ちに認められないし、他に本件車両の本件事故による具体的な障害にもとづく使用価値、交換価値等の減少による損害の現実的発生を認めるに足りる証拠はないので、原告の右主張は採用しない。

 

京都地裁 平成5年9月29日判決
新車1年半のBMW。258万円余の修理費。評価損が修理費の2割、51万円余認められた事例。

原告車は平成2年10月19日に登録されたBMW4ドアセダンの普通乗用自動車であり、本件事故当時の走行距離は1万2,010キロメートルであること、本件事故による損傷の修理費用は258万6,000円であることの各事実が認められ、これらの事実を総合して判断すると、本件事故による原告車の評価損は、修理費用の2割に相当する51万7,200円と認めるのが相当である。

 

福岡地裁 平成5年1月26日判決
日査協による減価額(不明)で格落ち損害が認められた事例。昭和41年式の国産クラシックカーが全損となった事案の損害額認定につき、市場の販売価格の把握が困難で、5か月前の購入価額と修理・登録費用の合計額が損害とされた。

 

京都地裁 平成4年8月25日判決
新車登録後16日目に事故にあい、676万円余の修理費損害を負った事案につき、評価額は修理費の2割、135万円が相当とされた事例。ポルシェ。

 

京都地裁 平成元年2月22日判決
事故前年登録、約7万キロ走行のベンツ。格落ちが約24万円認められた事例。
修理費用は117万5,980円。

事故前年登録、約7万キロ走行のベンツが破損し、約190万円の修理費見積が 出されている右事案につき、一部分の部品取替が必要であったと認められないとされた事例。右修理費は全塗装として50万円の塗装代が計上されていたが、必要性に問題があり20万円を超える分は損害と認められないとされた事例。

財団法人日本自動車査定協会は、原告車(昭和61年式メルセデスベンツ、走行距離6万9,051キロメートル)の本件事故による減価額を40万0,560円と見積ったことが認められる。しかしながら、右金額は前記修理見積書を前提としてのものであると推認されるところ、右見積書には本件事故に伴う修理とは認められないものも存するから、同部位の修理がないものとしての減価額を算定する必要があるところ、その額は必ずしも明らかではないが、左記計算式のとおり、右減価額を本件事故に伴う修理金額とそうでない金額に按分し、前者の金額をもって本件事故に伴う減価額とするのが相当であり、同金額は24万7,029円となる。

 

神戸地裁 平成5年1月13日判決
1077万円で売買契約したベンツ300E-24を、販売会社が仮ナンバーで陸運局への移送中に事故で損傷し、修理後に530万円で売却したため、その差額である477万円を評価損として請求する事案で、850万円で修理した1割に相当する85万円を評価損と認めた。累積走行距離は382㌔。

 
上記「判例要旨」中に、「850万円で修理した1割に相当する」とあるが、認容修理費用78万6800円であるから、間違いである。正確には、修理費ではなく車の時価額である。詳細は以下のとおり。

一般に、評価損というのは、事故により損傷した車両は、必要な修理と復元がされた場合であっても、技術上の限界から外観や機能が事故前よりも低下する可能性があるとして事故歴によって商品価値の下落が見込まれることに基づき、事故に遭っていない車両よりも減価していると認められる場合に生ずるものと解されている。

これを本件についてみるに、原告らは、評価損として金36万7000円を上回
ることはない旨主張し、これに沿うものとして甲2号証を提出するが、甲2号証に
よると、財団法人日本自動車査定協会兵庫県支所は、平成3年6月、本件事故当日
における被告車両の写真と修理見積書(修理費用金50万9400円のもの)に基
づき、事故損傷による被告車両の減価額を金36万7000円と査定したことが認められる。

同協会の性格等にかんがみると、この査定結果は一応尊重すべきものとは考えら
れるが、証拠(略)によると、同協会の評価損の査定方法については、事故車両の
時価と修理費が重要な基礎数値とされていることが認められるところ、甲2号証の
記載だけでは本件事故当時における被告車両の価格をどのような方法でいくらと評
価したかなどの点が明らかでないばかりか、前記認定、説示のところから明らかな
ように被告車両の修理費用につき金50万9400円を前提としている点で問題が
あるといわなければならず、これらの事情に照らすと、右査定額をそのまま被告車
両の評価損として直ちに採用することは相当でないというべきである。

そして、輸入外車の販売等を業としている被告にとって、被告車両は自己使用を目的として所有していたものではなく、販売先の顧客に納品する直前の商品車両であったのであり、本件事故のため今後は被告車両を新車として販売することができなくなったことのほか、前記認定のような被告車両の本件事故当時における価格や車種、未登録であって仮ナンバーで走行中に本件事故に遭ったことなどの諸事情を考えると、被告車両は、高級輸入新車としての商品価値を失い、通常の中古車が事故歴によって受けるところの減価を相当上回る減価が生じたものと推認することは困難ではなく、そして、その減価額については、本件事故によって生じた損傷の部位と程度、これに対して福頼によってされた相当丁寧な修理の内容と復元状況等を
も併せ考えると、金85万円(事故当時の価格の1割程度に相当)をもって相当であると認めるべきである。

 

大阪地裁 平成5年5月11日判決
評価損は、認容修理費226万5750円の2割程度である45万円が相当であるとした事案。。ベンツ。

本件ベンツは、初度登録年月が昭和62年3月の車両であり(平成元年8月事故発生)、本件事故当時の時価は800万円程度であった。本件べンツは、本件事故により、車体後部左側、左後部側面に損傷を受けたが、その損傷の程度は、軽度とはいえないものの、それほど重大なものではなかった。

 

名古屋地裁 平成6年3月30日判決
新車納車後8日目の国産乗用車(日産スカイライン・車両価格442万4,000円)の格落損害が修理費の35%、43万5,390円認められた事例。修理費124万3,972円。

 

大津地裁 平成5年11月30日判決
時価280万円程度の車両が損壊し、修理費130万円を要する事案で、フレームを全部取り替えても50%の可能性で支障が見込まれること、走行中の騒音も大きく、ハンドルが振れたり、タイヤの走行具合も悪くなる可能性も考えられること等から、評価損を修理費の50%とみるのが相当と65万円と認めた事案。

 

東京地裁 平成6年10月7日判決
登録後3か月、走行量3000キロの乗用車の全損事案。

原告Aが評価損として主張するのは、原告車の購入価格180万7,000円に減価償却率0.908を乗じた数字の範囲内である162万5,000円をもって本件事故当時における原告車の価格とし、これから車両保険により填補された150万円を控除したものを損害とするものであるが、右主張にかかる原告車の購入価格及び減価償却率に関する証拠は全くないのであって、原告Aの右主張は採用できないといわねばならない。

 
全損なのだから、評価損の請求自体できないはずなのに、裁判所は立証不十分だとしている。
 

名古屋地裁 平成9年4月21日判決
修理費の2割を認容。乗用車。

控訴人車の損傷部分はボンネット、フロントバンパー、ヘッドライト等であり、車両の主要な骨格部分は含まれていないこと、その損傷の程度も重大なものではなかったこと、損傷部分の大部分は交換されていること、したがって、修理後の控訴人車には性能や外観の低下は残存しないことが認められる。もっとも、証拠(略)によれば、控訴人車は、本件事故当時、購入後1年未満の新車であって、走行距離も約1,800キロメートルに過ぎなかったことが認められ、これらの事情に照らすと、本件事故により低下したと考えられる控訴人車の中古車としての交換価値ついては、評価損として認めるのが相当であり、その金額は前記修理代金の約2割に相当する12万円と認めるのが相当である。

 

東京地裁 平成6年12月2日判決
2年目のベンツ300CEが追突され、修理費58万円余で121万円余の格落ち損害を請求する事案で、修理費の2割、11万円余が認められた事案。使用期間は2年3か月。事故日平成5年12月。

被害車は、平成3年10月新車登録されたメルセデス・ベンツであり、本件事故まで約2年余りが経過しており、この間の走行距離は7万8、000キロ㍍であったこと、被害車は本件事故により、主としてその外面に損傷を受け、部品の交換、板金、部分的な塗装等が必要となったものの、損傷はその駆動部分には及んでいないこと、本件事故以前、被害車の買替えが検討されており、平成5年11月11日の「ヤナセ」の査定によれば、被害車の下取価格は269万5、000円であったこと、この時点での被害車の走行距離は約7万キロ㍍余りであったこと、本件事故後である平成6年1月11日のヤナセの査定によれば、被害車の下取価格は147万6、000円であったことなどが認められる。

原告は、右認定のヤナセの本件事故前後の査定価格の差額をもって評価損であると主張する。確かに、右認定の各事実によれば、本件事故により、被害車に評価損が発生したことは否定できないが、ヤナセの下取価格査定の根拠は必ずしも明確でない上、本件事故前の査定価格は買替えを前提としたものと推測されること、本件事故前の査定時から本件事故時まで、さらにかなり走行距離が増加していることなどに照らせば、ヤナセによる本件事故前後の査定価格の差額をもって、評価損の額ということはできず、原告の主張は理由がない。

結局、被害車の購入時期、本件事故までの被害車の走行距離、被害車の損傷の程度などを総合的に考慮すると、評価損として、修理費用の20%にあたる11万6、583円が相当と認められる。

 

札幌地裁 平成7年5月26日判決
値引で300万円の新車普通乗用自動車(レッドパールメタリック)が約1週間後、約300㌔㍍走行時に衝突し、約63万円の修理費損害を負い、70万円の格落ち損害を請求する事案で、修理せずに約252万円で下取りに出し、別途新車に入替えており、登録落ちを超えて評価損が発生したと認める証拠はないと否認された。

 

東京地裁 平成10年9月9日判決
登録9か月国産上級乗用車。修理費79万6,613円、評価損25万円。

すでに認定した被害車両の損傷状態、修理の内訳及び費用からすると、車両の本質的構造部分に重大な損傷が生じたとは考えにくく(少なくとも、それを認めるに足りる証拠はない。)、修理によって原状回復がなされれば、機能及び外観ともに本件事故前の状態に復した可能性が高いということができる。

しかしながら、被害車両は、平成7年9月に登録されたトヨタセルシオ(型式E-UCF20-AEPGK+A)であり、被害車両と同種同形式の新車の価格が600万円を超える高級車であること、本件事故に遭うまでには登録後9か月が経過し、1万1,513㌔㍍を走行していたにすぎないことなどの事情に照らすと、事故歴あるいは修理歴のあることにより、ある程度商品価値が下落するとが見込まれるということができるのであって、右の諸事情を総合すれば、その評価損としては、修理費の約30%に相当する25万円を認めるのが相当である。

 

大阪地裁 平成10年2月20日判決
2年半前700万円で購入した国産高級乗用車(シーマ)が後部に149万円余の修理費損害を負い、41万円余の評価損を請求した事案で、下取り価額の下落で現実に損害を蒙った事実もないと否認された事案。

評価損は修理をしても、なお機能に欠陥を生じるなど客観的価値の減少が認められる場合に、その減少分を損害とするものと解されるところ、1の認定事実によれば、原告車が修理後においても客観的価値の減少があったと認めることはできない。

日本自動車査定協会作成の事故減額証明書には、原告車に41万6,900円の減額が生じた旨の記載があるものの、右証明書は、中古車の商品価値の差を算定したものと考えられるところ、原告は中古車を販売する者ではなく、また、買換えの際、下取り価額の下落によって現実に損害を蒙ったというような事実も認められない本件においては、右証拠は原告に評価損が生じたと認める根拠とはなりえないというべきである。

 

横浜地裁 平成9年12月13日判決
9年前初度登録時3,500万円、現在700万円の原告所有の乗用車は、平成8年2月14日午後4時ころ、ガソリンスタンドで洗車作業中、被告従業員がレバーに触れて暴走、前後部を損壊したため、修理費、格落ち、代車料等784万9,126円を求めて訴えを提起した。

裁判所は、原告主張の見積金額を否認し、損保アジャスター算定の見積りで修理費を認定し、9年近く経過乗用車の格落ちでは、損害が車の主要部分ではなく「外観及び性能の低下が残存するとは考えられない」としたが、「事故歴による交換価値の下落は、原告車両の初年度登録時期(注・9年前)、修理内容(注・主要部分なく修理費62万円)などを勘案して、修理額の約20%に相当する50万円と認める」と認定した。

 

仙台地裁 平成10年12月16日判決
初度登録4年4か月、事故時の市場価格380万円のイギリス製乗用車が追突され、原状回復としては可能であるが、原告と打ち合せせずパネルのカット交換を実
施したが精度が悪く、事故歴が一目瞭然の事案で、完全修理の費用130万円の半
額65万円が評価損とされた。

 

東京地裁 平成10年12月25日判決
510万円で売却済みのポルシェが修理費損害63万円余を負い、評価損と納期遅れによる値引損40万円が認められた。

 

岡山地裁 平成3年12月19日判決
被告は原告に対し被告車の修理費用の損害24万3690円、評価損7万3107円、代車料金17万7675円の合計49万4472円の損害賠償債権が存在する旨主張していることは当事者間に争いがないが、前記のとおり本件事故について原告に過失がない以上、右損害賠償債権が存在しないことは明らかである。

 

東京高裁 平成7年6月21日判決
購入後3年近くで本件事故に遭い、その後1年以上経て売却された被害車につき、事故前に転売予定があったことや、事故によって機能的な欠陥や外観上の欠陥が残存したとはいえないことから、被害車の評価損が否定された。

 

名古屋地裁 平成12年2月28日判決
初度登録1年4か月経過し、走行距離1万1800㌔㍍で時価172万円の3ナンバーのモノコックボディー国産車の損傷につき、修理費88万余円で新車と買い替えて買換損害を請求するも、物理的全損・経済的全損がいずれも否認され、修理費・レッカー代・評価損(20万円)の合計114万余円が損害とされた事例。なお修理費は「88万9、207円」。

なお、被害車両はモノコックボディー車(フロア、ピラー、ルーフ等各構成体を溶接し、一体化したボディー構造を有する車両)であるが、その骨格というべき右フロントピラー、右サイドシルパネル、右フロントインサイドシル、右リヤインナパネル、ルーフパネル、フロントフロア、リヤフロアパネル、右リヤアウトサイドパネルに損傷があり、右リヤサイドメンバーにも損傷が及び、曲がった状態となっていた。

なお、本件は、物理的および経済的全損主張以外に、社会的全損の主張があった。すなわち、社会通念上の買替えの相当性、物理的全損、経済的全損の事情が本件において認められなくても、以下の事情から被害車両の買替えが必要であった。ア 車体の本質的構造部分についての損傷であったこと。イ以下略のため不明。

 

広島高裁岡山支部 平成12年9月7日判決
国産乗用車(購入価格140万円)で新車3か月後、3、700㌔㍍走行の乗用車が約59万円の修理費損害を負った事案で、評価損は「10万円が相当」と認めた。

 

長野地裁諏訪支部 平成12年11月14日判決
交通事故で自動車を修理したことにより、その商品としての価値が明らかに下落した場合には、損害として賠償請求を求めることが出来ると解されるところ、本件
自動車の品質、グレードあるいは破損状況等(証拠略)から、いわゆる格落ち損と
して、修理費の3割相当をもってAの被った損害と判断する。本件の修理費は101万0、880円(部品代62万9、890円及び工賃38万0、990円)であるから(証拠略)、その3割相当の30万3、264円をもって損害と認める。車名不明。購入価格は本体価額で348万円。なお、相手側は「レーサー用車両の所有者はB(死亡運転者の妻)である上、同車両を原告側で保有している限り、経済上の損失は何ら発生していない」と主張していた。

 

東京地裁 平成12年11月21日判決
初度登録1年半、1万0500㌔㍍走行の事故前時価348万円のBMWが損傷し、修理費102万円を要した後、査定価格249万円で差額98万円を評価損として請求する事案で、将来における買い換えの可能性を前提に評価損を決定するものと、修理費の30%の評価損を認定した。(30万6、605円)。

被告の主張は、本件車両の修理箇所によれば、いずれも骨格部分以外の車両の周辺部分の損傷に止まっており、かつ損傷部分についても部品の多くが交換されていることからすれば、機能等における原状回復はなされたといえる。また、原告の提出する証拠によっては、取引上の評価損が生じているか否か明らかではないから、取引上の評価損も認められない。

裁判所の判断。
中古車市場において事故があったことのみを理由に一般的に減価されることは経験則上明らかであるから、事故による評価損は、事故による損傷の程度、初度登録から経過した年数等の具体的事実を検討した上で認められる場合がある。

この点、右1で認定した事実及び(証拠略)によれば、原告車両につき、フレーム等の車両骨格部分につき損傷があったものとは認められないから、被害者の損害拡大防止義務の観点からして、事故後直ちに車両を買い換えることを被告らに要求できるものとは解されない。しかし、直ちに車両の買い換えが認められないとしても、我が国の慣行からして、車検時期には一般に車両の買い換えが検討されることが多いから、将来における買い換えの可能性を前提に評価損を決定することができる。

 本件においては、右1で認定した事実を前提にすると、修理費の30%に相当す
る30万6、605円の評価損を認めるのが相当である。


 

神戸地裁 平成13年3月21日判決
8年前製造のベンツ500SLオープンカーが損壊した事案で、買い換え予定の事故前の下取値は買い手がいることから551万円の車両損害と認めた。

査定協会が445万円と査定する時価額に対し、修理費210万円を要するも、雨漏りなどが生じる本件車の下取値が301万円であることから、455万円と301万円の差額153万円が評価損と認定された。

すなわち、評価損は、「修理後も雨漏りがしており…日本では修理が不可能で」あること、事故前車両入替え予定に基づく下取り価格は「買い手がいたため多少高め」の551万9、900円、「査定協会の査定によれば…455万円」で、全塗装後の「事故差損査定の目的で評価すると301万5、000円」、「全塗装していることを考慮すると、455万円と301万5、000円との差額153万5、000円を評価損と認める」と認定した。

 

名古屋地裁 平成13年3月30日判決
1年3か月前に約451万円で購入し、250万円の補修を行なう初度登録6年のベンツが事故で損傷し、340万円の修理費を要した。当該ベンツが後日盗難に遭い、契約する保険会社から時価額相当の保険金が支払われた事案。初度登録平成4年1月。事故日は平成10年5月。

右保険金が支払われているからと言って、事後の事情により評価損が不発生となることはないと35万円の評価損が認められた。

 

京都地裁 平成12年11月21日判決
初度登録2年10か月、2万6、631㌔㍍走行のベンツE50AMGが損傷し、時価1、000万円が事故後480万円となり、520万円の評価損を請求する事案で、損傷も「骨格…にまで及ぶものではなく、機能的欠陥はなく、原状回復しているが「事故歴ないし修理歴のあることにより商品価値の下落が見込まれる」と修理費139万余円の約2割である30万円の評価損が認められた事案。

 

東京地裁 平成13年1月31日判決
普通乗用車。修理費8万3、737円。評価損については否認。被告車が修理してもなお回復し得ない部分が残存するのかどうか、経済的な価値が下落するのかどうか、それが具体的に顕在化したのかどうか等の事情を検討するための証拠がなく、右損害に係る主張は採用できない。

 

東京地裁 平成12年11月28日判決
評価損否認。修理費は84万8、264円。

原告は、評価損が発生したとして(証拠略)を提出している。しかし、原告車両は、本件事故時において、初度登録から2年以上を経過し、走行距離も5万3、000㌔㍍を超える(証拠略)ものであることのほか、本件において修理をした部分及び程度を勘案すれば、原告車両の車種がクラウンという国産では高級車であることを考慮しても、評価損が発生したと認めるのは相当でない。((証拠略)は、東京トヨペットの査定であり、信用性が特に高いとは認められない。)

 
相談者からの〆が本日(1/8)だったため、慌てて書いたところがある。ぜひ、判例に直接当たって確認してほしい。

判例の読み方

判例の読み方にはある種のパターンがあるというか、コツがあるので、覚えてください。

主文

判決の結論部分。ここはテキトウでいいです。

 

事実

被害者が何を主張したくて裁判にしたのか、それに対して加害者はどんな反論をしているのかが書かれています。この部分を省略している書き方もあります。

 

交通事故の内容

交通事故が発生した日時、場所など。ここで事故の内容の概要を知ることができます。

 

責任

どの相手に、どのような責任があるのかを被害者が主張する部分です。

 

被害者の損害額

被害者が要求する損害額とその理由を書いた部分です。

 

加害者の認否

被害者の要求に対して、加害者が認めるところ、否認するところ、反論するところを書いた部分です。

 
ここまでは、事故当事者の一方的な主張とそれに対する反論部分です。これからが裁判所の結論部分。ここがいちばん大切です。

事故の態様

事故状況を裁判所が確認する部分です。この確認が過失割合を導き出します。

 

損害額

裁判所が認定した被害者の損害額とその理由部分です。

 

過失割合

先に確認した事故状況から、被害者、加害者の過失割合を判断する部分と、過失相殺したあと、最終的に加害者が被害者に支払う金額を示した部分です。

 

結語

全体の結論部分。

 
繰り返しますが、いちばん重要なところは裁判所の判断部分です。被害者の要求をなぜ認めたのか、あるいは否認したのかという理由を確認して、あなたの要求する損害額や過失割合に応用できるかどうか検討してください。とくに、被害者の損害を要求どおり認めた理由や、減額した理由が大切です。その中に、あなたが要求できる損害項目や損害額の正解があります。

平成13年以降の評価損に関する判例をどのようにして集めるか

海道「評価損」の唯一の欠点は、平成13年以降についてフォローされていないことです。この本が出版されたのが平成14年なのだから、それもやむをえません。その後、続編が出版されるだろうと待っているのですが、現時点ではまだ出版されていません。いずれ出版されるのでしょうが、現に評価損で争っている人は、それまで待てない。だったら、自分で調べて続編を書いてしまおうと思ったしだいです。テマヒマはかかるものの、手法は海道氏の本で学ばさせていただいたので、難易度の高い休車損害調査や海外盗難調査(注)などと比べて、ぼくには楽勝な調査なようにも思えました。

(注)海外盗難調査については、「保険調査は、どこまでやるのか」で触れたことがある。クモをつかむようなところから始まって、どれほどたいへんな調査なのかの一端を記事にしているので、ぜひご覧ください。「楽勝」としたことが理解されよう。

実をいうと、調査員時代、この本のすばらしさにいたく感銘を受けて、ぼくも判例を手あたりしだい集め、分析したことがあります。信号無視、いわゆる青・青主張の事故の裁判例です。裁判所は青・青主張の事故をどのようにして解決しているのか、個人的に興味があったことと、当時そういう事故調査を何度も担当していて、頭を抱えていたからです。海道氏の手法を真似し、統計的分析を加えて、いままで気づかなかったことが明らかになるのではないだろうかと思ったからです。しかし、このたくらみはみごとに挫折しました。理由はかんたんです。入手可能な判例を集めたけれど、ぼく個人の力では全部を集めることができず限界がありました。

もし本気で全部を集めようとしたら、各裁判所まで出向かないといけません。そして、せっかく出向いても判例のコピーは許してくれません。コピーどころかメモすら許さない。ぼくのような記憶力の悪い者に覚えられるわけないじゃありませんか。すべての判例を入手するのはこのように物理的に不可能だし、せめて公刊されている判例集から確認するとしても、個人では、財力のある人は別にして全部をそろえるのはムリでした。

しかし、あの当時と違って現在は判例検索サービスというたいへん便利のものがあります。海道「評価損」の判例は、「交通事故民事裁判例集」「判例時報」「判例タイムズ」「自動車保険ジャーナル」の4つから集められています。ネットでこの4つをカバーしている判例検索サービスがないかどうか調べてみたのですが、他の3つはあるものの「自動車保険ジャーナル」が抜けている。最初の3つをカバーしているサービスの料金が月に2万数千円です。

では、「自動車保険ジャーナル」はどうしたらいいのだろうか。評価損に関するすべての判例を確認したと言い切るためにはこちらの確認も欠かせません。こちらは単独で利用するしかないらしいのですが、2年ほど前に「自動車保険ジャーナル」社に電話したことがあって、そのときは、なんと、年間のリース契約だということで、それも40万円とか50万円とかしました。いずれにしろ、ぼくのような貧乏人でかつボランティアでやっている者には、とても手の届くような金額ではありません。判例検索サービスの利用はあきらめて、全部は無理ですが、現状、ネットなどでひとつひとつ拾っていくしかありません。

読者の方で何かいい方法があるようでしたら、教えてください。石川県内の図書館情報も確認しました。たとえば地元の金沢大学図書館とかで判例検索のサービスが受けられないかどうか調べてみましたが、部外者ではムリっぽいですし、可能だったとしても自宅から近いというわけでもありません。数日で終わるならともかく、その時間的余裕が、いまのぼくにはありません。

平成13年以降の評価損に関する判例・裁定例紹介

東京地裁平成13年1月25日判決 三菱GTO。初度登録から2年。修理費の30%。

 

岡山地裁 平成18年1月19日判決 ホンダステップワゴン。初度登録から2年10月。修理見積額の20%。

 

名古屋地裁 平成22年7月29日判決 トヨタアルファードG・MS。初度登録から3年6月。修理費の約10%。

 

東京地裁 平成23年11月25日判決 日産GTRプレミアムエディション。初度登録から3月。修理費の50%。

「評価損」に関する誤解

その1「骨格部分に被害が及んでいない」と認められない

「フレーム等車体の重要本質的構造部分が、事故によって重大な損傷を受けた場合とは根本的に異なり」という書き方を判例を読んでいるとときどき見かけるので、気になった。つまり、

本質的構造部分が重大な損傷を受けた場合にだけ評価損が発生して、そこまでの損傷を受けない場合には評価損が発生しないかのような反論をしている点と、本質的構造部分が重大な損傷を受けない場合には、機能的な欠陥が残らないまでに修復が可能であり、美観上も完全復元できるとする点である。

「フレーム等車体の重要な本質的構造部分が重大な損傷を受けた場合」とは、最高裁 昭和49年4月15日判決によって定義された被害車両を買い替えすることが社会通念上相当と認められるための要件の1つである。したがって、・・・「フレーム等車体の重要な本質的構造部分が重大な損傷を受けた場合」には、・・・修理をしないで車両を売却して新しい車両を購入することができる。車両を買い替えできれば、ここで問題にしている修理をしても完全に修復できないため生じる評価損の発生する余地がない・・・

修理によっても機能的欠陥が残り、美観の回復ができないのは、本質的構造部分が重大な損傷を受けた場合だけに限定することに間違いがある。本質的構造部分が重大な損傷を受けなくても塗装の色ムラが生じたり、風切り音が発生したりすることが経験上明らかである「評価損」P27)。

評価損立証資料の集め方

日本自動車査定協会減価証明に対する評価

評価損の実態を正確に表わしていないとされ、実態より低めに算出されているとの批判が裁判実務の大勢です(海道「評価損」より)。たとえば、浦和地裁 平成3年10月29日判決では、

日本自動車査定協会の査定は、一般的に実際の市場価格よりかなり低い価格を想定してなされるものとされており、本件車両の銘柄、事故時の想定される残存価格、修理箇所、修理費等に照らし、同協会の査定分を更に減額すべき事情も認められないから、同査定分を本件車両の減価分と認めることとする

 
日本自動車査定協会減価証明に対する評価が評価損として高額だから否定しているのではなくて、低額だから否定しているのです。したがって、被害者がその低い評価損額でいいと主張するなら、裁判所もその請求をそのまま認めています。

浦和地裁 平成2年10月22日判決も同旨です。すなわち、日本自動車査定協会の査定額7万6000円は、裁判所認容修理費に対し24.6%に相当するが、一般に修理費の30%とされる基準からは低い評価損額だったため、その請求をそのまま認めています。
 
先に「交通関係訴訟の実務」から引用した、日本自動車査定協会の事故減価額証明書における査定額を評価損の額として否認した裁判例について検討してみます。「東京地裁 昭和61年4月25日判決」では、査定協会の査定額では評価損として低いから否定しています。評価損は、査定協会の査定額よりも大きいことを示したことに意義があるとまで言っていますね。

格落損(評価損)とは、損傷車両に対して充分な修理がなされた場合であっても、修理後の車両価格は、事故前の価格を下回ることをいうのであるが、a修理技術上の限界から、顕在的に、自動車の性能、外観等が、事故前より低下すること、b事故による衝撃のために、車体、各種部品等に負担がかかり、修理後間もなくは不具合がなくとも経年的に不具合の発生することが起こりやすくなること、c修理の後も隠れた損傷があるかも知れないとの懸念が残ること、d事故にあったということで縁起が悪いということで嫌われる傾向にあること等の諸点により中古車市場の価格が事故にあっていない車両よりも減価することをいうものであると解せられるところ、同証人の証言によれば、査定協会の査定は、全く同じ車両があったとして、事故にあったものと、事故にあわないものとを同じ場所で販売した場合、事故のことを知らない顧客がどれだけの価格差で購入するかということの評価であり、また査定の方法は、査定の担当者が、30分から1時間くらい現車を見て行うものであると認められる。そうすると、査定協会の査定は、前記の諸点のうち、bからdまでの考慮が無視されるか、あるいは、過小評価されているものであると認められる。事故車は、事故の状況を説明してそれを顧客に理解させたうえで販売すべきものであり、査定協会の査定もまた、本件に限っていえば、直ちに採用することはできない(ただし、これよりも格落損が大きいということでは意味がある。)。

 
もうひとつの否認例である「東京地裁平成10年10月14日判決」についてですが、は以下のようになっていました。こちらは、査定協会の査定額が修理費の31%だったケースです。

●初年度登録~事故発生日までの経過年数: 約2年9か月
●走行距離数:不明
●車種:トヨタ セルシオ
●修理費:約166万円(修復履歴表示義務の生じる骨格(フレーム修正)にまで損傷波及)
●査定協会の査定:51万5000円の減価
●評価損:33万2028円(修理費の2割)

 
もうひとつ否認例を加えます。「東京地裁 平成7年9月19日判決」です。

財団法人日本自動車査定協会東京都支所の証明書(甲5)には、被害車は本件事故により平成4年12月10日現在で17万4000円の減価があったこと、事故減価とは事故車と無事故車との商品価値の差を算定するとしていること、算定方法としては復元修理以前の事故現状における損傷個所ならびにその損傷度合を査定し、部品、工賃の復元費用を勘案して算定するもの(事故現状車)と事故復元後の痕跡が無事故車と比較してどの程度の商品価値に差が生ずるかを算定するもの(事故復元車)があることがそれぞれ記載されているが、右減価額が右算定方法をどのように適用して算定したもなのか不明であり直ちに右記載の減価額を採用することできない。

そして、本件証拠上、修理後にもなお外観や機能に欠陥が生じていたことは確定することはできないが、事故歴のある車はそれだけで評価が下がることは右証明書(甲5)によっても明らかなこと、原告が被害車を購入したのは本件事故の約2か月前であったこと(甲3、原告本人)を考慮し、被害車の修理費48万3887円(当事者間に争いがない。)の約1割である5万円をもって本件事故と因果関係のある評価損と認める。

 
査定協会の査定は算定方法が不明として採用していない。これは、査定協会の減価証明書が持つ根本的な欠陥だとの指摘があります。

修理費:483887円 
比率:36.0%

となり、算定方法を明示する必要があるという批判です。代わりに、当判例は修理費の10%を評価損として認定している。

問題は、当判決の査定協会にたいする批判はごもっともなのだけれど、立場を代えて、自分が算定するときは算定方法や説明を示さないまま、修理費の10%としていることです。どうして、30%でなくて、あるいは20%でなくて、10%なのか。他人を説明不足と批判しているくせに、自分は説明もしないで評価損額を決めているという根本的問題が当該判例にはあるといえます。裁判官は、「総合的に勘案して」だとか、「弁論の全趣旨から」だとかと言って、「ただなんとなく」で決められる特権があるからそれでもいいのかもしれませんが、ぼくらはそれを真似するわけにもいきません。
 
【17・03・20追記】まだ完成しておらず途中のままになっており、いずれ書き上げるさせるつもりです。申し訳ありません。
 

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石川県加賀市
電話番号:090-1314-0234

当事務所の立場

突然、交通事故にあわれた被害者は、怪我をされたり、車を破損などされたりして大変なことです。その損害の賠償をしてもらうために、これから、加害者そして加害者側の損保担当者を相手に示談交渉を進めなければならなくなります。しかし、交通事故は人生でそう何度も経験するわけではありません。なにをどのようにしたらいいのか途方に暮れてしまうのがふつうです。

ところが、事故被害者がまず相手にするのが加害者であり、そして、実際は加害者側損保の担当者です。損保の担当者はそのことで生計を立てているいわばプロであり、百戦錬磨で鍛えた知識と経験があります。かたや、知識も経験もほとんどない事故被害者。そんな素人がプロ相手にどのように交渉していったらいいのでしょうか。

交通事故に詳しい弁護士が知人にいるような幸運な方は別にして、たいていの方は途方に暮れてしまうことでしょう。一昔前は、素人とプロの交渉ごとということにふつうはなって、プロの思い描くストーリーどおりに押し切られるのがふつうでした。しかし、ネットが発達した現在、示談交渉を進める上での情報がネットを検索すればあふれかえっています。が、その情報は正しいものもあれば正しくないものもある。玉石混淆です。それらの情報に接した事故被害者にとって、どの情報が正しくて信頼できるのかがまずわかりづらいし、自分だけでは手に負えなくて、調査や交渉ごとをだれかに任せることも時に必要になってきます。が、ネット上には、われこそは事故被害者のためだと謳っているものばかりなので、実際にいったいだれを信頼したらいいのかわかりません。

知識とは中立なものであること

ここで注意してほしいのは、情報の正確さもさることながら、その情報(知識)そのものが中立なことです。

昔、東大卒が多い自民党が間違えるはずがないと豪語している自民党支持者に会ったことがあります。ぼくは苦笑するしかありませんでした。たしかに東大卒は勉強をいっぱいしているわけだから、その知識量も多くかつ正確だといえるかもしれません。ただ、知識それ自体はあくまで中立なものであり、どちらにも役に立つ武器なのです。したがって、その正確でたくさんの知識をどちらの側に使うかにある。わかりやすいたとえ話をしてみましょう。

知識は刀という武器と同じ

hitininnno
その昔、武士という職業が存在しました。この武士は帯刀を許された職業のことであり、刀の専門家です。殿様を頂点にして、殿様に雇用され、殿様を守るために武器である刀の技術を日夜みがいていた。

この武器である刀自体は殿様を守るためにも使えるし、農民に加勢して殿様に刃向かうためにも使えます。しかし、悲しいかな、現実は殿様を守るために使われた例が圧倒的に多く、農民に加勢するために使われた例など不幸にしてきわめて少なかった。ごく稀に後者のような武士が現れますが、こういう武士こそ庶民にとっての英雄であり、「七人の侍」はまさにそのようなタイプの武士たちでした。

利益が一致しているか相反しているかが重要

したがって、問題はその使い手自身にあります。使い手がどちらの側に立つかで知識もそれぞれの側の武器になる。そして、その使い手がどちらの側に立つかは双方の利益が一致するか相反するかでふつうは決まってきます。

この、肝心要のことを説明したサイトが皆無といっていいほどにみあたらないのは不思議なことです(というか、あえて否定しているサイトさえいくらでもみつかるくらいです)。

記事を読んでいただければたちどころにわかることですが、当事務所は「立場」を鮮明にしております。あえて鮮明にしているのは、人間や社会に対する見方は、その人自身の立場から自由にはならないからです。中立を装うことは考察を浅くし、論旨を不明確にする。「立場」のない「立場」などありようがない。当事務所の立場は、ぼく自身が社会的弱者であるため、弱者の立場に徹することです。ぼくのような弱虫は「七人の侍」のようには決してなれないけれど、せめてその心意気だけでも真似して、社会的強者に阿らないようにしたい。そういう気持ちで当サイトをたちあげました。よろしくです。

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